けいおんです!
キーが良かったもので……。
「……で、送る会の使用許可の申告が出ていませんので使えません」
祐巳は、迫った三年生を送る会の確認のために各部を回っていた。
今は第二音楽準備室。
クラブ棟ではなく、校内に部室を持つ部活は確認が大変だ。
「し、しまった!」
「また、お前か!」
部長の律さんが、長い黒髪が祐巳のお姉さまに似ている澪さんに叩かれている。
……早くしてくれないかな。
次があるので急いでいるし、山百合会では式の準備などで大忙しなのだ。
「……あの、以上ですから」
「待ってくれ〜、紅薔薇の蕾〜」
「まだ、蕾ではないです」
足にしがみついて泣きついてきた。
「でも、もう予定表が出来てますから」
「それでも!お願いだ!」
もう一人が本当に困り顔で迫ってくる。
「ですが……」
祐巳としては学園祭のライブを見ているので助けてはあげるつもりではある。
「困りました……まぁ、それは少し考えてもらうとしてお茶などいかがですか?」
見れば、部室内には楽器類意外にティーセットにケーキまで置かれている。
「そうそう、ムギのお茶は最高なんだ」
「山百合会のサロンほどではありませんが」
少しポワポワした感じの生徒が微笑んで進めてくる。
「はぁ、では」
部活周りに忙しいため、今日はまだ薔薇の館でのお茶にはありついていない。
「……うわぁ!」
口の中に広がる紅茶の香り。
「ケーキも美味しいね」
出されたケーキも美味しかった。
「ふふふふふ」
突然、不気味な笑い声が響く。
「お、おい律」
「ふふふふふ!あははははは!……げふんげふん!ひ、引っかかったわね紅薔薇の蕾!」
だから、まだ!
「律さん?」
「まさかタダでお茶にありつけるなんて思っていないでしょうね」
もの凄く悪人ぽく、顔に影まで作って仁王立ちしている。
「お、おい」
「それは流石に……」
「?」
「?」
祐巳は唯さんと顔を見合わせる。
「……て!脅しているんだって気づいてよ!」
「あぁ」
「そうなんだ」
祐巳は唯さんと頷きあう。
「おい!唯まで分かっていなかったのか?!」
何だか涙目の律さん。
「つまり……お茶代の変わりに出演時間をよこせと?」
「そう!その通り!」
何だか呆れてしまうが予定は実は入れてある。
「いいですよ」
「本当か!」
「いいんですか?!」
驚きの声を上げたのは、澪さんと紬さん。
「ただし、次からは必ず書類を提出してください」
「あぁ!当然」
「今度からは必ず」
そう言いながら必ず遅れるので、ちょっとしたお仕置きのつもりで出られないと言っただけだ。
「では、一応午前に十五分の時間を取ってありますから」
「すみません、紅薔薇の蕾」
「だから、まだですってば!」
「まぁ、学園祭のライブ良かったですからね。今回も頑張ってください……て、聞いています?」
「勿論!」
「それと使用許可の書類も出してくださいね!」
だが、祐巳の声はむなしく響く。
十五分では短いとか。
午後が良いとか。
何だか祐巳が気を使った事が棚上げになっている。
正式な書類が出ていない部活に時間を取って置くのが、どれだけ大変か分かっていない様子。
「……まぁ、いいけれど」
祐巳は立ち上がりドアに向かう。
「後で書類取りに来ますから」
まだ、何か騒いでいる部員を見ながら部室を出た。
「やっぱり十五分は短いよな」
「そうだな、準備を入れてせめて三十分は欲しい」
「紅薔薇の蕾、時間を取っておいてくれたのは嬉しいけど、正直、時間の配分分かっていないよね」
「でも、原因は律だしな」
「うぉぉぉ」
「ですが……今から書類を提出しても、なかなか時間は取れないのではないでしょうか?」
「う〜ん」
「ふっ、いい考えが浮かんだわ」
お凸を光らせ、律が笑う。
「いい考え?」
「いい考えも何も、丁重に……」
「山百合会幹部を引き込む」
律さんの不適な笑みに、他の三人は固まる。
「い、いや、流石に難しいだろ」
「引き込むって誰を?」
「おい!」
澪さんは、唯さんの能天気な言葉にツッコミを入れる。
「そうだなぁ……祥子さま」
「無理」
「うん、無理」
「そうですね、無理」
「じゃ、じゃぁ!令さま」
「由乃さんが怖そうね」
「そうね」
「由乃さんは?」
「二人そろって?」
「それ以前に剣道部だぞ、あの二人」
「う〜ん」
「それなら、志摩子さんは?」
「あっ、いいかも。ピアノとか弾けるみたいだし」
「それだと紬と被らないか?」
「ダブルピアノ!」
「お〜ぉ」
「でも、白薔薇さまだよ?」
その一言で固まる。
同級生でも次期薔薇さまには声をかけにくい。
「仕方ない、無難に祐巳さんと行きますか」
「無難なのか?!」
「だって、時間とってくれていたし理解ありそうじゃない」
「いや、普通にお願いしようよ」
「え〜、それはつまらないよ」
「そんな事で決めるな!」
「む〜」
澪さんに怒られ拗ね顔の律さん。
「あまり我侭を言うな」
「う〜、我侭なのは澪だと思うけど」
「何処が?!」
「あまり我侭だと、マリみてじゃなくコープスパーティの方に話を変えるぞ!」
「何だそれ?」
「コレだ」
そう言って律さんは澪さんに一本のゲームソフトを見せた。
「ひぃぃぃぃぃい!」
「りっちゃん、それシャレにはならないから」
「そうね、きっと色々な方に叱られるわ」
「まぁ、ここは澪を怖がらせるのが目的だから、これで邪魔者はしばらく動けないわ」
そう言って、律は澪さんの前にゲームソフトを置く。
「まるで封印みたいね」
「と言うか、蛇に睨まれた蛙?」
「まっ、まぁ、澪を動けなくしている間に祐巳さんを引き込むわよ!」
「おぉ!」
一致団結の声が上がる。
「こ、怖いよ〜」
澪さんは固まっていたけれど。
「ごきげんよう」
まさに飛んで火に居る夏の虫。
「祐巳さ〜ん!」
最初から甘い声。
テキパキと部室に引き込まれ、再びお茶。
「……あれ?」
書類を取りに来ただけなのに?
「祐巳さん……一緒にバンドやらない?」
ニコニコ顔の律さん。
「はっ?」
「やりましょう!」
「はい?」
「やろうよ!」
「う、うえぇ?」
いつの間にか、三方を取り囲まれていた。
悪徳、詐欺集団のようだ。
「……」
ニコニコ顔三つ。
「ハ、ハーモニカくらいなら……」
「あるよ!」
取り出されるハーモニカ。
「嘘です、ごめんなさい」
祐巳は即座に謝る。
「だ、大丈夫か。紅薔薇の蕾(仮)……唯と同じ反応で」
引きつり顔の律さん。
「ほへ?」
「そ、それで!本当にやらない?」
「い、いや……だから、何で?」
祐巳が出ていった間に、この人たちは何を話し合ったのだろう?
隅では一人うずくまっているし……。
「……本当のことを言おうよ。何が目的?」
「うっ!」
律さんが呻き、他の二人が顔を見合わせる。
「時間が少ないんだ」
そこに何やら復活した澪さんが、説明に来た。
「時間が足りない?」
「あぁ、準備を入れて十五分では一曲がやっとでさぁ」
「……あぁ、成る程。そうか……」
バンドを良く知らない祐巳としては、他の落語同好会とかと比べて時間を取ったのだが、よく考えれば扱う小道具の量やマイクなどの準備時間が違った。
「でも、なぁ」
まだ、時間割の正式公表はしていないので作り直せないことも無い。
「しょうがない、それでどのくらい時間欲しいの?」
「い、いいのか?!」
「どうにかしてみるよ」
「あ、ありがとう!」
澪さんは祐巳の手を取り喜んでいる。
「あぁぁ……素敵……」
何やら不穏な呟きを発する紬さん。
「何だ律、まだ不満なのか?」
「だって、せっかくの部員増加のチャンスと部費増加のチャンスが!」
「おい」
「あははは」
本気なのか冗談なのか良く分からない。
「と言うか、切実な問題が……」
「切実?」
「文章では分からないと思うけれど!唯がまた声をつぶしている!」
「おい!?」
「と言うことで再び澪がボー……」
「それは嫌だぁぁぁぁ!」
澪さんは再び隅で固まった。
「どうしたの?」
「あぁ、学園祭で最後の最後でさぁ……」
「あぁ!縞々パンツ」
「いやぁぁぁぁ!」
触れてはいけない話のようだ。
「まぁ、軽音部への入部は本当にお断りするけれど」
「そんなぁ」
「仕方ないだろう、楽器だって用意しないといけないし」
「あぁ、楽器はそうでもないよ。うちのお父さん親父バンド組んでいるし、ツテで借りるくらいなら出来るから」
「ゆ、祐巳さん」
「?」
「祐巳さんてさぁ、嘘つけない人だよね」
「そうね」
本当の事を言ったら何故か哀れみの目で見られた。
――ポン。
唯さんに肩を叩かれ……。
「いい人」
……。
これは褒められている?
「と、とにかく時間もないし無理だ……」
無理だと断ろうとして、少し考える。
それは聖さまから聞いたかくし芸の話。
由乃さんは宴会芸と言っていたが、軽音でも良いのではないだろうか?
……かくし芸って恥ずかしいよね。
「うん!」
祐巳はいい事を思いついたと、パッンと手の平を合わせた。
「いいよ、お手伝いさせて」
「いいのか?」
「部活は何かしたかったしね。ただし、条件として少し手伝って欲しいことがあるんだ」
祐巳のその笑顔に、一同は背筋に寒いものを感じた。
祐巳は翌日の放課後。約束通りに軽音の部活に顔を出した。
「あっ、祐巳さん」
軽音部の面々はちょうどお茶をしていた。
「よかった、休憩時間だったんだ」
「えっ、いや……その」
祐巳の言葉に、苦笑いの澪さん。
「……まだ、練習していないんだ」
少し涙目。
「そ、そう」
「山百合会の方は良かったのかい?」
「そっちは大丈夫、お昼休みに出来るだけ進めたから」
「うっ、うぅ」
「な、なに?」
「まともだぁぁ」
何故か澪さんに抱きつかれ泣かれた。
「えっ?え〜と?」
どうしていいかは分からないけれど、一先ずは……。
「……練習しない?」
流石にバツが悪いのか、祐巳の提案に残りの三人は頷いた。
……。
…………。
「へぇ〜、意外に良いギターね」
「そう、お父さんの友人さんから結局もらったんだけれど、そんなに値段は高くないから遠慮は要らないって言われたんだけれど」
「いや、手入れもされているしネックも細くって女性に使いやすいタイプだよ」
「そうなの?」
「ほら、女性は男性に比べて手が小さいから」
そう言って唯さんが手の平をかざすので、祐巳と合わせる。
「本当だ」
澪さんとも合わせる。
「わぁ!大きい」
澪さんの手は唯さんよりも大きかった。
山百合会で一番小柄な祐巳。
どうもここでも一番小柄なようだ。
「……あれ?」
見れば澪さんが落ち込んでいた。
少しして……。
「それじゃ、まずはコードから覚える?」
そう言って祐巳は本を受け取り、開く。
……。
「まず、楽譜の読み方から教えてください」
「唯と同じ!?」
澪さんに飽きられつつ、残りの時間を澪さんにミッチリ付き合ってもらい。練習に当てた。
「それにしても、祐巳さんは真面目だよなぁ」
「それは律が不真面目すぎるんだ」
「え〜」
すっかり日が暮れ暗くなった銀杏並木を軽音部の面々が帰っていく。
祐巳は、山百合会の仕事があるとかで、薔薇の館に帰っていった。
「でも、祐巳さん大丈夫かしら、少し疲れた表情をしていたみたいだけれど」
「そうだな」
澪さんと紬さんは、まだ明るい明かりを放っている薔薇の館を見ていた。
二人の心配は当たってしまう。
翌日、授業中に倒れてしまったらしい。
「祐巳さん大丈夫かな?」
「そうね」
「ムギちゃんのケーキ食べたいだろうしね」
唯さんの心配は何処かズレていた。
「私たちは祐巳さんとの約束で、本番まで協力しているのは秘密だし。お見舞いにも行けないものね」
「祐巳さん、家でもかなり練習していたみたいだし」
「山百合会の仕事も頑張っていたみたいだからね」
軽音部の四人は、祐巳が来るのを待つしかない。
「それじゃ、このまま待っていても仕方ないから。練習を始めるか」
「え〜、今日はムギちゃんのケーキを楽しもうよ」
「そうだそうだ!」
「そうだじゃない!祐巳さんが戻ってきて、上手く祐巳さんに合わせるためにも練習が……」
澪さんの言葉は虚しく、部室に響き。
かわりに甘いケーキの匂いと、紅茶の香りが漂う。
「……仕方ない、少し休憩してから始めるからな」
「うん、それでこそ澪ちゃんだよ」
唯さんの言葉を聞き流し、ケーキを口に運ぶ。
……やばい、最近は祐巳さんに合わせて練習していたから、祐巳さんが居ないと練習しなくなっている感じがする。
本来、部外者の祐巳の部活復活を説に願う澪さんだった。
「う〜ぅ」
「律、唸っていないで準備急げよ」
「そう言っても!トリだよ!?」
「あぁ」
「祐巳さんも何で最後を私たちに任せるかな……」
祐巳が、軽音部に通知してきた公演時間はラストだった。
「仕方ないじゃないか、それしか時間調整が出来なかったんだから。それに使用時間は、こちらの言い分どおり取ってくれたんだし」
「そうだけど……」
律さんは、まだ不満そうだ。
「緊張しない?」
「そ、それを言うな!?」
律さんの言葉に、澪さんの顔が真っ赤になる。
「皆、大丈夫?」
祐巳が、そこにヒョコッと顔を出す。
「祐巳さん」
「緊張してる?」
「大丈夫だよ〜」
「お前は緊張しろよ!」
唯さんの能天気な言葉に、律さんが素早くツッコミを入れた。
「あはは……大丈夫そうだね」
「あぁ、何とか。ところで祐巳さんも参加しない?」
澪さんは、手にしたベースを少し上げて祐巳を誘う。
「私はいいよ、約束通りに練習させてもらっただけで」
「そうか、残念」
「そうだよ、祐巳さんも加わりなよ」
「あはは、ありがとう。でも、遠慮しておくよ……それじゃ、後で」
頑張ってと、祐巳は奥に引っ込んだ。
「祐巳さんも頑張って練習したんだから、問題ないのにな」
「何を練習したのかしら?」
祐巳が引っ込んだ反対の舞台袖から、その声は聞こえてきた。
「……」
ゆっくりと四人の頭が、そちらに動く。
「ひぃ!」
悲鳴を誰かが上げた。
祐巳は舞台から離れ、観客の後方で待機していた。
幕が上がり、送る会最後のイベントである軽音部のライブが始まる。
「……アレだけ放課後お茶していても、本番は凄いから不思議だよね」
「何が不思議なの祐巳さん?」
見れば志摩子さんがいつの間にか横に立っていた。
「えっ?あはは。凄いなって思ってね」
話しかけてきた志摩子さんを一度見てから、舞台に立つ軽音部の皆を見つめる。
「学園祭では澪さんのファンクラブが出来たらしいけれど、今度は唯さんのファンが出来そうだよね」
心配された唯さんの声も元通りで、今はメインボーカルとして歌っている。
……う〜ん、これを出し物にしようとか思ったけれど。ここまで凄いとなぁ。
聖さまの言っていた出し物に、祐巳は軽音部の音楽を使おうと思ったが、本番を見て少し早まったかなと思い直していた。
志摩子さんや由乃さんにも話していないので、本当にサプライズになるか暴走に成るか分からない。
……やばいなぁ。心配になってきた。
『三年のお姉さま方ご卒業おめでとうございます!実はですね、今回の演奏は部長のりっちゃんが書類の提出を忘れていて出来ないところだったんですよ〜』
唯さんの話に笑いが起きる。
『でも、山百合会の紅薔薇の蕾の妹である祐巳さんの協力で舞台に立つことが出来ました!』
「祐巳さん……」
「うわぁ」
隣で、ニコニコ顔の志摩子さん。もの凄く恥ずかしい。
『あっ、でも、最初、祐巳さんは十五分しか時間を取ってくれていなくって、もう少し欲しいと言ったらラストにされちゃったんです。極端ですよね』
「祐巳さん」
今度は少し哀れみの表情の志摩子さん。
『ただ、今回のことで祐巳さんと仲良くなって、祐巳さんもバンドするようになったんですよ』
「ゆ〜み〜さん!」
「ひゃぁ!」
唯さんのMC直後、志摩子さんが腕を取ってきた。
『祐巳さん!一緒に演奏しよう』
舞台から呼ばれる。
「祐巳さん」
「し、志摩子さん?!」
「祐巳さん、逃げられないよ」
「よ、由乃さん!?」
左右を山百合会一年組みに押さえられていた。
「祐巳さん、もしかしてバレていないと思っていた?」
「アレだけ放課後に出入りしていたら、マリアさまでなくても誰かが見ているわよ」
「おかげでかくし芸のこと祥子さまたちにバレてしまったわ」
「……ごめん」
祐巳は、ニコニコ顔が怖い二人に連行され。
……。
「いやぁ!何よ、これ?!」
「何って、軽音部のステージ衣装よ」
いや、確かに学園祭のときに着ているの見たけれど。
「さわちゃん先生!」
「……祐巳さん、貴女まで……さわちゃんなのね」
涙目のさわ子先生。
「いや、すみません。でも……これ…」
「祐巳さん、時間ないから!」
「このままはイヤァァァ!」
祐巳の悲鳴も虚しく、そのまま舞台に送り込まれる。
「来たね、祐巳さ……ん…」
祐巳の格好を見た四人が固まり。
『萌え萌え、キュン!』
四人同時に、胸あたりでハートを指で作る。
「……もう、どうにでもして」
結局、祐巳は演奏に強制参加となった。
舞台の上からは、観客席が良く見える。
笑いをこらえる白薔薇さま。
何だかワクワク顔の黄薔薇さま。
そして、最初こそ驚いていた紅薔薇さまだったが、ついには立ち上がるまでしていた。
どこで発覚したのかは分からないが、もう此処まできたら最後まで軽音部に付き合うしかなかった。
「あははは」
「祐巳ちゃんは最高ね」
「本当」
薔薇の館に、薔薇さまたちの笑い声が響く。
薔薇さまたちのお別れ会は、初っ端から笑いで始まった。
ちなみに、祥子さま、令さま、由乃さん、志摩子さんも笑っていた。
ただ、祐巳だけが青い顔で立っている。
「……なぜ、私は未だにメイド服なのでしょうか?」
そう祐巳は未だにステージ衣装のままだった。
「なぜって?これはお姉さまたちのための会だもの、お姉さまたちのリクエストには答えないとね。それと、姉である私に黙っていた罰よ」
「お姉さま〜」
祐巳は姉である祥子さまの命令でそのままの格好を続けていたのだ。
祐巳が軽音部の様子を見に行った後、おおよその情報を得ていた祥子さまが舞台に上がり。澪さんたちから全てを聞き出し、祐巳を舞台に上げる様にとまで指示されたらしい。
「さて、それでは下に居る四人も呼んで、薔薇さまたちのお別れ会を始めましょうか。由乃ちゃんも志摩子も用意はいいわね」
「えっ?下に居る四人って?」
「あぁ、軽音部の子達を連れてきているのよ」
祐巳の疑問には令さまが答える。
「ど、どどどうして?」
祐巳は一人で変な風にギターを弾いて笑いを取ろうと思っていたのだ。
「いいんですか?」
薔薇さまたちのお別れ会は、いわば身内の話。軽音部は部外者のはず。
「いいのよ。さっ、祥子」
「はい……それでは、お姉さま方最後までお楽しみください」
祥子さまの言葉に、下の四人も乱入し薔薇さまたちのお別れ会が始まった。
祐巳もこの時のために練習してきたギターで、由乃さんや志摩子さんを盛り上げる。
楽しい本番はこれから……。
「ねっ、祐巳さん!本当に入部しない?」
「……そうね、考えておくわ」
ごめんなさい、ついふらふら〜と……最初は祐巳ちゃんに演奏させるか迷ったのですが、置いておいて書き出したら演奏してしまいました。
次は弓道なんか……さて、これで元が分かる人って(笑)
クゥ〜。