【3514】 パエリア食べてるよね夢の中の疑問  (bqex 2011-05-18 02:35:11)


【No:3495】【No:3502】【No:3507】【これ】【No:3522】【No:3542】
■皆さんは『パエリア』キーをいくつ入れたんだという件■


蓉子(どういう事なの? 前にこのSSの作者が引いたのは『パエリアの杖』『パエリアと』『パエリアの』……服だか書だか忘れてしまったけれど、そんなキーだったと思う。なのに、何故それらはでないで次々と新しい『パエリア』キーばかりに当たるの? あの管理人さんがIPアドレスから割り出してこのアドレスには『パエリア』というプログラムに変えるだなんて手間暇かけてやるはずがないわ。だとすると……交流掲示板でボケてるのに突っ込んでくれないってスネちゃってるあの人の仕業?)

蓉子(だって、『押すな』は『押せ』、『離すな』は『離せ』なら『突っ込んで』は『突っ込まないで』と解釈するのが正しいじゃない。このSSの作者は誘惑に負けてつい突っ込んでしまったけれど、コメントの通しNo.20000のキリ番踏んだのに誰も指摘しないくらいの掲示板でそこまで突っ込みを期待するって。おかげで今、交流掲示板に行ったら『パエリア』がなんなのかよくわからなくなってるじゃない)

蓉子(もう、『パエリア』なんて、『パ』パッとしない奴が『エ』偉そうに『リ』理屈っぽく展開する『ア』赤い字の投稿とか、『パ』パニック起こした『エ』江利子が『リ』リアクションで『ア』アサルトライフルぶっ放すとか、『パ』パンツ『エ』エロいから『リ』理由なく見せないで『ア』アリスくんとか、その辺でいいじゃない。B級の個人的な書き方なんだから、違う書き方だっていいのよ。似顔絵だって目から描いていく人もいれば全体の輪郭から描く人もいるじゃないの)

蓉子(別に選んでいるわけじゃないのにこの引きっぷり……がちゃS中から謎の念が送られてきてるの? このままでは永遠に『パエリア』に閉じ込められてしまいそう。こんな生活……嫌っ!)

祥子「お姉さま、ここにいらしたんですか」

蓉子「祥子、『パエリア』から脱出しましょう!」

祥子「は?」

蓉子「このままここににいたらおかしくなるもの! 『パエリア』は『縛り』で『乗って』『抱いて』『食べる』そうよ。私たち、そんなものの餌食になっていいのっ?」

祥子「意味は全くわかりませんが、なにかとても嫌な予感がします。廊下を進みましょう」



■急いで脱出しよう■


祥子「ん? いつの間に廊下にこんな規則ができたのでしょうか」

蓉子「なんですって? 『この廊下には特殊なルールがあります。廊下を進むときは必ず後ろ向きに進んでください。規則を破ると永遠にパエリア結界の住人になります』なんてことっ!」

祥子「諦めますか?」

蓉子「行くに決まってるじゃないの。私は自分を信じて後ろ向きに進むのよ!」

祥子「では、私も後ろ向きに続きます。これをお読みの皆さま、今の私たちの状態をイメージしてください。私たちは遠ざかっていく方のことははっきりと見えています。教室のドア、廊下のポスターなどの位置関係ははっきりと言い表せますし、薄ぼんやりと影になっているところもわかります。周りの状態も把握できます。しかし、進行方向である背後のことは見えません。これは時間の流れと同じ構図です。遠ざかっていく風景は過去、周りの状態が現在、背後が未来です」

蓉子「突然何を言い出すの?」

祥子「日本語で過去の状況を書くときの文末は『〜た』と『〜だ』になります。例えば『走った』『泳いだ』などという具合にです。では、現在のことはどう表現するでしょうか。『走っている』『泳いでいる』ですね。未来であれば『走るだろう』『泳ぐだろう』。では、『走る』『泳ぐ』はどうでしょうか」

蓉子「祥子、いきなりガチな日本語教室を始めてしまったからうんざりした皆さまが帰っていくのだけれど」

祥子「本当はあまり教えたくないことなのでわざと面白くない表現法にしてある程度ふるいにかけています」

蓉子「なんて意地の悪いことを!」

祥子「プロは勿体ぶって今日の話の内容を『センス』の一言で片付けておきながら『小説の書き方本』と称して有料で売りつけているんです。この話は『センス』と誤魔化さずに無料でさらされているんですからこれくらいいいじゃありませんか」

蓉子「すんなり教えなさい!」

祥子「では、続けましょう。廊下の遠ざかっていく方向で飛び跳ねている人物がいます。あれを文で表すと『祐巳が飛んでいた』となります。私たちのすぐ横で飛び跳ねている人物がいることを文で表現すると『祐巳が飛んでいる』となり、背後にもいますから『祐巳が飛んでいるであろう』となります」

蓉子「祐巳ちゃんがいっぱいいるっ! と思わせておいてどうせ向こうに見えているのは女装した祐麒さんで、背後にいるのは祐巳を演じている瞳子ちゃんでしょう?」

祥子「いいえ、全員祐巳です。『パエリア』結界内特有のSSの作者の力で分裂させられたのです」

祐巳「合体!」

蓉子「ややこしいことしないで!」

祥子「ここまでが前振りです。日頃このように『〜た』『〜だ』などという形は遠いイメージに、『〜だろう』『〜あろう』などという形は曖昧なイメージになります。このうちの『〜た』『〜だ』が曲者です」

祐巳「ニンニン」

蓉子「それは忍者で時代劇の曲者でしょう! わかりづらいボケはいいからっ!」

祥子「では、ここで例1をご覧ください」





例1

(A)
 クリーチャーの攻撃を受けて流した。
 返す刀で切りつけた。

(B)
 クリーチャーの攻撃を受けて流す。
 返す刀で切りつける。






祥子「(B)の方が生き生きとしたイメージだと思う方が多くありませんか? 実は日本語の過去形は完全に『〜た』『〜だ』では表現されないことがあり、その逆に現在の出来事も『〜た』『〜だ』と表現されることがあるのです。ですから、文法的にはどちらも同じ時系列で起こっているとしても問題ないのですが、(A)の方が遠いイメージ、(B)の方が近いイメージになるため(B)の方が臨場感、迫力、躍動感やスピード感があると感じる人が多いのです」

蓉子「これは極端な例でしょう」

祥子「あくまでイメージの問題なのでそうは捉えられない場合もありますし、やり過ぎると煩わしく感じられるでしょう。あくまでB級流ということになりますが、『蓉子さまと祥子は後ろ向きに進んだ』タイプの文より『蓉子さまと祥子は後ろ向きに進む』タイプの文の方を躍動感やスピード感を出したい時に採用します」

蓉子「『蓉子と祥子は後ろ向きに進んでいく』気分的にスピードが上がったような気持ちになったわ」

祥子「スピードにこだわるときは『、』『。』『!』『……』などの使い方も重要になってきます。例2を御覧ください」





例2

(B)
 クリーチャーの攻撃を受けて流す。
 返す刀で切りつける。

(C)
 クリーチャーの攻撃を受けて流し、
 返す刀で切りつける!






祥子「(C)の方がスピード感が増したと思いませんか? 『。』は文章の区切りに付けられ文章が続かないこともありますが、『、』は文の区切りだけではなくわかりづらい文章を分かりやすくするために付けられる記号でもありその後も文章は続いていきます。そのため多くの人が無意識に『、』より『。』の方が長く間をとっているはずです。もちろんそうではない方もいますが。『、』は八分休符、『。』は四分休符、『!』はアクセント記号のように、ゆっくりと間を持たせたいときは『……』で余韻をたっぷりと持たせる。とこのSSの作者は日本語の文章を書くお約束を全く無視して使っています」

蓉子「本当に初回の『Aメロ』『サビ』の感覚で書いてるのね。あ、出口についたわ。さあついに『パエリア』結界から脱出よ」



■リズム店舗あります■


祥子「お姉さま、残念ですが何か書いてあります」

蓉子「今度はなんですって? 『この扉を開きたければリズミカルに踊ってみせなさい』ですって? 文字だけの世界でなんて無茶振りを。AAを駆使しろとでもいうのかしら?」

祥子「失礼ですがお姉さま、この程度のことが文章でできないだなんてはっきりいってレベルが低うございます」

蓉子「ここでシリーズ二回目の『謎解きはディナーのあとで』のパロディが来るなんて! 言われ慣れてないから結構グッサリくるしムカつくっ! でも、AAを封印するとなると――」

祥子「そのために私がいるんです。ご安心ください」

蓉子「文章で『蓉子は祥子のピアノに合わせて踊った』だけでは通れないわよね」

祥子「もちろん、がちゃSの貴重な容量を割いてそれだけのオチで済ませる気はありません。解説に戻ります。日本語というものは文字と音がセットになっています。そのためある言葉を受け取るとネイティヴの日本語スピーカーは心の中で音読するかのようにリズムをとるのです。例3をご覧ください」





例3

(C)
 クリーチャーの攻撃を受けて流し、
 返す刀で切りつける!

(くりいちゃあの・こうげきを・うけてながし・かえすかたなで・きりつける)

(D)
 妖かしの攻撃を受け流し、
 返す刀で切りつける!

(あやかしの・こうげきを・うけながし・かえすかたなで・きりつける)






祥子「(C)に比べると(D)は似たような意味の単語に置き換えられ音が変わったことでリズムに乗っています。音を数えると(C)は6・5・6・7・5、(D)5・5・5・7・5。(D)の方が音の数が揃っています。このように文節の音の数をそろえるとビートがきいた感じになります」

蓉子「『ビートがきいた』って『マリみて』にはどうなのかしらね?」

祥子「音を数えるときの注意点は『ぁ』『ぃ』『ぅ』『ぇ』『ぉ』『ゃ』『ゅ』『ょ』『っ』『ゎ』は直前の文字と組み合わせて1音になりますが、『ん』は独立して1音となります。例えば『しゃしん』は3音と数えます。そのことを踏まえて例4をご覧ください」





例4

 祐巳は気づくと妖かしに囲まれていた。
 五体、十体――いや、もっといるか。
 静かに刀を鞘から抜きつつ両手で構えて息を整える。
 刹那一斉に飛びかかってきた妖かしの攻撃を受け流し、返す刀で切りつける!

文節の音

(ゆみは3・きづくと4・あやかしに5・かこまれていた7)

(ごたい3・じゅったい3・間・いや2・もっといるか5)

(しずかに4・かたなを4・さやから4・ぬきつつ4・りょうてで4・かまえて4・いきを3・ととのえる5)

(せつな3・いっせいに4・とびかかってきた7・あやかしの5・こうげきを5・うけながし5・かえすかたなで7・きりつける5)






蓉子「こういうのは他の人にお任せした方がいいんじゃないの?」

祥子「では、他の人のSSを読みに旅立ってください。いよいよ数名しか残らなくなったところで解説に参りましょう。日本人の魂のリズムと呼ばれる五七調や七五調、とくに七五調は調子が取りやすくスラスラと読みやすいのですが、ひとつの文節だけで7音などにするのは厳しいこともあります。そういう時は7音を分解し、3+4音、2+5音で表現したり、『……』や『――』などで調節します。しかし、5音や7音が連続しすぎると走り過ぎた感じになり読み手が疲れてくるので、途中で緩めます。内容的にも間を取りたい部分で七五調から離れるのです。例4であれば三行目で4音の文節を繰り返すことで、走り過ぎ感を抑えつつビートをきかせた状態にし文章として引っかからないように工夫しているのです」

蓉子「こういうことを考えながら書いているの。何も考えないで適当にタイプしているようにしか見えてなかったわ」

祥子「プロやA級以上の作家さんはスピード感やリズム感のある文章をこういう理屈抜きに何も考えずにパッと書いてしまえるところがB級との隔たりです」

蓉子「なるほど」

祥子「他にも文頭に同じ単語を並べない、文末を『〜た』『〜だ』の過去形と同じ形で読み手に距離を置いてから、非過去形と同じ形でスピード感を出すなどの小細工を繰り出しています」

蓉子「確かに最近よくやっているわね、その方法」

祥子「というわけですから、文字だけの世界でもリズミカルに踊ることは可能なのです、お姉さま」

蓉子「……あの、そういうのは祐巳ちゃんや志摩子のポジションよね」

祥子「あの、お姉さまひょっとして、『パエリア』結界がお気に召して永住を決意なさったのですか?」

蓉子「そんな訳ないわよっ! 踊ればいいんでしょ! 踊れば」

祐巳「蓉子さまがどんなふうに踊るのかワクワクドキドキテカテカで正座します」

蓉子「いつきたのよっ!」

祥子「さっき跳ねてたじゃないですか」







 というわけで。

蓉子「一人で踊って一人でどこかに飛ばされて、これ以上『リゾット』だの『ピラフ』だの『チキンライス』だのという怪しいシリーズが出来上がったらたまったもんじゃないわ。あなたたちも踊りなさい。お姉さまの命令よっ!」

祥子「祐巳、後で『ロマン輝く』ロザリオあげるからちょっと貸しなさい」

祐巳「あー、ごめんなさい。瞳子にあげちゃいましたから」

 紅薔薇三姉妹に踊っていただきます。

祥子「お姉さまが余計なことをおっしゃるからおかしなことになったじゃありませんか!」

祐巳「全くですよ! どじょうすくいは道具がいろいろといるんですよ!」

蓉子「何故私が安来節の男踊りをしなくてはならないのよっ!」

祥子「がちゃS史上屈指の大惨事の予感がしてよ」

祐巳「なんで私、今日に限って『パエリア』なんかに呼ばれてきたんだろう」

 では、BGMいきま〜す。

蓉子「ここまできたら照れては負けよ」

祥子「わかっています。こうなったら一票でも多くの感動票を獲得しにいくまでです」

祐巳「全力でいくんですね(やれやれ)」

 イントロは三味線の激しいビート。

蓉子・祥子・祐巳「ソイヤっ!」

 三人は腰を落とし、両手で波を再現し右に左にキビキビ踊る。
 力強く両の腕を上下させ、天に向かって飛び上がりつつその腕を突き上げ、網をたぐる。

蓉子「ドッコイショー! ドッコイショー!」

祥子・祐巳「ドッコイショー! ドッコイショー!」

蓉子「ソーラン! ソーラン!」

祥子・祐巳「ソーラン! ソーラン!」

 振付で再現される北の荒波、ニシン漁。
 軽快なステップで網が引かれ、何度も突き上げる拳で大漁に湧く漁師の歓喜が蘇る。

祐巳「ハイッ! ハイッ!」

蓉子・祥子「ア、ドッコイショー! ドッコイショー!」

祐巳「ドッコイショー! ドッコイショー! ソーラン! ソーラン!」

蓉子・祥子「ソーラン! ソーラン!」

 乱れぬ三人の舞が人々に様々な感情を湧き起こす。

乃梨子「ちょ……連載ほったらかしにしてあの人たち何やってるんですか」

静「イタリアに帰りたい」

江利子「覚えておきなさい。黄薔薇にはお笑い担当でもあそこまではしないという仁義があるのよ」

由乃「令ちゃん、早く早く」

令「由乃、そこからじゃ見てるのモロバレだって」

菜々「蔦子さまを呼んでまいりました」

蔦子「ビデオカメラの方は聖さまが担当されるそうです」

聖「駄目だ、笑いすぎてお腹痛くなってきた……」

志摩子「カメラの方はお任せください」

『紅薔薇ファミリーの皆さま、私のことは道端に落ちてるバネだと思って忘れてください。――瞳子』

祥子「ドッコイショー! ドッコイショー!」

蓉子・祐巳「ドッコイショー! ドッコイショー!」

祥子「ソーラン! ソーラン!」

蓉子・祐巳「ソーラン! ソーラン!」

 ……この後、どうなったのかはうp主の次のSSのタイトルでお察し下さい。


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