「かしらかしら」
「友情かしら」
昼休み、もう周囲には絶対耳を貸さない決意で乃梨子が「わらびもち屋はなぜつぶれないのか」を読んでいると、例によって現れた敦子美幸の二人組。きょうは二人だけで連れはないらしい。
「ちょっとお。まだやるのお?」
「わたくしたちの友情は永遠なのですわ。」
「そう、永遠なのですわ。」
うるうるした目で両手を組み、乃梨子の方へ訴えかける二人はなんだかわからないけど、ものすご〜く警戒した方がいい気がする。あのね、私はマリア様じゃないんだから。
「友情ってあのねえ。今日は、瞳子や可南子はどうしたのよ。」
「可南子さんは人物紹介から消えてしまいましたし。」
「瞳子さんはご自分の姉問題でそれどころではないし。」
「いまや、乃梨子さんだけが頼りなのですわ。」
「なのですわ。」
「だあから、なにがって。」
「このまま聖書朗読同好会にだれもはいっていただけなくて」
「目立った活躍もできなくて」
「このまま、わたくしたちが2年生になって一年椿組の皆様と違うクラスになってしまえば」
「しまえば」
「「出番がなくなるのですわーーーーーーー。」」
そりゃ、言えてるわ。この二代目並薔薇ズ。
「はあ、そりゃまあ、はっきりいってそうだろうけど。それと私とどう関係があるのよ。」
「だから、今のうちに本来主役の乃梨子さんと『印象的なエピソード』をつくっておいて。」
「マリア様がみてる〜夏〜での出番を確保するのですわ。」
「印象的なエピソードって。」
「たとえば、乃梨子さんが志摩子さんに冷たくされて雨の中でひとり立ちつくす時に助けに現れるとか。」
「あ、それだめ。せいぜい車が迎えに着たのを知らせるくらいの役しかもらえないから。しかもアニメだと日出実ちゃんあたりにその役もとられるから。」
「それじゃあ、学園内で黄薔薇革命みたいな大事件が起きた時に乃梨子さんに知らせに来る役」
「うーん、アニメだとなんとか出てたけど、漫画だともう最初から存在してないし。笙子ちゃんにその役はとられるわね。」
「冷たいですわ。乃梨子さん。」
「どうしても、わたくしたちをおいてきぼりにするつもりなんですか。」
「ちょっと待ちなさい。」
乃梨子が振り返ると、どこかで見たような二年生・・・・・・・って思い出せない。
「どなたでしたっけ。」
「忘れないでー。桂よ桂。」
「ごきげんよう、桂さま。」
「ごきげんよう、あの、正直に申し上げて桂さまにはあまり近づきたくないのですが。」
「なんてこというの。私だってまだ新刊で名前くらいは出てくるんだから。」
「土俵際で残っていらっしゃいますね。」
「もはや死に体。」
「ちーがーうっ。とにかく、薔薇さまかつぼみの誰かと同じクラスというのは死守するのよ。」
「はあ、今の桂さまの存在意義は白薔薇様と同じクラスで」
「白薔薇さまの動静を祐巳さまにお伝えするただそれだけの役割ですもの。」
「それも本人出演できずに伝聞で。」
「そうなのよ、もともと学内の情報を主人公に伝えるのが私たちの役目。所詮、影の存在なのよ。脇に徹する青春なのよっ。」
ぐっ、と握り拳を固める桂さん。
「つまり、乃梨子さんと同じクラスというのを死守しなければいけないのですわ。」
「そうすると、学年主任の先生を落とさなければなりませんね。」
3人の会話をジト目でながめながら聞いていた乃梨子がわざとらしいほど優雅にひとこと。
「そういえば、あなたがた、苗字はなんておっしゃいましたかしら?」
「きゃああ、言ってはならないことを。」
「ありますわ、ちゃんとあるんですわ。」
「三枝。」
「ゴンザレス。」
「うっく。」
「乃梨子さん、お恨みいたしますわっ。」走り去る敦子、あれ美幸かな?もうどっちかわからなくなった。
「あ、待って。」追いかける、先に走り出した方じゃない方。
「3人まとまったら使ってもらえるかも知れないわ、希望を持つのよ。」
・・・・・うちら陽気な姓なしむすめ・・・・・
ふう。静かになった。
椿組はキャラ多すぎるからねえ。次のシリーズにはたぶん出ないわね。
がちゃSあたりで静かに余生を送るのよ。
白い哀れみを込めて見送る乃梨子だった。
−−−−−
「祐巳さま。がちゃS投稿ヘルパーのデバッグのためのテスト投稿はいいんですけど。」
「そうよ瞳子ちゃん。もうちょっとなんだから。」
「まさか動作チェックのたびにSS一つずつ作るなんて考えてないでしょうね。」
「だって、欠番作るのも申し訳ないし。これはテストです、なんて書いちゃうのは迷惑だし。」
「おめでたいですっ。今週は本職が忙しいって言ったのは祐巳さまですよっ。」
「いや、プログラムの方を作ってると書きたくなって。」
「・・・・・・・要するに書きたいんですね。」
「・・・・・・・うん。」
「・・・・・・・数こなすと質落ちますよ。」
「・・・・・・・私たち、それ、もともとだから。」