作者:水『あつかましいさーこさまとアイデア料理【No:353】』の続きっぽい物?です。
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今の時間は調理実習。 先生の説明の後、クラス一斉に調理に取り掛かった。
由乃は祐巳さんと一緒に具と中華スープ作り。 今は大さじ小さじや台秤で、調味料の計量中。
直ぐそこでは同じ班の真美さんと蔦子さんが、小麦粉の塊と格闘している。
これは真剣勝負。
由乃はあまり料理は得意ではないが、やるからには負けられない。 それになにより昼食も掛かっているのだし。
「祐巳さん、野菜は洗い終わった?――って、まだいじけてるの?」
祐巳さんは先生の説明の直後からずっとこんな調子。
「だって…… 酷いよ、こんなの……」
由乃にも気持ちは分からなくも無い、気がしないでもないが。
「そんなの普通間違える方がおかしいわよ。 ほら、祐巳さんいそいで」
「私、騙されたんだね……」
「騙された、って、そりゃまた大げさね」
「あらかじめ、違うものなんだってちゃんと説明してくれたっていいじゃない。 私、先週からずっと楽しみにしてたんだよ」
「…… そんな説明、普通『親父ギャグ』って笑われるだけだわよ」
「私、世界がこんなに厳しい物だって知らなかったよ……」
「あのね……」
「生きるって辛い事だったんだね……」
「…… 祐巳さん、もしかしてギャグで言ってるの?」
「そんなわけないじゃないっ! こんな裏切り、私許せないよ…… 酷いよ…… う、うぇ〜〜ん……」
「ああもう、こんな事で泣かないでよ…… しょうがないわね。 真美さん、蔦子さん! こっち私一人でやるから、手が空いたらヘルプお願いね!」
それから三人慌ただしく働いて、戦力四分の一減の割には確たる戦果を挙げる事が出来た。 美味しかった。
祐巳さんはずっとあの調子でベソかいていたんだけど、我ら三人の戦果はきちんとたいらげてた。
その後お昼休み以降も祐巳さんは塞ぎこんだままで、みんな困っていたんだけど。
不思議なお客様、岡持ち下げた祥子さまのお母さまが、放課後の薔薇の館に突然訪れて。
甘党の祐巳さんの空想上の『あんかけ焼きそば』を人数分置いていかれたので、祐巳さん一人だけには笑顔が戻った。