まだ誰も来ていない早朝の薔薇の館。
ひとりでゆったりとお茶の時間を過ごす。
先月お姉さまが卒業なされ、紅薔薇さまという大任を受け継ぎ、先日の入学式で在校生代表挨拶という役も無事になし終えてほっと一息ついている。
今日からは新1年生達も期待に胸を膨らませて登校して来るのだろう。
しかし、私はお姉さまが居ない生活に馴れることが出来ずに気分が落ち込んだままだ。
しっかりしないといけないと思いつつも、ふとため息が漏れてしまう。
そんなことを考えていると、いつの間にか時間が経ってしまったようで、薔薇の館の入り口が開く音がしてざわざわと騒がしい話し声が聞こえて来た。
「ごきげんよう、みなさん」
「ごきげん・・・・・・ぶふぁ!!」
人の顔を見ていきなり吹き出すとはなにごと?
「何なのですか?乃梨子さん」
「い、いや、ごめん瞳子、くっくっくっく」
よくみると菜々ちゃんと乃梨子さんの妹が必死に笑いをこらえているようで肩を震わせている。
私の妹はなにやら困ったように表情をくるくる変えている。
「何があったんですの菜々ちゃん」
「いやぁ、今年の1年生はすごいです。薔薇さまへの憧れでいっぱいいっぱいなんですね」
薔薇さまへの憧れ?
「瞳子、1年生達の登校風景見てないんでしょ?
一回り教室と昇降口見ておいでよ。紅薔薇さま人気のすごさがよぉーーーーっくわかるよ」
私も人気があると言われれば悪い気はしませんが、笑っているというのが気になりますわ。
まあ、このままここに居ても話していただけないようですし、仕方ありません一回りしてきましょう。
「それでは行ってきますわ」
ばーん!!と大きな音を立てて(お姉さま命名)ビスケット扉を開け、ずんずんと部屋の中へと入って行く。
今、私の顔は真っ赤になっていることだろう。乃梨子さん達が大笑いしながら迎えてくれました。
「あれは何ですの!!あんな・・・あんな・・・」
「いやぁ、あれは入学式の挨拶が効いたんだろうねぇ。
瞳子の人気がいちばーん!」
あーもう、乃梨子さんの能天気な言葉が腹立たしい。
1年生達の姿を見て怒りのあまり震えが止まりませんでしたわ。
ごく少数のショートカットの子達を除き、ほとんどの1年生が縦ロールにしているなんて。
前後左右どこを向いても、大小様々な縦ロールの子達ばかり。
「いやぁ、今年はドリルが大豊作だ」
納得いきませんわーーー!!!