【514】 ほえ〜ロボ子は萌え死に  (朝生行幸 2005-09-10 18:37:41)


『俯いちゃって、どうしたの?』
 それは祐巳さま、あなたが見詰めてくるからです。
『ねぇ、顔を上げてよ。でないとあなたの顔が良く見えないよ』
 止めてください祐巳さま、私の顔なんて見てもらったところで。
『そんなことないよ、ホラ、笑って?』
 ダメです祐巳さま、歪んだ笑みしか浮かばないに決まっています。
『止めてよ、そんなことを言うのは。私、悲しくなっちゃうよ』
 あああ祐巳さま、そんなお顔をなさらないで。
『ごめんね。あなたにまでそんな悲しい顔させちゃって』
 祐巳さまは悪くありません。それに、あなたに悲しいお顔は似合いません。
『じゃぁ、笑って?お願い、私のために』
 分かりました祐巳さま、あなたのためなら私…。
『やっと笑ってくれたね。ありがとう、お礼に…』
 ゆゆゆ祐巳さま、何を?そんなにお顔をお近づけになっては…。

「むきゃっ!?」
 突然、変な声を出して突っ伏した彼女に、近くのクラスメイト達が駆け寄った。
「どうなさったの?大丈夫?」
 そっと肩を揺すりながら、クラスメイトが問い掛ける。しかし、反応はなし。
「まぁ、出血なさってるわ!」
 クラスメイト達は、慌てて彼女を抱えると、すぐさま保健室まで運んでいった。
 彼女の机の上には、血に塗れたノート。その影に隠れるように、一枚の写真があった。
 紅薔薇のつぼみ、福沢祐巳の微笑む写真が。

 そして、保健室のベッドに身を横たえた彼女。
 血まみれのその顔は、やけに幸せそうな顔をしていた。


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