この作品は一体のNo.806「どこへ行くのか姉妹船バイヲ・ハザードォ」のおまけみたいなものになってます。あと、完全に壊れてますので読む際は気をつけてください。
「・・・・・・ねえ、祐巳。あれはなんなの?」
祥子さまが問いただすように祐巳に質問してくるが、祐巳はその質問に答えが返せなかった。
この場合、答えがわからないから返せない、と、分かってるけど返したくない、という二通りのパターンが考えられる。そして、今回の祐巳は明らかに後者だった。
だって、いくら祥子さまの質問でも答えたくない、いや、正しくはアレには関わりたくない。
「ねえ、もう一度言うわよ、祐巳。あれはなんなの?」
うっ、その言葉には明らかにヒステリーという名の香りが仄かに立ち上っている。・・・・・・仕方がない、祐巳はその重い口をゆっくりと開いた。
「・・・・・・まがね子ちゃんです」(ぼそぼそ)
「何? よく聞こえなくてよ」
「あ、あれは、あれはまがね子ちゃんです!!」
祐巳がそう叫ぶと、そのアレであるまがね子ちゃんが祐巳たちの方に表情をきょとん(こんな表現もったいないけど)としながら向けてきた。
「あら、呼びました、祐巳さま?」
「ううん、まがね子ちゃん、なんでもないよ」
「そうですか、いきなり名前を呼ばれたからびっくりしました」
どちらかというと、激しくびっくりさせられたのはこちらの方だ。あれは本当にびっくり、いや、そのような言葉では生温いにもほどがある。
それは、昨日のこと。
どすどすどす
なんだ? この怪獣の足音みたいな音?
祐巳は、何故か激しくいやな予感と今まで体験したことがない悪寒を感じていた。
「祐巳さまぁん!!」
!!!!!!
背後から祐巳を呼ぶ声が聞こえたとき、祐巳の体と心は激しく凍りついた。
祐巳は、自分が呼ばれているのに背後を振り向きたくはなかった。その声に聞き覚えがなかったからではない。いや、むしろ激しく聞き覚えがあった。ていうか、2度と聞きたくなかった。早く忘れたかった。
どす! どす! どす!
「うおおーん!! 祐巳さまぁん!!」
足音がどんどんと迫ってくる。祐巳の頭に最大限のエマージェンシーが鳴り響く。祐巳の頭は瞬時に一つの判断を下した。
逃げろ、どこまでも力の続く限り、と。
「とっ、とんずらー!!」
ぴゅー!!
「あっ、まってえぇぇー!! 祐巳さまぁん!!」
(だめ、だめよ、祐巳。振り返っては。逃げるのよ、どこまでも!!)
ぴゅー!!
「ああん、まってぇ・・・・・・さ・・ぁん」
どすどす・・・どす・・・・・・ど
やがて、その足音が遠くなっていく。やはりユニット的に機動性は悪いみたいだ。
(……ふう、し、死ぬかと思った)
だが、祐巳は心のどこかで分かっていたのかも知れない。ここで逃げても根本的な解決にならない、ということを。
そして、その考えが正しかったのを証明するかのように、次の日、薔薇の館にくると肉の壁が、むーん、と館の入り口に立ち塞がっていた。
肉の壁が、真っ直ぐに澄んだ目で祐巳を見据えてくる。
「・・・・・・きちゃった」
(くんな!!!)
と、いうわけだ。(どんなわけだ! ってお願いですから突っ込まないで。泣きたいのはこっちなんだから。くすん)
祥子さまが、再度口を開いてくる。
「で、そのまがね子ちゃんがどうしてここにいるのかしら? いえ、正しくは、どうしてリリアンにいるのかしら?」
それは、祐巳の方が知りたいです。
「えー、なにか話を聞く限りでは、目覚めた、とか、なんとかまがね子ちゃんは言ってましたが」
「・・・・・・いったい、まがね子ちゃんは何に目覚めたの?」
それは、激しく祐巳の方が知りたいです。いや、うそ。全然知りたくないです。
「はあ、イニシャルM、じゃなかった、なにか筋肉しか知らなかった自分に新しい世界を目覚めさせてくれた、とか言ってましたが」
「そう、あまり私には理解できそうにないみたいね」
「はい、まったくもって私も同感です」
祥子さまはため息を一つつくと、その美しいお顔をまがね子ちゃんに向けていた。その二人は、ありえないぐらいすごい組み合わせだった。
「あの・・・・・・高田さん、ちょっといいかしら?」
祥子さまがそう言うと、まがね子ちゃんはもじもじと少し照れくさそうにしている。
「あ、あの、紅薔薇さま。できれば、まがね子、って呼んでください。きゃっ、言っちゃった」(ぽっ)
ぎゃっ!!
・・・・・・ど、どちらかと言うと、やっちゃった、の間違いじゃないだろうか!?
かちーん
そして、その破壊力抜群の、やっちゃった、を真正面から受けてしまった祥子さまは凍りついていた。そりゃもう見事なまでにかっちんこっちんに。
「あ、あの、お姉さま? 大丈夫ですか?」
ぎいいい
祥子さまは器用にもその首だけを人形のように祐巳の方に向けてくる。
「・・・・・・ねえ、祐巳」
「は、はい、なんでしょう、お姉さま」
「アレは、あなたが責任とってなんとかしてちょうだい」
ぶっ!!
「えっ、わっ、私がですか?!」
そ、そんな、殺生な。
「だって、あなたに懐いてるみたいだし」
「えっ、でっ、でもアレの責任は由乃さんが・・・・・・」
そうだ、元はと言えばこの悪夢は由乃さんのトンデモ作戦のおかげでなったのだから、由乃さんがまがね子ちゃんの面倒をみないといけないと思う。
「由乃ちゃんが?」
「は、はい、アレは元はといえば由乃さんのせいで」
「・・・・・・でも由乃ちゃん、しばらく部活に専念したいから、アレの世話は全面的に祐巳さんにお任せしてます、って今日、昼休みに言ってきたわよ。そのときはアレってなんのことかわからなかったけど。アレのことじゃないの?」
「ぶっ!! ほっ、本当ですか、お姉さま!?」
ふきふき
「・・・・・・ええ、祐巳さん、そりゃあもう嬉しそうにしてましたので、っていってたけど」
「あ、あのイケイケ青信号!!」
江利子さま。残念ですが、もう由乃さんとはだめかもしれません。
「あ、まがね子ちゃん。これからは困ったことがあったら全部、祐巳に言ってちょうだいね」
「はい、よろしくお願いします。祐巳さまぁん」(くねり)
「ぎゃっ!!」
マ、マリアさま、助けてー!!
終わり
こんなもの載せてすみません。消してくれ、と言われたら速攻で消しますので。