このお話はがちゃSレイニーシリーズ 【No:704】「救われてほしいから全力でサポート」の続きになります。
「黄薔薇のつぼみ」
祐巳さんたちと一緒に行ったら、桂さんに呼び止められた。
「桂さん。なに?」
「生活指導室じゃなくて、私につきあってもらえないかな?」
「でも、志摩子さんが……」
「その件も含めてね。今の騒動、止めないとまずいと思うの」
「それは……」
「今、積極的に、この事態を止めている人たちっていないじゃない? 山百合会の人物が積極的に止めにかかるのは良いことだと思うし、こういう事態を積極的に黄薔薇のつぼみが止めているというのは、結構大きいと思うんだけど。わたしはこの件に関しては、黄薔薇のつぼみが一番適任じゃないかなと思うのだけど………」
「ふむ……」
確かに今まで思わず逃げ回ってたけど、逃げ回るのは趣味じゃない。
私が、積極的に止めにはいることで、事態が多少なりとも沈静化するのであれば、新聞部に漏らした分も多少は償えるかも知れない。
元々、否定のインタビューでも何でもやろうと思っていたことだし、それくらいは何でもなかった。
「それに志摩子さん、怒られないと思うんだよね」
「え?」
私の周りにいた、みんなが一斉に首をかしげる。
「志摩子さんなんか悪いコトした?」
「あ、確かにそうかもね」
蔦子さんが、ぽんと手をたたく。
「だってこの騒ぎ……」
祐巳さんが心配そうに、そう呟く。
「志摩子さんは山百合会で姉妹の複数人制提案しただけでしょ? 元々明文化されている物ではないし。それに、その提案も次に出た号外を読む限り、可決されてる訳じゃないんでしょ? 私には志摩子さんが怒られる要素って考えられないのだけど……」
「でも……」
「わたしは、発端の責任取って、沈静化しなさいねって釘刺されるだけじゃないかなと思うんだけど………。まあ、先生の考えはわからないけどね」
桂さんのその言葉に私は少し迷って、決断した。
「桂さんの言うことも一理あるわね。志摩子さんは祐巳さんたちに任せる。私は桂さんと一緒に黄薔薇のつぼみとして、複数人制の活動をしている人の説得にあたることにする」
「わかった。私は心配だから、志摩子さんの様子見に行くよ」
祐巳さんは迷った表情をしながらもそう言った。
「それじゃあ、後でね」
そう言って、私と桂さんは、生活指導室とは反対の方に歩き出した。
「じゃあ、頑張ってね、黄薔薇のつぼみ。私は協力してくれそうな人をもう少し探してみるから」
「わかった」
私が頷くと、桂さんは心当たりでもあるのか、近くの人に声を掛けていた。
「みゆきさん。呼んでもらえせんか?」
さて、私は、何からやろうか。と考えようとしたところで、声をかけられた。
「黄薔薇のつぼみっ。やっと捕まえました。私を妹にしてください」
「あのねえ」
そう言うと思って、ふと考え込む。
相手に姉がいなければ、私は別に妹を断る必要がないのか……。
頭の片隅にちらりと菜々の顔が浮かぶが、とりあえず、それは置いておく。
「私は姉妹の複数人制は反対なの。あなたにお姉さまがいるならそう言うことは言わない方がいいわ。お姉さまが悲しむから。でも、いないなら、多少は考えてあげても良いわ」
考えをまとめると、私はにっこりと笑ってこう言った。
【No:733】へ続く