【689】 姉妹交錯模様  (六月 2005-10-03 23:38:09)


いぬいぬさまのNo.681「みたこともない志摩子さんの怒り」にコメント書き込みながら思いついてしまったので・・・。
続き・・・かもしれません。(汗



一昨日の夜は志摩子さんのお宅にお泊まりできた。とっても嬉しかったはずなのになぁ・・・。
まさかあんなことで喧嘩になるなんて思ってもみなかった。
というか、志摩子さんって結構頑固だなと思う。

放課後、今日は薔薇の館に集まる日。吉と出るか凶と出るか分からないけど、無理矢理瞳子も連れて行く。
「なんですの?乃梨子さん。今はお手伝いも必要ない頃だと思いますけど」
「とにかく、サンプルは多い方が良いの。大事な話なんだから手伝ってよ」
「サンプル??」
目を白黒させている瞳子を引っ張って薔薇の館の扉をくぐる。
階段をギシギシ言わせながら足早に登り、ビスケット扉を開ける。
祥子さま、令さま、由乃さま、志摩子さんが揃っていた。祐巳さまがまだのようだけど、すぐに来るだろう。
「ごきげんよう。本日は皆様にお尋ねしたいことがあります」
挨拶もそこそこに本論に入る。怪訝な顔をする皆様方の中で志摩子さんだけは私の意図をすぐに分かってくれたようだ。
「乃梨子・・・そうね、皆さんの意見からどちらが正しいか、はっきりさせようというのね」
志摩子さんの言葉にうなずくと私はこう尋ねた。

「皆様は目玉焼きには醤油をかけますか?ソースですか?」

祥子さまと令さまはポカンとしていたが、由乃さまがすぐに反応してくれた。
「んー、私と令ちゃんは醤油かな?ね」
「・・・え、あ、そうだね、普通は醤油だよね」
令さまの言葉に祥子さまが憮然とした表情を見せる。
「あら、令。普通はソースではなくて?塩分の摂り過ぎは良く無いわ」
今度は令さまがムッとした顔をする番だ。
「いや、ふ・つ・うは醤油だよ、祥子。ソースなんて邪道でしょう?」
「邪道とは聞き捨てなりませんわ、黄薔薇さま。瞳子もソースを使っていますわ」
よし、瞳子。あんた偉い。親友は好みまで似るんだね、うん。
「ソースなんて甘ったるいものは邪道よ!邪道!」
由乃さま、そんな指差してまで・・・って志摩子さん肯いてるし。
「あら、由乃ちゃん、大豆の絞り粕の醤油と違って、ソースは果汁や野菜の栄養も摂れる健康食なのよ。
 それが分からないようではまだまだね」
祥子さま、タカビーなお嬢様と思ってましたが、あなたは私の仲間です。

「ちょっと待った!なんでこんな論争になるわけ。別に醤油でもソースでも良いでしょう?」
さすがヘタ令さま、中庸な意見に逃げましたね。でも、そういう問題じゃないところに来てるんですよ。
「実は一昨日、志摩子さんのお家にお泊りさせていただいたのですが、昨日の朝食に出た目玉焼きで意見が分かれたのです。
 それまでは志摩子さんの拘りに合わせていましたが、これだけは私の美学として許せないんです!
 目玉焼きには絶対ソースだと、そう私は叫びたい!」
「えぇ、私も乃梨子の嗜好には些かなりと思うところがあります。
 日本人なら目玉焼きには醤油しか考えられません」
皆様、志摩子さんが我を通そうとしている姿にそろって驚いている。
でも私はそれほど驚かない、だって志摩子さんはホントは強情で欲張りなんだから。
「そう、それで志摩子と乃梨子ちゃんが珍しく喧嘩しているというわけね」
白薔薇姉妹でもそんなことがあるのね、と祥子さまが呆れたように呟いた。
「それならこう言うのはどうかしら?
 今はここに居る6人で3対3で引き分け、あと一人がどちらを選ぶか多数決で決着よ」
「あとひとり・・・来ていないのは祐巳さんね。いいわね?乃梨子」
由乃さまの提案に皆頷いた。最後の選択は祐巳さま次第となったのだ。


薔薇の館を緊張した空気が包む中、下の扉が開き数人分の階段を上る足音が聞こえて来た。
「おそくなりました!ごきげんようお姉さま
 真美さんが次号のかわら版の原稿チェックをしてほしいとのことでお連れしました」
祐巳さまの後ろから新聞部の真美さまと写真部の蔦子さま報道コンビが顔を出した。
「ごきげんよう、祐巳。
 早速で悪いんだけれど、あなた、目玉焼きには醤油?それともソース?」
「ふぇ?」
「せっかくだから真美さんと蔦子さんも教えて下さるかしら?」

突然のことで祐巳さまのお顔がにぎやかになっている。報道コンビも話が見えずに顔を見合わせていた。
「さぁ!早くおっしゃい!」
「は、はい!・・・えーっと」
祥子さまの勢いに押されて真美さま、蔦子さま、祐巳さまの順でこう答えた。
「七味唐辛子ですね」
「ケチャップかな」
「マヨネーズです」
重苦しい沈黙を破って全員が一致した叫びを上げた。
「「「「「「あんたら邪道だ!!」」」」」」

こうなったら新聞部に頼んで全校アンケートでもしなきゃいけないのかなぁ・・・。


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