【928】 かわいい娘には眼鏡平和を乱すもの白薔薇  (六月 2005-11-30 21:03:07)


先にお詫びします。壊れネタばかり書いてごめんなさい。m(_._)m

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「だから、志摩子が1番!」
「由乃ちゃんがダントツよ!」
「いいえ、祐巳ちゃんに勝てるわけないでしょ!」
卒業間近なとある冬の日、薔薇の館のサロンはある意味熱い空気に満たされていた。
嫌な方向へと暴走する熱い空気に1年生トリオは呆れ果てていた。
「帰ろうか?」「そうね・・・」「そうしましょう」

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それは聖さまの一言から始まった。
「ねぇ、山百合会って眼鏡っ娘成分に欠けてると思わない?」
『はい?』
どこの星から電波を受信したのか謎な聖さまの言葉に、蓉子さま、江利子さまは鳩が豆鉄砲食らったような表情をした。
「百合の私に知性の蓉子、アンニュイ江利子にボクっ娘令にお嬢な祥子」
「別に令は『ボク』なんて言わないわよ」
「天然志摩子に病弱由乃ちゃん、ドジっ娘祐巳ちゃんと萌え要素満載なのに、眼鏡っ娘だけが居ないのよ!」
ツッコミどころも満載な聖さまだが、何か思うところがあるのか江利子さまの青信号が点灯してしまった。
「ふむ、武嶋蔦子ちゃんは?」
「カメラちゃんは薔薇の館の住人じゃ無いからダメ」
両手で大きく×を作る聖さまに江利子さまが「それで?」と話しを促した。
「で、私は眼鏡よりサングラスキャラだし、蓉子と祥子は萌えよりもざーますオバサンっぽいし。
 江利子は眼鏡より凸が目立つし、令は・・・ねぇ」
「凸言うな!」
「ざーますオバサンって、ひどっ!たしかに私や祥子だとキツイ感じになるけれど・・・」
聖さまにダブルツッコミを入れる薔薇さま方。
「と言うことで、志摩子に眼鏡かけてもらいましょう。ほわほわ天然萌え少女にぴったりだと思わない?」
「甘いわね。眼鏡っ娘は、1に読書家、2にはかなげ、34がなくて、5におさげ!
 それこそが眼鏡っ娘だと山本一番星さまがおっしゃっておられるのよ!つまり由乃ちゃんこそNo.1!!」
「江利子、それは妄想戦士の・・・あなた何に毒されてるのよ・・・。
 おさげならツーテールの祐巳ちゃんだってそうよ。しかもドジっ娘。こけて眼鏡落として探す仕草なんて萌え萌えよ」
蓉子さままでが聖さまの電波に毒されたらしくノリノリだ。

丁度、その三薔薇さまがノリノリのタイミングに、私、福沢祐巳と由乃さん、志摩子さんがサロンのドアを開けてしまったのだった。
『ごきげんよう』
私達が挨拶をすると聖さまはどこからからシャキーンと眼鏡を取り出してこう言った。
「ごきげんよう、早速だけど志摩子、この眼鏡かけなさい」
「はい?あの、お姉さま私は特に目が悪いわけで「いいから!」
いつになく厳しい聖さまの言葉に志摩子さんも怯えながら眼鏡を手にした。
「あの、これで良いでしょうか?」
凛とした知的少女の雰囲気を纏った志摩子さんの姿に、びしっとサムアップを決めて聖さまが宣言する。
「ふっふっふっふ、さすが志摩子。みなさいよ、この儚げな美少女!眼鏡っ娘萌え〜!」
だが、青信号江利子さまも黙っていない、志摩子さんから眼鏡を取り上げると由乃さんに突き付けた。
「由乃ちゃん、これを着けなさい」
「江利子さま、なんで私が「着けなさい!」
江利子さまの気迫に由乃さんもたじたじだ。
「まったく、なんで私が眼鏡なんてかけなきゃいけないのよ」
ぶつぶつと文句を言う由乃さんだったが、三つ編みおさげに眼鏡というその姿は定番の『委員長』そのものだ。
「ふふん!よーっく見なさい。これが正統派眼鏡っ娘というものよ」
「まだよ!祐巳ちゃん!」
「あぅぅ、私もですか?蓉子さまぁ」
ついに私の番が回ってきた。私が眼鏡かけると幼く見えるんだけど。
「これよこの上目使いにツーテール&眼鏡のロリ、これが萌えじゃないとしたら何を萌えと言うのよ!?」
蓉子さま、壊れちゃってますか?
「蓉子、そんな男に媚を売る萌えなんて認めないわよ」
「そうよそうよ、上野不忍池の『めがねの碑』が泣くわよ」
「あのね江利子、あなたお凸で変な電波受信してない?メガネっ娘教団に入信してないでしょうね?」
喧々諤々、三人は萌えの何たるかを議論し始めてしまった。私達を置き去りにして。
どうして頭の良い人が壊れると取り返しの付かないところまで逝ってしまうんだろう。
サロンのテーブルの上に眼鏡を置くと、私達三人は薔薇さま方に気付かれないようにそっと部屋を出た。
『お先に失礼します。ごきげんよう』

「あら?祐巳、もう帰るの?お姉さまは来られなかったの?」
薔薇の館を出たところでお姉さまと令さまに出会った。
「・・・紅薔薇さまは黄薔薇さま、白薔薇さまと3人だけでお話しされたいそうですので、お先に失礼するところです」
「そうなの?ご卒業前に心残りがないようになさりたいのかしら。
 いいわ、お邪魔にならないように先に帰りましょう」
「えぇ、それが賢明だと思います」
ここはとっとと帰る方が良い。
中で何が起っているのかお姉さまに話しても理解の範囲外だろうし、私達も三薔薇さまが発する嫌な空気から逃げ出したいから。

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翌朝、昨日の後片付けが気になった私は早めに登校して薔薇の館に向かった。
まだ冷たい空気に身を縮めながらサロンのドアを開くと。
「志摩子よ、一番可愛いのは!」「いいえ、由乃ちゃんよ!」「違う、祐巳ちゃん以外に居ないわ!」
まだやってたんかい、この三莫迦は・・・。


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