「ジーク・お凸!」
「ジーク・お凸!」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきったお凸に反射する。
きらり煌くお凸に集う乙女たちが、今日も天使のような悪魔のような笑顔で、背の高い江利子に飛びついていく。
汚れを知らない額を叩くのは、深い踏み込みの攻撃。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、無拍子で叩くのがここでのたしなみ。もちろん、誤爆して頭を叩き去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。
私立リリアン女学園凸ちんファンクラブ。
明治三十四年創立のこのファンクラブは、もとは凸愛好家の令嬢のためにつくられたという、伝統ある卵型お凸ラブ系お嬢さま倶楽部である。
東京都下。大草原の幻影を思い起こさせるお凸の多いこの学園で、神に見守られ、幼稚舎から大学までのお凸愛好教育が受けられるお凸の園。
時代は移り変わり、江利子がつぼみからランクアップして改まった黄薔薇さまの今日でさえ、十八年凸美人で知られれば温室育ちの純粋培養お嬢さまが遠慮なく突撃してくる、という仕組みが未だ残っている特殊なファンクラブである。
「……って、なにが凸ちんファンクラブよ、聖!」
「あはは! ほ〜ら江利子、ぺちぺち〜」
「きーーーーー!」
「あなたたち、仲良いわねー……」