【528】 フルーツバスケットルーキーハイパフォーマンス  (冬馬美好 2005-09-12 02:14:38)


♪たららったたんたんたん、たららったたんたんたん・・・

 とある放課後。教室の掃除を終え、薔薇の館へ向かおうとしていた乃梨子の前に、三人の戦士が謎のテーマソングを歌いながら、採石場の山の上から着地してきた風にしゅたっ、と現れたのであった。そしてそのまま、しゃきーん、とか言いながらそれぞれポーズを取り始める。

「優雅! 高級! プリンスレッド!」 しゃきーん!
「可憐! 高級! マスクイエロー!」 しゃきーん!
「上品! 高級! アンデスホワイト!」 しゃきーん!

 盛り上がる彼女らを前に、乃梨子はいたって冷静に努めながら、『プリンスレッド』こと敦子、『マスクイエロー』こと美幸、そして『アンデスホワイト』こと恭子を順々に眺め渡す。

『三人揃って! 高級戦隊フルーツバスケット!!』
「・・・いや、だからさ、フルーツバスケット言う割には、全部メロンの名前じゃないの?」
『とう!!』

 一通り名乗りを上げた彼女たちは、それぞれ思い思いの方向に意味も無くジャンプした後、急いで美幸を中心に集合すると、やはり乃梨子に向かって「しゃー」とファイティング・ポーズを取る。

「聞けよ人の話。頼むから」
「ふっふっふ。その余裕も今の内ですわ、乃梨子さん!」
「いや、もう付き合うのは嫌だからね」
「ふっ、嫌よ嫌よも好きの内ですわね?」
「殴るよ?」
「さあ、御覧になって驚くのです! かもーん! 新メンバー!」
「え? ・・・え?!」

 ぱちん、と指を鳴らす恭子の視線を追い、背後を振り返った乃梨子は、いつの間にそこに居たのか、二人の新メンバーの姿を認め驚愕する。

「絢爛! 高級! 夕張サーモンピンク!」 しゃきーん!
「豪奢! 高級! 足守ブラック!」 しゃきーん!

『五人揃って! 高級戦隊フルーツバスケット!!』 どっかーん!

 やっぱりそれもメロンだろ、と突っ込む余裕も無く、乃梨子は不敵に笑うその新メンバー、『夕張サーモンピンク』こと瞳子、『足守ブラック』こと可南子を愕然と見やると、頬に一筋汗を垂らしながら、知らず、じり・・・と後退する。

「・・・まさか、アナタたちまで」
「ふっふっふ。観念なさいですわ、乃梨子さん!」
「何でよ!?」
「まあ、諦めて観念してください」
「だから何で?!」

 その切迫した乃梨子の声を軽く聞き流し、瞳子は懐から桃色の風船を取り出すと、ぷう、と膨らませて口を縛った後、ふふふ、と改めて乃梨子に向き直る。

「私たちの必殺技を喰らいなさいませ。・・・いいわね、行きますわよ!」

 言うなり瞳子は、ブラックー! と可南子目掛けて、ぽん、と風船をサーブする。

「ホワイトー!」 ぽんっ
「イエロー!」 ぽんっ
「レッドー!」 ぽんっ

 瞳子から可南子、恭子、美幸と渡った桃色の風船を、何が起こるんだ、と身構えながら見送っていた乃梨子は、敦子に渡った風船が、ぽんっ、と自分の方に打たれてきたのを見ると、更に打ち返そうと風船に近づき・・・

 ぱんっ!!

「うわっ!」

 眼前で突如破裂した風船に思わず、へたり、と尻餅をつく。

「・・・な、何?」
「やりましたわやりましたわ!」
「悪の女幹部、乃梨子さんを倒しましたわ!」
「私たちの勝ちですわね!」

 きゃっきゃっと歓声を上げながら、嬉しそうに飛び跳ねる三人のその様子を、乃梨子はただ呆然と見やっていたが、苦笑と共に差し出してきた可南子の手を借りて立ち上がると、込み上げてきた理不尽な怒りに、きっ、と瞳子を振り向く。

「一体、何なのよ!?」
「単なる科学マジックですわ」
「え?」
「風船のゴムは石油に溶ける性質がございますので、予め表面に微量の石油を塗っておいたのです」
「ですので、ちょうど乃梨子さんの目の前で風船が割れたというわけですね」
「んな事、聞いてないわい!!!」

 かくして、怒りまくった乃梨子の凄まじいパワーにより、高級戦隊フルーツバスケットは再び一瞬にして壊滅の憂き目に遭ったのだが、やはり後日、デラウェアレッド、ピオーネイエロー、ピッテロビアンコホワイト、巨砲サーモンピンク、翠峰ブラックとして復活したりなんかしたのであった。


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