がちゃsレイニーーシリーズです。
篠原さんが書いた、【No:389】過去から未来へと繋ぐ志摩子さんのこころの続きになります。
お姉さまと帰ったその日の夜。
由乃さんから、連絡があった。
「明日、朝早めに来て欲しいんだって、志摩子さんがなんか重要なことを提案したいって」
「うん。……わかった。ありがとう」
そういって、電話を置く。
学校では志摩子さんと瞳子ちゃんの話は白薔薇革命とかいって話題になっている。
「学校行きたくないな」
瞳子ちゃんにあって話をしなくちゃいけない。志摩子さんとも話をしなくちゃいけない。
でも、私は何を言っていいかわからない。
お姉さまが言ってくれたを思い返す。
『私は私、瞳子ちゃんは瞳子ちゃん。瞳子ちゃんに私を重ねていたのは、祐巳の方かもしれないわよ。』
お姉様を重ねていたのは私なんだろうか? わからない。
でも、このままじゃいけないのはわかっている。志摩子さんと、あんな状態でいるのは嫌だし、瞳子ちゃんとの関係もあのままにはしておけない。
何とかしなくちゃいけない。そう思ってはいるけれど、どうしていいかわからない。
このままでは、瞳子ちゃんを志摩子さんに取られてしまう。そんな気持ちが私の中に湧いてきている。
瞳子ちゃんは、私のものではないのに。でも、瞳子ちゃんが志摩子さんに持って行かれてしまう――志摩子さんの妹になってしまうのはのはなぜだかすごく嫌だった。
とりあえず、明日。明日、お昼休みにでも瞳子ちゃんを呼び出してお話ししよう。
お話ししてみれば、どうにかなるかもしれない。元々、莫迦なんだから、考えていてもしょうがないし。
私は大きくため息をつくと、部屋に戻った。
その日は結局、なかなか寝付けず、私が寝たのは朝の5時頃だった。
翌朝、志摩子さんの招集で、薔薇の館に全員が集まった。全員といっても、志摩子さんを含んだ3人の薔薇さまと私と由乃さんと乃梨子ちゃんの6人だけだけれども。
みんなが集まると、志摩子さんは、すぐに口火を切った。
「今日は、朝早くすみませんでした。重要な話を早くしたくて、皆さんをお呼びだてしました」
志摩子さんはそういって頭を下げると、乃梨子ちゃんを見て、私を見た。
「で、わざわざ、呼んだのは何のようなの?」
お姉さまが先を促す。
「まず、報告があります。昨日、私は松平瞳子さんにロザリオを渡し、彼女はそれを受け取りました」
みんなが目を丸く開き、視線が乃梨子ちゃんに集中する。
私は、それを信じられない思いで聞いていた。
目の前が真っ暗になり、さーと血の気の引く音を確かに聞いた。
次の瞬間、おでこに何かがぶつかるような感触とゴンという音がきこえたあと、何もわからなくなった。
チャイムが鳴る音で、私は目を覚ました。
気がつくと私はベッドに寝かされていた。
「保健室?」
天井を見つめながら、ぼんやりとした頭で考える。
えっと確か、薔薇の館で……。
回転しない頭で、必死に考えていると、しめられていたカーテンがが開いた。
「祐巳さん。大丈夫?」
そういって顔を出したのは、由乃さんだった。
「うん。多分。えっと、私よくわかっていないんだけど、何が起きたの?」
「うん。祐巳さん、志摩子さんの話聞いていて、倒れちゃったの。覚えていない? ……えっとね、志摩子さんの提案。要点だけ言うわね。気をしっかり持ってね」
由乃さんはしばらく言いよどんでいたが、性に合わないと感じたのか、話を続けた。
「まず、志摩子さんが、瞳子ちゃんにロザリオを渡したと言うこと。当面、瞳子ちゃんを妹に、乃梨子ちゃんを山百合会手伝いという立場で使いたいと言うこと。そして、姉妹の多夫多婦制の提案」
私は、由乃さんの言うことが理解できなかった
「多夫多婦制ってどういうこと?」
「つまり、一人の姉に、一人の妹という制度を無くして、誰もが何人ものお姉さまと何人もの妹を持つことにしたらどうかという提案。山百合会の承認が得られれば、新聞部に掛け合って、白薔薇さまが妹を二人持ったということを報道してもらうって。姉妹制度自体、元々、明文化されているものではないし、最初に誰かが始めれば、後を追うものはきっといるはずで、志摩子さん自身がその先鞭をつけたい。そんな風に言ってたわ。祐巳さんが倒れちゃったこともあって、この件は保留になっているけど」
「そんな……」
私は、由乃さんの言葉に、ただ絶句するだけだった。
【No:510】へつづく