「桂むきといえば、桂ちゃんよね」
「お姉さま、私、あまり料理は得意な方では……」
「そんなことはどうでもいいのよ、桂ちゃんはひたすら材料の皮をむいてね」
「だから、料理はそれほど得意じゃないんです、お姉さま。だからピーラー使ってもいいですか?」
「いいんじゃない? 手早くちゃっちゃとむいちゃってね」
「ただむくだけじゃないんですから、いくらピーラー使うといえ、そんなに早くはできませんよ」
「いいのよ、別に帯状に長くむかなくても。桂ちゃんがむくことに意義があるのだから」
「どういうことですか?」
「桂ちゃんがむけば、どんなむきかたしても、かつらむきでしょ?」
「おねえさま、本気で言ってます?」
「あはは、もちろん冗談よ。しょうがないから、私が実演するわ」
「お姉さま、料理得意なのですか?」
「料理はそうでもないけどかつらむきは得意よ」
「そうなんですか? 知らなかったです」
「何であなたが知らないのかな? いつもやってるのに。最初の頃に比べたら、ずいぶん早くできるようになったのよ」
「私の前でかつらむきなんてしましたっけ?」
「してるじゃない。いつも部活が終わった後の、更衣室とか、休日のあたしのベッドの中とかで」
「それは確かに桂むきかもしれませんけど……」