No.363→No.364→No.375の続きです。
2月某日 決戦の日まで、あと4日
「で、出来た〜〜〜………」
「……うんうん、出来たね……」
「奇跡かしら……マリア様ありがとうございます」
今日もまた、飽きもせずに家庭科室でチョコを作る練習をしました。 5回目です。
入れる物がとんでもなかったらしい1回目。
変な呪文を唱えてチョコが怪物になってしまった2回目。
3回めと4階目は割愛………。
「思い浮かばなかったのね」
志摩子さんここに突っ込まないで。 3階目位から先生方も貸し渋りだして今日もカギを借りに行くと『先生はあなた達のことを信じているからね…』と涙目で手を握って下さった。
この頃になると生徒の間にも『山百合会の二年生が家庭科室で何かしているらしい』と噂が流れていて中には 『山百合会三年生に対するクーデターを計画している』 とか 、
『頭に葉っぱを乗せて人を化かす練習をしている』 とか、『姉の正しい折檻の仕方を講習している』 とか、『代々伝わる密教の惚れ薬の調合をしている』 とかいうのを、『こんな噂が流れています』と、山百合会の間者可南子ちゃんが教えてくれた。
なんていうことを考えているといきなり扉が開いて”報道”っという腕章をつけておなじみのメモ帳を片手に持っている真美さんとテレコを肩から下げてマイクを片手の日出美ちゃん。 カメラを構えて何かに突入するような勢いで入ってくる蔦子さんと笙子ちゃん。
「おめでとうございます!! 紅薔薇のつぼみ、黄薔薇のつぼみ。 チョコレート作りに成功されたようですね、その感想はいかがでしょう?」
「感無量です」
「ちょっと由乃さん、何を乗って答えてるのよ」
「今回一番困難だったのは何ですか?」
「やはり”絶対あ〜したほうがいい””この方がいいんじゃないか”という気持ちを抑え基本に徹したことでしょうか」
「この気持ちを誰に伝えたいですか? そして、チョコレートは誰に渡すのでしょうか?」
「それはもちろん………、お姉さまに伝えておきます。 一応(小声)」
なんだかよくわからない記者会見もどきが始まって、ハンカチで目元を押さえながら答えている由乃さん。
忘れているかもしれないけど、それ練習用に作ったものですから。
本番用のは自分一人で作るんだよ………。
島津家がどうなったのかは、新聞が東京版でないと分からないかもしれません……合掌。