【3303】 遠い空決まって台風が来る水野祐巳  (クゥ〜 2010-09-27 23:40:26)


水野祐巳その11


 中等部のお話【No:1497】【No:1507】【No:1521】【No:1532】【No:1552】【No:1606】【No:1904】
 高等部のお話【No:3191】【No:3202】【No:3263】






 「んっ!ん〜」
 まぶしい朝日に背を伸ばす。
 せっかくの体育祭日和。
 晴れている方が、気分も良いというものだ。
 「祐巳!急ぎなさいよ」
 「は〜い」
 気分高揚のまま学園に向かう。
 両親は来るらしいが、祐麒は嫌がった。来ないつもりらしい。
 お姉ちゃん曰く、思秋期だからねとの事。
 まぁ、祐巳も花寺の体育祭に行くのなら一人では遠慮したい。


 ポンポンと体育祭開始の花火が上がる。
 何時もよりも長めのホームルームのおかげで、少し遅れて集合する。
 見渡せば、皆、興奮しているのか少し騒がしい。
 「ふぅ」
 そこにカメラマンの蔦子さんが戻ってくる。
 「お疲れ」
 「いや〜、山百合幹部が分散しているから大変だったわ」
 そう言いながらも、良い写真が取れたのか蔦子さんはご機嫌の様子。
 でも、確かに……。
 李の紅薔薇さまは白チーム。
 同じ菊の黄薔薇姉妹は黄チーム。
 祥子さまは松で、緑。
 白薔薇さまは、藤で紫チーム。
 白薔薇の蕾の志摩子さんは祐巳と同じ桃なのでピンクと山百合会は良い具合にバラけている。
 でも……。
 「せっかくなら黄薔薇のように、白と赤も同じチームの方が盛り上がったかもね。志摩子さんもせっかくなら白薔薇さまと同じチームが良かったのじゃない?」
 蔦子さんではなく、志摩子さんを見る。
 良く見れば、姉妹の揃った黄は少し他のチームよりも盛り上がっている感じ。
 それでなくても、姉妹が同じチームに成ればそれなりに盛り上がるだろうし。
 「そうね……でも、私としては祐巳さんと同じチームに成れた事が楽しいかしら」
 本当に嬉しそうな表情の志摩子さん。
 少し反則気味の笑顔だった。
 ただ、少し考えれば同じクラスなのだから同じチームになるのは当たり前で……照れた事に、照れていた。

 「頑張ってー!」
 「GO!GO!」
 応援が盛り上がる。
 今年は突出したチームが居ないためか、点数は縺れに縺れている。
 おかげでどのチームも盛り上がり、さらに一進一退の攻防が続く。
 「あっ、ごきげんよう。紅薔薇さま」
 試合中の暇を見てお手洗いに来た祐巳は、実姉である紅薔薇さまに出会う。
 「ごきげんよう」
 お互い公私混合は避けるように挨拶を交わす。
 「どうですか、紅薔薇さまは」
 「なかなかね」
 「そう言えば応援合戦に出られるとか?」
 「えぇ、楽しそうだと思ったから」
 そう言いながら、応援合戦に薔薇さまが担ぎ出されるのは毎年の恒例。
 半強制と言っても良い。
 一方、蕾は殆ど出ない。これは姉である薔薇さまを立てる意味がある。
 「何をなさるのですか?」
 「ふふふ、それは秘密よ。それよりも祐巳は応援合戦に参加するらしいわね」
 「はぁ、なぜか」
 応援合戦のメインを勤めるのは三年生だが、やはりそれだけでは足りないので二年、一年から応援が出てサポートを行う。
 それに何故か祐巳が選ばれていた。
 祐巳としては、白薔薇の蕾である志摩子さんが適任と思っていたが、選ばれたのは祐巳だった。
 「私としては、志摩子さんを押したんですけれど」
 祐巳が溜め息混じりに呟くと紅薔薇さまは笑っていた。
 公私混合は避けているつもりだが、そこは実姉妹つい話しこんでしまうこともある。
 あまり話していても仕方がないので、お手洗いを出る。
 「それじゃ、お互い頑張りましょう」
 そう言って別れた。
 お手洗いから戻ると、ちょうど二年生の玉逃げが始まるところだった。
 「おぉ!祥子さまが籠を担がれている!」
 最初に見つけたのは、籠を担いで立っている祥子さまだった。
 「よく、祥子さまにOKを出させたわね」
 この手の事が苦手なはずの祥子さまを良く説得したものだ。
 「私のお姉さまの話だとクラスの人が何か言ったみたいよ。内容まで、教えては貰えなかったけれど」
 何を言ったのだろう?
 凄く気に成るところではある。
 見れば令さまも籠を担いでいた。こちらは順当と言える。
 合図が鳴り響き、競技が始まる。
 個人的には祥子さまを応援したいところだが……。
 「祥子さまは敵よね」
 隣の志摩子さんに聞く。
 「令さまもね」
 志摩子さんも頷く。
 「「ガンバレー!ピンク!」」
 二人で声を揃えた。
 

 応援合戦は、毎年ほぼ固定状態の緑チームを除き、格チーム色に合わせて捻ってくる。
 「はぁ……終わった」
 サポートといっても、皆の前に立って旗振りをしないといけないので一般生徒よりも大変なのだ。
 後の祐巳の出番は午前中は、一年全員参加の棒引きだけ。
 「志摩子さん行くよ」
 「えぇ、お供するわ」
 ピンクチームの棒引きの作戦は、どんな場合でも二人一組。
 祐巳のパートナーは志摩子さん。
 二人並んで入場門に急いだ。


 「お腹すいたぁ〜」
 いや、そこまで空いてはいないのだけれど、まぁ、一種のお約束ということで声を上げる。
 「それなら声上げないの」
 後ろからコンと頭を小突かれた。
 「紅薔薇さま……人の思考を読まないでください」
 何時の間にエスパーにまで成りましたかこの人は?
 「お姉さま」
 「おっと、来たわね」
 「祥子さま……?……あぁ」
 食事をするのに待ち合わせをしていたんだなと気がつき、早々に離れようとする。
 「待ちなさい」
 「ふっげ!」
 襟を掴まれ首が絞まる。
 「そんな事で気を使わなくっても良いのよ、少し付き合いなさい」
 お姉ちゃんは、祥子さまを伴って両親の所に向かう。
 両親と祥子さまは何度か顔を合わせてはいる。
 「で、どうして私が付き合うのよ?」
 「いいじゃない、その方が祥子も喜ぶし」
 ボソッと耳元で言われたその言葉に、祐巳は固まる。
 「……卑怯な」
 結局、祐巳は二人と共に両親の所に向かう。
 案の定、祐麒は来てはいないようだ。
 「祥子さま、そんなに硬くならずとも」
 「そ、そうね」
 そう言いながら祥子さまの表情は硬い。
 母と父は祥子さまのことが大好きだ。
 「ところで祥子さんは妹は?」
 「お恥ずかしながら……」
 「あらそうなの……それならうちの祐巳なんてどうかしら」
 母は、何処までも明るく無邪気に提案した。
 祐巳はつまみ食いして口に放り込んだ、から揚げを噴出しそうになる。
 「祐巳、はしたないわよ」
 「そうね、もう少し落ち着きなさい」
 「!?……あのねぇ!」
 祐巳はから揚げを飲み込み文句を言いたかったが、横に居る祥子さまに気がついて言葉が止まる。
 ……う〜、恥ずかしくって祥子さまの方を見られないじゃないの。
 母と実姉はニヤニヤしている。
 祥子さまはどんな顔をしていらっしゃるのか?
 挨拶を終えて狭い観客席から抜け出したが、まだ祥子さまの顔を見られない。
 「それでは」
 これ以上は付き合う気は流石にない。
 後は姉妹水入らず。
 ……と、思ったのだけれど。
 「ぐっえ!」
 「何処行くのよ、山百合会で食事に成っているんだから祐巳も来るのよ」
 「えぅ?わ、私はお手伝いで!」
 「お手伝いも関係者よ」
 結局、祐巳は逃げ出す事も出来ずに、山百合会面々と昼食をとっていた。
 「なんだか……」
 「どうかした?祐巳さん」
 「うん、夏からお姉ちゃんに流されているような気がして」
 「うふふふ、私たちは祐巳さんがお手伝いに来てくれて楽しいけれど」
 志摩子さんの優しい微笑。
 「でも……そうね。今の祐巳さんは……」
 そこまで言って、志摩子さんは祥子さまの方を見た。
 黙ってしまった志摩子さんを見ながら祐巳は玉子焼きを口に運んだ。
 「んっ、美味しい」
 ……。
 …………。
 運動をして食事をした後のゆっくりとした時間。
 フォークダンスの音楽も流れ出していた。
 「……」
 「祐巳ちゃん、何処に行くの?」
 「フォークダンスに……祥子さまもどうですか?…紅薔薇さまや皆さんも」
 「なに?私はついでなの」
 お姉ちゃんはクスクスと笑う。
 「それを言うなら、私たち何て金魚の糞じゃない。皆さんで総まとめだもの……で、どうしますか紅薔薇さま」
 「そうねぇ」
 面倒なのか紅薔薇さまは少し悩んでいる。
 「紅薔薇さまは常々、もう少し一般生徒と山百合会の距離が近くなると良いと言っていらっしゃるではありませんか」
 祐巳の言葉に、紅薔薇さまは顔を赤くする。
 ふっふふふ……。
 これは完全に実妹の特権。
 姉の愚痴や独り言を聞く機会は多いのだ。
 「そうね……行きましょうか?」
 元々、イベントが好きな黄薔薇さま、最近ノリの良い白薔薇さまも賛同する。
 そんなに激しくないという事で、由乃さんも令さまと参加。
 志摩子さんも以外に楽しそうに向かい。
 「祐巳ちゃん、さっ、行きましょう」
 祥子さまは、逆に祐巳を誘う。
 掴まれた手にドキドキしてしまう。
 山百合会の参加は突然だったから、グラウンドに戻ってきていた生徒たちから歓喜の悲鳴が上がる。
 祥子さまと踊る。
 横には紅薔薇さま、踊っている相手は突然の事にガチガチ。
 見ていて微笑ましい。
 見れば反対側の生徒も既に緊張気味。
 祐巳の次の相手は、その紅薔薇さま。
 「祐巳は凄いよね」
 「はっ?」
 パートナーが変わったとたん、突然言われて意味が分からない。
 「なに?」
 「私の望み理解して、こうして機会を作ってくれる。私は思っていても、参加するなんて考えてもいなかったから」
 お姉ちゃんの照れた顔に、満足して楽しんでいる事が分かる。
 良く考えれば、お姉ちゃんとこうしてフォークダンスをするのはこれで最後かもしれない。そうでなくても貴重な一回であることは確か。
 「楽しいよね」
 「そうね」
 お姉ちゃんは、祐巳の言葉ににっこりと笑った。
 そのまま上級生たちとのダンスが続く。
 「ごきげんよう、よろしくね」
 「はい!」
 ……。
 「あらら……もしかして気がついていない?」
 「はっ?」
 よく見てみる。
 「あっ!」
 繋いだ手を上に上げたところで思い出す。
 「音楽室の!?」
 「当たり、でも、もう少し早く思い出して欲しかったな」
 「すみません」
 もうすぐパートナーチェンジ。
 「仕方ないか……でも、そんな祐巳さんにはお仕置き。えい!」
 「ひゃぁぁ!」
 突然抱きつかれた!
 「ななななな!」
 「あはは、祐巳さん可愛いわね」
 繋いだ手を離し、笑いながらパートナーを移っていく静さま。
 祐巳は失敗したなぁと自分の記憶力を恨めしく思いつつ、抱きつかなくてもと隣の静さまを見た。
 この後は、問題なくダンスは進んだのだけれど。
 フォークダンスがよほど楽しかったのか。紅薔薇さまは祥子さまを連れて、この後の姉妹限定袴競争にまで参加された。
 「まっ、普段から山百合会と生徒たちとの距離を考えているような人だしね」
 そのわりに自分が出ると、生徒たちが萎縮しないかとか気を配りすぎでもある。
 山百合会の積極的な参加は、大会を盛り上げ。
 そのままの勢いで進行していく。
 三年生の扇の舞を横目に、祐巳は終わったばかりの大縄跳びから帰るところだった。
 「祐巳ちゃん」
 「祥子さま?」
 祥子さまが次の競技のために入場門で待機していらした。
 次の二年の種目は……。
 「祥子さま、借り物競争に出られるのですか?」
 「そうなの、種目決めの時に少しボーとしていてね。自分で入れてしまったのよ」
 それは珍しいというか、想像がしにくい光景だ。
 「?」
 なんだかジッと見られている。
 「あの、何か?」
 「いいえ、なんでもないのよ」
 何時もの祥子さまの笑顔。
 「頑張ってくださいね」
 扇の舞が終わり、出場と成った祥子さまに祐巳は応援の言葉を送った。

 グラウンドに向かいながら、祥子さまは隣を歩くクラスメイトから微笑まれる。
 「何かしら?」
 「いいえ、それにしても祐巳さん、祥子さんが敵だと分かっていたのかしら?」
 「そうね」
 本当に可笑しいと祥子さまも笑っていた。
 「あら」
 笑っていたが、フッと気に成った。
 「祐巳ちゃんの事、ご存知だった?」
 祐巳のことをクラスメイトも知っているのか気に成った。
 「あら、祐巳さん。結構有名人ですわよ」
 「そうね、紅薔薇さまの実妹というのもあるけれど、祥子さんとよく話しているのも見るし……」
 「山百合会関係者と皆、見ているわね」
 「でも、まだ誰の妹でもないのでしょう?」
 「あぁ、だから静さん。さっきのフォークダンスのときに抱きついたのかしら?」
 「祐巳ちゃんのあの悲鳴って、静さんが抱きついたの?」
 「見ている私は、抱きついたというよりも抱き締めたに見えたけれど」
 「それにしても、祥子さん、悲鳴声で祐巳さんって分かったの?」
 「えぇ、特徴ある声だったから」
 少し白い視線を送るクラスメイトの皆さま。
 「凄いわね……ねっ、ねっ、祥子さんは祐巳さんを妹にとか考えていますの?」
 クラスメイトたちはここぞとばかり聞いてくる。
 「ご想像にお任せしますわ」
 祥子さまは、慌てずにニコッと笑い。
 話を受け流した。


 「あっ、祥子さま。敵チームだったんだ」
 自軍に戻ったところで、祐巳は思い出した。
 「まぁ、いいか」
 敵チームでも、山百合会幹部や各人の部活の先輩には敵でも声援が上がっている。
 祐巳も味方の先輩たちと一緒に祥子さまを応援することにした。
 三組目に祥子さまが登場し、一際、大きな声援が上がる。
 スタートした。
 祥子さまは二番目にメモを拾った。
 「何かしら?」
 「さぁ?」
 山百合会の仲間として気に成るのか、志摩子さんは自軍の先輩ではなく祥子さまの方を気にしている様子。
 まっ、それは祐巳も同じなのだけれど。
 祥子さまは観客席から応援団の方からこちらに流れてくる。
 「あっ!」
 早くも見つけたのか、黄色チームの先輩が観客席に入って出てきた。
 「あぁ」
 志摩子さんの悲痛な声。
 「残念、祥子さままだ見つからないのかな?」
 「そのようね」
 難しい内容なのだろうか?
 「へっ?」
 なんだか視線が合う。
 ジッとこちらを見ているのは気のせい?
 ……。
 ……。
 見ていたら祥子さまの眉間にシワがよっていた。
 「ひぃ!」
 真っ直ぐ向かって来る。
 「祐巳ちゃん!来て」
 来てって?!
 敵チームの中に入ってきて祐巳を引きずり出す。
 「急いで祐巳!」
 「は、はい!」
 迫力に負け祥子さまと走る。
 応援席の声や音が五月蝿いほど激しい。
 そして、走りぬけ。
 一位には成れなかったけれど、二位でゴールした。
 「はい、リボンで髪を結んだ人。OKです」
 祥子さまがメモを係りに人に渡し、内容が公表される。
 ……てっ!?
 祐巳の頭の中に疑問文が溢れていく。
 「あ、あの、祥子さま」
 「何かしら」
 「お題……」
 あのお題なら難しい事はない。すぐに見つかるはずだ。
 「あぁ、だってメモを開いて頭に浮かんだの祐巳ちゃんだったから、確かにすぐに何人か見つけたけれど。私は祐巳が良かったのよ……そう言う事だからね」
 祐巳は固まっていた。
 そんな殺し文句言えたんですねと思いながら、ただ、呆然と祥子さまに手を引っ張られて応援席に戻った。
 その間、視界に蔦子さんや新聞部の人たちを見た気もするが、よく覚えていなく。
 だから……呼び捨てにされた事も気がついていない。
 記憶がハッキリするのは……。
 「祐巳さんの裏切り者」
 同じチームたちからの白い目線だった。
 「なんで?!」
 「だって、緑チームの祥子さまのお手伝いをしたからよ。ほら」
 志摩子さんはニコニコしながら、得点ボードを指差す。
 祐巳たちのピンクチームは、祥子さまの緑チームに逆転されていた。
 祥子さまの得点でこうなったとは思えないけれど……二位だしね。
 「……ごめんなさい」
 一応、謝っておく事にした祐巳だった。

 ただ、抜かれたといっても所詮は団子状態。
 優勝の行方は、最後のリレーにもつれ込んだ。

 そして……結果。

 「負けたぁぁぁ!」
 「ふふふ、勝った」
 体育祭後の帰りのコンビ二前。
 祐巳はお姉ちゃんとコンビ二に来ていた。
 「はい」
 「いただくわね」
 「くっそ〜」
 一般生徒たちばかりか山百合会幹部の皆さまにもお堅いイメージの紅薔薇さまだが、祐巳と実は賭けをしていた。
 勝った方が、肉まんを奢る程度の事だが、バイトをしていない高校生の財布にはなかなか厳しいものがある。
 しかも、ジュース付き。
 「あら」
 「あやや」
 夕立か、明るかった空が曇りだし雨が降り始める。
 気温が下がっていく。
 「涼しくなるね」
 「そうね」
 「そう言えば、来週だっけ。令さまたち二年生の修学旅行」
 「そうよ、だから、しばらく山百合会の仕事はお休み……それで、どうして例えが令なのよ」
 お姉ちゃんは、分かっているけれどって顔をして聞いてくる。
 「いいじゃない、別に令さまも先輩だし」
 「先輩ね……」
 お姉ちゃんは笑っている。
 「晴れるといいね」
 「日本が晴れてもね」
 「それもそうか」
 修学旅行の行き先はイタリア。
 日本が晴れても仕方が無い。
 イタリアの遠い空が、晴れるのを祈るしかない。
 「私としては、この長雨が早く晴れる事を祈っているわ」
 「長雨って……晴れたよ」
 所詮は通り雨、すぐに晴れる。
 「そう?まぁ、台風になるよりもいいかもね」
 「台風来るの?」
 「さぁ、どうかしらね」
 そう言って、お姉ちゃんは夕焼け空に歩き出し。
 祐巳も追った。

 「帰ろうか」

 「そうだね」



 祐巳は、紅薔薇さまではないお姉ちゃんと手を繋いで、家路を急ぐ。




 イタリア晴れるといいなぁ。






 タイトル決めたとき、祥子さまたちの修学旅行で書きだして体育祭が先だと気がついた愚か者です。
 はぁ、何してんだか……でも、静さまも出せたので少しうれしいところ。
 ここまで読んでくださった方に感謝。


                               クゥ〜
 


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