【58】 散歩想定範囲内  (OZ 2005-06-19 04:45:22)


日曜の朝、私の寝起きは寝不足も加わり、お世辞にも良いものではなかった
その理由の原因は昨日の土曜日、前から約束していたデートの日、互いに最近は何かと忙しく、やっと取れた休日
それなのに、あの方は当日の朝になっていきなりキャンセルの電話を入れてきた
とても楽しみにしていた私は文句の一つでも言ってやろうかと思ったが
本当に、本当に申し訳なさそうに、これでもかってほどに、謝り、夜、電話するからほんとごめんっ、と、まくし立てるため何も言えなくなってしまった

とりあえず、朝食のトーストを食べつつ今日の予定を反芻した。
「午前中は特に何も無いですわね、午後から薔薇の館で各部から出された学園祭関係の補正予算の査定、出し物の時間割、各ブースの広さ、その他もろもろ・・・思っていたよりこの時期はかなりハードですわね、あんなへらへらした方がいままでよく勤まっていたのかがほんとに不思議ですわ!」
現リリアン女学園の紅薔薇様は、寝不足もたたってか、なにやらぶつぶつと文句を口にしていた。

そこへ、つつつっと、小間使さん(メイド、といえばいいのか?)が寄ってきて、電話の子機を渡しながら伝えた
「瞳子お嬢様、福沢さまからお電話が入っています」っと
(お、お姉さまから!!)
電話を渡された瞳子は、お姉さまである祐己様からの電話がとても嬉しかったが、昨日のドタキャンデートのことを思うと素直になれない、
それに、ここで嬉しそうな態度を見せれば、お姉さまはたぶん付け上がる、いや、絶対付け上がる!
私は女優ですもの、この嬉しさを抑えることなど、ぞうさもないんですから!
「もしもし、瞳子です」電話に出る、「ごきげんよー、瞳子」なんとも楽しげな挨拶なんだろう
「ごきげんよう、お・ね・え・さ・ま!」人の気も考えないで、なんて方なの!
「昨日はほんとにごめんなさい」
「いえ、別に気にしていませんわ(本当は、いたく傷つきましたけど)で、いったいどんな御用なのでしょうか?」
「じゃあ、時間が勿体ないから簡潔に一回だけ言うわよ、しっかり聞いてね」
「へ、何を?・・・いっかい・・?」
「今、私は瞳子の家の門の前にいます、時間がないのですぐに出てきてください、」
「へ?え?お姉さま?出て来いって?」  ツーツーツー    電話は切れた

よく解らないまま言われたとおり用意を済ませ、家の門まで行ってみると、瞳子のよく知る赤いスポーツカータイプの軽自動車が止まっていた。
祐己の愛車であり、バブルの申し子『AZ−1』
「瞳子、早く乗って、時間が無いんだから」言われるままに助手席に乗った

車中
「昨日はほんとにごめんね、昨日はさすがに断ることができなかったんだよね?」
「も、もういいです・・・ところで何処へ行くのですか?
「何処って、ただの公園、て、ゆうか、もう着いちゃったんだけどね」
「こ、ここですか?」
ここは瞳子の家からは歩いてもせいぜい20分位、昔なじみの公園でお母様とお父様と一緒に小さい頃に何度かこの公園で遊んだ記憶がある。

車を止めたのち、二人で少し公園を散歩することになった。

隣り合わせに歩いていると、さも当然のように私の腕と指をからめてきた。まるで恋人のように
「ちょっ・・・ お、お姉さま!」
「こんなふうに瞳子とお散歩したかったんだ、リリアンのときは、姉妹の関係で何かといろんな目があったじゃない」
確かにお姉さまは学園に在学の時は、何かと注目を浴びる人だった。
「あれ?もっとドッキリして、許してくれると思ったんだけど。」
絡められた腕と指を、激しく振りほどき、
「お、お姉さまは単純すぎます。で、でも、これもこんなことは瞳子の想定範囲内ですから!そ、それに私が怒っていることは全然違います!!」

青い芝生、きれいな遊歩道があり、池があり、楽しげな家族連れが散歩を楽しめる。とても美しいといってもまったく過言ではない。
その中を、瞳子と祐己は何かギクシャクしつつあるいていた。

「ごめん!!悔しいけど判らない。
お願い瞳子、言いたいことがあるなら言って!」私、そんなに頼りないお姉さまかしら、と祐己

意を決したというか


「・・ で ん わ  ・・」瞳子の瞳からは、ぽろっと涙がこぼれた、
「へ、電話?電話って?筺

「電話…  するって言ったのに… 下さいませんでした、瞳子はもう」堰を切るようにぼたぼたと涙を流した、
あ・・・! 祐己は確かに言った、確かに、夜電話するって言った!でも電話した記憶は無い
瞳子の夜更かしは私のせい!!

ああ!!なんて大失態をしたのだろう、そして、こんなにかわいい子に夜更かしをさせてしまった、こんなに愛しい人に心配を掛けてしまったこと。

ごめんね、本当にごめんね。

祐己は、優しく瞳子の顔をあげて、やさしく見つめ、そして深いキスをおとした。



想定範囲外を感じました。


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