【917】 瞳子と可南子の宇宙戦艦祐巳巫女ナース  (水 2005-11-27 07:11:43)


 あの、乃梨子にとって痛恨の極みでしかなかった茶話会からこっち。
 乃梨子に代わって可南子さんが、瞳子の隣に居るのを時折見かけるようになって。


 泣きたくなった。

 絶対に誰にも言わないけれど。


 二人で居るのを見かけた時はいつも、彼女らは酷く深刻そうな表情をしていて。
 乃梨子には近寄り難く、物陰から見詰める事しかできなかった。

 それで。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「お正月。素敵な振袖を着付けて初詣でに行くのですわ。お賽銭を投じてお願いをするのです、『運命のひとと出会えます様に』と。そして」
「そして?」
「当然おみくじを引きますわよね、そこで登場です。神社の境内、おみくじ売り場にいらっしゃるのは?」
「巫女さんね。……祐巳さま巫女(ご、ごくり)」
「ふふん♪」

「私の番ね。リリアンの乙女といっても今ぐらいの時期にもなれば、部活中のちょっとした遠慮も無くなって練習はどんどんハードになって行くわ」
「当然ですわね」
「なのに日常に慣れてしまって寒い季節には特に必要なウォームアップをおざなりにして、練習中に足を痛めてしまうの。そして」
「そして?」
「胸の内の失意と共に運び込まれるのは、病院。足を治してくれるのは医者だけど、落ち込んだ気持ちを笑顔で癒してくれるのは?」
「ナースさんですわね。……祐巳さまナース(ご、ごくっ)」
「……フッ」

「次ですわ。遠い未来から人が訪ねて来るのです。あなたの能力がどうしても必要なのです、と」
「あら、路線変更ね」
「科学技術の発達で戦争による死者がゼロになって、ゲーム的な勝ち負けで覇権を争っている時代なのですわ」
「SF?」
「ただ、あまりに便利過ぎてその時代の方々は身体的な能力が下降線を辿っていらっしゃるので、身体能力と機械知識を併せ持った私達の時代で人材発掘に勤しんでいる、というわけなのです。そして」
「そして?」
「スカウトされるのですわ、宇宙戦艦の艦長に。搭乗するのは自分一人きり。船の大きさからは想像もできない事なのですが、科学のおかげで一人で操船できますの」
「……ふ〜ん」
「孤独な艦長をサポートしてくださるのは人格を持ったコンピューター、素敵な電子の妖精なのですわ。二人きりの艦内で、いつも励ましてくださるその方と等しく名付けられた、その戦艦の名前は?」
「う、宇宙戦艦フクザワ・ユミ……(ぐ、ぐびっ)」

「くすくすっ、究極と至高の対決。今回は究極の祐巳さまの勝利ですわね♪」
「クッ……」

「ちょっとまって、その三つを全て合わせてみたらどうかしら?」
「は? 合わせるんですの?」
「想像してみて……」


『宇宙戦艦・祐巳巫女ナース……(ご、ごきゅり)』


「はっ。……貴女、お顔が崩れていらっしゃいますわよ」
「……ふん、貴女こそ、だらしないその口元何とかしたら」

 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


 と、別にライバルから一転、無二の親友となっちゃった訳じゃなくって。
 単に、二人の萌えシチュがピッタリコと完全に一致するので、ただそれのみを披露しあっていて。
 内容が内容なので、周りに気取られないように表情を取り繕っていたんだっていう事は。
 乃梨子には気付ける筈も無かった。


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