【短編祭り参加作品】
■注意事項■
これは有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物『ダブルクロス The 3rd Edition』(以下『DX3』とも)のシステムを利用した今野緒雪の著作物『マリア様がみてる』(以下『マリみて』とも)の二次創作物です。双方に一切の関係はございませんのでご了承ください。
DX3のルールー運用についてですが、厳密にルールが採用されていない場面や誤った解釈があったとしても、GM及びプレーヤーが気づかなかった場合はそのまま成立してしまうというルールに則りミスはそのままです。指摘されても誤字脱字くらいは直しますが、物語は書き直したりはしません。でも、後学のためにこっそり教えてください。
今回はクロスオーバー相手の性質上、暴力、死亡描写があるダークな上級者向けの内容となっていますご注意ください。
以上を踏まえ腕に覚えのある方以外はお戻りください。
■PREPLAY■
GM「皆さん、ごきげんよう」
一同「ごきげんよう」
GM「今回は紅薔薇ファミリーの皆さんにTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)に挑戦していただきたいと思います」
祐巳「なんですか、それは?」
GM「会話が中心のゲームで、司会進行兼審判のようなGM(ゲームマスター)が用意した障害を、プレイヤーがPCを演じて解決するゲームです。例えるのであれば『桃から生まれた桃太郎』になりきって『鬼に村が襲われないようにすること』ができたらクリアになります」
GM「ここからがTRPGの醍醐味なのですが、PCの言動や行為判定によって状況は変わります。桃太郎の場合、物語では『犬に出会って』『きび団子を与えて仲間にする』ことになっていますが、『会話するだけ』、『強そうな仲間を紹介してもらう』、『追い払う』、『戦う』などいろいろなことが考えられます。その結果、一人で鬼に挑んだり、金太郎と仲間になって鬼退治に行ったりという展開にもなるのです」
祥子「それで、私たちはそのゲームに興じればいいのかしら?」
GM「はい。今回用意したゲームシステムは『ダブルクロス The 3rd Edition』で、予め決めておいたステータスデータを元にダイスで行為判定をしていくというものです。そして皆さんにはそれぞれ『ご本人』のPC役で参加していただきたいのです」
祥子「平たく言ってクロスオーバーね。説明ばかりで疲れるわ」
祐巳「また闘ったりするんですか? そんなのばっかりじゃないですか」
蓉子「私たちが遊んでいるところを見て何が楽しいの?」
GM「まあ、お祭りですし、これっきりにしますから。お願いします」
一同「……」
GM「ざっくりと『DX3』についてご説明いたしますと、ウィルスの力でPCはオーヴァードという超人的能力の使い手になるのですが、その能力を使えば使うほど日常の世界から遠ざかりウィルスに侵蝕され理性を失った化け物ジャームになるというリスクを背負います」
蓉子「よそのライトノベルにありそうな設定ね。それから?」
GM「そのPCたちを日常の世界につなぎとめているのが人と人との絆です。ゲーム中ではロイスと呼ばれていて、このゲームの特徴の一つになっています」
瞳子「人間関係がカギを握っているということですね」
GM「その通りです。ゲームを進めていくといろいろなことが起こって人間関係が変化することがあります。中でも劇的に関係が変化しPCを日常へつなぎとめる力を失ってしまった場合はロイスがタイタスというものに変わってしまうのです」
GM「引き続き『桃太郎』で例えましょう。桃太郎はおじいさん、おばあさん、鬼、犬、猿、雉にロイスを持っているとします。ゲームを進めていき鬼に明確な敵意を覚えたとしましょう。すると桃太郎はGMに申し出て鬼のロイスをタイタスに変更することができるのです。一度タイタスになってしまったものは特殊な事例を除いてロイスには戻りません。その代わりタイタスを昇華するとゲームを有利に進めることができるというシステムになっています」
祐巳「『マリみて』でいえばお姉さまにとって柏木さんはロイスだったのにお姉さま高1の春のあれやこれやでタイタス化した、みたいな感じでしょうか?」
GM「まあ、そんな感じです」
祥子「人を引き合いに出すのはやめて頂戴」
瞳子「何があったんですか?」
祥子「優さんに聞きなさい」
GM「えー、能力は十三種類のシンドロームと呼ばれる能力群に分けられていて、最低一種類、最高で三種類のシンドロームを得ています。そして、得ているシンドロームによりエフェクトと呼ばれる術を習得して活躍します。シンドロームを簡単にご紹介すると以下のようになっています」
・エンジェルハイロゥ……光を操る。そういえば明度に関するルールはどこ?
・バロール……重力、空間を操る。魔眼と呼ばれる何かがでるらしい。
・ブラックドッグ……雷、電気、機械を操る。中世の設定だと電気機器とかないけど、いいの?
・ブラム=ストーカー……血を操る。従者と呼ばれる凄すぎて効果が全く実感できない何かを作れる。
・キュマイラ……獣の力で肉体を強化する。生物系変身ヒーローみたいなやつ。
・エグザイル……肉体を変形させる。手や毛が物理的に伸び攻撃してくる。
・ハヌマーン……速さと音を扱う。能力値が平均でまっ平。
・モルフェウス……物質を変化させる。砂も使う。砂の錬金術師。
・ノイマン……あたまがよくなる(笑)実際にクレバーかどうかはプレイヤー次第。
・オルクス……領域を操る。エフェクト的には動物を操り、植物を育てる。……領域?
・サラマンダー……熱を操る。熱いのと冷たいの両方だがアイスクリームの天ぷらとは全然違う。
・ソラリス……化学物質を分泌する。匂いとか毒とか一緒にエレベータには乗りたくない何かを出す。
・ウロボロス……影を操り能力を模倣する。ぶっちゃけいろいろなテコ入れのため『新たな能力に目覚めた』とか言って使えと差し出された新入り。
瞳子「これは『DX3』ファンに怒られるのではないでしょうか」
GM「詳しくはルールブックをご覧ください」
祐巳「なんとなくわかりました」
GM「ご理解いただけたところで早速トレーラー(今回予告)とシナリオハンドアウト(シナリオでの活動指針)を発表いたします」
■TRAILER■
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
私立リリアン女学園。
この乙女の園もずっと変わらないと思っていた。
昨日と同じ今日。
今日と同じ明日。
だが、人々の知らないところで、世界はすでに変貌していた――
ある日突然奇妙な力に目覚めた四人の少女たち。
未知との遭遇、突然の死、大きく変貌した自身の姿。信じていた日常はあっけなく失われる。
邂逅する四人が知る世界の真実。そして突きつけられた未来。彼女たちの決断は運命を変えるのか?
ダブルクロス in マリア様がみてる『胸騒ぎの月曜日』
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。
■HANDOUT■
【共通】
時系列は無印(『マリみて』1巻)の『胸騒ぎの月曜日』の日とする。
初期時点で『マリみて』の世界観では手に入れられないデータの取得は禁止。(例:18歳未満の自動車運転技能習得、拳銃の所持、『DX3』固有の組織用のアイテムや技能の取得など)
現在発行されているDX3ルールブック、サプリメント全てとエラッタ最新版(この時点では12531版)を採用する。
【松平瞳子専用】
シナリオロイス:レネゲイドビーイング 感情:任意
キミはリリアン女学園中等部に通う一生徒だ。ある日レネゲイドビーイングと呼ばれる謎の生命に寄生されキミはオーヴァードとして覚醒、事件に巻き込まれ、高等部の山百合会と関わることになった。
※レネゲイドビーイングには人格があり、それを表現するデータにすること。その際能力値、技能に『マリみて』の世界観で手に入れられないもの(〈情報:UGN〉など)があっても別人格のレネゲイドビーイングが習得しているものとして扱うので特に気にしなくてよい。
【水野蓉子・小笠原祥子・福沢祐巳用】
シナリオロイス:レネゲイドウィルス 感情:任意
キミはリリアン女学園高等部に籍を置く一生徒だ。思わぬきっかけでオーヴァードになったキミは高等部で起こる事件に巻き込まれていく。
※本編に描かれている自分自身のネタを拾ったデータにすること。
GM「以上でございます。わからないことがあったら聞いてください。その都度解説していきます」
蓉子「このハンドアウトは?」
GM「今回はクロスオーバーです。各PCは自分らしさを表現しようとすると取るデータがだいたい決まってしまうので、自由度をだそうとしたらこうなりました」
瞳子「私だけ専用なのはこの時期高等部と絡んでないからですね」
GM「それもありますが、瞳子ちゃんが二人扱いだとテーマが回収できますので」
一同「……」
GM「それでは各自データの作成をお願いします」
一同「ええっ、今から!?」
とお願いしたらすぐにとりかかってくれる紅薔薇ファミリーの皆さん。偉いです。
あれやこれやと相談し、ルールブックなどとにらめっこしながら一時間後に四人のオーヴァード(予定)が誕生した。
GM「それではざっくりとどんなオーヴァードになる予定なのか年齢順に自己紹介お願いします」
蓉子「私から。水野蓉子、紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)です。『マリみて』本編準拠の頭脳明晰、優れた判断力とリーダーシップ、おまけに美しくてやさしい完璧なお姉さまです」
たとえ事実だとしても自分で言っちゃ駄目です。
蓉子「シンドロームはノイマン/ソラリスで装甲値無視の毒舌攻撃と支援担当です。エフェクトの都合でナイフを装備しています。初期ロイスは聖と祥子に取りました。Dロイスは『触媒』です」
ロイスはゲーム中7枠まで取ることができるが、そのうち1枠にはゲーム開始時にGMが用意する『シナリオロイス』、1枠には後述するがPC間でのロイスを入れ、3枠を『初期ロイス』としてプレイヤーが任意に決めて、残りはゲーム中に埋めていく。その初期ロイス3枠のうちの1枠を特殊効果で置き換えるというルールがDロイスで『触媒』は1回だけ他人を行動させるという効果がある。
祥子「次は私、小笠原祥子、紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)です。本編準拠にするようデータを組んだ結果〈運転:馬〉というおそらく必要ない技能が2にもなってしまいました」
『マリア様がみてる キラキラまわる』参照。
祥子「シンドロームはウロボロスのピュアブリード。主に範囲攻撃担当です」
GM「本編をどう拾ったらそのようなデータになったのでしょう?」
蓉子「何でもできるんだからウロボロスにしてピュアでお嬢さまっぽくしたらと言ったら本当にそう組んだのよ」
GM(やる気ないな〜)
祥子「ロイスは優さんと令、Dロイスは『対抗種』です」
『対抗種』とはダメージが増える代償にHPが減るという効果がある。
祐巳「えーと、次は私ですね。福沢祐巳です。この時点では紅薔薇のつぼみの妹ではないのでコードネームはありません。平凡な女子高生です」
蓉子「そうかな〜」
祐巳「ど、どういう意味ですか?」
祥子「続けなさい」
祐巳「はい。えー、シンドロームはキュマイラ/ハヌマーンのクロスブリード。一点集中攻撃担当です」
クロスブリードとはシンドロームが2つという意味である。
祐巳「ロイスは両親と祐麒に取りました。Dロイスは『賢者の石』で、DX3の主人公によくあるデータで平均的な主人公を表現してみました。以上です」
『賢者の石』とはクリティカルを出しやすくする効果がある。
GM「ところで《完全獣化》というエフェクトを取りましたね。変身するエフェクトですが、演出はどうしますか?」
祐巳「え、演出!?」
GM「データ以外の変身した姿は演出になりますので。SSですからその辺りは特にしっかりと設定していただきたいなあ、と」
祐巳「ええと、考えてなかったなあ……」
祥子「パンダ」(即答)
蓉子「子狸」(即答)
瞳子「レッサーパンダ」(即答)
祐巳「皆さま!?」
祥子「考えてないというから協力してあげたまでよ。早く選びなさい」
祐巳「……パンダで」
GM「本番で変えてもいいですよ」
祐巳「もう、いいです」
瞳子「ではお姉さま、私が自己紹介してもよろしいですね? 松平瞳子、中等部に通っています。ハンドアウトに従って『奇妙な隣人』というレネゲイドビーイングに寄生されているという表現のDロイスを取りました。シンドロームはブラックドッグ/エグザイルで盾ロールより幾分ましな電動ドリルっぽい演出を希望します」
どっちもどっちじゃなかろうか。
祐巳「『攻撃は最大の防御ですよね!』とノリノリで選んだのは自分じゃない」
瞳子「そんなことありません!」
蓉子「わかったから、続けてちょうだい」
瞳子「……女優用のコピー系エフェクトも習得してます。エフェクトを演じるという表現で。ロイスは両親と優お兄さまです」
祐巳「うわ、柏木さん大人気」
祥子「あなた、ロイスにまで不満があるの?」
祐巳「べ、別に何も(蓉子に「皆まで言うな」という顔で肩を叩かれる)」
GM「自己紹介が終わったところでPC間でロイスを結んでもらいます。蓉子さんから祥子さん、祥子さんから祐巳ちゃん、祐巳ちゃんから瞳子ちゃん、瞳子ちゃんから蓉子さんにお願いします」
蓉子「私は初期ロイスとして祥子に取ったのですが」
GM「そういう場合は新たにとらないで皆さんより1枠空いている状態でスタートしてください」
蓉子「わかりました。ロイスの感情はポジティブが『慈愛』、ネガティブが『不安』で、ポジティブが表です」
ロイスにはポジティブとネガティブの感情を設定することになっており、強い感情の方を表と表現する。
祥子「祐巳には『好奇心』と……『不安』にしましょう。表はポジティブで」
祐巳「初対面の瞳子かあ……下級生なのにしっかりしているから『感服』とこの時期は私よりお姉さまと仲がいいから『嫉妬』で、ネガティブを表にしておきます」
瞳子「私は蓉子さまと過去に会ったことがある方がいいのでしょうか? それとも初対面の方がいいのでしょうか?」
蓉子「一度祥子の家で会ったことがあるけれどよく知らないという程度でいいのではないかしら?」
瞳子「そうですね。では『憧憬』と『隔意』で『憧憬』を表にします」
GM「了解です。最後に確認します。この『胸騒ぎの月曜日』時点でロザリオを持っているのは誰ですか?」
祥子「私です」
GM「蓉子さんはお姉さまからいただいたものを持っていたりしますか?」
蓉子「お姉さまからいただいたものを祥子にあげたので、持ってません」
GM「結構です。では、祥子さんのみアイテム欄に『ロザリオ』と書いておいてください」
祥子「これはどんなデータかは教えてはいただけないのでしょうか?」
GM「データが使えるようになったら説明いたします。それでは、始めましょう」
長い前フリだったね、オイ。
†ダブルクロス in マリア様がみてる『胸騒ぎの月曜日』†
■OPENING PHASE■
GM「一番初めのシーンは瞳子ちゃんのオープニングです。他の人は登場できません。場面は登校風景。リリアン前の歩道橋にしましょう」
DX3にはシーンと呼ばれる区切りがあり、それをつなげて進行していく。
瞳子「はい」
GM「歩道橋を歩いていると不意に奇妙な感覚に襲われます」
瞳子「どんな感じでしょう?」
GM「データ的には《ワーディング》という人払いやエキストラの無力化に使われるエフェクトが発動して、行動しているのは見える範囲では瞳子ちゃんのみです。この世に一人だけ取り残されたような状態とでも考えていただけますか」
瞳子「それは嫌ですね。学校に急ぎます」
GM「そこで、不意に頭を撃ち抜かれたような衝撃に襲われます」
瞳子「私、撃たれて覚醒するんですか?」
GM「撃たれたのとはちょっと違いますが。不意に瞳子ちゃんに呼びかける者がいます」
??「ごきげんよう」
瞳子「ごきげんよう」
GM「挨拶しますが誰もいません」
瞳子「なんなんですか?」
??「そこじゃないんだけどな」
瞳子「どなたです?」
??「大きな声を出すと、独り言を言っている危ない人みたいだよ。耳元でささやいているのが台無しじゃない。私はあなたの頭にいるの」
瞳子「……は? 私は幻覚が聞こえる怪しい子になっちゃったんですか?」
??「さっき共生させてもらったわ。右手を耳からゆっくりと頭の上の方に持っていってみて」
GM「言うとおりにすると縦ロールのおさげのあたりにネックレスのような物があるのがわかります」
瞳子「なんですか、これ?」
??「そう、これが私。私はレネゲイドビーイング(以下RB)という、あなたたちの言葉でいうところの意志を持ったウィルスというか、新種の知的生命体とでもいう存在なの」
瞳子「取れますか?」
GM「取れません。取ろうとして強く引っ張ると、頭に痛みが走ります」
RB「無駄よ。しっかりとくっついちゃったから。これから私たち二人は一蓮托生の仲になるの。よろしくね」
瞳子「文句を言います。『どうしてくれるんですの? いくら何でも校則違反よ、これ』」
RB「このヘアスタイルでそれを言うわけ? まあ、いいわ」
GM「RBはうまく形を変えてリボンの飾りのように納まります」
RB「これで叱られないから大丈夫。というわけでよろしくね」
瞳子「よろしくじゃないでしょう! 一体何をたくらんでいるのよ」
RB「たくらんでいるとは失礼な。私は協力しているのだけれど」
瞳子「協力している?」
RB「ちゃんと説明するわ。それじゃあレッツゴー!」
GM「瞳子ちゃんはRBに引っ張られるように高等部の方へと向かいます。ここで瞳子ちゃんのオープニングは終了です」
GM「次は蓉子さんのオープニングで他の人は登場できません。瞳子ちゃんのオープニングよりやや前の時間で、蓉子さんは薔薇の館にちょっと立ち寄ったというのを想定しています」
蓉子「では、前日薔薇の館に置いていったカッターナイフが必要になったので取りに来たということにして、そのままポケットに入れてナイフとして装備しているという扱いにしましょうか」」
GM「それは話が早くて助かります。では、薔薇の館の二階のサロンに来ると黄薔薇さまの鳥居江利子さんと白薔薇のつぼみの藤堂志摩子さんがいます」
蓉子「ごきげんよう」
江利子「ごきげんよう」
志摩子「ごきげんよう」
GM「二人は話をしていたようでしたが蓉子さんが部屋に入ってくると気まずそうに口をつぐみます」
蓉子「あら、お邪魔だったかしら?」
江利子「いいえ」
志摩子「まさか」
GM「二人は作り笑顔です」
蓉子「……問い詰めることはできますか?」
GM「難易度は秘密で判定をしていただけますか? 技能〈知覚〉での判定になります。一応確認しますが技能〈知覚〉の属する能力値【感覚】の数だけダイスを振って、出た目が1ならファンブル、10ならクリティカルです。クリティカルしているダイスをもう一度振り、もしまたクリティカルしたらそのダイスを振るというのを繰り返します。そうしてクリティカルした回数×10+クリティカル以外で一番大きな数のダイスの目に、〈知覚〉の値を足したものを達成値とします。例えば三回クリティカルして最終的に一番大きな目が6、〈知覚〉2であれば達成値38になります。その達成値が難易度と同じかそれ以上であれば判定は成功です」
蓉子「【感覚】は1しかないから1個振って……3、技能はないのでこれがそのまま達成値って、低っ!」
GM「それでは何もわからないまま二人に誤魔化されてシーンが終わってしまいます。ナイフを装備して校舎に戻るため薔薇の館を出たところでシーン終了です」
蓉子「あー、ごめんなさい」
祐巳「ダイス目って怖いですね」
GM「それでは次は祐巳ちゃんと祥子さんのオープニングです。場面はマリア像前――」
祥子「お待ちなさい」
GM「はい?」
祐巳「あの……。私にご用でしょうか」
祥子「呼び止めたのは私で、その相手はあなた。間違いなくってよ」
GMが言う前に進行する二人。適当にデータを組んでいた割にはノリノリである。
祥子「タイが曲がっていてよ。身だしなみは、いつもきちんとね。マリア様が見ていらっしゃるわよ」
GM「では、祐巳ちゃんのタイを直したところで《ワーディング》です」
祥子「え」
祐巳「え?」
GM「銀杏並木の方から『小笠原祥子』が現れました」
祥子「偽物?」
祐巳「ええっ、これってどういうことなんですか!」
GM「ええと……偽祥子の体に無数の雷の糸がまとわりつき何かが発射されます。同時に祐巳ちゃんの体が不自然に引っ張られるように射線に動きます」
祐巳「私、偽のお姉さまに攻撃されるんですか?」
GM「今の祐巳ちゃんは謎の力に逆らえないので、このままではそうなります」
祥子「祐巳をかばいます。私は覚醒が『死』なのでここで倒れます」
覚醒、とはオーヴァードに覚醒した原因のことで、これにもデータがある。
GM「OKです。祥子さんは致命傷を負って倒れます。指示があるまでそのままで」
祐巳「お姉さま、じゃなくって、祥子さまっ! と駆け寄ります」
GM「偽祥子は逃げますが、祐巳ちゃんの背後から声がします」
??「ふっ、紅薔薇のつぼみが死ぬとは想定外だった」
GM「声のしたマリア様のお庭の陰からフードで顔を隠すようにした怪しい生徒が三人ほど出てきます」
祐巳「もしかして、制服にフードですか? それは格好悪いですよ」
GM「格好悪いにいささか傷ついた生徒たちは祐巳ちゃんを取り囲み、一人の腕が異形のものに変化します」
祐巳「あれ、私まだ覚醒してないのに」
GM「あ、いきなり始まっちゃったので言うタイミングを逸してましたが、蓉子さんは先程の続きの出来事なので登場可能です」
蓉子「登場します。『何をやってるの?』」
祐巳「『紅薔薇さまっ』、ってなんだか自分を呼んでるみたいで変ですね」
蓉子「わからなくはないけれど、ゲームの中だから割り切りましょう。『これは、一体何が起こっているの?』と辺りを見回して祥子が倒れているのに気付きます」
GM「では、腕が変化した生徒のターゲットが祐巳ちゃんから蓉子さんにチェンジして、首を絞めます」
蓉子「言えるかどうかわからないけれど、祐巳ちゃんに逃げるよう言います」
祐巳「逃げられそうもない気がしますが、ダッシュです」
GM「他の生徒が祐巳ちゃんの足を引っかけて転ばせて、あっという間に取り押さえます」
祐巳「平凡な女子高生ではそうなりますよね」
GM「二人とも大ピンチになってしまいました。では、祥子さん。〈意志〉で判定してください。難易度は11です」
祥子「20です」
GM「では、目覚めます。特殊なシーンなので侵蝕率は上げなくても大丈夫です」
侵蝕率とは、レネゲイドウィルスにどれぐらい侵蝕されているかを表す値で、シーン登場やエフェクトの使用で上昇していく。エンディング直前にバックトラックという特殊な処理を行ったのち100%未満であれば日常に戻れるが、100%以上であるとジャームになってしまう。
祥子「目覚めて事態を把握し……エフェクトを使ってもよろしくって?」
GM「今は演出で好きにやって構いません。こちらも侵蝕率も上げなくていいです」
祥子「では、上体を起こして、初めてで加減がわからないので今組み合わせられるエフェクトを全部組み合わせて生徒たちに攻撃します。範囲攻撃に放心がつきます」
GM「生徒たちはかなわないと察したようで逃げ出しました。蓉子さんと祐巳ちゃんは今の生徒たちの攻撃が原因で覚醒します。そして瞳子ちゃんのオープニングにつながる形で瞳子ちゃんが登場するのですが、その前にシーンを切って、マスターシーンというプレイヤーが登場できない演出用のシーンをやります」
蓉子「PCはわからないけれど、プレイヤーはわかるというシーンですね」
GM「そうです」
フードの生徒たちはエフェクトで作られた異空間に逃げ込むと、報告を始めた。
生徒1「紅薔薇のつぼみが二人いて、一人がこちらを攻撃し、もう一人が覚醒したんです」
生徒2「一人は本物だと思うのですが、もう一人は何者なのかは私にもわかりません」
生徒3「それと、気になる事が。《ワーディング》の中、紅薔薇さまと一年生と思われる生徒が行動して……黄薔薇さまの新しい部下かもしれません」
女性の声「要領を得ない報告だこと。まとめると紅薔薇のつぼみがオーヴァードに覚醒して、紅薔薇さまともう一人疑わしい生徒がいるってことと、紅薔薇のつぼみの姿をした何者かがいるということね。いいわ。白薔薇のつぼみにお願いして調べてもらいましょう」
瞳子「動揺しているとはいえひどい報告ですね」
蓉子「ああ、ダイス目が悪かったばっかりに補足のマスターシーンが演出される羽目に。支援特化にすればよかったかしら」
祥子「ここから取り返しましょう」
GM「では、オープニングは終わり、いよいよ全員合流のミドルフェイズです」
■MIDDLE PHASE■
GM「ミドルの初めは先程の続きです。高等部の三人のところに瞳子ちゃんがRBに連れられてやってきます。そうそう、ここから登場するたびに侵蝕値が上がりますからね」
一同侵蝕値を上げ、瞳子がマリア像前に駆け付けるところからスタートする。
GM「RBは《ワーディング》の気配を感じとって瞳子ちゃんをマリア像前連れてきたのですが、取り残された三人しかいません」
祥子「瞳子ちゃん、なぜここに?」
RB「私が連れてきました」
瞳子「あの、私じゃなくて――」
蓉子「『あなたじゃない何かなのね』と。ノイマンの能力で理解します。面識がある設定なので『あなたは祥子の親戚の――』と振りましょう」
瞳子「瞳子です」
RB「喋ってるのは私なんですけれどね」
GM「RBはばねのようにくねくねと伸びて自己主張してきます」
祥子「なんなの、それは?」
瞳子「私にもさっぱり」
蓉子「『ここは人目につくから、こっちへ』と、人目につかない場所に移動しましょう」
GM「その方がいいですね。では、落ち着いたらRBが語り始めます」
RB「私はレネゲイドウィルスと呼ばれる生命体が自我を持った新生命体、RB(レネゲイドビーイング)というものです。微生物型知的生命体が別の何かに寄生したり融合したりしてこうなったもので、それ以上は私自身にもわかりません」
蓉子「あなたには人格のようなものがあって、瞳子ちゃんとは別ということね」
RB「皆さん、《ワーディング》の中で活動されていたようですが、もしかしてオーヴァードに?」
祥子「このおかしな現象はあなたのせいなの?」
RB「私だけのせいではありませんが、レネゲイドウィルスによるものです」
祐巳「ウィルスってことは、病気なの?」
RB「病気とはちょっと違いますね。うーん。微生物に勝手に改造させられて、超人、オーヴァードになっちゃったって感覚の方が近いでしょうか」
祐巳「元に戻るの?」
RB「今のところ元に戻す手段はありません」
瞳子「ちょっと、なんてことを!」
RB「レネゲイドにはもう人類の八割が感染しているという話もあります。最初の発症時にこの超人的能力を得られて無事でいられるのは約半数。残りはショックでジャーム化します」
祐巳「じゃーむ?」
RB「心を失って衝動のために暴走する存在です。化け物といってもいいでしょう」
全員が言葉を失う。
一歩間違えば自分は化け物になっていたというのだ。
RB「あ、ジャーム化するのは覚醒の時だけではありません。能力を使うたびにウィルスが活性化しその力が強くなっていくのですが、同時に衝動が刺激され心を失っていくのです。そして、一度ジャームに堕ちたものは二度と元には戻りません。永久に心を失った化け物になるだけです」
全員がおびえるようにレネゲイドビーイングを見つめる。
RB「落ち着いてください。レネゲイドは感情の動きなどによって活性化しますが、逆に意志の力で抑制することも可能なんです。精神を落ち着かせて強い意志で抑制すれば一時的に活性化しても簡単にジャームにはなりません。逆にいいこともありますよ。レネゲイドの力で肉体は強くなります。超人的な能力に目覚めて無事でいる人をオーヴァードと呼びますが、皆さまオーヴァードになってから怪我がすぐ治るようになったりしているはずです」
祥子「そういえばあれだけの電撃を受けても身体は無事だったわ。制服は少し破れてしまったけれど」
蓉子「首を絞められたけれど痣がないわね」
祐巳「私も転んで手を擦りむいたはずなのに」
蓉子「私たちがそのウィルスのせいで超人になってしまったことは理解したわ。それはそれとして、あなた――瞳子ちゃんの頭にくっついているのはどうして? なぜわざわざ瞳子ちゃんに取りつかなくてはいけなかったの?」
RB「それは今までの話と関係があります。皆さんここまでの話を聞いてオーヴァードというものはとてつもない力を持っていることをご理解いただけたでしょう。そのとてつもない力を利用して立ち回っている秘密結社があるんです。そして、彼らはオーヴァードのいるところに必ず現れるのです。リリアン女学園も例外ではありません」
祥子「え?」
蓉子「まさか、さっき私たちを襲った生徒たち――」
RB「そう。そしてその秘密結社があるところでは必ず争いが起こるのです。私はそれを何とかするために瞳子を目覚めさせたのですが、いや、皆さまが同時期に覚醒するとは思いませんでした」
祥子「お待ちなさい。じゃあ、私の偽物は何者だというの?」
RB「偽物? なんですか、それは」
祐巳「何が一体どうなってるのやら」
蓉子「これはいろいろと調べなくてはいけないけれど、学園祭前のこの時期にそんなことを調べるのは……ねえ、あなたは部活も委員会もやってないのよね?」
祐巳「ど、どうしてわかるんですかっ!?」
蓉子「ノイマンだから(笑)」
普通ノイマンでもわかりません。
蓉子「お名前は?」
祐巳「祐巳です。一年桃組福沢祐巳です」
蓉子「祐巳さん、協力をお願いしていいかしら。あなたのことでもあるのだから、まさか断ったりはしないわよね?」
祐巳「うう、わかりました」
蓉子「私たちも準備の合間にできることはやっておくわ。そろそろ授業も始まるでしょうし」
GM「では、このシーンはここで終了し、次のシーンは調査になります」
GM「移動時間を利用しての調査です。現在調べられるのは」
・フードの生徒たち(〈情報:リリアン女学園〉〈情報:噂話〉)達成値11
・偽祥子(〈情報:噂話〉〈RC〉)達成値11
・最近のリリアンでの変化(〈知識:山百合会〉〈情報:噂話〉)達成値11
・RBの様子(〈知覚〉〈RC〉)達成値14
GM「と、なります。後ろについてる技能で判定し、達成値をクリアすると情報が出て、内容によっては新しい項目が調べられるので頑張ってください」
蓉子「アイテムもあるので、得意な能力値で順番に振っていきましょう」
祐巳「私は得意じゃないんですけどね。では、フードの生徒たち……成功」
GM「では、移動時間中に桂さんからこんな話を聞きます」
桂「フードの生徒? ああ、あんまり関わらない方がいいかも。何だか胡散臭いことをやってるみたいよ。この前志摩子さんと話しているところを見たけれど」
GM「というわけで、シーンを切り替えて志摩子さんに会いに行くことができるようになりました」
祐巳「志摩子さんか。オープニングでなんか怪しかったものね」
祥子「次は偽物の私を調べます。もちろん〈RC〉で……成功」
〈RC〉とはレネゲイドコントロールの省略である。
GM「先ほどの偽物はジャームのようです。目撃情報があれば噂になってもおかしくありませんが、そういうことはありません」
祥子「身を潜めているということね」
蓉子「次は最近のリリアンでの変化を……成功」
GM「では、薔薇の館に出された同好会の申請書類の中にオーヴァードを思わせるサークルがあって、江利子さんが担当していることがわかりました。というわけでこちらもシーンを切り替えて江利子さんに会いに行くことができます」
蓉子「これは私の担当になりそうね」
瞳子「最後はRBの様子ですが、達成値ちょっと高いですね」
蓉子「《支援射撃》いる?」
《支援射撃》とは他人のダイスを増やすエフェクトである。
瞳子「〈知覚〉なら六個触れるので何とか……うっ!」
祐巳「六個振って、4と2と1しか出てないね」
祥子「素直にもらえばよかったのに」
瞳子「やり直すことはできますか?」
GM「一度失敗した人は無理ですが、他の人ならいいですよ。もし、全員が失敗したらシーンを切り替えて再判定になりますが」
祥子「では、私が〈RC〉で」
蓉子「念のため《支援射撃》」
祥子「成功です」
GM「では、観察しているとRBは偽祥子の話題になると落ち着きがなくそわそわしているようです。シーンを切り替えてRBを問い詰めることができます」
蓉子「今できるのは志摩子に会う、江利子に会う、RBを問い詰めるの三つね」
GM「他にやりたいことがある人がいればシーンは作れます」
蓉子「三つを済ませてから考えましょう」
GM「では、ここでシーンを終了します」
GM「次のシーンです。志摩子さんに会うのは」
祐巳「私です。このシーン以外出られなさそうだったので」
GM「RBの方に出てもよかったと思いますよ。それはさておき、昼休みに志摩子さんの方から声をかけてきて、講堂の裏手で一緒にお弁当を食べることになりました」
祐巳「ああ、そういえばマスターシーンで志摩子さん調査を頼まれたんだっけ。でも、あの人たちは――」
志摩子「どうしたの、祐巳さん」
祐巳「へ? もう始まってる?」
志摩子「何が始まってるの、祐巳さん」
祐巳「ううん。なんでもない……ええと、そうだ、桂さんから聞いたんだけど、最近フードをかぶった怪しい生徒がいて何か調べるよう頼まれたんだって?」
瞳子「お姉さま、PCはマスターシーンのことは知らないんですから混ぜちゃ駄目です」
GM「出てない人は参加しちゃいけません」
祐巳「そうだった。頼み事されたことは知らないことになってたんだ。じゃあ、『制服にフードの怪しい生徒がいるんだって?』」
志摩子「制服にフードは似合わないわよね」
祥子「さすが志摩子。フォローに失敗したわ」
志摩子「でも、どうしてそんなことを聞くのかしら?」
祐巳「うーんと、ほら、志摩子さんと一緒にいるところを見た人がいるっていうから、関わってるのかなって」
GM「志摩子さんは明らかに困っているようです」
蓉子「グダグダになったシーンをどうシリアスに盛り返そうかと?」
GM「そっちじゃありません!」
祐巳「じゃあ、話題を変えて、『志摩子さんはレネゲイドウィルスとかオーヴァードって聞いたことがる?』」
志摩子「ゆ、祐巳さん。なぜその言葉を知っているの?」
祐巳「いろいろあって、私、さっきオーヴァードになっちゃったらしいんだけど、よくわからなくて」
志摩子「な、何を言い出すの?」
祐巳「《ワーディング》って誰でもつかえるんですよね。じゃあ、使っちゃおうっと」
GM「祐巳ちゃんが《ワーディング》を発動すると志摩子さんが慌てて止めます」
志摩子「祐巳さん、《ワーディング》はむやみに使ってはいけないわ。《ワーディング》はオーヴァード以外は無力化できるけれど、オーヴァードは《ワーディング》に気づいてしまうから、他のオーヴァードに存在を教えてしまうことになるのよ」
祐巳「そうなんだ。で、志摩子さんはどうしてそれを知っているの?」
志摩子「ええと……それは……それは……私もオーヴァードだからよ」
祐巳「そうなんだ。じゃあ、フードの人たちとはお友達なの?」
志摩子「少し関わっているだけで友達ではないわね。彼女たちはすぐに力を使おうとするけれど、それでは関係のない生徒を巻き込んでしまう。私はそれを止めたいだけ」
祐巳「それって秘密結社って関係ある?」
GM「志摩子さんは観念したかのようにがっくりとうなだれます」
志摩子「祐巳さん、本当は何もかも知っているのではなくって?」
祐巳「私は何も知らないから聞いているんだけれど。ねえ、知っているなら教えてくれないかな?」
志摩子「祐巳さん、本当に知らないのであれば忠告しておくわ。レネゲイドの力を人々のためではなく、自分のゆがんだ欲望のために使おうとしているオーヴァードはたくさんいて、そういった人たちはオーヴァード以外の人や反対しているオーヴァードに平気でひどい事をしたり、時には攻撃したり、殺したりすることがあるの。もし、この先そういった人たちが何か言ってきてもファルハーツ(FH)という組織に関わることだけはしないで」
祐巳「志摩子さん?」
志摩子「もし、どうしても避けられないというのであれば黄薔薇さまを頼るといいわ。少なくとも悪いようにはしないはず」
祐巳「どういうことなの?」
志摩子「それ以上は言えないわ」
祐巳「フードの人たちは悪いことをしようとしているの?」
志摩子「別のセルのことは知らないけれど、リリアンで何か起こそうと動いているのだけは確かね。これ以上教えるわけにはいかないわ」
祐巳「うーん……じゃあ、志摩子さんはさ、どうしてそんな人たちと関わっているの?」
志摩子「私は生まれたときからこの力があって、当たり前のように彼らと関わっていたから。選ぶことができたら関わることを選ばなかったかもしれない」
祐巳「それって、やめることはできないの?」
志摩子「それを考えた時期もあったけれど、結局は逃げられないのよ。だから、今私にできることは関わっていない人に関わらないように忠告することと、すでに関わった人が暴走しないようにすることくらい」
祐巳「本当はやめたいんじゃないの?」
GM「志摩子さんは無言でそれ以上は口をきいてくれません」
祐巳「志摩子さんは手詰まりかなあ。フードの人を直接調べられますか?」
GM「フードの生徒を特定できなければ無理ですね。志摩子さんは問い詰めても彼女たちについて口を割りません。他になければこのままシーンが終わりますが」
祐巳「あ、そうだ。偽物の祥子さまそっくりのジャームがいたんだけど、何か知らない?」
志摩子「知らないけれど、そんなジャームがいるなら注意しておくわ」
祐巳「完全に手詰まりです」
GM「では、シーンを終えます」
GM「続いて江利子さんとのシーンですが、こちらに登場するのは?」
蓉子「当然私」
GM「ですよねー。場所は薔薇の館でいいですか?」
蓉子「聖は?」
GM「聖さんは用事があるので薔薇の館には来られません。まあ、来ても今回シナリオには関わってないので何の意味もないですが」
蓉子「あら、そうなの? 志摩子と一緒にFHの構成員とか敵対組織に関わっているとかではないの?」
GM「今回の設定では聖さんはレネゲイドウィルスに感染すらしてない普通の女の子ですよ」
蓉子「聖が普通の女の子! あはっ、これ以上普通の女の子が似合わない人もいないわ!」
笑い転げる彼女のせいで5分ほど中断しました。
GM「では、落ち着いたところで薔薇の館で江利子さんと二人きりです」
蓉子「はい」
江利子「あら、紅薔薇さま。昼はクラスの作業って言ってなかった?」
蓉子「あなたに聞きたいことが二つばかりあって」
江利子「舞台の搬入? 部の調整?」
蓉子「まずあなたが担当している同好会の申請書類を持ってきたオーヴァードを思わせるサークルについて」
GM「江利子さんの目が厳しくなります」
江利子「……あなた、いつからこちら側に関わるようになったの?」
蓉子「今朝から。おかげさまで数学の時間は問題を見ただけで解く前に答えがぽんぽん浮かぶようになったわ」
江利子「ふうん。今朝目覚めたばかりの人が何故オーヴァードのサークルに興味を持つようになったのかしら?」
蓉子「その目覚めるきっかけがフードをかぶったオーヴァードの生徒に殺されかけたから、といえばわかってくれるかしら」
江利子「蓉子にまで手を出すなんて……いいわ、教えられる範囲でなら答えてあげる。あのサークルは私たちも調べていたところだったのよ」
蓉子「私たち、ね」
江利子「私はオーヴァードに目覚めてすぐにユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク(UGN)という組織で訓練を受けて、リリアンで起こるレネゲイドがらみの事件に対処してきたの。さすがに一人では無理だから、何人かのオーヴァードの協力者と一緒に」
蓉子「あなたが正義の味方紛いのことをやっていたなんて意外ね」
江利子「そうでもないわ。不意に覚醒してしまった学園関係者のケアとちょっとした騒動の始末しかしてこなかったんですから。それが最近になってFHというオーヴァードを多数抱えたテロ組織の構成員の生徒が現れて、リリアンにFHのサークルを作ってしまっていた。そして、彼女たちは同好会として表立って行動しようとしている。UGNとしては当然阻止したいけれど、リリアンの生徒会長としては不備がなければその書類に判を押さなくてはならないでしょう。それであのサークルのアラを探そうと躍起になっていたところだったのよ」
蓉子「なるほどね。同好会の件は暴力行為の疑いありで不認可ということでいいんじゃないかしら。白薔薇さまは何とかしましょう」
江利子「協力感謝するわ」
蓉子「では、二つ目。今朝FHの生徒に襲われたときに祥子によく似た外見のジャームがいたのだけど、何か知らない?」
江利子「聞いてないわね。でも、ジャームがいるんだったら一般生徒に被害が及ばないように手を打ちましょう」
蓉子「それはお任せするわ」
江利子「ところで、蓉子はこれからどうするつもり?」
蓉子「どうする、とは?」
江利子「UGNに協力する気はなくって? あなたなら多少訓練すれば有能なエージェントになれるわ。それに、FHにまた襲撃されないとも限らないでしょう? エージェントといってもUGNの仕事に専念しないで日常的な職業について協力している程度のオーヴァードもたくさんいるもの。うまく利用するという感覚でもいいから、どう?」
蓉子「今はやめておきましょう。中立的な立場でいろいろと理解してから改めて考えるわ」
江利子「あなたがそう思うのであれば無理強いはしないわ。気が変わったらいつでも言ってちょうだい。歓迎するから」
蓉子「ありがとう」
GM「シーンを終了してよろしいですか?」
蓉子「その前に江利子にロイスを取ります。『友情』『脅威』で」
GM「ここで終了します」
GM「次はRBに詰問です。寄生されている瞳子ちゃんは自動登場」
祥子「私も出ます。侵蝕率上げたいので」
GM「それは構いませんが、場所はどこにしますか?」
祥子「中高の共通施設の図書館にしましょう」
GM「OKです」
祥子「二人で並んで本を選んでいるふりをして話しかけましょう。『ねえ、あなたはなぜわざわざ瞳子ちゃんを覚醒させたの?』」
RB「それは……まあ、いろいろです。レネゲイドパワーとでも申しましょうか」
祥子「いろいろねえ……瞳子ちゃんが腹話術で話しているわけではないわよね?」
瞳子・RB「もちろんです!」
祥子「いったい何者なの?」
RB「な、何者って言われましても、なんと申しましょうか――」
祥子「いろいろと隠していることがあるのではなくって?」
RB「気のせいではないですか」
祥子「気のせいではないわ。リリアンでは校則の緩い高等部の方が動きやすいのに高等部に通う生徒ではなくわざわざ中等部に通っている瞳子ちゃんに寄生したのはなぜ?」
RB「そ、それは――」
瞳子「私もそれは気になっていました」
GM「では、〈意志〉で対決です。難易度は12で」
祥子「あら、失敗」
瞳子「あ、一個ですが二回もクリティカルして成功です」
GM「ではRBは根負けして話し始めます」
RB「信じられないでしょうが、私は未来から来ました」
祥子・瞳子「未来?」
RB「祥子さまが紅薔薇さまになった直後から山百合会の面々はオーヴァードに覚醒し、秘密結社からリリアンを守るために戦ったのですが、長い激闘の末全員が死亡するかジャーム化したのです」
祥子「な……」
RB「瞳子はその戦いに巻き込まれて、ジャーム化しました」
瞳子「なんですって!?」
RB「そのジャーム化した瞳子を介錯したのが私です」
祥子「他に方法はなかったの?」
RB「一度ジャーム化すると元に戻す方法はありません。暴走する前に凍結保存するという方法もあるようですが、そうはいっていられない状況でした」
瞳子「……暴走して実害を与えたのね」
RB「瞳子が悪いんじゃない。覚醒するのが遅くて、レネゲイドをコントロールすることを教えてあげられなかった。衝動を抑え込む練習をしておけば……そして、私はそれを教えられたかもしれないのに……」
二人は言葉を失う。
RB「私はこの姿になる前、人間でした。戦いが終わったら瞳子を妹にするつもりだったのに、その瞳子を殺してしまった」
祥子「あなたはどうしてそんな姿に?」
RB「あの時瞳子と戦えるのは私しかいなくて、私は瞳子の攻撃が致命傷となって死ぬはずでした。それがどういうことかこうなったんです」
祥子「あなたのお姉さまは? いたのでしょう」
RB「それより前にマスターエージェントと呼ばれる強敵と刺し違え、帰らぬ人になりました」
祥子「つまり、早く覚醒させて瞳子ちゃんが力を使いこなせるようになればジャーム化しないと思ったわけね」
瞳子「短絡的すぎます。あなたのいた世界の私にはあなたのような存在が傍にあったのでしょうか。なかったのであればそれだけでこの世界はあなたのいた世界と違う結末になる可能性があったのに、あなたのせいで巻き込まれるのが早くなっただけじゃないですか」
RB「そ、それは……」
祥子「落ち着いて、瞳子ちゃん。逆にわかっているのであれば大惨事を回避できるかもしれないのよ。こうなってしまった以上は取り返しのつかないことを罵るよりこれからについてを考えましょう」
RB「うう、すみません」
GM「このシーンで他に聞いておきたいことややっておきたいことはありますか?」
祥子「特にありません」
瞳子「私も」
GM「では、ここでシーンを切ります」
GM「では次のシーンです」
祥子「あ」
GM「どうしました?」
祥子「また侵蝕値が1しか上がらなかったのよ。私、100%制限のエフェクトを取ったのに、これでは活躍できないまま終わってしまいそうだわ」
蓉子「私は控えたいのにやや多め」
GM「そういう日もあるもんですよ。ええと、それぞれのシーンの直後で、蓉子さん、祐巳さんは一人です。場所は別々ですが全員シーンには登場しています。そして、祐巳ちゃんの前に偽祥子ジャームが現れました」
祐巳「おおお?」
GM「《ワーディング》が展開されて、祐巳ちゃん以外の皆さんは祐巳ちゃんを探して駆け付けるための判定をしてもらいます。その間祐巳ちゃんはジャームの攻撃を耐えてください」
祐巳「うへ」
GM「倒せるなら倒してもいいですけど……一人では倒せない程度には強くしてあります」
祐巳「死にますって!」
GM「死んだら《リザレクト》で起き上がればいいんです……侵蝕値ガンガン増えますけど」
祥子「そっちに回りたかったわ」
GM「駆け付けるための判定ですが、まず場所を特定する判定は【感覚】か【社会】の技能で難易度15でお願いします。次に達成値30以上の攻撃を1回をしてもらいます。両方成功したら1ラウンド目に間に合い、片方だけでしたら2ラウンド目、両方失敗したら3ラウンド目に登場します」
祐巳「全員失敗したら3ラウンドやられっぱなしの危機じゃないですか!」
蓉子「そんな大ダメージ厳しいわ」
GM「同じ場所にいる人はどちらか一人が判定して支援エフェクト使い合っていいですよ。では、どうぞ」
祥子「支援エフェクトなんてないわよ」
瞳子「私もです。とりあえず……あっ、27で場所が特定できました!」
祥子「攻撃は使えないのが多いから、シンプルに……ごめんなさい、15しか出ませんでした」
瞳子「じゃあ、私やってみます……24失敗!」
蓉子「15ぎりぎりで場所は特定できたけど……無理」
GM「では全員第2ラウンドに現れるということで。祐巳ちゃん、まずは〈知覚〉で難易度18の判定をお願いします」
祐巳「全然届きません」
GM「攻撃しましょう。《雷の加護》+《螺旋撃》、《コンセントレイト:ブラックドッグ》+《雷の槍》……24です。祐巳ちゃんはクリティカル値が上がるので、10が出てもクリティカルにはなりません。ダメージ36pです」
祐巳「それは死にます。《リザレクト》で7点回復しました」
GM「次は祐巳ちゃんの番です」
祐巳「では変身しながら接近して、攻撃です……うっ、こんなに振ったのに達成値17って」
GM「避けられなかったのでダメージどうぞ」
祐巳「うう、11しか行きません」
GM「では第2ラウンド。戦う前に〈知覚〉で判定です。蓉子さんは難易度18、祥子さんは難易度15、瞳子ちゃんは難易度12でお願いします」
蓉子「あれ、私だけ高い?」
祥子「いえ、私たちが下がったんですね」
GM「(気づかれましたか)それを言うためには15以上を出さなくては」
蓉子「ダイスボーナスがついたのに失敗」
祥子「成功!」
瞳子「難易度低いのに6個で失敗……」
GM「では、祥子さんにはわかります。ジャームとRB、お互いを見つけてから様子が変わりました」
祥子「あのジャームとRBは知り合い、もしかすると一緒に未来から来たのではなくって」
GM「その通りです」
祥子「そして、こちらにいるRBは未来の私の妹だった」
GM「よくわかりましたね」
祥子「なんとなく祐巳に似せるように努力してらしたから」
GM「バレバレでしたか」
瞳子「私だって気づいてましたが、ダイスが出なかったんです」
祐巳「じゃあ、ジャームの方は未来のお姉さまの変わり果てた姿?」
GM「惜しい」
瞳子「わかりました。私ですね」
GM「正解! 未来の瞳子ちゃんがジャーム化したのは祐巳ちゃんの姉妹として祥子さんの穴を埋められないのではというプレッシャーも一因になっていたんです。よくわかりましたね」
瞳子「GMが私のシートを休憩中もしつこく見ていて、出てきた敵がブラックドッグ/エグザイルだったので」
サプライズのつもりがバレバレだった。
GM「では、判定に成功したのでここから先はジャームを説得できます。難易度は〈意志〉で18。ただし、何らかの手段で下げることはできます」
祐巳「あ、わかった。ロイスだ」
蓉子「冒頭でやたらと説明に時間を割いていたのはここのヒントのつもりだったわけ?」
どこまでもバレバレである。
瞳子「私からですね。それではジャームに『親近感』『恐怖』で取ります」
GM「ロイスを取った場合は13で判定してください」
瞳子「まだダイスボーナスがないので1個じゃ……無理」
祥子「私もジャームにロイスを取ります『執着』『憐憫』にでもしておきましょう……失敗です」
GM「説得に失敗しているので攻撃です。さっきのコンボに全体攻撃になる《雷神の槌》と《細胞侵蝕》という重圧と邪毒付与のエフェクトを加えて達成値25、ダメージは29です」
蓉子「瞳子ちゃんに《ディフェンスサポート》」
瞳子「HPがぴったり29だったので助かりました」
蓉子「私はリザレクトして6pで復活」
祐巳「私もリザレクトで6p復活です」
蓉子「私は待機して祐巳ちゃんに《支援射撃》」
祐巳「変身しなきゃよかったかな。ジャームにロイスを『庇護』『恐怖』で……おっ、16で成功しました!」
GM「説得が効いて、ジャームは動きを止めます」
蓉子「さすがお姉さま」
瞳子「ダイス目ですけどね」
GM「ジャームが動きを止めたところで何者かがジャームを攻撃します」
祐巳「え?」
GM「攻撃してきたのはフードをかぶっている生徒たちです」
蓉子「来たわね」
GM「ジャームは倒されて消滅しますが、ここで演出と変化が起こります」
瞳子「ん?」
消えゆくジャームの意識が流れ込んでくる。祐巳がロザリオを差し出してくる。
それを断る瞳子。
「すべてが決着したらそれをいただきます」
優しくうなずく祐巳。
場面が切り替わり、レネゲイドウィルスに侵されて暴走する瞳子。
「瞳子、せめて私の手で」
祐巳と瞳子が差し違える。
二人が倒れていくとき、祐巳のポケットに入っていたロザリオが大きく輝いた。
GM「つまり、このRBとジャームの正体はロザリオの鎖と十字の部分にそれぞれ二人の意識が宿ったものだったのですが、瞳子ちゃんの方はジャーム化したままだったのです。さて、祥子さん、ロザリオに次のデータを適応してください」
紅薔薇のロザリオ
種別:その他
解説:あなたが行うメジャーアクションの判定のクリティカル値を1下げる(下限値4)。
この効果は他のアイテム、Dロイス、エフェクトと重複する。1シナリオに1回使用可能。
祐巳「あ、それは欲しい」
祥子「あなたは学園祭の夜まで受け取らなかったでしょう」
GM「そして、ここでシーンを切ってクライマックスとしてフードをかぶっている生徒たちと戦います。状況が状況なので回復はできません。ロイスの取り忘れはないですか?」
蓉子「あ、祐巳ちゃんに『優位』『嫉妬』で取ります」
ここで全員がロイス枠を埋め、クライマックスに突入した。
■CLIMAX PHASE■
GM「ではクライマックスです。難易度9の衝動判定をお願いします。侵蝕率は成否にかかわらず2Dあがります」
蓉子「うう、成功したけど96までいってしまったわ」
祥子「ええっ、私は67しかないですよ」
祐巳「私は90」
瞳子「私は76です。エフェクト使わなかったので」
GM「もう少しミドルで苦戦する思っていたので誤算でした。特に祥子さん、低すぎ」
祥子「登場するたびに1と2しか出なかったのよ」
蓉子「私、10が2回出たから、その差かしらね」
GM「敵は三人、距離は15m離れてかたまってます。敵の一人、空手部員ちゃんが《フルパワーアタック》を宣言しました。行動値は最後になりますが、大ダメージが来ます」
蓉子「こっちはありません」
GM「行動順はこちらからですね」
聖書朗読部員ちゃん「《主の恩恵》、《コンセントレイト:エンジェルハイロウ》+《スターダストレイン》+《光の手》+《茨の輪》+《アシッドボール》……うわ、達成値23とか低すぎますわ!」
聖書から光が発せられ、キリストのかぶせられた茨の冠のようなものが次々と飛んでくる。
蓉子「全員失敗ね」
GM「ダメージは3ですが、装甲値-5、さらにラウンド中のダイスが2個減ります」
祥子「《リザレクト》します。これで侵蝕値が……4」
瞳子「ジェネシフトで侵蝕率を上げて《オリジン:ヒューマン》、《コンセントレイト:ブラックドッグ》+《バリアクラッカー》+《死神の針》で、まだ動いていない生徒を攻撃!」
活動を活発にしたRBが伸びて電気を帯びた螺旋状の針を無数に発射する。
瞳子「達成値は25です」
お菓子作り同好会員ちゃん「よ、避けられませんでしたわ!」
瞳子「ダメージは13ですが装甲ガード無視ですので」
お菓子作り同好会員ちゃん「《ハンドレットガンズ》+《炎の加護》、《コンセントレイト:サラマンダー》+《ペネトレイト》+《炎の刃》+《クロスバースト》を紅薔薇のつぼみに!」
激しい炎の銃弾が祥子に襲いかかる。
祥子「ダメージをよこしなさい!」
GM「装甲値無視の37ですね」
祥子「《リザレクト》で9復活」
蓉子「次の祥子の攻撃に《支援射撃》」
祥子「ありがとうございます、お姉さま。《コンセントレイト:ウロボロス》+《餓えし影》+《貪る顎門》! 達成値26」
影が生き物のように伸びると敵に向かって襲い掛かる。
GM「ダイスペナルティが効いてますね。でも、避けられないからダメージが来てしまうのか」
祥子「ダメージは23に放心が入ります。ここで《背徳の理》で次のダイスを増やします」
GM「キミたちダイス増やすの好きだなあ。今度はこっちのダイスが2個減ってしまった」
蓉子「一応攻撃しておきましょう。《コンセントレイト:ソラリス》+《言葉の刃》+《錯覚の香り》をダメージが多いお菓子作り同好会ちゃんに」
紅薔薇さまの威厳ある言葉が一つ一つ突き刺さる。
GM「こっちも避けられない」
蓉子「ダメージは……3しかいかないって、これはひどい!」
GM「装甲値無視なのでしっかり入ります」
祐巳「ええと、《完全獣化》+《破壊の爪》+《ハンティングスタイル》で変身しながら移動しても届かないや」
蓉子「どうせこのラウンドでは倒せないから、全力移動しちゃいなさい。空手部員ちゃんの攻撃は《ディフェンスサポート》を飛ばすから」
祐巳「では、移動で終えます」
パンダに化けた祐巳はとてとてと走って敵の目の前で止まった。
空手部員ちゃん「《完全獣化》+《一角鬼》+《斥力跳躍》で移動」
蓉子「こっちに来ちゃった」
空手部員ちゃん「《コンセントレイト:バロール》+《巨人の斧》で紅薔薇のつぼみを攻撃!」
祥子「まだ《リザレクト》できるのでエフェクトは結構です」
異形の手が伸び祥子に振り下ろされる。
GM「21しかいかなかった」
ダメージ46で一度は倒れるも祥子は起き上がる。
GM「これで1ラウンド終了です」
聖書朗読部員ちゃん「《スターダストレイン》以外先程と同じコンボを紅薔薇のつぼみに!」
祥子「集中攻撃が来てるわね」
蓉子「ダイスペナルティ狙いね。いいわ。《リザレクト》もできるし、私がこのラウンドの攻撃を放棄して、祥子をかばう!」
祥子を射す光に割って入る蓉子は倒れ、起き上がる。
蓉子「あら、もう一回《リザレクト》できるわ」
GM「ええっ、まだっ?」
瞳子「《異世界の因子》で《炎の刃》をコピー。そして、先程のコンボに《炎の刃》を加えて聖書朗読部員ちゃんを攻撃します!」
GM「ひいいい!」
瞳子「達成値57!」
RBから電撃と炎を帯びた螺旋上の無数の針が発射される!
聖書朗読部員ちゃん「無理ですわ!」
瞳子「ダメージ35!」
GM「聖書朗読部員ちゃんは倒れました」
蓉子「ここで『触媒』で祐巳ちゃんに動いてもらう。祐巳ちゃん、お願い」
祐巳「はい。《コンセントレイト:ハヌマーン》+《疾風剣》+《マシラのごとく》でお菓子作り同好会員ちゃんを攻撃します」
パンダから恐ろしい速さで拳が振り下ろされる。
祐巳「あらら、28しかいきませんでした」
お菓子作り同好会員ちゃん「だ、駄目でした!」
祐巳「ダメージは17!」
GM「うわ、ぴったり0に!」
祥子「そして私の番。《コンセントレイト:ウロボロス》+《餓えし影》+《原初の黒:プラズマカノン》、ロザリオの効果も使います!」
蓉子「判定の前に《支援射撃》」
空手部員ちゃん「来たあっ!」
どす黒い影から炎があがる。
祥子「達成値44」
空手部員ちゃん「避けられないっ!」
黒い炎が敵を燃やしていく!
祥子「ダメージは55!」
GM「空手部員ちゃんも倒れました。終了です」
■ENDING PHASE■
GM「では、バックトラックです。初めてだからもう少し手間取るかと思ったのですが、意外に頑張ってくれましたね」
全員が無事に日常に戻った。
放課後、瞳子は掃除をしていた。
RB「瞳子、後で薔薇の館に行こうか」
瞳子「私は中等部の生徒なのですから、気安く行けません」
RB「わかった、二人の方がいいんだね」
瞳子「そういう意味じゃありません!」
RB「照れなくてもいいのに。これからずっと一緒なんだし!」
瞳子「何がずっと一緒ですか! こんな事態になってどこまでおめでたいことを言う気です? 私はレネゲイドを研究して、いつかあなたと別れてみせますから!」
RB「そんな気ないくせに。つんつんしちゃって可愛いの」
瞳子「わかりました、せめてこんなふざけたお姉さまではなく、もっとしっかりしたお姉さまを探して未来を変えてみせます!」
RB「それはどうかな〜」
瞳子「私は絶対に未来を変えてみせるんです!」
RB「うん、期待してるから」
瞳子は深いため息をついた。
同じころ祐巳はクラスメイトの武嶋蔦子につかまっていた。
蔦子「祐巳さん、今朝こんな写真を撮ったのだけれど」
祐巳「これは!」
祥子が祐巳のタイを直している写真であった。
祐巳「これ、ちょうだい」
蔦子「いいけど、二つばかり条件が。一つは学園祭の写真部の展示コーナーに飾らせること。もう一つは紅薔薇のつぼみに許可をもらってくること」
祐巳「ええっ!」
祐巳は断れずに薔薇の館に向かった。志摩子と合流し、二階の会議室の前で。
祥子「横暴ですわ! お姉さま方の意地悪! ……わかりました。そうまでおっしゃるなら、ここに連れてくればいいのでしょう! ええ、今すぐ連れてまいります!」
ドアが開いた瞬間飛び出してきた祥子が祐巳を直撃して倒れた。
祥子「あなた、お姉さまはいなかったわよね?」
祐巳「へ? いません、けど」
祥子「結構」
祥子は祐巳を連れて薔薇さま方の前に進み出る。
祥子「お姉さま方にご報告いたしますわ」
蓉子「まあ、一体何が始まるの?」
どうやら三人の御縁は始まったばかりのようである。
†ダブルクロス in マリア様がみてる『胸騒ぎの月曜日』†
■END■