【3502】 リターンズパエリアをかじる事  (bqex 2011-05-05 22:52:13)


【No:3495】【これ】【No:3507】【No:3514】【No:3522】【No:3542】
■別のキーを引きに来てパエリアを引いてしまった件■


鹿取先生「ごきげんよう」

蓉子「ごきげんよう」

鹿取先生「誰得SSの『パエリア』シリーズ二回目です。がちゃがちゃSS掲示板のキー職人さんは一体どれだけ『パエリア』好きなのかしら? 皆さんはどれくらいのペースで『パエリア』を食べてるのかコメントカモン」

蓉子「『誰得』って自覚があるならやめてくださいよ! 管理人さんが大変じゃないですか!」

鹿取先生「一応、待ってましたってコメントくれた方もいたので。あ、じゃあ『名無しさん得』か」

蓉子「……このSSの作者に好意的にコメントくれる方って基本的に『名無し』か『通りすがり』が多くありませんか?」

鹿取先生「ふっ、自作自演乙とでも? 冗談じゃないわ。そんな面倒臭いことをこの怠け者のうp主がいちいちやるわけがないでしょう?」

蓉子「怠けないで仕事してください」

鹿取先生「例のイベント云々とかコメント頂きましたが、停電も節電も心配ない秋にしましょう。いいよね?」

蓉子「『いいよね?』 ってどこの誰に聞いてるんですか? 自分で言い出したことなんですから責任とってくださいよ!」

鹿取先生「じゃあ、責任を感じて『パエリア』をうpするということで」

蓉子「全然責任取ってませんけど」

鹿取先生「だって。最近書き手の皆さんがどっか行っちゃって寂しいんだもん」

蓉子「40手前の独身女性が『〜だもん』って言っても全然可愛くありませんから! このご時世いろいろあって皆さんはいろいろ忙しいんです!」

鹿取先生「誰が行き遅れよっ! 失礼な、あなただって20年後にはこうなってるのよっ!!」

蓉子「ここでこんな事しないで婚活にいってくださいよ。読んでる皆さんも、増長させないでくださ〜い」



■我、妄想ヲ開始スル■


蓉子「『ストーリーの作り方』とおっしゃいますが、それは書き手に委ねるべきではありませんか?」

鹿取先生「ふっ、男子を見た瞬間にカップリング構成から受け攻めのタイプ、本番のシチュエーション及びピロートークまで妄想できる腐女子のあなたと違って普通の人はまずここでつまずくのよ」

蓉子「だからなんで私=腐女子確定なんですか! BLなんてやってませんって!」

鹿取先生「B級なうp主もBLは苦手なので突っ込まれても答えられないのでBLについては他所で別の人に聞いてね」

蓉子「本当に苦手なんですか?」

鹿取先生「話を戻してB級流ストーリーの作り方を紹介していきましょう。前回、『キャラクターの整理』をすると青田先生が説明してくださったけど、初めてのキャラを使って書くときはその延長で『もし、こういうシチュエーションにこのキャラクターが置かれたらどうするのか?』を原作から読み取り、推測して妄想するということをやってみてちょうだい。具体的にはこんな感じね」





妄想例

サンプルキャラクター:福沢祐巳

・もしお財布を拾ったら?
  交番などしかるべき場所に届けに行く。

・もしファンからプレゼントを貰ったら?
  はにかみながら受け取る。
  困るものは処分できずに押入れに入れっぱなし。

・もし知らない異性から突然告白されたら?
  一度お断りはもはや定番パターン。
  祥子、瞳子、祐麒、聖あたりはもちろん、柏木まで出てきちゃう。
  結局付き合う。柏木と(だいたい原作の先生のせいww)


サンプルキャラクター:藤堂志摩子

・もしお財布を拾ったら?
  落とし主を探して届けてくれる。
  交番に行ったほうが早かったことは後々由乃に指摘されて気づく。

・もしファンからプレゼントを貰ったら?
  喜んで受け取ってくれる。
  よくわからないものまで受け取ってしまい、使い方を聞いて乃梨子を困惑させる。

・もし知らない異性から突然告白されたら?
  ものすごく気を使って断る。
  それが却って誤解されて一悶着ある。


サンプルキャラクター:島津由乃

・もしお財布を拾ったら?
  交番に届けるだけなのになぜかイベント化しそう。
  案外どこでどういう状況で拾ったのかという確認は怠らない。

・もしファンからプレゼントを貰ったら?
  もらえるものは貰っておく。
  どんなに迷惑なものでもうらやましがられたら徹底的に自慢する。
  でも、心底迷惑なものは結局令に押し付ける。

・もし知らない異性から突然告白されたら?
  止めてもらうのを前提に令に相談するが、応援されてしまう。
  意地になって付き合うが、結局うまくいかない。
  最後には逆ギレして別れる。






鹿取先生「これはあくまでうp主の主観なので、彼女たちをどう見ているかによって結果が変わるので違っても気にしない」

蓉子「どうしてこうなった……」

鹿取先生「『もし、寺の娘だったら?』、『もし、新入生歓迎会で晒し者にされたら?』、『もし、ヘヴィな出生の秘密があったら?』、『もし、「僕と契約して魔法少女になってよ」と聞かれたら?』など話のネタになりそうな『もし』を思いつくまま増やしてみると、やってるうちに話ができる、はず」

蓉子「一人のキャラしか浮かばないんですが!」

鹿取先生「『もし』の内容は書き手の自由なので、もっとぶっとんだ内容でもOKです。『もし、リリアンをロアナプラの暴力教会が運営していたら?』、『もし、山百合会ではなく護廷十三隊のメンバーだったら?』、『もし、薔薇さまではなく一子相伝の秘拳を継承することになったら?』などいろいろ試してみましょう」

蓉子「先生はがちゃSがどっちの方向に行くのを望んでいるんですか!?」

鹿取先生「それは【ピー】全力批判?」

蓉子「初心者に厳しすぎやしませんか? せめて『もし、リリアンではなく桜が丘高校に通っていたら?』とか『もし、山百合会ではなく桜花会のメンバーだったら?』ぐらいから始めましょうよ」

鹿取先生「あら、水野さん、自ら例を挙げるだなんてノリノリね」

蓉子「先生の例がおかしすぎるから突っ込んでいるだけです。これを読んだ人がぶっとんだSSしかあげなくなったらどう責任を取るんですか」

鹿取先生「それはそれで面白いからいいんじゃない」

蓉子「それは私の友人の台詞です。うう、先生はそんなお方じゃないと思っていたのに」

鹿取先生「こういう事をやっているうちにストーリーになりそうであればそのまま進めちゃってOK。設定をいじるときの注意点としては【1】変更点によって起きる影響は物語に登場しなくても設定する【2】いじる設定や登場させるオリキャラは最低限に、ぐらいかな」

蓉子「【1】は前回青田先生が語ってましたが、【2】は読み手が混乱するからですか?」

鹿取先生「それが第一の理由ではあるけれど、読み手は覚えることが多くなるとそれだけで読まないからそれを防止するため」

蓉子「うっ、見たくなかった生々しい現実を見せつけられた気分です」

鹿取先生「オリジナル同然の設定でも多くの読み手を引きつけられるような書き手であれば何を書いても大丈夫なものだけど、こっちはB級なんだからただでさえ読んでもらえるとは限らないの。それをそんな面倒臭いことをやって誰にも読まれなくなってみなさい。書いてて励みがなくなって萎えるに決まってるんだから」

蓉子「もう、その辺は結構です」

鹿取先生「クロスオーバーもこの要領で作ると案外簡単に作れたりするの。その時は違和感なくつなぐためにオリジナルの設定を捏造するわけだけど、両方が影響を受けてしまう事を忘れないように」

蓉子「あ〜、こうしてまた一つパラレルワールドが誕生するんですね」

鹿取先生「『マリア様の野球娘。』(【No:3146】から)の例を見ると『マリみて』と『大正野球娘。』(原作小説版)は設定に多くの共通点があって繋ぎやすい話だったわね。『小笠原祥子さんは小笠原晶子さんと岩崎荘介さんの孫』、『祐瞳姉妹フラグは福沢さんを取り残して松平さんが帰還することで立つ』、『三田さんは時空を管理する何らかの存在と関わっている』など大きな変更点もあったけど、それ以外は『原作の設定を拾う』『原作を壊さない範囲での妄想設定を捏造』で対応し、それぞれの世界観をなるべく保つように配慮してあったのよ」

蓉子「(ボソッ)あそこでミスしてなければ」

鹿取先生「う、うp主が息をしてない!」

蓉子「って、書き続けてるんですからピンピンしてますよっ!!」

鹿取先生「逆に『もし』を作っているうちに原作からはうかがえない設定を必要とする場合は、原作やキャラクターを崩壊させない程度であれば捏造しちゃってもよし!」

蓉子「捏造を勧めないでくださいっ!」

鹿取先生「SSなんて妄想と捏造の産物なんだからある程度は許してよ。例えば【No:2963】の場合、原作の世界観から導き出せるような設定や、原作に明記されている設定はそのまま拾って『島津さんは料理下手』はいいとして、有馬さんは『料理上手』なのか、『料理下手』なのか、という原作からはうかがえない部分を設定する必要が出てきたわけ」

蓉子「そこで話を捨てたり変えたりすればよかったものを、なぜ上げてしまったのでしょう?」

鹿取先生「このSSが書かれたのは『ハロー グッバイ』が最新刊だった頃で、『リトル ホラーズ』はまだ発売されていなかった。そこまでの間に彼女が登場したシーンを検証してみると『黄薔薇パニック』において食べ方が上手な事は明記されているけれど、彼女自身の料理の腕前については全く書かれていなかった。つまり、理論上『有馬さんは料理上手』と設定しても『有馬さんは料理下手』と設定しても原作とは矛盾せず、また、世界観が大きく揺らぐことになはらない」

蓉子「いきなり屁理屈がきましたね」

鹿取先生「そこで普通は『有馬さんは料理上手』と設定されていることが多いのにもかかわらず、このSSでは都合のいい『有馬さんは料理下手』と設定し、話が展開されたというわけ」

蓉子「原作で料理上手と設定されたらどうするつもりなんですか?」

鹿取先生「そこはそこで割りきって」

蓉子「違和感が出るとは思いますけど」

鹿取先生「この他にもこのSSの構成は【A1】紅薔薇姉妹のお弁当交換【A2】白薔薇姉妹のお弁当交換【A3】黄薔薇姉妹のお弁当交換【B】黄薔薇姉妹会議【ヤマ】黄薔薇姉妹の逆襲という流れがあって、更に各パートも【A】【B】【ヤマ】と展開しているというB級流の基本的なものです。気になった人はどうぞ」

蓉子「結局セルフCMですか」



■もし、では話が作れなかったら?■


鹿取先生「ここまで説明してきてなんだけど、『もし』から話が作れないときの方法を説明しましょう」

蓉子「今までのはなんだったんですか?」

鹿取先生「別の方法、それは『シナリオ』を用意してキャラを当てはめていくという手段よ」

蓉子「その『シナリオ』はどこから持ってくるんです?」

鹿取先生「『シナリオ』は書き手が実際に体験した話や、どこかで誰かが話しているのを小耳に挟んだ話、ふと思いついてしまった話などいろいろ。携帯電話でも手帳でもいいからすぐに話の筋を記録してストックしておくの。そういった話の登場人物をキャラに演じさせていけばいいのだけど、ここまでに説明してきたキャラの整理がきちんと出来ていないと詰まったりするわけ。逆にキャラが整理されているとそのキャラらしい方向に話が転がっていくようになるわ。俗にいうところの『キャラが勝手に動く』というのはこういうこと。まあ、そこまで行くのは結構妄想力がついてからの話なので、慣れないうちはキャラを片っ端から当てはめて違和感がなければOK、ダメなら修正で」

蓉子「なんだか手間のかかりそうなことですね」

鹿取先生「こうして説明するとものすごく大層なことをやっているような印象を持たれてしまうので、実例してみましょう」





基本シナリオ

A「これから紙に書いて見せるやつ、歌ったら負けね」

A、Bに対して紙を見せる。
紙にはこう書いてある。

『♪は・か・た・の・し・お』

B「負けた……」





シナリオに当てはめて書いてみた例1

 雨の日の薔薇の館。
 その場には江利子と聖しかいなかった。

「あら、セロテープが無くなってしまったわ」

「もう買い置きもないね」

 購買に行けばセロテープは売っている。
 しかし、外の雨足は強く、セロテープのためだけに薔薇の館を出るのはためらわれる。

「仕方ない。勝負して負けた方が行くことにしましょう」

 と、江利子が言い出す。

「勝負? ジャンケン」

「ううん、これから私が紙に書いて見せるものに反応して歌っちゃったら聖の負け。歌わなかったら私の負け」

「何、それ」

 訝しげに見つめる聖から隠すように江利子はプリントの裏になにやら書きだした。

「いくわよ、はい」

 江利子はプリントの裏を見せた。

『♪は・か・た・の・し・お』

「……」

 がくっ、と崩れた聖はプルプルと全身を震わせて笑った。
 そして、しばらく笑った後にこう言った。

「笑ったけど、歌わなかったから江利子の負けね」

 舌打ちしながら江利子はビスケットの扉から出ていった。





シナリオに当てはめて書いた例2

 雨の日の薔薇の館。
 その場には令と祥子しかいなかった。

「あれ、セロテープが無くなっちゃった」

「もう買い置きもないわよ」

 購買に行けばセロテープは売っている。
 しかし、外の雨足は強く、セロテープのためだけに薔薇の館を出るのはためらわれる。

「仕方ない。勝負して負けた方が行くことにしよう」

 と、令が言い出す。

「勝負?」

「うん。これから私が紙に書いて見せるものに反応して歌っちゃったら祥子の負け。歌わなかったら私の負け」

「一方的ね」

 訝しげに見つめる祥子から隠すように令はプリントの裏になにやら書きだした。

「いくよ。いい?」

「いいわよ」

 令はプリントの裏を見せた。

『♪は・か・た・の・し・お』

「……」

「……」

「……だから、何?」

「ごめんなさい、買ってきます」

 令は大人しくビスケットの扉から出ていった。





シナリオに当てはめて書いた例3

 雨の日の薔薇の館。
 その場には由乃と祐巳しかいなかった。

「あらら、セロテープ無くなっちゃった」

「もう買い置きもないんだよね」

 購買に行けばセロテープは売っている。
 しかし、外の雨足は強く、セロテープのためだけに薔薇の館を出るのはためらわれる。

「仕方ない。勝負して負けた方が行くことにしましょう」

 と、由乃が言い出す。

「勝負? いいけど何で?」

「うん。これから私が紙に書いて見せるものに反応して歌っちゃったら祐巳さんの負け。歌わなかったら私の負け」

「ええっ、なんかそれって公平なの?」

 訝しげに見つめる祐巳から隠すように由乃はプリントの裏になにやら書きだした。

「では……勝負!」

 由乃はプリントの裏を見せた。

『♪は・か・た・の・し・お』

「うわっ、しまったっ!」

 頭を抱えて祐巳はその場にしゃがみ込み、少し間をおいた後。

「行ってきます」

 ビスケットの扉から出ていった。
 出て行くときにあのCMソングを口ずさんでいたのは言うまでもない。






蓉子「これは酷くシュールな例ですね。どういう日常を過ごしてるんですか」

鹿取先生「それはや――なんでもない。とにかく、キャラに当てはめていく過程で『マリみて』の世界に『シナリオ』を組み込むために『勝負する』ことが必要なシチュエーションを前半で用意して、後半に『シナリオ』を配置。キャラの整理でやったことを応用して『もし、「♪は・か・た・の・し・お」と書かれた紙をいきなり見せられたらどう反応するか?』を妄想して設定、実際に書いてみたということよ。どれが面白いか、これを更に膨らませるのか、他に含めるのか、このまま行くのかなどの判断をして、最終的に完成ね」

蓉子「これはボツにするべきだったと思いますけど」

鹿取先生「あくまで例ということで。それでも書けないという場合には最後の手段、『テンプレート』をご用意しました。ご自由にお使いください」

蓉子「そこまでして書かせないでくださいっ!!」





テンプレート1

――ピンポンパンポーン
『【キャラの所属】の【キャラ名】さん、
【キャラの残念なところ】【キャラ名】さん、
【キャラのガッカリなところ】【キャラ名】さん、
至急【呼び出し場所】まで来て下さい』





テンプレート1使用例

――ピンポンパンポーン
『高等部三年椿組の水野蓉子さん、
有○弘行より毒舌な水野蓉子さん、
絶世の美少女の引き立て役になっている人並みの美少女水野蓉子さん、
至急職員室まで来て下さい』





テンプレート2

 ホームルーム。
「皆の中に【残念なことをした】者がいる。
正直に言えば先生は怒らない。
皆、目をつぶって。
そして、正直に手を上げなさい」
 【キャラ名】、手を挙げる。
「【キャラ名】!?」
「【名前を呼ばれた感想】」





テンプレート2使用例

 ホームルーム。
「皆の中に学校中のギンナンを持ち帰ってしまった者がいる。
正直に言えば先生は怒らない。
皆、目をつぶって。
そして、正直に手を上げなさい」
 志摩子、手を挙げる。
「藤堂!?」
「嘘を付きましたね。主よ、嘘付きな先生をお赦しください」






蓉子「これ、使いどころないじゃないですか」

鹿取先生「テンポよく並べていけばそこそこ面白くできなくもないけど」

蓉子「いりませんよ!」

鹿取先生「こういう感じでB級SSは誕生しています。皆さんも素敵なB級SSをガンガンうpしてくださいね」

蓉子「他の人のSSをB級って言わないでくださいっ! B級なのはこのSSの作者だけじゃないですかっ!」



■実際に書いてみた■


鹿取先生「それでは、ただいまよりB級SSをうp主に書かせます。普段は書いてないことも書かせますので注意してみて読んでね」

蓉子「背伸びしてでもA級を書いてください」






 今回は2011年度本屋大賞受賞の『謎解きはディナーのあとで』とのクロスオーバーです。
 それっぽいシーンを『マリみて』キャラに演じさせます。
 もちろん『謎解きはディナーのあとで』のネタバレがあるので未読の人はうっすら目で通り過ぎちゃってください。

『謎解きはディナーのあとで』解析

あらすじ
宝生麗子が解決できない事件を毒舌執事の影山が解決してしまうコメディ。

主要登場人物

宝生麗子
主人公。財閥令嬢ということを隠している刑事。無能ではないが、謎が解けずに馬鹿にされてキレる。
「判ったわ。それじゃ詳しく話してあげる」「だいたい、あたしのどこが節穴だっていうのよ!」

影山
宝生家に仕える執事。麗子の抱える事件を話だけで解決するが、推理に確信を得ると麗子を馬鹿にする。
「失礼ながら、お嬢様。ひょっとしてお嬢様の目は節穴ですか?」

風祭警部
主人公の上司。はっきりいって前座として場を温める以上の役割は感じないのでここにわざわざ書くまでもない。


 『お嬢様』と『執事』だが、『マリみて』で演じる場合は『お姉さま』と『妹』に置き換えたほうがやりやすいので『お嬢様』にはこだわらないでキャスティング。
 『妹にバカにされキレる姉』と『姉を馬鹿にできる妹』の組み合わせに適合し、かつ、中等部に在籍し現場に行けないという条件を満たす、由乃&菜々姉妹を採用する。
 風祭警部はミスリードを行う前座としてそのシナリオにあったキャラをその都度採用する。



《本日のランチはパエリアでごさいます》(←タイトル。通常はガチャで引いたキーを採用)



【A】
 薔薇の館で皆でお茶を飲んでいる。
 祐巳さんと祥子さまが雑談をしていた。

「いや〜、この前コメもらってしまい、うp主はB級じゃないんじゃないって、お褒めの言葉をいただいてしまいました」

「まあ、このSSの作者も所詮人の子、褒められると照れるのね。でも、素直にコメントすればいいのに、いちいちひねくれたコメントをするのはいかがなものかしら?」

「お姉さまがそれを言いますか!」

 由乃はそれを聞きながら何とか釈然としない何かを感じていた。

「100票を超えたSSを3本以上持ってるとB級じゃないんだそうです。投稿数もこの直前まで151本になりますし」

「あら、このSSの作者も頑張っているのね。でも、もう少し私を活躍させてほしいわ」

「たまには姉妹で……で、デートなんかしたいですよね」

「このSSの作者では嫌な予感しかしないのだけど、デートはしたいわね」

 そして、デートの話で盛り上がった後会議になってしまったのだが、由乃はその直前の雑談の内容が気になった。
 しかし、漠然と抱いているだけのモヤモヤを祥子さまにぶつけるわけにはいかない。
【B】
 令ちゃんがいないこともあって、そのまま家には帰らずぶらぶらと校内を歩いていると菜々と出会った。

「ごきげんよう、由乃さま」

「ごきげんよう、菜々」

 菜々は尋ねた。

「あの、由乃さま、何かあったんですか?」

「別に、あなたに話すまでのことではないのだけど……このうp主ってB級なのか違うのかってよくわからなくて……」

 はあ〜っ、と由乃は溜息をつく。

「由乃さま、それでは要領を得ません。何をどう基準にB級かB級ではないのかを判断するのか私に詳しくお話いただければ、私なりの考えをお伝えできるかもしれません」

「それもそうね。いいわ、話してあげる」

 由乃は薔薇の館での雑談の内容を話した。

「どう? 何か思うことはある?」

「失礼ながら、由乃さま。本当になんでもよろしんでしょうか?」

 強く菜々は念を押す。

「ええ、どんなことでもいいわ」

「それでは、率直に思うところを述べさせていただきます」

 正面で聞いている由乃に向かって菜々はストレートに言った。

「失礼ながら、由乃さま。この程度のことに丸め込まれてのぼせあがるだなんて、由乃さまは馬鹿なんじゃありませんか」

 深呼吸をして、十までゆっくりと数えて、頭に上った血を下ろしてから由乃は言った。

「人のこと馬鹿にしてっ! あなたねっ、高等部の先輩を捕まえて馬鹿呼ばわりってどういう了見よっ!! 中学生に馬鹿にされるだなんてありえないっ! こんな話、聞いたことがないっ!」

「あの、お気を悪くなさったのでしたら申し――」

「もういいっ、あなたに話したのが失敗だったのよっ! 知らないっ!」

 くるりと背を向けて立ち去ろうとした由乃だったが、三秒後、慌てて振り向いて、まだその場に立っていた菜々に向き直った。

「どうなさいました? まだ、なにか私にご用でしょうか?」

 憎いほど冷静に菜々は聞く。

「あなた、私を馬鹿にしたってことは、このうp主がB級かどうか根拠を持って言えるということね?」

「はい、もちろんです」

 しばし考えた後、由乃は屈辱的な台詞を口にした。

「菜々、私にもわかるように説明して頂戴」

「わかりました、由乃さま」

【ヤマ】

 菜々はパソコンの前に移動し、ブックマークしてあるがちゃがちゃSS掲示板にアクセスした。

「まず、総得票数で競うのはある程度目安にはなりますが、一人一票しか投票できないシステムではありません。明らかに『笑い』という場合は『笑い』票しか入れませんが、はっきりと定義できないような話であれば『萌え』と『笑い』に一票ずつ入れるというケースもコメントからうかがえます。また、稀に間違って押されてしまうケースもあります」

 たしかに、過去のコメントでそういうことがあったというのを見かけたことがある。

「まあ、票を盲信してはいけないということね。そういえば交流掲示板だったか、某氏のSSだったか忘れてしまったけれどその手の話題を読んだような気がするわ」

「さすが由乃さまは造詣が深い」

 歯の浮くようなお世辞を菜々は言うが、それが先ほどの馬鹿にしたことの埋め合わせにはならない。

「でも、このうp主は何を基準に『上げるSSは必ず大ヒット』だなんて言い張るのかしら?」

「多い得票=大ヒットであるならば、少ない投票=ハズレです」

「はあっ? 何を言っているの、票はアテにならないって自分で言ったじゃない」

 由乃は菜々を睨みつけるが、菜々は全く動じない。

「そこが祐巳さまに丸め込まれそうになったところです。票は簡単に入れることが出来るのにもかかわらず、存在を忘れられたかのように票が入らないということは、間違ってでも投票する価値もない、投票すらしたくもないという駄作です。名前を挙げられた他の作家さんとの最小得票数を比べてください」

 指示されたとおり、由乃は総得票数を昇順(少ない順)で作者ごとに検索してみた。

「うわ、名前を上げられた中でこのうp主の最低得票数がワースト1! ただしうp時点での話!」

「フォローも流石です、由乃さま。このうp主は『必ず大ヒット』ではないんです。ここから先は推測ですが、本人はコテハンに引っかけてB級と言っていただけに過ぎす、スルーすればいいのにこんなSSを書いてしまう辺りが人間としてB級なんです」

 その辺は本人を吊るし上げて吐かせればいいだけのこと。
 証明を終えて嬉々として新作のSSを読みふける菜々の姿を由乃は見つめるしかなかった。






蓉子「内容っ! 内容がアウトっ!」

鹿取先生「まあ、何でもネタにするうp主だからねー」

蓉子「ここはどこの公開処刑場ですかっ! かばってくれたあの方涙目ですよ!」

鹿取先生「これを書いている間に『パエリア』を入れまくったと名乗り出た方がいますね。あなたでしたか。以前もこういうことがあったような気がするわ」

蓉子「その方の前に、謝ってくださいよっ! あの方に!」

鹿取先生「次回、『パエリア』キーを引いてしまったらまたうpしますので、質問がある方はこちらにコメントください。反論や検証、自説投稿なども待ってます」

蓉子「変なことあおらないで〜っ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!」

鹿取先生「何故か謝る水野さんは放っておいて、ごきげんよう」


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