「皆さんごきげんよう。 やっぱりここでしたわね。 乃梨子さん、そろそろ行きませんと日出実さんが待ちかねていらっしゃいますわよ」
放課後の薔薇の館、お茶も配られてさあ仕事を始めようかとしていたところへ、ビスケット扉を開けて瞳子が進入してきた。
「日出実さんが待っているって……、あぁぁ〜……。 あっちか……」
あっち……。 六条梨々の仕事、新聞部に投函される心霊関係と思われる相談事を解決に導いたりすること。 殆んどはその場で簡単な解決方法を提示して終わってしまうのだけれど、中には現地に出向かなければならない物もあり、それを瞳子がレポート風に話を起こして、日出実さんが添削してからリリアンかわら版に掲載される。 同じレ
ポートは出版社にも送られていて漫画になっていたりする。 嘘みたいな話だよね。
「そうですわ、今回のはなんだか写真もあるとおっしゃっていましたわ。 と言うわけで皆様、乃梨子さんと私は新聞部に行ってきますわ。 つきましては、戦力不足かもしれませんがこれを進呈いたしますわ」
そういうと瞳子は、何処からとも無くバスケ部のウェアを着たままの可南子さんを取り出した。 ポカ〜ンとしたまま周りをキョロキョロしている可南子さん。 瞳子、あんたが今使った技の方が『摩訶不思議』だと思うんだけど。
「すみません、一時間ほど行ってきます」
「私はかまわないけれど、祐巳さん由乃さん、どうかしら?」
「いいんじゃないの? 人身御供は置いて行ってくれるんだし」
「うん、いいよ。 実は結構楽しみにしてたりするんだ〜〜」
「怖いの苦手なくせに」
「そ、そこは〜〜…ほら、怖い物見たさって言うか……」
にぎやかに雑談を始めた志摩子さんたちを横目に挨拶をしてから階段を下りる。 あれ? 瞳子は? ……あ〜祐巳さまに弄られてるのか。 まあいいか、そのうち来るでしょう。
《ふふふふ、なんだかんだ言って律儀にやるんだよね〜あんたは》
『まだいろいろ迷っているんですけれど?』
《悩みな悩みな、まだいろいろ見て聞いて経験していっていい時期なんだから》
『……突き放すように言ってくれて…』
《イニシアティブは生きているあんたにあるんだから、当然でしょう》
『600年前の巫女さんのくせして”イニシアティブ”なんて言葉知ってるんだ』
《バカにするんじゃないよ。 16年もこっちにいれば教わらなくったって外国語の一つや二つ覚えるさ。 授業とか言うので習ってなくたってね。 》
『マジで巫女さんだったのか疑わしいわ』
《な〜に言ってんだか。 私が巫女であんたの事主護霊として守ってやってなかったら、いま頃こんなにまっすぐ育ってなかったんだよ、性格までは手を回せなかったからまっすぐじゃあないか。 あんたくらいの霊能力持っている人間を低級霊が放って置くわけないでしょ。 ある意味恩人だよ私は》
『あ〜言えばこう言うんだから……それにしても口が悪いわ…』
《私の言葉はあんたに分かりやすいように引っ張られるんだよ》
『前に聞いた事あるんだけど…ってことは何? 私の言葉遣いが悪いって言いたいの?』
《へぇ〜、自覚あったのね。 ま〜ったく、こんなのを妹にしている志摩子さんがかわいそうだわ》
「ちょっと! 志摩子さんは関係ないでしょ!!」
………廊下でいきなり叫び声をあげてしまった私を『疲れていらっしゃるのね…』っという顔をして遠巻きにしている生徒がちらほら………。
《はははは、まだまだだね〜、この程度で声出しちゃうようじゃあ》
『くそ〜〜っ、後で覚えとけよ〜〜』
《ほ〜〜ら、また口が悪い》
『〇☆/!▼%\$!!』