【430】 女王恋と危険渦巻くキャンペーン実施中  (くま一号 2005-08-28 09:21:11)


【No:428】 紛れもないパワー強力マスコットガール くにぃさん作 の続きです。

 そういうものが、この人に報告されないわけはない。

 小笠原家のリビング。訪ねてきたのは松平電機産業パーソナルオーディオ事業担当専務と技術者が二人。
 松平姓なので、どこかで瞳子と親戚らしい専務が言う。
「どうでしょう。お嬢様。われわれとしては、音楽配信サービスを同時に立ち上げて日本国内生産の地の利とドリソニックブランドでeyeTunesに先行したいと考えておりますが。」
「松平専務。この、マスコットガールとってもよくってよ。これは瞳子ちゃんが持ってきたデータを使ったんだと思うけど、現実のキャンペーンではどうするの?」
実務レベルではその程度の理性は持っている祥子である。

「は、今回も、まゆ、で行きたいと。デジカメで好調を維持しておりまして好感度は高いですから。」
「うーん、また体脂肪がどうとか言いすぎると女性の反発を買うわよ。」
「いえ、あれが女性の購買層に訴求力が高いんでございますよ。」
「そうねえ、でもどう見ても祐巳の方が上ですわね。」
「はあ、その小笠原、松平両家のお嬢様がそうおっしゃるのならば、あるいはその方をキャンペーンと同時に売り出す・・・。」
「だめですっ。それは許しません。」
何百万人が祐巳の姿と声を毎日あんなことやこんなことして楽しむなんて許すわけがないじゃないですか。って、そういう理性なわけね。そのへん、瞳子はまだまだ、である。

「はあ、実際のところ、社内には祥子お嬢様や瞳子お嬢様の方がまゆよりもよほど売れるのではないかという意見もございますのですが。」

 そういえば、瞳子ちゃんにプレゼントしてもらったのを祐麒さんに貸しちゃった、そう祐巳は言ってたわね。
「ふふふ、おもしろいわ。それなら松平さん。ほんの冗談ですけど、わたくしと瞳子のモデル、一つずつお作りくださいませんか。自分がどんなふうに見えるのか、商品として見てみたいわ。」
「はあ、喜んでお作りさせていただきます。ですが・・・。」
「本番のキャンペーン? まさか私や瞳子ちゃんがやるわけはないわよ。まゆで結構だと思いますわよ。それとねえ、このデザイン。ちょっと似すぎてるわねえ。」
「はあ、それはちょっと検討段階でも問題になったのですが。」
「インパクトがたりないのよ。たとえばね。」

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「瞳子ちゃん。」
「祥子お姉さま、あれは商品化しないって申し上げておりますのに。」
「これでも?」
「って・・・・あ・・・・。」
「祐巳に祐巳のyPodを渡すなんて、ばかね。」

『祐巳さま、次の曲をお選びくださいませ。』

「祥子お姉さま、ありがとうございますっ。すぐ祐巳さまにお渡しに」



「今すぐ行けなんて言ってないのに・・・・。」

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ドリソニック ハードディスクタイプ携帯音楽プレーヤー
『Drill-snap』
 イヤーホンのコードが邪魔にならないためと衝撃吸収のため「本体の両側から『ドリルのようなカールコード』が出ている」のが特徴。これが実に使いやすい。
 本体を顔のイメージにデザインして『縦ロールのお嬢様』の雰囲気を出したのが女性層になぜかうけている。まゆが「お蝶夫人のような縦ロール」でキャンペーンを張り、eyePodを急追する勢いである。

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「あ、お姉さま。これありがとうございました。お姉さまのアヴェマリアを弾く姿を見ていたら通学時間なんかあっというまに過ぎちゃって、結局ダウンロードした曲ってほとんど聴いてないんです。」
「よろこんでもらえてよかったわ。祐巳。」
「瞳子ちゃんにももらったんだけど、余っちゃうからまた祐麒に。瞳子ちゃんのファン、花寺にも多いんですって。」

 まだまだ甘いわね。瞳子ちゃん。


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