【360】 耳に息を吹きかける白薔薇さまは  (春霞 2005-08-13 01:21:04)


  【No:180】 『セクハラ祐巳戦争百花繚乱』 
  【No:187】 『燃え尽きる娘。目撃談』 
         から続いております。 


                  ◆◆◆ 


 菜々をギャラリーに預けて、志摩子は祐巳に向き直った。
 本能が囁くのか、祐巳はかすかに警戒した風に志摩子の立ち振る舞いを見ている。

「祐巳さん? 祐巳さんのせいでは無いけれど、わたしの乃梨子が、瞳子ちゃんにもてあそばれて泣いてるの。 ”もうお嫁に行けない”って言って」 

 志摩子は柔かく微笑みながら、一見無造作に間合いを詰めてゆく。 だが、頭がすこしも縦にぶれる事無く、まるで滑るように近づく様は、流石日舞の名取り、と言うところか。 

 洋の東西を問わず、歴史の新旧を問わず。 舞踊と言うのは、結局のところバランスである。 地球という舞台の上で、重力と言う暴虐な鎖と戯れながら、その四肢と五感を研ぎ澄まし、物理的限界の極みでたゆとう天秤ばかり。 その支柱は1本しかなく、支える点は か細いものの、ゆらゆらと揺れながら決して倒れる事は無い。 

 舞踊は、すなわち武闘に繋がる。

「祐巳さん。 わたしね。」 
 自然体の両腕を胸元で軽く交差させ、ひゅん と振り広げれば、両の手に現れるは2本の扇子。 
「ちょっとだけ怒っているの。 自分に。 いくら しっかりしているからって、大事な乃梨子を一人で行かせるのでは無かったわ。」 
 手首の一ひねりで すぱん と開き、半身の構え。 
「だから、これは八つ当たりなの。 ご免なさいね?」 
 其処に凛と墨書されたるは… 

       『神に逢うては神を切り』 『仏に逢うては包囲殲滅』。 

 くるりと表を翻がえし… 

       『天魔覆滅』 『ぼろもうけ』。 

 流し目で見やり宣誓する。 
「わたくし。 甘くありませんわよ。  ……だから、」 
 踊るように、いや、まさしく踊りながら、祐巳の間合いに踏み込んでゆく。 
「あざの1つ、2つは 我慢してね。」 


       ・ ・ ・ ・ ・ ・


「あんん」 ぱたり。 
「うきゅぅん」 ぱたり。 ほたり。 

 被害は拡大する一方であった。 
 白薔薇さまの扇子が、紅薔薇さまのうなじを掠める。 すると其処にどんな技量が込められているのか、紅薔薇さまが鳴くのである。 「ああん」 と。 
 果たしてまた一人、遠巻きにしているギャラリーの中で少女が萌え落ちた。 

 普段はむしろ幼すぎるほどに無垢な印象の紅薔薇さまが、ほほを紅潮させ、しとどの汗にぬれながら、聞いた事の無いほど艶やかな声で鳴いている。 リリアンに通う者で、萌えない者など居ようはずも無かった。 
 伏した者の其処ここには、明らかに教諭と思しき者達や、大学部生らしき者も居て。 被害はリリアン全域に及んでいた。 むしろ幼稚舎生・初等部生がすでに下校していたのは、不幸中の幸いと言えるだろう。 幼い内にコレを見てしまえば、確実に人生を踏み外してしまう。 

 白薔薇さまの扇子の先は、胸元や、脇や、指先や、背中。 あらゆる所を掠めてゆく。 
 紅薔薇さまの指先も、制服越しにさえ判る、白薔薇さまの形の良い臀部や、胸に容赦なく襲い掛かっていく。 

 史上まれに見るセクハラ戦争であった。 


  (あのー。 お取り込みのところすいませんが。 志摩子さんは一体どこでその様な技(スキル)を身に付けたのでしょうか? 祐巳さんは、セクハラ魔人の薫陶を受けていたので、判らなくも無いのですが。 ) 

「私の 号 は何?」   楽しげに、心地よげに微笑みながら、白薔薇さまは詠う。 
「それは、もちろん白薔薇さま …?」 
「先代はだれ?」      これほど喜びに満ちた白薔薇さまを見たことが有っただろうか? 
「佐藤 聖さま、別名 エ・ロ・王」 (いや、耳でしょ、耳) 
「では、先々代は?」 
「……… ああっ!!」 
「そう、白は代々、リリアン屈指のセクハラ一族。 わたしには乃梨子が居てくれたから、不特定多数に手を出す必要が無かったけれど、技能が継承されていないわけでは無いのよ。 」 

 (成る程。 良く解りました。 どうもお邪魔をいたしました。 もう、心置きなくやっちゃって下さい。) 

「うふふふふふふふ。 ぁあはははははははh。 」 
「ふにゅにゅ〜〜〜ん」 

 (末期だ …… oTZ ) 

 2人の美少女が舞い踊る中、白薔薇さまが呟いた。 「これで、ふぃにっしゅ。」 

 ふぅぅうっ。   白薔薇さまの吐息が、紅薔薇さまの耳元にかかり、あまつさえ!!! 
 はむぅ。     ろろろ、紅薔薇さまの耳たぶを、甘噛みなさってっっっ!!! 

「ひあーーーーーん」 
 高く高く一声鳴いた紅薔薇さまが、密着して一瞬動きを止めた白薔薇さまの 大事な突起を、その神の手(ゴールドフィンガー)で弾き上げる。 
「くぁんんん」 
 二人がともに、びくり、びくりと痙攣しながら、 意識は白い闇に飲まれていった。 


          ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ほどなく。 最後の光景を目の当たりにして再起動不可能なほど真っ白に燃え尽きた少女たちの間を、今の今まで薔薇の館で対策の指揮をとっていた黄薔薇さまが、こめかみを押さえながら通り抜けてきた。 

「後方支援は苦手なのに…」 
 苦笑して、ぐるりと辺りを見回すと、おもむろに紅薔薇さまをお姫様抱っこでかかえ上げる。 
 ふと、愛しげに微笑むと、黄薔薇さまはその場から悠然と去っていった。 


「ああ、後始末は、報道班。 よろしくねえ。」 

 (え、そんな、、、、 orz)




 次回、エピローグ かも。


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