紅薔薇姉妹が所要でお休みになっている今日、ここは薔薇の屋敷。
異次元が出来ていた。
「れ・い・ちゃ〜〜ん」ハートマーク
「な・あ・に〜〜 よ・し・の〜〜ン。 」こちらもハートマーク
今日も由乃さまと令様はべったり。
よくもまあ、皆の(まあ、私たちを含め、4人しかいない薔薇の館内だけれども)面前で、ここまでいちゃいちゃ、ピンクピンクできるもんだ。
見ている、というか、見せられているこっちまで恥ずかしくなってくる、ラブラブもいいから、仕事しろあんたら。
とはいえ、実際今日は、たいした仕事も無かったので、自分達の仕事をそれなりに片付けた黄薔薇姉妹は早々に帰り支度を始めた。
この2人が帰れば、お姉さまである志摩子さんと2人っきり、それはそれで嬉しい、いや、すごく嬉しい。いっぱいお話しよっと。
令様が「それじゃあ、志摩子、乃梨子ちゃん、あとよろしく、ごきげんよう」 っと いいながら扉をしめた。
そのとき
「うらやましいわ。」 ボソッと 志摩子さんがつぶやいた。 ん? うらやましい?
「うらやましい、って何のこと、志摩子さん。」
「い・いえ、え、えと、 なんのことかしら?」
「ごまかさないで、 志摩子さんは、確かに言ました、うらやましいって。」
「そ、そうだったかしら?」 私は志摩子さんを見つめた。
観念したのか 「ごめんなさい、確かに乃梨子の言うように、確かに『うらやましい』ってことを口にしたわ。」と、白状した。
「やっぱりね、で、何がうらやましいの?」
「乃梨子、判らない?」 そういわれて、色々考えたがわからない
「ごめんなさい、全然わかりません。」
「あ、あのね、先ほどの令様と由乃さんのやり取りよ。」 令様と由乃さんのやり取り、ちょいと思い出してみた。
『 れ・い・ちゃ〜〜ん な・あ・に〜〜 よ・し・の〜〜ン。 』
なんだか判った!! でも、マジか!!
「ま、まさか!?」 汗がだらだらと出てくる。
「ええ、そのまさかよ。」
「あのね・・・ 乃梨子・・・ 」志摩子さんは頬を染めつつ私に (ぼそぼそ・・・) とんでもないことを言ってきた。
絶句した!! と同時に、まるで顔に全身の血が流れ込んだかのように、真っ赤になる。
「だだ・だ、だめです、 む、無理ですそんなこと!! それにお姉さまに、そんなこと、とても恐れ多くて私にはとても言えません!!」
「姉とか妹じゃなく、私が、いいえ 『志摩子』一個人として言って欲しい、 といっても?」
「だ・だって、だって・・・ は・恥ずかしいじゃないですか・・・」 実際は、恥ずかしいなんてものじゃない!!
「でも、私は、言って欲しいの、たとえ一度だけだとしても。 だからお願い、一度でいいの、ね? 乃梨子?」
こんな、うるうるお目々で懇願されて断れる人なんかいるだろうか。
チクショウ、可愛い!! なんなんだこの可愛さは!!
かなりパニクっている私に、志摩子さんが言った。
「あ・あの、じゃ、じゃあ、『ごっこ』ってことにしない。 あくまで、由乃さんたちの真似事ってこと・で・・・ ねえ? ダメ・・・かしら? 」
ああ、マリア様、弥勒菩薩様、私の理性が壊れないように、見守ってください。
「は・はい、判りました、で・でも今回、一回だけですからね!!」 心の中は物凄いことになっている。
私は、呼吸を整え、志摩子さんの声を待った。ドキドキ
「行くわよ、乃梨子。」 ドキドキ
「はい、志摩子さん。」 ドキドキ
「りこちゃん、大好き!!」 ふあああああああ〜〜〜〜〜〜 私には賛美歌に聞こえた。
もう、やけだ!! たまらない!!
「私も、しまぴょんのこと、大好き!! 愛してます!!」
ああ、いっちゃた、しまぴょんって!! しまぴょんって、でも・・・ いいんじゃない、ちょっと妄想してみた。
「しまぴょん、お茶どうぞ。」
「まあ!! ありがとう、りこちゃん。 やっぱり、りこちゃんの淹れてくれたお茶はとてもおいしいわ。」
「何言ってるんですか、しまぴょんは、りこの大好きなお姉さまなんですから。おいしく淹れるのは当然じゃないですか。」
「まあ、ありがとう。」
ふふふ・りこちゃん ふふふ・しまぴょん やばい!!結構いいかも・・・
其の時、誰かの視線を感じた。
「り・りこちゃん? へ? なんですの? し・しま、しまぴょん? うえ?」 扉をあけたままの格好で、瞳子は目を白黒させながら固まっている。
その姿を見た私はゆっくりと椅子を持ち上げ、瞳子に言った。
「ふふふ、見たのね瞳子、 あのね瞳子、あなたのこと一生忘れないは、だから、だから、私のと志摩子さんの愛のために。」
「た・ために?なんですの?」
「お願い!! 死んで!!」 私は椅子を振り上げた。
「へ・へ? い・いや、なんですの? いやーーーーーーーーー!! 」
次の日のリリアン瓦版号外
『 白薔薇の蕾、ご乱心!! 椅子を振り回し松平瞳子嬢を追い回す!! 2人にいったい何があったのか!? 』
写真付で載っていた。
私は、黄薔薇姉妹に損害賠償を求めたい気分でいっぱいだった・・・
「ねえ、祐巳。」
「はい、何でしょう?」
「私のこと、さちりんって・・・ 」
「いやです!!」
「ゆーみん、って呼ぶから、さちりんって・・・」
「絶対!! いやです!!」
「うう〜〜ん 祐巳の、い・け・ず・〜〜 」
「ロザリオ返しますよ?」
「ごめんなさい。」