「たたかう君のうたをー」
掃除の時間、瞳子が腹式呼吸のいい声で歌ってる。
機嫌が良いのかなにかは知らないけど、なんでその歌なの、って思ってしまう。
というか私は瞳子に頑張って欲しいんだけどな。
「たたかわないやつらが……」
聞きながら思ってしまう。
今でも瞳子に対して批判的な噂をしている人はいる。
そんなこと気にした風も見せない瞳子だけど。
「……ふぁいとぉ、冷たい……」
逆風にめげずに頑張る瞳子。
そうあってほしいと思う乃梨子の気持ちはあんまり伝わってないだろうな、なんて。
だから瞳子の歌にあわせて心からのエールを贈った。
(ファイト!)
「というわけで乃梨子さん私達の歌を聞いてください」
「ちょっとまて。何でそうなる」
ああ、なんか敦子美幸が楽器もってスタンバイしてるよ。
「乃梨子さんに贈る応援歌ですわ」
「いや、私べつに応援されるようなことないから」
相変わらず人の話を聞かない人たち。
ギターとシンセで前奏が始まった。
「♪わたし中途入学だからあんまりー」
「友達にとけこめないのって書いたー」
「乃梨子さんの手紙のー」
「文字は尖りながら震えていたー」
「……まてや」
「あの日雪の中、京都でー」
「雪で止まった新幹線ー」
「結局、間に合わなくてー」
「破り捨てた受験票ー」
「人を勝手に歌にすなっ!」
「「「ふぁいとぉ!」」」
「大きなお世話だーーー!!」