【3297】 問題発言の続編ですか私変態じゃないです  (bqex 2010-09-24 00:09:46)


マルチシナリオ・マルチエンディングSS『ちびっこ山百合会』シリーズ
(他力本願だなんて聞こえないもーんだ♪)


祐巳、祥子、令、由乃、志摩子、乃梨子はちびっこになってしまった【No:3275】
薔薇の館を脱出したが、手芸部にコスプレさせられ逃亡中【No:3282】
ちびっこになった瞳子、聖に遭遇し、瞳子からは令が『ボルサン』を設置した証言を、聖からは薔薇の館を調べなかったことを指摘をされる【No:3290】
さて……

【前回の結果】
△E.『ボルサン』に子供になる薬を仕込んであったんだ。
△F.お茶のカップに子供になる薬を塗ってあったんだ。

コメントくださった方、本当にありがとうございました。

うp主が余計なことを最後に書いたせいでまたもや同数、興醒めの結果になった事をジャンピング土下座でお詫びします。

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ズザァーッ   /|           ○\
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ずれた……では、続きをご覧ください。


 聖さまは言った。

「まず、『ボルサン』。犯人は令が『ボルサン』を使うことを知っていて、利用したんだ」

「え!?」

 全員が驚きの声を上げる。

「あれは種類によって違いもあるけど、使うとだいたい2〜3時間かかる。そして、その間は部屋に入ってはいけない。つまり、『ボルサン』を昼休みに使うのであれば、その間は薔薇の館に入らないようにと注意されるはず」

「はい。そのことは さちこと しまこから いもうとたちに つたえてもらうよう おねがいしましたし、とうこちゃんが かえったあとには『たちいりきんし』の はりがみも しておきました」

 と、れいさまが言う。

「犯人は令がボルサンを昼休みに使うことを知っていて、使用前に『ボルサン』に薬を仕込んだ。『ボルサン』自体に薬を仕込むのが難しかったら、『ボルサン』の煙が当たる辺りに仕込んで反応させたのかもしれない。うまくアリバイさえ作ってしまえば普通は使用した者を疑うだろうから、自分には絶対に疑いがかからないと思うはずだ」

「せいさま、もったいぶらないで はんにんを おしえてください。『ボルサン』に くすりを しこんだ はんにんは いったい だれなんですか?」

 よしのさんが言う。

「まあ、待って。このことは祥子にお茶を入れさせた犯人にも当てはまるんだ」

「え!?」

 聖さまの言葉に全員がもう一度驚きの声を上げる。

「お茶に薬を入れれば簡単に飲ませることが出来るけど、お茶を入れた者がやっぱり疑われる。だから、犯人は第三者にお茶を入れさせる。ポットや茶葉に薬を仕込むと後が大変だろうから、各自のカップにでも塗ったんじゃないかな。カップは自然と各自の『お気に入り』が決まっているから、万が一お客さまが来ても被害には合わなかったはずだ。『ボルサン』の件さえなければね」

「でも、とうこちゃんも ちいさくなっていますよ」

 よしのさんは聞く。

「瞳子ちゃんは『ボルサン』の濃度が濃いであろう時間に薔薇の館を訪れたんじゃないかな」

「はい。ほうかご、すぐに」

 とうこちゃんはそう答えた。

「とうこ、どうして そんなときに ばらのやかたに きたの?」

 のりこちゃんが尋ねた。

「……うたがわれているようですので、ほんとうのことを いいます。わたしは、ゆみさまと はなしがしたくて ばらのやかたに いきました」

「ゆみさまと?」

「もしかして、かなこちゃんのこと?」

 ゆみが聞くと、とうこちゃんは不本意そうに頷いた。

「かなこさん、ゆみさまと はなしをしてから たいどが かわりました。それで……」

「ふん、ほんとうは あなたが どちらかに くすりを しこんだんじゃないの?」

 よしのさんが言う。

「そんなこと、ぜったいにしません! かりに はんにんだとしたら じぶんが こどもになるような へまはしません!」

「それは わたしも そうおもう」

 ゆみも言った。

「うん。瞳子ちゃんが犯人だというのは厳しいね。『ボルサン』の使用を知ったのは直前だし、お茶を飲んでないのに小さくなっていたら薬を飲んだ事がバレるでしょう」

「じゃあ、誰が?」

 景さんが聞く。景さんはまだしまこさんに抱きついていた。

「……ここじゃなんだから、薔薇の館に行こうか」

 聖さまはそう提案した。

「ほんとうは、わからないから ばらのやかたで しょうこさがしですか?」

 と、よしのさんが聞くと聖さまは言った。

「気を使ったつもりだったんだけどな。いいや。犯人のうち、一人は由乃ちゃんだと思っているよ」

「えっ!?」

 全員の視線がよしのさんに集中する。

「な、なにを しょうこに?」

「普段だったら『名探偵由乃の出番ね』なんて言って薔薇の館を調べあげたりするでしょう? でも、さっきから新聞部が怪しいって、まるで他に犯人を仕立て上げようとしてるみたいじゃない」

「あ、たしかに」

「そういえば」

「まあ、せいさま。なにを いって おいでなんでしょうか? わたしには こころあたりが ございません」

 すましてよしのさんはそう言った。

「じゃあ、鞄の中に解毒剤が入っているかどうか見ていい?」

「わたしは からだが よわいので じょうびやくを もっていますが、それまで げどくざいだなんて うたがわれるのは しんがいです」

 すらすらとよしのさんは言う。

「よしの」

 れいさまが割って入った。

「なに、れいちゃん?」

「よしのが のんでる くすりなら ぜんぶ わたしが しってるから、ぜんぶ みせて」

「……」

 よしのさんの顔が凍った。

「れいちゃん。れいちゃんまで、わたしを うたがうの?」

「よしの。いつもと ようすが ちがうことぐらい わかるんだよ。もう、やめて」

「あのっ」

 ゆみは割って入った。

「ここで もめるのは やめてください。
ばらのやかたに もどりましょう。ここで こうしていても どうどうめぐりです。
ばらのやかたに もどれば なにかが わかるかも しれませんし。
それに、わたしたちは なかまです。なかまに こんなことを するひとなんて いません。
みんな、こどもになってしまって、ふあんだから、ちょっとしたことで いいあらそいに なってしまう。
おちついて みんなで ちからを あわせたら みおとしていた なにかも みつけられるかもしれませんよ」

「……」

「そうね」

「ちょっと、いいすぎたかな」

「たしかに」

「いきましょう」

 全員が歩きだそうとした時だった。

「まって」

 さちこさまだった。

「どうしました、おねえさま」

「ゆみ、わたくしたち きょうは ふるいおんしつで いっしょに おべんとうを たべたわね」

「はい」

「おかしいとは おもわない?」

「なにがですか?」

「ゆみ、もう わたくしを かばわなくても いいのよ。わたくしは ゆみに 『ボルサン』のことを いわなかったでしょう。さきほども 『ボルサン』を しらない ふりをしたわ」

 ゆみは黙った。

「でも、ゆみの ことばで わたくしは じぶんの あやまちを こくはくするきに なったの……みなさん、なにもかも おはなしします。『ボルサン』に しかけをしたのは わたくしです」

「えっ!?」

「おねえさま……」

 さちこさまは自供は以下のようなものだった。

 祥子さまは偶然子供になる薬を手に入れていたが、どうすることもなく放置していた。
 ところが、花寺の学校祭で泥だらけになって走りまわる生徒を見た祐巳たちが子供時代の話で盛り上がった。
 そのとき、祥子さまは自分にはそんな思い出がない事を寂しく思ったらしい。
 もし、幼稚舎の頃に戻ったなら、同じくリリアンの幼稚舎に通っていた令さまや祐巳と遊べたのに、と思ったところで子供になる薬の事を思い出したという。

「……わたくしは よくぼうのまま れいがつかう『ボルサン』の なかみを こどもになるくすりと いれかえたのよ。
ただ こどもに かえって あそびたいという わたくしの みがってな おもいで みんなに ひどいことを してしまって、とても はんせいしているわ。
ほんとうに、ごめんなさい」

 さちこさまは頭を下げて詫びた。

「おねえさま、そんなことでしたら、おっしゃってくだされば よかったのに。
そうしたら、わたしは よろこんで おねえさまと いっしょに こどもになって あそびます。
きょうだって、じつは ちょっと たのしかったんですよ、おねえさま」

 ゆみはさちこさまの手を取って言った。

「ゆみ、わたくしの ために そんなことを いわなくても いいのよ。わたくしが まちがっていたわ」

 さちこさまはゆみの手を握り返した。

「おねえさま」

「ゆみ」

 ひし、と抱き合う紅薔薇姉妹の背後で咳払いがした。

「さちこ、はんせいしてるなら そろそろ げどくざいを ちょうだい」

「ないわ」

 さらり、とさちこさまは言った。
 ないんだ。
 って、えええっ!?

「は?」

 れいさまが聞き返す。

「だから、ぐうぜん こどもになるくすりだけを てにいれただけで、げどくざいなんて しらないわよ。じかんがたったら もとに もどるのでは なくって?」

 おいおい、さちこさま。それって、本当に反省してる人間の言葉には聞こえないんですけど。

「じゃあ、もどるほうほうは ないってわけ?」

「かもねえ」

 聖さまが相槌を打つ。

「ふーん、じゃあ、この子たちはどうなるのかしら?」

 景さんがしまこさんから手を離した隙に、聖さまがさっとしまこさんを自分の手元に引き寄せた。
 ちッ、と景さんが舌打ちする。

「どうって……どうなるんだろうね。誰かが解毒剤でも持っていればいいけどね」

 聖さまが言う。

「そんなに都合よく解毒剤を持ってる人がいるわけないでしょう」

 景さんが言う。
 よしのさんがうつむいた。
 これはお二人からよしのさんに名乗り出るようにという意味のサインなのだろう。

「じゃあ、一生このままかな」

「可哀想だけど、そうなったら、お姉さんが可愛がってあげるわ」

 と、景さんがれいさまに抱きついた。

「ひゃっ!」

「可愛い声出しちゃって。この子が妹でもいいかな〜」

 景さんは頬ずりする。

「ああ、令は典型的な女の子だから、妹ごっこにはちょうどいいかも。あ、でも。江利子と取り合いになるかな」

「まあ、江利子さん。会ってみたいわ」

「じゃあ、メールしてみる?」

 なんて言いながら聖さまは携帯電話を取り出した。

「あ、あのっ」

 よしのさんが声を上げた。

「あのっ、も、もしかしたら、わたしの もっている じょうびやくが『ぐうぜん』にも げどくざいの やくわりを はたすかも しれないから ためして……」

 全員の視線を感じて、よしのさんは小さくなった。

「よしの」

「……わかったわよっ! ……ごめんなさい」

 よしのさんは謝った。

「薔薇の館に行こうか」

 聖さまと景さんの協力でどうにか誰にも見つからずに薔薇の館に着いた。
 由乃さんは鞄から白い粉末を取り出した。

「つうはんで かった せつめいしょに よると これが げどくざい だそうよ」

 カップを綺麗に洗い、説明書の分量通りに粉末を溶いて、みんなで飲んだ。
 元に戻ることを考えて、制服に着替える。

「……あ」

 とうこちゃんの身体に変化が起こった。
 見る見るうちに大きくなって、元の姿に戻った。

「戻りました!」

「おめでとう!」

「……」

「……わたしたちは まだかな?」

 しかし、他の六人は戻らない。

「……あれ?」

「ちゃんと のんだよね?」

「どういう、こと?」

 全員で首をかしげていると、瞳子ちゃんが言った。

「そういえば、祖父に聞いたのですが、薬というものは併せて飲むとお互いの効き目を強くしたり、思わぬ作用をするものがあるそうです」

「……!」

「瞳子ちゃん、これで小笠原家に連絡を」

「はい」

 瞳子ちゃん経由で小笠原家に連絡がいき、子供になる薬を開発したという小笠原傘下の製薬会社に連絡がついて、やってきた担当者はこう言った。

「あれは開発中でしたので、解毒剤は現在研究中です。え? 他の似たような効き目の薬と併用したですって? た、大変だ!」

 そして、担当者の見解は。

「現在、全力で解毒剤の開発にあたっていますが、早くても二週間はかかります」

「な、なんですってーっ!!」


 翌日。
 ゆみたち六人はちびっこ用の制服を着て登校した。

「ごきげんよう」

 ブファーッ!!

 今朝は鼻血を出して倒れる生徒が多い。
 蔦子さんは鼻に栓をつけてシャッターを切ってくる。怖いよ。

「ごごごごごごきげんよう、福沢さん」

 担任の先生までが興奮している。

「祐巳さん、カワユス……」

 なんか、気絶してる人までいるし。

「祐巳さまっ!! 火星よりお戻りになったんですね」

 可南子ちゃんに抱きつかれ、たかいたかいと抱きあげられて、天井に直撃。

「い、いたいよう、かなこちゃん」

「はうっ、そんな目で見つめないでください。祐巳さまぁ……」

 可南子ちゃん、鼻血を噴水のように出しながら気絶。

「山百合会の皆さま! 手芸部の服を着ませんかっ!!」

 懲りない人々に取り囲まれたり。ああ、もう、いやっ!

「皆さま、冷静になるのですっ!!」

 と、駆けつけてくれたのは瞳子ちゃん。

「さあ、祐巳さま。こちらへ」

 薔薇の館までエスコートしてくれてやれやれ、と思ったら。

「……このマシュマロ肌。たまりませんわ……もう、ロリコンでもいいかもしれませんわ……」

 あと一歩で力尽きて倒れちゃった。おーい、もしもし。
 階段をよいしょと昇って、ビスケットの扉を開けたら。

「や〜ん、祥子かわいい」

 と蓉子さまがさちこさまに抱きついて悶えていらっしゃった。
 ……って、なぜあなたがここに!?

「こっちの方が可愛いってばっ!」

 と、江利子さまってばれいさまとよしのさんを両脇に抱えてデレデレになってる。
 って、江利子さままで!?

「ね? 可愛いでしょう?」

 そう言ってしまこさんをキープする聖さま。
 そのお隣には景さんがのりこちゃんをだっこしている。

 まずい。

 そっと出ようとしたゆみの肩を何者かがつかんだ。

「きゃああああああああっ!!」

 誰の手かわからないけど、とにかくまずい!
 必死に逃げようともがいたが、子供の力ではかなうはずなく、あっという間に中に引き込まれた。

 あのとき、お姉さまには『子供になってもいい』みたいなことを言ったが、今はとにかく元に戻りたい。
 マリア様、私の貞操をお守りください。
 ゆみにはもう神頼みしかなかった。

―おしまい―


【あとがき】
前回もちょっと触れましたが、今回はこんな流れになっていました。

A→外部の犯行に。容疑者可南子ちゃん登場。
 C→犯人:聖さま 手口:お茶カップに薬 動機:乃梨子ちゃんと触れあいたかった
 D→犯人:蔦子さん 手口:ボルサンに薬 動機:ちびっこ山百合会を撮りたかった

B→内部の犯行に。キーでイベント発生。
 C→犯人:由乃さん 手口:お茶カップに薬 動機:何だか面白そうだから
 D→犯人:祥子さま 手口:ボルサンに薬 動機:子供に戻って遊びたかった

どのルートも瞳子ちゃんが容疑者として登場します。
そして、犯人当てクイズをする予定だったのですが……もう、いいや。

最後に今回の連載でコメントくださった

奈々氏様
美影様
kyouko様
クゥ〜様
ex様
くま一号様
taro様
(順不同)

本当にありがとうございました。
感謝いたします。
コメント0でなくてよかった〜。


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