【510】 絶望への道  (琴吹 邑 2005-09-10 11:26:09)


がちゃsレイニーーシリーズです。
詳しくは、
http://hpcgi1.nifty.com/toybox/treebbs/treebbs01.cgi?mode=allread&no=5&page=0&list=&opt=
を参照。


琴吹が書いた、【No:454】 容赦無いトドメの続きになります。  

 私が姉妹の多夫多婦制を提案してから、3日が過ぎた。
 多夫多婦制に関しては、賛成2、反対3で保留になっている。
 1票足りないのは祐巳さんの分。もっとも、祐巳さんが賛成に回ったとしても、薔薇様が反対に2二人いるので、 否決されてしまうのだけれども。
 そんなことより、心配なのは祐巳さんだ。
 祐巳さんはあの日以来、学校にきていないから。

「今日、様子を見てくるわ。仕事お願いね」
 祥子さまがそう言って、みんなの顔を見る。
「私も一緒に行ってもいいですか?」
 由乃さんがそう名乗りを上げる。
「じゃあ、二人で様子見てきてもらえるかな」
 令さまが黄薔薇さまとして二人にそう促した。
「二人の仕事は私が面倒見ますから、よろしくお願いします」
「私がお姉さまのお手伝いするので、大丈夫です」
 私と乃梨子の言葉に二人は頷くと、直ぐに帰る準備を始めた。


 3人しかいない薔薇の館。瞳子ちゃんはここにはいない。
 私と乃梨子と令さまはただ黙々と仕事をこなす。
 太陽が完全に沈みきった頃、今日の仕事は終わった。
 と言っても、文化祭も終わり、それほど仕事量は多くないのだけれども。

 帰る前に、一服していきませんかと? 乃梨子が、みんなの分のお茶お入れてくれた。
 オレンジペコの香りが優しく部屋を包み込んだ。

「祐巳ちゃん大丈夫かな? 普段続けて休む子じゃないから心配だよね」
「そうですね……」
 その言葉に、私は、相づちもうてなかった。
 暗に、祐巳さんが休んでいるのは私のせいだと言われているような気がして。
 令さまがそんなことを考えて言ってるわけではないと分かっているはいるけれど。

 自分から引き起こしたとしたとはいえ、早く解決して欲しいなと思う。
 新聞部を押させておくのもそろそろ限界に近い。
 真美さんからも、次のかわら版は白薔薇革命の特集を行うと断言されている。
 明後日までに何とかしないと、瞳子ちゃんが私の妹になっているという事実が全校に知られてしまう。
 以前の黄薔薇革命の影響を考えると、溜め息を付かずにいられなかった。
「志摩子さん」
 乃梨子は私を見て小さく呟くと、私の手を握ってくれた。
 私は嬉しくて、その手をぎゅっと握り替えした。



 家に帰り、ご飯を食べ終わった時、電話が鳴った。
 部屋に戻ろうと丁度電話の前を横切っていた私は、直ぐにその電話を取った。
『藤堂さんのお宅ですか?』
 その声は由乃さんの声だった。
「由乃さん?」
『ああ、志摩子さん? 丁度良かった。祐巳さんかなりまずいことになってる』
「そんなに体調悪いの?」
 由乃さんの言葉に不安を覚えながらも、由乃さんに聞き返す。

『体調は多分悪くないと思う。でも、精神的にかなり参っちゃってる。部屋に引きこもっちゃって、誰にも会おうとしないの。あの祥子さまでも会うのが精一杯で……』

 私は由乃さんの言葉を聞いて目の前が真っ暗になった。


【No:538】【No:523】へ続く


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