「瞳子ちゃん、見て見て!ほらっ、魚が!」
「祐巳さま!少しは落ち着いて下さいまし!」
今日は日曜日。瞳子と祐巳は公園の湖へデートに来ていた。
最初は湖の周りを歩いているだけだったのだが、祐巳が「瞳子ちゃん、一緒にボート乗ろうよぉ。」と甘え落とし、こうして現在、湖をボートを渡っていたのだが
「ほら、今度は亀!」
「ゆ、祐巳さまっ!落ち着いて下さい!」
祐巳は水中生物に夢中になるたび、ボートが激しく揺れ、そのたびに瞳子が慌てている。
上流階級の瞳子にとっては、小さいボートでは安心出来ないらしい。
「ほら見て、瞳子ちゃん。」
「ゆ、祐巳さま、そろそろ本当に……」
「もー、瞳子ちゃんは心配症だなぁ。大丈夫だ………ぎゃう!?」
「…祐巳さま?」
突如聞こえてきた、怪獣のような声に、ボートにしがみつきながら顔を上げると、そこには……
「ゆーみちゃん♪今日も抱き心地は最高だねぇ〜」
「「せ、聖さま!?」」
そこには私服の聖が、抱きついていた。
しかも、服には一滴も水がついていない。
「せ、聖さま!離して下さい!」
「そうですわ!祐巳さまから離れて下さい!」
二人の抗議に対し、聖は、
「じゃあ、ちゅ〜一回してくれたら離れてあげる。ほら、祐巳ちゃん!卒業の時と同じように!さあ!!」
と言ってほっぺを突きだし、カモ〜ン、と言っている。そして、祐巳の前では……
「……祐巳さまが聖さまに、ちゅ〜してた…?」
顔面蒼白な瞳子がなにやらブツブツ呟いている。
「と、瞳子ちゃん……?」
「祐巳さまの……浮気ものーですわーー!!」
その後一週間、祐巳は口をきいて貰えなかったそうな。
「…瞳子ちゃ〜ん」
「……………(フンですわ!)」
ちなみに、聖はどうやって湖のど真ん中に現れたかと言うと……
「もしもし、江利子?頼まれてた光学迷彩服の実験結果だけどさぁ、あれ、中々いいねー。いっその事、あれ私にくれない?えっ?駄目?そんなぁ〜……」
実は、最初から同じボートに乗っていただけだった。