【36】 苦悩蔦子のおやすみ  (冬馬美好 2005-06-16 00:14:05)


「えぇと・・・」

 蔦子は考えていた。パイプ椅子の上で蔦子は考えていた。

「これは一体・・・」

 蔦子は考えていた。パイプ椅子の上で蔦子は考えていた。毛布に包まりながらパイプ椅子の上で蔦子は考えていた。

「どういう事なのかしら?」

 蔦子は考えていた。パイプ椅子の上で蔦子は考えていた。毛布に包まりながらパイプ椅子の上で蔦子は考えていた。『二人で』 毛布に包まりながらパイプ椅子の上で蔦子は考えていた。

「・・・何で、笙子ちゃんがここに居るのかしら?」

 蔦子は思い出していた。写真部部室で二人で毛布に包まりながらパイプ椅子の上で蔦子は思い出していた。
 ・・・確か部室に入ってすぐ今日撮った写真の現像に取り掛かって、思い通り抜群の一枚だったその写真に狂喜して、んでアルバムにその写真を貼り付けて・・・って、そこまでは覚えている。そこまでは確かに私は一人だったはずだ。寝てもいなかったし、隣に笙子ちゃんも居なかった。それなのに、これは一体どういう事なのだろう?

「・・・・・・」

 蔦子は見入っていた。笙子に蔦子は見入っていた。自分の隣ですぅすぅと寝息を立てる笙子に蔦子は見入っていた。まるで天使のような穢れのない無垢な表情で自分の隣ですぅすぅと寝息を立てる笙子に蔦子は見入っていた。

「・・・・・・とりあえず、一枚撮っておこう」

 蔦子は決心した。とても無防備にまるで天使のような穢れのない無垢な表情で自分の隣ですぅすぅと寝息を立てる笙子の写真を撮ろうと蔦子は決心した。

 ぱしゃり

「・・・んぅん?」

 笙子は目を覚ました。とても嬉しそうに笙子は目を覚ました。

「しまった! ストロボ切り忘れてた!」
「・・・あ、蔦子さま、おはようございます」

 笙子は目を覚ました。とても嬉しそうに笙子は目を覚ました。大切そうにアルバムを胸に抱きながらとても嬉しそうに笙子は目を覚ました。

「お、おはよう・・・って、笙子ちゃん、それ!!」
「え? あ、はい。蔦子さまが整理なされていたアルバムです」

 蔦子は焦っていた。『あれ』を見られたんじゃないかと蔦子は焦っていた。

「こんなにたくさん、私の写真を撮ってくださっていたなんて嬉しいです!」
「え? あ、う、うん。ほら、その、約束だったし・・・」

 蔦子は焦っていた。『あれ』を見られたんじゃないかと蔦子は焦っていた。抜群の一枚だったあの写真についペンで描いてしまった『あれ』を見られたんじゃないかと蔦子は焦っていた。

「それに、この写真。・・・これって、つまり、そういうことですよね?」

 耳まで赤くなった蔦子は笙子から顔を背け目を閉じた。抜群の一枚だったあの写真についペンで描いてしまった『あれ』を見られたと悟り、耳まで赤くなった蔦子は笙子から顔を背け目を閉じた。

「おやすみなさい♪ ・・・お姉さま」
「・・・・・・おやすみ」

 耳まで赤くなった蔦子は笙子から顔を背け目を閉じた。抜群の一枚だったあの写真についペンで描いてしまった『あれ』を見られたと悟り、耳まで赤くなった蔦子は笙子から顔を背け目を閉じた。抜群の一枚だったあの写真についペンで描いてしまった ── ロザリオを見られたと悟り、耳まで赤くなった蔦子は笙子から顔を背け目を閉じた。


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