ごきげんよう、お姉さま方
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これは【No.3321】の個別版です。
「え〜コホン、これは令ちゃんから聞いた話何だけど、皆も知ってる通り、令ちゃんの家は道場をやっているのね。私は今まで気付かなかったんだけど、支倉道場って…出るのよ」
皆の様子を見ながらゆっくりと話す由乃。特に紅薔薇姉妹が震え出すのを見ながら内心笑いながら。
「支倉道場って、道場自体は新しく建て直したんだけど、戦前にも剣道場があったの。これは戦時中の話らしいんだけど、要はライバル同士がそれぞれ戦地に行く前の最後の試合として、2人だけで試合をしたんだって」
ここで一旦紅茶を飲む由乃。
「ライバルだけあって、一進一退の攻防を繰り広げていたんだけど、お互いに痺れを切らして勝負に出たの。2人が得意としていたのは『突き』だったんだけど、明日は戦地、ということで防具無し、木刀の真剣勝負だったんだけど、お互いにその事をわかっていながらも勝負に出たのが、運の尽き」
祐巳も瞳子も想像しながら聞いていたので「ひゃ〜」「やめてやめて」と小声で言っている。
「お互いの突きがそのまま喉に…」
「いやぁぁっ!」と叫ぶ祐巳
「……」瞳子は辛うじて声を出さなかったが、表情を歪めている。
乃梨子は小声で「うわ」と言った。
「ここからが本番」
と由乃が言うと静まり返った。
「詳しい事は解んないんだけど、突きっていうのは普通滅多なことでは決まらないから、一撃必殺みたいな感じなのね。更に悪い事にお互い近づきすぎた…」
静まり返る薔薇の館。
「結果、2人は亡くなったの。2人の親族は悲しんだけど、時代が悪かった…。2人が戦地に行かなかったことで周りから責められて……。」
結末を思い出し怒る由乃。
「責任を感じた2人の母親は、その道場で自殺してしまったの。それ以来夜な夜な道場で2人と、その母親が出るようになったの。令ちゃんの話では、2人の母親が何かを言って死んだそうなんだけど、出る時にそれが聞こえると言うの。始めて聞いた時は泣いたって言ってたけど、内容までは教えてくれなかったの。一番気になる所なのに!まあ、これで私の話はお終い」
なんだか中途半端な気もするが、紅薔薇姉妹には充分だったらしい。2人共泣いている。
「戦争が悪いのに…」
「親を残して逝くのもどうかと思う…」
などの意見もあったが2人目に続く…