【426】 空の箱羽毛掛け布団  (くま一号 2005-08-28 00:29:49)


忘れた頃にやってくる1/1マリア観音シリーズ
【No:61】 琴吹さんの「達人の域に達した聖が否定する」の続きになっているかどうかも、もはやさだかではなく。
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「祐麒!? 祐麒!! なによこれ。」

 日曜日の朝っぱらから福沢家の玄関先にどっかんと置かれているのは、空の箱、それも大きさ形は棺桶とも思える長方形の立派な木箱。しかしなんだか立派な塗りの箱で、なかには布団みたいなものが敷いてある、といえば棺桶じゃないよね。

「なんだよー祐巳ー。あ・・・。」
「あって何よ、あって。なにこれ? なにか知ってるの?」
「いいいや、知らないけど。お父さんの仕事関係じゃない?」
「事務所じゃなくてうちに?」
「建材のサンプルとか。」
「塗りの木箱にふかふかクッション? 建材ってより美術工芸品って感じよね。」
なかを覗いて見る祐巳。

「これ、羽毛布団だよ。わーなんかだれかこれに閉じこめて誘拐してきたところみたいだわ。」
「そ、そ、そう?」
「なんかあわててるわね、祐麒。まさか。」
「人さらいなんてしないよっ。」

・・・・・そういえば、もう2ヶ月近く前だけど。どういうわけだか私の等身大フィギュアが、それも別口で二つ作られたって噂があったのよね。お姉さまたちも、蔦子さんや真美さんもどうみてもあやしかったんだけどだれも口を割らなかったのよねー。
そういえば、乃梨子ちゃんのマリア観音はどうなったのかしら。

「邪魔でしょ、片づけとくよ。」
「ちょっとまて、祐麒。そのフタ見せて。」
「いや、別に何もないから。」
「見せなさいってば。」
「あああ、あの、こういうものは空箱も中の布団もヤフオクなんかで値段が付くんだから、あんまり乱暴に扱うと」
「なんですって? ちょっと貸しなさい。」

宛先 福沢祐麒、 差出人・・・・・・佐藤 聖。
あああぁぁぁぁ。
やっぱりそうかい。

「祐麒っ!」
「はいっ。」
「持ち物検査。」
「いや、あのね、祐巳、送りつけられたものはしょうがないわけでその、佐藤さんが」
「男の子は言い訳しない。」

じりじりと後ろ向きに階段を上らされ、自分の部屋の方へ追いつめられる祐麒。
こういうときにはどういうわけか迫力のある祐巳がずずずずずっと迫る。

「あんな大きな物簡単に隠せるわけないでしょ。きりきり白状しろいっ。」
「いや、そのちょっと、祐巳が見たらショックかなーと。」
「そのショックなものを祐麒が自分の部屋であーしたりこーしたりしてるわけ?」
「いいいやあの祐巳、仮にもおとおとおとととうとなわけで。」

ばたん。
「きゃーーー、なにこれーーーー。」
「・・・・・・(ついに最後の日か・・・・)。」

「本人の私よりいいもの着てるじゃない〜〜〜〜〜〜。なんなのよ〜。」

(がうぉ。つっこむところはそこかい。)

「これ、ゴスロリっていうの? こういうふわふわひらひらって、由乃さんだと似合うんだけどねー。どうせ聖さまのことだから、私のサイズそのままに作ったんでしょ。この衣装ちょうだい。」
「は?」
「だからあ。人形が本人より豪華なもの着てるって許せないからちょうだい。」
「おまえ、そんなの着るの?」
「うーん、コスプレって一度はしてみたいと思わない?」
「俺のコスプレで充分だろ。」
「へんなこと思い出させないでよ。」
「で、その、中身はどうするの?」
「そうねえ、目の前にいると気持ち悪いから祐麒どうにでもして。」

(あ、そう)

「で、俺が・・・・ぬがすの?」
「相手はマネキンよ。」
「そりゃ・・・・(そうだけど)・・・。」

・・・・・・衣ずれの音だけ3分27秒。

「ありがとー。聖さまにも御礼しとこっかなー。じゃね。」

(先代白薔薇様、祐巳はとてつもなく健全に育ってます。)
ぐったり、と、倒れ込む祐麒、と、つぶされたフィギュアから

『ぎゃう』

(どきいいいいっっっっっ。って、あれか、祐巳って抱きつくとこんな声をだすのか。)
(って、聖さんってうらやまじゃなくてあぶない人だったんだなあ。)

最近、あらゆる相手とカップリングでモテモテの彼も所詮ただのシスコン、
服をぬがされた1/1祐巳フィギュアの前でひとり悶々と悩む祐麒であった。

(これ、さわれない、よなあ。どうしよう。あっちへ送りつけるか・・・・・)


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