始めに個人的なあいさつをさせていただきます。
みゆきさま、この前みゆきさまの作品「道草を食う淑女」の簡易コメントで失礼なことをしたにもかかわらず、寛大にもお許しどころか、続きを書いて、などと背中を押しまくってくださってありがとうございました(笑)
どこが続きやねん! と突っ込みをしたくなるような作品ではありますが、みゆきさまの「道草を食う淑女」の続きを意識してかかせていただきました。もしよかったら読んでやってください。・・・ただ、かなりふざけた内容ですので合いそうになかったら、すみませんが読むのをやめてください(汗
あと「さんたろう」さまと「水」さま、まことに勝手ながら簡易コメントからアイデアを借用させてもらってます。
では改めて。
この作品を読んでくださる方にいくつか注意事項があります。
その1 この作品はみゆきさまのNo.651「道草を食う淑女」の続き(のようなもの)になっております。もしお読みいただけるのであればそちらの作品の方からお読みになってからお読みください。でないと話の内容がさっぱり解からないと思います。
その2 この作品はマリみて原作キャラがほとんど出てきません。完全にオリキャラ視点の話になってますので、そういった話が苦手な方はお気をつけてください。
いきなりの長文、失礼いたしました。では本編の方にいかせていただきます。
これは「祥子さま専属SP」通称SSS(スリーエス)に所属する、祥子さまに全てを捧ている者たちのある悲しき戦いの物語である。
ぴー ぴー
「祥子さま専属SP」通称SSS(スリーエス)のリーダーである守矢は、そこに点灯する光を訝しげに見つめていた。
なんだ、一体? 守矢はそう思いながら自分の右手にあるロレッタス(パチモノ)に目をやる。
(やはり、定時連絡にはまだ少し早いな)
ここでいう定時連絡とは、我らが信奉してやまない我らの主であり守護の対象でもある祥子さまの現状報告についてのことだ。そして今守矢が訝しげに思っているのは、本来なら定時連絡しか鳴ることがない呼び出しが、その定時時間から10分ほど早く鳴ってるからだった。
ここで簡単に理由を推測するなら、祥子さまに対してイレギュラー的なことが起こった、ということになる。そうであればもう少し慌ててもよさそうだが、守矢は訝しげには思っててもまだ焦りとよべるのものには襲われてはいない。
それは守矢の、いついかなることがあってもプロたるもの冷静にならなければならない、というプロたる矜持がそうさせてるのもあるのだが、その点滅がエマージェンシーを知らせる中でも危険度が一番ランクが低い「注意されたし」だったことも関係していた。
(・・・とはいえこのままほおっておくわけにはいかないな)
守矢は溜め息をつきながらゆっくりと受話器に手を伸ばした。
(ふん、プロたるものいかなるときにもクールに、そしてスマートにやる。それが俺の美学)
がちゃ・・・するっ・・ちん!
「あ”!!」
(し、しまった。て、手が!!)
受話器を掴んだまではよかったが、きのう行われた「第25回SP対抗指相撲世界大会日本代表一次予選」で酷使されあまり血が通ってなく、すっかりクールに冷え込んでいた守矢の指は守矢のいうことを聞いてくれず、何事もなかったかのように手にとった受話器を元あったところにピンポイント爆撃でスマートに投下していた。
がちゃ!
「もしもーしもしもーし?! ハロー? 誰かいませんかー」
「ツーツー・・」
ダメ元で受話器を取ってみるが、受話器の向こうからは無情にも「拒絶」という名の電子音しか返ってこなかった。
つー(冷や汗)
(ま、また、やっちゃった。・・・い、いや、慌てるな、俺。プロたるものいかなるときにも冷静に、・・・で、でもどうしよう、俺)
ピピ! ピピ!
どうしよう、と守矢が頭を抱えていると、再度受話器がけたましい音をたてて鳴り響いた。しかも何気にさっきより1ランク上の「なにやってんの!」に鳴り方が変わっている。
(よっしゃー!!)
ぐっぐっ、守矢ははやる心を抑えながら右腕を何度もマッサージし己の握力があることを確認して、今度こそとゆっくりと受話器に手を伸ばした。
(そう、俺はプロ。同じ失敗は2度と繰り返さない男。ふっ)
がちゃ
「うむ、私だが?」
「シルバー(コードネーム)です・・・隊長、さっき受話器を落としませんでした?」
ぎくっ!!
「う、うむ、シルバー君。君はなかなかするど・・じゃなくて何を言っているのかな、君は?」
「まあいいです。いつものことですし」
「い、いや、君は私のことを何か勘違いしてないかね、うん?」
「(無視)さっそくですが、先ほど「女王さま」が気になる会話をなされておりましたので報告します」
「あ、ああ、わかった。さっそく頼む」
「はい」
その声のあと、少し雑音が入ったような声が守矢の持っていた受話器から流れ出した。
「ぴー、○△、ちょっと道草というものを教えてほしいのだけど」
この会話の途中に入っている○△とは別に放送禁止用語ではない。万が一にこの通信が盗聴をされることによって、この会話の当事者が祥子さまと推測できそうなものは全部伏字、もしくはコードネームに置き換えて通信を行っている。
ここで一旦テープが止まり、受話器の声がシルバーに再度切り替わった。
「隊長、先ほど女王さまが口にされた「道草」という言葉を記憶しておいてください」
「道草? 道草って、あの道草か?」
「はい、普通であればあの帰りにどこかに寄ったりするという道草しかないのですが・・・このあとの女王様の会話からどうも変な方向に移行しているというかなんというか」
「・・・話がさっぱり見えんな?」
「まあこの先の会話を聞いてくだされば解かっていただけると思います。あ、それから今の内に報告をしておきますが、女王様の会話相手はコードネーム「赤いタヌキ」です」
「何ッ!! や、やつか!!」
「赤いタヌキ」このコードネームを耳にしたとき流石の守矢も冷静ではいられなかった。なぜならこの奇妙なコードネームを持つものの動きによって、コードネーム女王さま、つまり祥子さまの行動は大きく左右され、それによってわれわれSPの行動も大きく右往左往させられたのだ。
護衛というものはある程度の行動予定(行動パターンも含む)の情報が不可欠である。そして幸いにもその点では主人である祥子さまは護衛する側からしてみれば実にありがたいお方だった。そう、1年程前にあの「赤いタヌキ」と出会うまでは。
祥子さまがあのタヌキに出会ってから祥子さまは明らかにお変わられになられた。それも、恐れおおいことながら言わせてもらえば、いい方向に。
その功績は確かに「赤いタヌキ」のおかげもあるのだろう。それは守矢も認めざるを得ない。だが、あのタヌキが「超天然」という天から与えられたスキルを遺憾なく発揮するたびに、祥子さまはそれに巻き込まれ、そして護衛をする側の胃はその以前よりも3倍以上にキリキリと痛んでいた。
(あ、あの「赤いタヌキ」が関係してるのか!)
他にもコードネーム「ギンナン」「青信号」「ヘタレ」「名無し」など色々いるがヤツだけは別格だ。我がSSSにとって「赤いタヌキ」は恐怖の代名詞に他ならなかった。
「隊長? 隊長、聞いてますか、隊長?」
「ん、今日の夕飯はカレーだったかな?」
「激しく現実逃避しないでください! じゃあ続きを流しますよ。あ、解かりやすく自動翻訳をONにしときましたので」
「あっ、ちょ、ちょっと、まだ心の準備が!」
だがそんな守矢のことなど無視して、シルバーは非情にもテープを再生させた。
「ぴー、タヌキ(※自動コードネーム翻訳です)、ちょっと道草というものをおしえてほしいのだけど」
「えと、道草、ですか? 女王様(※自動コードネーム翻訳です)」
(間違いない、赤いタヌキだ。くっ、今度はなにをやらかす気だ!)
「ええ、今日、ドリルちゃんがこういったの。女王様、ドリルは庶民の方々の習慣を体験してまいりましたわ。ドリル、庶民の方々が言う「道草」なるものを昨日やってまいりました、って」
「はあ」
「ええ、ちょっと苦かったですけど、いい体験をさせてもらいました、って自慢げに話してきたのよ」
「はあ」
「はあ、じゃないでしょ。タヌキ、わたしはあなたのなんなの?」
「じょ、女王様です」
「声が小さくてよ。もっと大きな声で」ビシ!
「女王さまー!!」
「そうよ、わたしはあなたの女王様。なら私の言いたいこともわかるでしょ。仮にも一年生であるドリルちゃんが刻一刻と庶民の暮らしに触れているのに、あなたの女王様である3年生のこの私が知らないなんて、そんなこと許されると思ってるの、タヌキ!」ビシ!
「え、えーと、つまり女王様は、ドリルちゃんと同じ体験がしたい、というわけですか?」
「そう、ようやく私のいいたいことがわかったわね。これは命令よ。私に道草なるものを教えなさい。いいわね、タヌキ」ビシ!
「はい、わかりました、女王様。それじゃあマヨネーズを用意しときます」
「ぶっ!!」
赤いタヌキがマヨネーズと言った瞬間、守矢は激しく噴出した。
(マ、マヨネーズだと? どうして道草にマヨネーズがいるんだ?・・・いや、それ以前にさっきの会話少しおかしいところがなかったか? ちょっと苦かったですけど、だと? あれはどういう意味だったんだ?)
そんな守矢の疑問をよそにテープは最後に「期待しているわ、タヌキ」という祥子さまの声とともにぷっつりと切れていった。
その沈黙を打ち破るようにシルバーの声が守矢にかけられる。
「以上で会話の全てを終了です、隊長」
「・・・どういう意味だ? いや、ここに出てくる「道草」とはどういう定義で捉えられているんだ?」
「はい、それについて分析班の方から先ほど連絡があったのですが、どうも昨日薔薇の館に仕掛けられた盗聴器からもたらされた情報によると、昨日、コードネーム「ドリル」が「雑草を食べた」、とのことです」
「ドリルが雑草を食べた、だと?」
「はい、ドリルのいう「道草」とは、道に生えてる草を食べる、ということみたいです」
「・・・つまり女王様の「道草」もそれと同じなのか?」
「はい、おそらくは」
、
雑草を食べた、マヨネーズ、赤いきつねは超天然、その3つのキーワードが守矢の頭の中を激しく猛スピードで駆け巡り、やがて一つの答えを導き出した。
問1 次の式から導かれる正解を答えよ。 (10点)
雑草を食べた+マヨネーズ+赤いきつねは超天然
カシャカシャ チーン!!
=混ぜるな危険!!
ワーニン!! ワーニン!! いま守矢の頭の中では最大級のエマージェンシーのサイレンが高らかに鳴り響いていた。
雑草を食べる、だと。あの祥子さまが雑草を食べるだと! 許されない、そんなことは決して許されることではない。守矢が怒りに打ち震えているところに、ヒンヤリとした声が守矢にかけられる。
「隊長、タヌキを捕獲しますか?」
その声はむろんシルバー。だが、先ほどのような気軽さは全然なく、その声はまさしく祥子さまの邪魔になりそうなものは一片の容赦もなく片付けることができる祥子さま親衛隊ナンバー2であるシルバーに他ならなかった。
その冷ややかな声を聞いた守矢は、自らの冷静さを取り戻しゆっくりとシルバーに返した。
「いや、それはできない」
「なぜです? あれさえ大人しくさせておけば雑草など食べる心配もしなくていいでしょう?」
苛立っているシルバーに対して、守矢は諭すような口調で答える。
「忘れたのか、シルバー。われわれは影、決してその存在を表に出すわけにはいかない。非常時でもない限り私達が護衛として干渉していいのは、あくまであのお方の日常生活に影響を与えない程度、だ」
「そ、そうかもしれませんが、このままでは」
「むろん、手は考えてある」
「ど、どのような?」
守矢は祥子さま専属SP隊長として高らかに宣言した。
「ハーブを買い占めろ!!」
「ハ、ハ−ブを? ハーブって、あのハーブですか?」
「そうだ、あの香辛料に使われるハーブだ! 急げ!」
「そ、それをどうするのですか?」
「決まっている、あのお方の通りそうな道に生えている雑草を全てハーブに植え替えるのだ!!」
「なっ! そ、そんな無茶な!」
「無茶は承知だ。だが、もはや残された道はそれしかない。むろん、全ての道は不可能だから一部の広い道には工事中などの偽装をやりできるだけハーブの方に誘導させる。いいか、我らSSS(スリーエス)の矜持にかけてあのお方に雑草など口にさせてはならぬ! 我らの存在意義は、この一戦にあり、だ!!」
「は、はいっ! わかりました!」
こうしてSSS(スリーエス)VS赤いタヌキ、SSS(スリーエス)による圧倒的なまでの超天然に対する絶望的な抵抗を告げる戦いのゴングが高らかに鳴らされた。
その勝敗は・・・どうでもいいので割愛しときます。 終わり。
・・・ええと、みゆきさま、ごめんなさい。こんなのしか書けませんでした(汗