蔦子様が、私とお姉ちゃんの写真入の写真立てをプレゼントしてくださった。
すごくうれしかった
「それじゃあ、交渉しましょ」
蔦子様が出した写真を見て驚いた、こんなにたくさん、しかも写真の中の私は自分でも信じられないくらい生き生きしていた。
「正直私、笙子ちゃんを撮るの、いつの間にか純粋に楽しくなってたんだ、ごめんね、警戒した?」
私は首を左右にフルフルと振った。私をこんなに見ていてくれたなんて。
すごく幸せだった
「あと、できればこれ等のすばらしい写真を外に出す許可が貰えたら嬉しいんだけどな?どう?」
『全部良いです、その代わり、私にも焼き増ししてくださいますか?』ぼそぼそっと蚊の鳴くような小さな声でつぶやくと、
心の中に収めきれなくなった幸せが、涙に変わり、私の頬を濡らしていた
私を撮るのが楽しかったと言ってくれた
私の写真をすばらしいといってくれた
「OK、んじゃ、交渉成立〜」
今は誰も居なく、静かなクラブハウスなので、私のつぶやきも蔦子様に何とか聞こえたようだ、明後日の方向を見ながら、
カラッカラの返事をくれたのは(何も見てませんよ〜〜)という蔦子様のやさしさ。
胸が熱くなった
「そろそろ行きましょうか、祐己さんの期限は3時半なんでしょう?」
そして二人してクラブハウスを出たとき、私は覚悟を決めた
さっきのは条件がよかったから蔦子様に聞こえたんだ!いえ、聞こえたんじゃない、蔦子様が聞いてくれたんだ!!
今度はこの気持ちを伝えたい、つぶやきを聞いてもらうのでなく、自分の声で!!
「つ、蔦子様!」
「は、はい!? びっくりした!」
「わ・私は、蔦子様の写真が好きです!」
「あ、ありがとう、素直にうれしいわ、でも、急にどうしたの?」
「蔦子さま!!」
「はは、はい!?」
「わ・わた・わたし・私は蔦子様のことが、蔦子様が大好きです!!」こんなに大きな声を出したのはいつ以来だろう
そのまま俯いてしまった、顔に血が集まるのがすごくわかる、恥ずかしさもあいまって蔦子様の顔を見ることもできない。
沈黙
ややあって、肩にポンと、手が置かれた、
恐る恐る顔を上げると、蔦子様は横を向きながら、「笙子ちゃん、本当にありがと・あの・その・すごく・本当にすごく・うれしい」
『うれしい』といわれたことはすごく、すごくうれしかった、でも、なぜ横を向いているのですか、なぜ、私の顔を見ては
くれないのですか?
不安が心をよぎった
「私を見てください!」
「ごめん!無理!」
「なぜです?」
「たぶん、死ぬ、いや、絶対死んじゃうから・・・」
「死ぬ???!!」
蔦子はすでに、嬉しさと幸せの涙で脱水症状、興奮の鼻血で出血多量状態、ここで笙子ちゃんを見たら確実に死期が近づく。
それなのに
「私はここです!私を見てください!」目をウルウルさせた笙子ちゃんに、無理やり顔を向かされた。
はう!! ばたん!
倒れた蔦子をゆさゆさ揺すりながら「エーン、蔦子様死んじゃやだ〜〜!!」薄れ行く意識の中、蔦子は心の中で合掌しつつ思った。
― 幸せすぎるのも、罪なのですか? マリア様 ―