ごきげんよう、お姉さま方
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【No:3321】【No:3323】の続きです。
「次は私の番ですね」と手を挙げたのは菜々であった。
「私もお姉さまと同じ、道場関係ですが、お姉さまとは違い、実体験した話です」
と、話し始めたが、口調はいつもより少し明るい位であった。
「あれは、私が小学校に入る少し前、剣道を始めてすぐの頃だったと記憶してます。あの頃の私は始めて持った竹刀に興奮して、竹刀と一緒に寝たりしてました」
怖い話だというのに、ほんわかとなる一同。
「姉三人いるからお下がりと思いでしょうが、それは買ったばかりの新しい竹刀でした。ある時、道場に一番乗りした私は、ふとした興味から、他の竹刀を振り回したくなり…まあ、子供のする事ですから竹刀を置くというより、投げ捨てた、というのが正しいかったと思います」
当時を思い出しながらゆっくりと、話す菜々。
先程の由乃の話を思い出し、震える紅薔薇姉妹。
特に表情の変わらない白薔薇姉妹。
興味津々の由乃、と三者三様。
「後から知ったのですが、私が振り回した竹刀は祖父の竹刀でした。その祖父の竹刀を振り回して少し経った時、別の竹刀の音が聞こえたので、姉か誰かが来たんだなと思って振り向くと、黒っぽい何かが私の竹刀を持っていました」
まっくろくろすけ?と思った乃梨子は危うく突っ込みそうになりました。
「私はその時、怖いという感情ではなく、『私の竹刀を返せー』と 言いながら取り返そうと思って竹刀で叩きました。叩いた筈なのに手応えもなく、というよりすり抜けて当たりません。それでも私は買って貰ったばかりの竹刀を取り返そうと躍起になってました。その内祖父が来て『何をやっておるか!菜々!』と怒られると、私は泣きながら『この黒いのが私の竹刀を取った』と言うと、祖父は『お前しか居らんぞ』と言うので振り向くと、床に竹刀が在るだけでした」
ここまで言うと由乃が、『何かの霊?』と聞くと、
菜々は『有馬の道場では事件や事故はありません。ついでに言うと誰も死んでません』と言うと、
薔薇の館の住人達の間で騒然となった。
あるものは「座敷わらしかな?」と考えたり、又ある者は「お化け怖い」と言ったり言わなかったりした。
最後に菜々が、
『さて、私は一体何と闘ったのでしょう?』
と言って菜々のターンは終了した。