一年のうち一番雨量が多いのは梅雨の六月ではなくなんと台風シーズンの九月ごろだという。
でも台風で降る雨はまとまって降ってあとは気持ちよく晴れ渡るから九月の方が好きだなと思ってしまうのは乃梨子らしいなと自分で思うのだ。
いやニュースでは台風の直撃で大変なことになってて好きだなんて悠長なこと言ってると叱られてしまいそうなんだけど。
台風一過の晴れ渡った空はなにか人のしがらみを超えた透明さを感じてしまうのだ。
ところでこの雨上がりの青空。天文ファンに言わせると空気が不安定で『良い空』ではないそうだ。
なんでもこういう空のときは光がまっすぐ進まずに星の像が歪んでしまうんだとか。
まあ乃梨子は別に天体観測するわけじゃないのでどうでもいいことなんだけど。
とにかく、乃梨子にはどこか人知を超えたものに憧れてしまうところがあった。
たとえば志摩子さん。
志摩子さんに惹かれたのだって志摩子さんの純粋なところ。どこか人を超絶したような神々しさに惹かれたのが最初だった。
そりゃ今は志摩子さんのとても人間的な部分もひっくるめて、その、惚れているわけなんだけど。
たとえばドリル。
あれは確かに人間技を超えている。
だってドリルだよ。ドリル。
いままでドリルを一対常に携帯している女子高生に出会ったことなんてあっただろうか。
いやない。
たとえばツンデレ。
しかも超ツンデレ。
人知を超えたすごいツンデレだ。
これはどういう行動に出るのか予想ができない。
そんな予想ができない行動を容認し受け入れてしまえる令さまはすごい。
彼女こそ人知を超えた包容力のあるひとに違いない。
由乃さま限定だけど。
たとえば天然。
それも超天然。
超がつくからには普通の天然ではない。自然界の法則すら超える超天然だ。
そんな超天然にかかれば超お嬢様だってめじゃない。
超お嬢様なんて超がついても所詮は人間だ。
天然は大自然のパワーなのだ。しかも超天然はそれさえも超えているのだ。
流石、祐巳さま最強。
こんな具合に二条乃梨子は雨上がりの青空に思いを馳せるのだ。
「というわけで祐巳さまは最強の称号を獲得しました」
「はい?」