【3427】 祐巳の独占禁止!放し飼いされていたた、たぬーーーーーき  (星灯 2011-01-01 23:02:30)


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ごきげんよう、福沢祐巳です。ネコミミとしっぽが生えてきました。
えっ? 何を言っているのか分からない? こんな事、リリアンじゃ日常茶飯事!

という訳で、今更慌てるでもなく私は、いつもの様にリリアン学園へと向かうのでした。

……が、

どうやらこんな事態に慣れているのは私だけらしく、クラスメイト達や先生方はとにかくもう大騒ぎ。うぅ、みんなの視線が痛い……






『祐巳の独占禁止! 放し飼いされていた…… た、たぬーーーーーき!?』






―――体育のお時間。


リリアンではいわゆる指定の体操着というモノが複数存在する。ブルマにスパッツ、それにハーフパンツ。
基本的にはその中から好きなのを選んで良いとは言われているが、そこは乙女なお年頃。ブルマやスパッツだとやっぱり恥ずかしい。

色気が無いと一部生徒(主に白薔薇さま)に不評を買っているが、ハーフパンツが此処の主流だ。
だから、私の体操着袋にも本来ならハーフパンツが入っているはず、なんだけど……

in ブルマ。

一部生徒(主に白薔薇さま)に大人気のアイツの姿が其処には在った。
色は黒だ。お姉さまがこれを私に穿かせようと必死になっている姿を思い出す。碌な思い出がない。

というか、何故にブルマ? 私のハーフパンツは何処? 途方に暮れつつ、一応これも体操着だからと仕方なくブルマを穿く。


ネコミミブルマ女子高生(しっぽ付)。


なぜだろう、ひどくアブノーマルな格好をしている様な気がするのは。しかもこのブルマ、なにやらサイズが小さい。
だから動くたびに食い込んで痛いし、お尻のラインがくっきりと浮きでてしまう。

「ナイス! ナイスな格好よ、祐巳さん!!」

はぁはぁ言いながら一心不乱に写真を撮る蔦子さん。

「ちょ、恥かしいから撮らないでよ」

そうやって嫌がる姿も彼女にはそそるらしく、激しさは増すばかり。アングルもどんどんきわどく……
って、蔦子さん! 流石にそれは犯罪だからね!? 友達を警察に突き出したく無いからほんとにやめてっ!!

「そうね、犯罪的行為は慎むべきだわ」

志摩子さん、はなぢはなぢ。

「ところで志摩子さん。 さっきから気にはなっていたんだけど、そのハーフパンツに縫い付けられている『福沢』って名札は一体……?」
「コレ? だってコレは祐巳さんのだもの。名札が付いていて当然でしょ」

なぜ穿いている?!

「ちなみにそのブルマは私のだから、授業が終わったら返してね。あ、洗わなくても平気」

なぜ穿いている(私が)?!

というか、えっ、本当に志摩子さんの? だったら凄いショックなんだけど。

「ええ、私のよ」

うわぁ…… 志摩子さんったらナイスバデーなのに、私よりもサイズが小さいだなんて。

「いや、それは祐巳さんに着せる為に買」

ん? なんで蔦子さんの口を押さえているのかな、志摩子さん?

「ううん、何でもないわ。ところで祐巳さん、もし良かったら今夜二人きりでじっくりと…… って、ぐはぁ!!!」

突然の体当たり。それに耐え切れずに吹き飛ぶ志摩子さん。ついでに蔦子さんも。

こんな事するのは……

「Yes、私! 島津由乃、参上!!」

由乃さん登場。凄いや、嫌な予感しかしない。

「私が来たからにはもう、志摩子さんの好きにはさせないわよ!!!」
「うふふ…… それはどうかしらね?」

にらみ合う両者。飛び散る火花。騒然とする校庭に煽るクラスメイト達。そしてそれを激写する蔦子さん。
なんとも形容しづらい空気が当たり一面に満ちており、もはや授業の事など誰も覚えていない。

ていうか先生、止めてください。

「そんなにマラソンがしたい? この冬空の下で?」

止めなくても良いです。

「さぁ、祐巳さん!」 「私と志摩子さん、どっちを選ぶの!?」
「えっ、なにをどう話し合ったらその結論に達するの?」

というか、なんで私の両腕を掴んでいるの? いや、ちょ、引っ張らないでーーー!!!





―――お昼休み。


「いやあ、今日の授業は特に酷かったよね」

お弁当を膝に抱え、あははと笑う桂さん。

「いやいや、なんか騒動の原因が私っぽいから笑えないんですけど」
「なんかもなにも、どう考えたって祐巳さんが原因じゃないのさ」

まったく鈍いんだからと。リリアンで何かある都度、桂さんからそう言われる。
私としては何か言い返したいのだが、他の人も同じような事を言ってくるものだから言い返しにくい。

「あぅ…… と、ところで二人は何処に行ったのかな?」

いつもなら一緒の志摩子さんと蔦子さんが居ない。

「あぁ、あの二人ならさっき撮った写真を現像しにいったわよ」

行動早いな!

「しかしなぁ…… 毎回思うんだけど、私なんか撮っていったいナニが楽しいんだろ?」
「人気者の宿命だと思って諦めなさいな」

その人気ってのがいまいちよく判らないのだけどね。

「そんなんだから鈍感だって言われるの…… って、またタマネギ残して!」
「あはは、ごめんなさいお母さん」

桂さんは時々お母さんみたいになる。そう言うと怒るけど。

「誰がお母さんか! もう、好き嫌いしていると大きくならないんだからね!(胸が)」
「ふーんだ。小さい方が好みだって人もいるんですから!(背が)」

それにほら、今の私って猫だからタマネギを食べちゃいけないのよ。

「あら、それは残念。折角おやつに今話題の高級チョコレートを買ってきたんだけど、猫じゃ食べられないもんねぇ」

にやにやと笑うその顔が実に嬉しそう。ドSだ。

「うぅ…… 桂さんのいじわる」
「好き嫌いしなければ食べられたんだから、自業自得でしょ」

あぁ…… 私のチョコレートがぁ……





―――掃除のお時間。



今週、私が掃除を担当している場所は音楽室。

「また随分と可愛らしい格好してるわね」

そう、リリアンの歌姫こと蟹名静さまと一緒に掃除する週だったりする。

「静さまって猫がお好きなんですか?」
「ううん、祐巳ちゃんが好き」

とんでもない事をさらりと言ってくれちゃってまぁ、この人は。

「だから! そういう誤解を招くような発言は慎んでくださいと何度もお願いしてるのに」
「あら、私は本気なのに」

さも当たり前の事を言ったかのように真顔の静さま。

「そんなところが勘違いれやすいんですってば! ……あれ? そういえば他の人達は今日もお休みなんですか?」
「私達に気を遣ってくれたのよ」

静さまの仰ってる事は良く分からないが、私と静さまの二人だけで掃除する事は多々ある。

今日もそうだ。

まぁ、こう言った冗談を気軽に言い合えるのは二人きりで居るからこそなのだろう。
その点について私は、不謹慎だとは思いつつ、休んだ人達に対して感謝してしまう事が。

自然と笑みが浮かんでくる。

「祐巳ちゃんてば、なに一人でニヤニヤしてるのよ?」
「あ、えっと…… 静さまとふたりきりなのが嬉しいな、なんて……」

うわぁ! なに言ってんだ私!!
やばい、流石に恥かしい。顔が火照ってくるのが分かる。

ところが、

「……!?」

なぜだか、あ然としている。そしてため息一つ、

「……祐巳ちゃん、貴方こそ誤解を招くような発言を慎んだほうが良いわ」

どういう訳か、静さまは私の言葉を勘違いして受け取ったらしい。
私としては心の底からの本心なのだが。言葉って難しい。

それから私達は、何気ない会話を交わしながら音楽室の掃除をした。

今日の主な話題は【志摩子さんの胸の大きさ】についてであり、私の答えが【和食は身体に良い】、静さまの答えが【白薔薇さまに揉まれている】だった。
流石に静さまの答えは無いだろうとは思いながらも、完全に否定しきれないのは白薔薇さまの人徳かしら?

なんだかんだで、30分くらいがたっただろうか、

「ふぅ、やっと終わりましたね」
「後片付けは私がやっておくから、先に上がって良いわよ」

感謝の言葉と挨拶を述べ、私は廊下に出ようとドアに手をかけた。

すると、

「ねえ祐巳ちゃん、 私の妹にならない? もしダメなら恋人でも構わないわ!」
「ふふ、前向きに善処しておきます」

お姉さま直伝のスマイルをビシッと決めて、私はドアを開く。
まったく…… 最近の静さまったら、白薔薇さまに似てきてる様な気がするのよね。

「……どうして私は、こんなに鈍感な人を好きになったのかしら?」

静さまがなにかを呟いたみたいだが、ドアの閉まる音に阻まれ、私の元には届かなかった。





―――下校のお時間。


波乱に満ちた一日も終わりに近づき、疲れた身体を引きずりながら私は帰途につこうとしていたのだが、

「祐巳ーーーっ! 祐巳はどこーーーっ!! ねぇ、ゆーーーみーーー!!!」

……どうやらもう一騒ぎありそうだ。

「お姉さまっ!?」
「はっ!? 祐巳!! 祐巳なのね…… って、きゃぁぁぁぁぁぁ♪」

ちょ、いきなりはなぢだして奇声を発しないでください!

「うふふ…… 祐巳、その格好、とても素敵」

何故に片言。

「祐巳分ゼロの今の私にとって、ネコミミは反則よ!!」

いったいなにが反則なのか分からないが、じりじりとこちらに近づいてくるお姉さま。はぁはぁしている。

「さぁ! 今から二人きりで禁断の世界へ旅d 「そうはさせにゃいわ!!」

そ、その声は!? ……にゃ?

「Yes、私! 水野蓉子、参上!!」
「……流石お姉さま、もう復活しやがりましたか」

お二人の間になにがあったのだろう。

「はっ! お姉さまがここに居るという事はもしや、あの二人も近くに」
「あぁ、聖と江利子なら薔薇の館に閉じ込めたままよ」

本当になにがあったの!?

「兎も角、あの二人の事は置いておきましょう」
「そうね祥子、今は……」

え、なんで私の両腕を掴んでいるんです?

「祐巳ちゃんは私が貰うんだにゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「何度も言ってますが、祐巳は私のものですわぁぁぁぁぁぁ!!」

だ か ら 引っ張らないでーーー!!!

.Fin


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