私の名前は蓉子。三賢者のうちの一人、赤の賢者(マギ・キネンシス)と言われている。私は今、他の二人と一緒にキリストの生誕祭に向かっている。つい三ヶ月前、三賢者のうちの一人、黄の賢者(マギ・フェティダ)こと江利子が「神の器たる赤子が、羊飼いが毛を刈る季節に生まれるであろう。って、占いで出たんだけど、そこに行ってみない?」と言ったので、こうして私達はその神の子の元に馳せ参じて……
「ねえ、そこの可愛い天使ちゃん♪今からお姉さんとお茶したり、お話したりしない?」
「なるほど、今から二千年後、ここの土地はこんな事になっているのね……、面白いわ。」
……いるはずなんだけど、聖は手当りしだいナンパしてるし、江利子は何やら企んでいる様子だ。
「この店の紅茶って美味しいんだって。私が奢ってあげるから、つきあって、ねっ?」
「で、でもそんなの悪いですし……。」
「いいって、気にしなくて。それより、私とお茶でもした後、この町を案内してくれない?夕食も奢ってあげるし、そのまま私と一晩、アバンチュールな夜でも過ごさな……」
「聖っ!いい加減にしなさい!仮にも白の賢者(マギ・ギガンティア)とあろう者がそんなことばかりやって、恥を知りなさい!」
聖の耳をひっつかんで叫んでやったのに、三賢者だけあって、平気な顔をしている。
「あっれ〜?蓉子、もしかして、妬いてるの?」
「違う!」
「…ごめんね、蓉子。貴方がそんなに私の事を想っていてくれてたなんて……。分かった。今日の夜は蓉子と一緒に過ごしてあげる……」
「人の話を聞けー!!!」
腰に回してきた手を掴んで、そのまま投げてやった。
この時、山嵐という技が生まれたとか。
一方、江利子はというと、
「そことそこの地面を掘りおこして、砂を入れた後、表面だけまさで整えなさい。ここには後々、塔が建つから、その塔が斜めになるようそこの地盤を緩めておくのよ。これで未来人はスリリングな毎日を過ごせるわ。」
「「「「分かりました江利子様。」」」」
いつの間にか何人かの男共を手懐けて、喜気として何かの作業の指示をしている。
「…もう、いや……」
蓉子はそのまま頭を抱えて蹲った。
赤の賢者、蓉子の苦難の旅路はまだまだ続くのであった。