【548】 志摩子のそっくりさんVS  (まつのめ 2005-09-14 20:06:27)


これは【No:505】から続いた【No:530】『マリア様の心それは偽志摩子』の続きとして書かれています。



「あんた、なんでアサヒの写真なんて持ってるよ」
「ちょっとハル」
 ハルさんというらしい。
「しかも定期入れになんかいれて、気持ち悪い」
「き、気持ちわるい!?」
「ストーカーじゃないの?」
「違うわよ! これは志摩子さんなの。いきなりストーカーなんて失礼じゃない」
 カチンと来た。なんなのよこの女。
「だって、いきなりありえない話持ってきたりして、階段のときもわざとだったんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ!」
「どーだか」
「ちょっとやめてハルコ、あなたも」
「だって、こいつ変だよ」
「どこが変ですか!」
 失礼にも程がある。
 志摩子さんにそっくりな人の友達がこんなだなんて。
「もういいです、帰ります」
 そういって席を立った。もうこれ以上ここに居たくなくなったから。
「まって、話が終わってないわ」
 アサヒさんが私の手を掴んだ。
 掴んだのがハルコさんだったら手を振り払っていただろう。
「……話って?」
 アサヒさんは志摩子さんの顔で微笑んだ。
 笑うとますますそっくり。私が思わず言うことを聞いちゃうくらい。
 席に戻った私はとても複雑な気分だった。
「だって、私に言わせればあなたってハルコと似てるのよね」
 アサヒさんは相変わらずのそっくり笑顔でこんなことをのたまうのだ。
「「どこが似てるんですか(のよっ)」」
 うわっ、声があっちゃった。
「ほらやっぱり」
 ころころと笑うアサヒさんは志摩子さんよりちょっとオーバーアクションだった。
「同属嫌悪ってやつ?」
「やめてよ」とハルコさん。
「でもあなた、感情はあまり表情に出ないほうじゃない?」
「……まあそういわれますけど」
「それでいて弁がたつ方でしょ?」
「そうなんですか?」
 私はハルコさんの方に視線を送った。
「なんか不本意だけど、似てるって気がしてきたわ」
 ちょっと不満そうな顔してハルコさんは答えた。どうやらここであえてハルコさんに聞くって行動がそう思わせたらしい。

「それで、私はこの子が嘘言ってるとは思えないんだけど」
「アサヒがそう言うんならそうなのかもしれないけど……でも信じられないわ」
 とりあえずハルコさんまだ疑っているようだけど、ケンカ腰はなくなった。
 私も落ち着いて話すことにした。だって喧嘩なんかしたくないし。
「その志摩子さんに会ってみればいいのよね」
 アサヒさんは一回だけ名前を言ったのをちゃんと覚えていた。
「でもこれどう見てもアサヒだよ」
「でも私、この髪型にしたの最近よ?」
 ちょっと前までは後ろで縛っていたそうだ。


「えー、リリアンなの?」
「なるほどね」
 話はまだ続いた。
 名前を教えあおうってことで学校も教えたら二人ともリリアンのことは良く知っていたばかりか学校も近いそうだ。
 ハルコさんの「なるほどね」は、定期入れの写真の件だ。「リリアンなら」で納得するなんて、近隣高からどういう風に思われてるのかちょっと心配になった。
 名前は朝姫って書くそうだ。ハルコさんは普通に季節の春に子供の子。お二人は高校2年生。いっこ先輩だった。
 苗字で呼ぼうとしたら「リリアンって名前でよぶんでしょ」だって。リリアン流なら「さま」づけなんだろうけど、流石に違和感があるだろうから朝姫さん、春子さんって呼ぶことにした。
 どうも朝姫さんに気に入られてしまったようだ。

「路線が違うから互いに見かけないと思うけど直線距離ならすぐそこなのよ」
「そうだったんだ」
「リリアンってお嬢さま学校で有名じゃない。乃梨子さんってそんな感じしないから驚いたのよ」
「はいはい、どうせ私は庶民ですよ」
 春子さんがいじける。まあ似てるからって意味なんだろうけど。
「くすくす」これは私。
「なに笑ってるのよ」
 いやなんとなく。
「私も庶民ですよ。高校受験組みだし」
「うわあ、インテリかよ、庶民じゃねーよ」
 ますますいじけちゃった。まあ高校から入るのは難しいっていわれてるけど。

「で、会う話だけど、放課後とかどうかしら」
「大丈夫だと思うけど、そっちから来られますか」
「こっちが会いたいのに呼び出すわけにもいかないでしょ? 自転車借りて伺うわ」
 なんか似合わない。
 志摩子さんが自転車こいで来るなんて、って朝姫さんだった。
 
「ちなみに、学校に入るのには理由がいるんだけど」
「あれ、入れてくれるつもりだったの? 外で会うとかじゃなくて」
「志摩子さん生徒会の仕事とかあるからあまり出られないし」
「生徒会なんだ。だったら春子が生徒会書記」
「なによ」
 春子さんまだいじけてる。
「だから生徒会同士の交流ってことで」
「いいのかな」
「いいっていいって」
 こういうところは絶対似てないと思った。
 結局、後で連絡をもらうということでその場は別れた。




(続く【No:554】)


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