琴吹が書いた【No:495】「それはとても暖かく」の続きになります。
物語を最初から確認したい場合は
http://hpcgi1.nifty.com/toybox/treebbs/treebbs01.cgi?mode=allread&no=81&page=0&list=&opt=
を参照してください。
私は間合いを詰め一気に、祐麒さんに襲いかかった。
ローキックで相手の足を攻めぐらついたところを背負い投げ。相手のダウンを取ったところで、高速で踵を落とす。
このまま一気にとどめを刺そうと追い打ちの肘を入れるところで相手が動いた。
転がりながら、横に逃げ、すらりと立ち上がる。
「二条さん、本当に強いんだねえ」
感心した声が祐麒さんからあがる。
「中学の時、鍛えられましたから」
「じゃあ、こっちも遠慮無くいけるね」
そういった後の祐麒さん早かった。
ダッシュでこっちに近づいてきたかと思うと、突然横に回り込み、回し蹴りを撃ってくる。
それをガードしたかと思ったのも束の間、短い距離をさらにダッシュで近づき、密着したかと思うと、いとも簡単に私を放り投げる。
容赦のない祐麒さんは地面に投げつけられた私が衝撃で動けないのを承知で、やくざキック。そして、撃ち下ろしの右。
肋骨に食い込む拳は、私の体をくの字にした。
そして、そのくの字になった体に、とどめとばかりに膝をいれた。
それがまさしくとどめの一撃だった。
K.O.という文字が、画面に現れ、今の状況が再現される。
映画を見ることにした私たちは、喫茶店で昼食を軽くすませたあと、ゲームセンターに来ていた。
食べた後にすぐに映画館に行ったのだが、どの映画も次の上映までに30分以上の時間があり、
時間つぶしに、ゲームセンターへ行こうと祐麒さんが誘ってくれたのだ。
私の目にとまったのは、とある格闘ゲーム。
中学時代に、仲のいい男友達とさんざん遊んだゲームだった。
「これで、少し遊んでもいいですか?」
懐かしい気持ちになって、祐麒さんの返事も聞かずに、思わず、コインを投入した。
中学の時に仲のいい男子に鍛えられた腕は、リリアンに入り完全に離れた今でも鈍っていなかった。
快調に3人ばかりなぎ倒したところで、挑戦者が現れた。
まいったなあと思っていると、筐体の向こうに祐麒さんが見えた。
まあ、こういう趣向も面白いかもしれない。私は祐麒さんのキャラ選択画面を見ながらそう思っていた。
祐麒さんは強かった。
私なんかは、弱い中級者くらいのレベルだけど、祐麒さんは弱い上級者を言ったところだろう。
第二ラウンドはほとんど抵抗できないまま、あっという間にやられてしまった。
話を聞いたところ、このゲームは花寺でもはやったらしく、一番うまいのはなんと、アリスだそうだ。
世の中見かけによらないとはよく言ったものだと心底思った。
それが終わった後、二人で音げーで遊んだ。
二人で並んでステップを踏んだり、9個のボタンを分け合って音楽を作るのはとても楽しい時間だった。
だから映画の上映時間を待つ30分はあっという間に過ぎていった。
【No:587】へ続く