このお話はアイドルマスターシリーズ・如月千早メインのお話です。
夢を見ている。
私にはそれがわかった。
なぜなら、私の前に、ダチョウのような大きさの蒼い鳥がいてその鳥が日本語をしゃべったからだ。
「こんばんは。千早さん。いつも僕のことを唄ってくれてありがとうございます。」
「えっと、あなたは?」
「すみません。申し遅れました。私は、蒼い鳥の精霊。あなたがいつも蒼い鳥を唄ってくれるおかげで、こんなに大きくなることが出来ました」
「そうなんですか。そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
夢の中とわかっているから、そんな異常な状況だというのに、私は取り乱すこともなく、普通にその鳥と会話をしていた。
「今回、こんな風に千早さんに会いに来たのは、そのお礼がしたかったからなのです」
「お礼?」
「ええ。私は幸せの蒼い鳥の精霊。世界の理を曲げるような大きいな願いはかなえることは出来ませんが、個人的なささやかな願いであれば、かなえることが出来ます。千早さん。何か、かなえて欲しい願い事はありますか?」
「願い事ですか……」
私はしばし考える。私の一番の願い。それは、優のこと。
もし優があの時、事故に遭わず、今も生きて私の歌を傍で聴いてくれたら。
考え込む私の顔をみて、蒼い鳥の精霊は申し訳なさそうに言った。
「すみません。先ほども言いましたが、世界の理を曲げるような大きいな願いはかなえることは出来ないんです。だから、死んだ弟さんのことを生き返らしたりは出来ないんです」
「そうですか……」
その言葉に落胆する。他に何か強く願ってまでかなえたいことはあるだろうか?
『トップアイドルになる』
今の私はそこそこ売れてきたとはいえ、まだまだ、トップアイドルとはいえない。
だからこその願いだが、それを願いでかなえるのは、なんか違う気がした。
『家族との絆を取り戻す』
あのスキャンダルの一件以来、私と家族の間の距離はほんの少しだけ縮まった。
その距離を願いで一気に縮めるというのも、やっぱりなんだか違う気がした。
私の努力ではどうにもならないことで、切実にかなえたい事って何か無いだろうか?
しばらく考えて、私は願いを思いついた。
「え? そんな願いで良いんですか? たぶん出来なくはないと思います。その願いをかねても、ただ、世界の理は変わりませんよ? それでもいいですか?」
その願いが叶うならば。私は蒼い鳥の精霊をの言葉に一も二もなく頷いた。
ぴぴっ。ぴぴっ。ぴぴぴっ。ぴぴぴっ。ぴぴぴっ。カチッ
目覚ましの音で目が覚めた。
起きた後でも、寝ていたとき夢の明確に覚えていた。
変わった夢を見た。蒼い鳥の精霊が私のささやかな願いを叶えてくれる夢。
本当に願いが叶うと良いのに。
そう言って私は俯く……。
え? いつも見る風景ではなかった。
あわてて、胸に手をやる。
ぽよんっ。という柔らかい感触。手のひらに収まりきれないくらいのおっぱいが私の胸についていた。
嘘みたいな状態に、強くおっぱいを引っ張ってみる。
「いたた」
びっくりするくらい強い痛みを感じ私はあわてておっぱいから手を離した。
蒼い鳥の精霊は本当に私の願いを叶えてくれたのだ。
私が海外レコーディングのために生っすかサンデーを欠席した際、私の席に置かれたのは、私を格好をした板だった。
事務所の中では中学生組にすらサイズで負け、ネットでは板だの壁だの、72(笑)だの言われている。
私はバストサイズに関して、ずっとコンプレックスだったし、ずっと悔しい思いをしていたのだ。
これで、72の呪縛からやっと解放される。私はそのことで頭がいっぱいになり、街で異常が起こっているのに気がつかなったのだ。
私がその異常に気がついたのは事務所についてすぐのことだった。
「おはようございます」
「あら、おはよう。千早ちゃん」
プロデューサーはまだ来ていないようだ。
小鳥さんは、お茶でも入れているのだろうか席を外していた。
私は、ソファーに座っているあずささんに目をやった、
「おはようござ……いま……す。あずさ……さん」
私の挨拶は、あずささんを見て、かすれてしまった。
「あら。どうかした? 千早ちゃん?」
「あずささん。胸。大きくなっていないですか?」
前よりあずささんの胸が大きくなっているように思えたのだ。前が『どたぷーん』という擬音でそのサイズ表せたのならば、いまは『どどどたぷーん』という感じなのだ。
「そんなこと無いわ。別に前と変わらないわよ?」
「そうですか。気のせいですか……」
そんなことはないと思うんだけど……。でも、まあ、最近忙しくてあずささんと会えてなかったから、私の気のせいかもしれない。
そんな気持ちは、次のアイドルが事務所に入って来た瞬間吹き飛んだ。
「うっうー。おはようございます!」
「おはよう。やよいちゃん」
「おはよう。た……かつ……」
私は挨拶を最後まで言えなかった。
「どうかしましたか? 千早さん?」
「高槻さん、その胸どうしたの? そのサイズって……」
「え? 胸がどうかしましたか? 何かおかしいですか? あずささん?」
「別に特に変わりないと思うけど?」
「変わりないって、そんなはずないじゃない。 高槻さん。今のバストサイズっていくつ?」
「え? 今ですか? 別に変わっていないと思いますよ? 確か、93だったはずですけど?」
「93!? あずささんはどうなんですか?」
「え? 私? 私も特に変わりがないと思うから、110だったはずよ」
「110ですか……」
その願いをかねても、世界の理は変わない。蒼い鳥の精霊の言っていた意味が、他のアイドルたちを見て、ようやく理解できた。
なぜならば、それから次々とやってきた他のアイドルたちのバストサイズも軒並み大きくなっていたから。
私が願った願いはバストサイズをあずささんと同じ、91にすること。
蒼い鳥の精霊は言った。ではバストサイズを+19しますと。
私の願いは叶い91になった。
でも、世界の理は変わらなかった。
他の女性のバストサイズも+19になったから。
だから、私は結局今でも、事務所の中では中学生組にすらサイズで負け、ネットでは板だの壁だの言われている。
ただ唯一変わったのは、72(笑)から91(笑)になった。
私は72の呪縛から解放された変わりに、今度は91の呪縛に縛られることになったのだ。
私の願いは叶ったけれど、世界の理は変わらなかった。
それは、蒼い鳥の精霊の言ったとおり。
FIN
蒼い鳥
http://www.youtube.com/watch?v=nRTE0g88z3M