【676】 幸せだと思う本気のゲーム  (朝生行幸 2005-10-01 01:51:55)


 9月30日の朝、椿組で一番最後に教室に入った、白薔薇のつぼみこと二条乃梨子。
 当然のことながら、クラスメイト全員の視線が集中する。
 スタスタと教卓の前まで歩くと、真正面を向いて、全員の顔をぐるりと見渡す。
 そして、大きく息を吸い、開口一番。
「阪神優勝、おめでとー!」
『おめでとー!』
 乃梨子の音頭に合わせて、全員が歓喜の叫び声をあげた。
「いやーめでたい。強くなったわね阪神も」
「かしらかしら」
「優勝かしら」
「いや、優勝したっちゅーねん」
 椿組に集う乙女たちは、一部例外を除いて、全員乃梨子に感化されていた。
 もしここに大量のビールがあったなら、皆でかけ合うところだ。
「それにしても、乃梨子さんがトラ○チとは思いもしませんでしたわ」
「んーいや、昔は地元のマリンズだったんだけどね。大叔母の影響かな、タイガースファンになっちゃって」
 乃梨子が一喜一憂するたびに、感化するクラスメイトが増えていき、夏休み前には、ほぼ全員が阪神ファンと化していた。
「まーなんにしても、こんな喜ばしいことはないね。ありがとー阪神!」
『ありがとー阪神!』
「ありがとー監督!」
『ありがとー監督!』
 選手一人一人を称える歓声は、担任が教室に来るまで、椿組の教室に響き続けた。

 そして、担任も阪神ファンなのは言うまでもない。


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