「それで、祐巳さま」
「なあに瞳子ちゃん」
「わたくしたちは、なんでこんな格好をしているんですの?」
「それはね、これからここに忍び込まなければいけないからなのよ」
「それが、このレオタード姿なんですか?」
「姉妹で怪盗っていったら、この格好でジャンプに連載されて、アニメはTMネットワークが主題歌を歌うことに決まっているのよ」
「かえって、ものすごーく目立ってますわ」
「物事は衣装をととのえることから始まるの。瞳子ちゃん女優でしょ?」
「祐巳さまっ、瞳子は衣装の力なんか借りなくても役になりきれます。だいたいこれでどこに忍び込むんですか」
「図書館よ。端末を使って、ペンタゴンにハッキングしてお姉さまのファッションチェックを、
「ちがーーーーう」
「いったぁぁい。瞳子ちゃん、ぐーで殴ったあ」
「その話はさっき終わったでしょう。あの一発ギャグをまだ引っ張るつもりですか。だいたい瞳子と静さまはリリアンに同時には在学していないのですわ」
(ぐーで殴った・・・)
「そこで地面に『の』の字を書きながらいぢけないでくださいっっ。もう16行使ったのに小ネタだけでストーリーが進んでないじゃないですかっ」
「そうそう、この屋敷に忍び込むのよ」
「ここは?」
「楓の散歩道の館」
「なんですかそれ」
「屋敷の前に楓並木の散歩道でもあるんじゃないかしら」
「そのまんますぎる解釈ですね。怒られますよ」
「わずか4日でもう怒られるようなことはさんざんしてるからいいのよ」
「よくないっ」
「祐巳さま。祐巳さまったら。ちょっとまってくださいっっっ」
「なあに瞳子ちゃん」
「忍び込むんでしょ?」
「そうよ忍び込むのよ」
「忍び込むって言うのは正門から入って堂々と玄関へ向かうことを言うんですか」
「いいじゃない、だれも見てないみたいだもん」
「みたいって・・・・おめでたい。おめでたすぎますっっっ」
「だって、留守なのよ瞳子ちゃん」
「ずりっ」
「空き巣ですかっっっ。それならそうと先に言ってくださいっっ」
「この屋敷の人たちはね、サンクリとかゆーものに出かけていて留守なの」
「サンクリってなんですか?」
「知らない」
「知らないってそんな」
「わたしたちはSS書き始めて一週間も経たないのよ。知らない方がいいこともあるの」「どうして」
「ノーマルを守るのよ、アブノーマルにはまっちゃダメよ」
「え?え?え?」
「この作者の相方がね、元本職の編集者で4日前から『なーにやってるんだか』って冷たーーーーーいジト目で見てるのよ。それが怖くて今まで文章書きには手を出さなかったのに」
「だってマリみてにはめたのはその相方ですよ」
「だからってサンクリだのコミケだのという隠語を出したらジト目が瞬間冷凍光線に変わるわよ」
「はあ」
「だから知らない方がいいの」
「で、なにを盗むんですか。なんか選択肢型フォームが3つ並んだみたいながちゃがちゃがありますけど」
「その下よ」
「は?」
「お姉さまの命令は『萌え30、笑い45、感動は盗りにくいから10でいいわ』って」
「はあ」
「わたしたちの実力では一本合計10がせいぜいよ。だからこの館のあるじやおもだったサンクリ参加者が留守の間に数で稼ぐのよ」
「火事場泥棒そのものですね」
「瞳子ちゃんっっっ」
「いったーーーい。祐巳さま、ぐーでなぐったあ」