「もう!そんな訳無いじゃないですか乃梨子さん!」
「ごめんごめん」
私は笑いながら瞳子に謝った。我ながら馬鹿な事を言ったかな?
「何がそんな訳無いの?」
突然会話に割り込んできたのは…
「ゆ、祐巳さま!」
そう、祐巳さまだった。意外と神出鬼没なんだよな、この人。
「…で、何がそんな訳無いの?」
それに意外としつこいかも… ここは素直に言っとくか。
「抱き枕ってあるじゃないですか」
「の、乃梨子さん!!」
瞳子が騒ぐけど、祐巳さまがこのままじゃ納得しそうにないしなぁ…
まあ、ここはひとつ諦めてね(笑
「抱き枕がどうしたの?」
「今、何かのキャラクターをカバーに描いて、そのキャラクターと寝られる抱き枕ってモノがあるらしいんですよ」
「へー…」
おや、自分から聞いてきたのに食いつき悪いな。でも本題はここからですよ祐巳さま。
「ソレに瞳子の写真をプリントした抱き枕なんかあったら祐巳さま喜ぶんじゃないかなって話してたんですよ」
隣で聞いてた瞳子が真っ赤になってる(笑
でも実際祐巳さまが欲しいのかどうか気になるらしくて、視線はチラチラと祐巳さまを見てるし… ホント正直になりなさいよアンタは。
祐巳さまはといえば、何やら腕組みをして真剣に悩み始めてしまった。そんなに悩まなくとも答えは決まってるでしょうに。
「いらないなぁ」
そう、いらないに決まって…… ええっ?!
やばい、瞳子が固まってる。まさかこんな結末になるなんて…言わなきゃ良かったのかな?でもまさか祐巳さまがこんな反応するなんて…
「な、なんでですか?」
私はやっとの事で祐巳さまに質問してみた。
「だって…切れ味鋭そうじゃない。ドリル標準装備の抱き枕なんて」
そう言って祐巳さまは「しってやったり」な笑顔で微笑む。
なんだ冗談か… 良かったね瞳子。祐巳さま本気で嫌がったんじゃあ…
あれ?瞳子の眼がかつてない程座ってる?
「…あれ?うけなかったかな?瞳子ちゃん」
「………」
「…瞳子ちゃん?」
祐巳さま、これは覚悟したほうが良いですよ…
放課後、薔薇の館では、本気で怒った瞳子にドリルを六本も装備させられた祐巳さまが泣きながら書類仕事をしていた。
その姿に私はおろか祥子さままでもが突っ込めず、静かに時間だけが過ぎていったのだった。