【とある日曜日、K駅改札口付近で】
「待ったぁ?ユキチ」
「いや別にって、うわ!何だよアリスその格好は」
「今日はせっかくのデートだからがんばっておしゃれしてきたの。似合う?」
「似合ってるよ気味が悪いほど。ってそうじゃないだろ。おまえミニスカなんかはいて、こんなところ誰かに見られたらどうするつもりだよ」
「うふふ。ユキチったら照れちゃってカワイイ!」
「いや別に照れてないし。それにそもそもデートじゃないし」
「何よ。映画見に行かないかって誘ってきたのユキチじゃない」
「しょうがないだろ。招待券が手に入ったから由乃さん誘ったんだけど、部活の都合でどうしても行けないって言われちゃって。それなら祐巳と行こうかと思ったら、久しぶりに祥子さんと出掛けるとかで浮かれまくってるし。小林のやつはこの映画興味ないとか言いやがるし」
「ひどい。ユキチほんとうはあたしより小林君の方が好きなのね」
「いやだからそういう問題じゃないし」
「あたしのことキライなの?」
「別にキライなんて言ってないだろ」
「じゃあ好きなのね。よかった」
「どうしてそうなるんだよ」
「男は細かいこと気にしないの。それより早く行かないと始まっちゃうわよ」
「ちょっ、よせ。何すんだ離せよ」
「腕組むくらいいいじゃない。それとも意識しちゃう?(クスッ)」
「だから違うって」
「今度由乃さんとデートする時のリハーサルと思えばいいじゃない。本番でオロオロするよりいいでしょ」
「うっ。まあ確かにそうかもな」
「ちょっとユキチ。あたしといるとき他の女のこと考えないで」
「おまえが振ったんだろ」
「そんなよそ見してると由乃さんが悲しむわよ」
「由乃さんの場合悲しむってか怒り出すよな多分。っておまえ言ってること無茶苦茶だよ」
「いいからいいから。さ、行こ」
【映画の後、喫茶店で】
「ああ、おもしろかった。素敵な映画だったわね」
「まあそうだな」
「うふふ。強がっちゃって。ユキチってば案外ロマンチストなのね」
「どういう意味だよ」
「二人が再会するシーンで泣いてたの、知ってるんだから」
「いいだろ別に」
「うん。そんなところも素敵よ」
「アリスに言われてもな」
「まあひどい。せっかくほめてるのに。いいわよ、明日学校で日曜日にユキチとデートしたってみんなに言いふらしちゃうから」
「ちょっと待て。それだけはやめてくれ」
「ユキチだけはあたしのことオカマだってバカにしないと思ってたのに。(クスン)」
「バカになんかしてないって。ごめん、俺が悪かった。頼むから泣きやんでくれよ」
「・・・えへへっ」
「なんだよ嘘泣きかよ。もう勘弁してくれよ。周りに注目されちゃったよ」
「じゃあそろそろ出ましょうか」
「そうだな、もう帰ろう。今日はなんか疲れたよ」
「なあにユキチ。送ってくれないの?」
「はぁ?」
「明日学校で・・・」
「わかったわかった。送ればいいんだろ、送れば」
「ちょっと引っかかる言い方だけど、まあいいわ。許してあげる」
(なんで俺が許してもらわなきゃならないんだ)
【夕暮れ時、アリスの家の前で】
「送ってくれてありがとう」
「いや。(脅迫したんだろ)」
「今日はとっても楽しかった。誘ってくれてうれしかったわ」
「そうか」
「いろいろ意地悪なこと言っちゃってごめんなさい。怒ってるわよね(ウルウル)」
「い、いやそんなことないよ」
「じゃあユキチも楽しかった?」
「そうだな。ちょっとハラハラしたけど意外と楽しかったかな」
「よかった。また誘ってくれる?」
「スカートをはいてこないんならな」
「もう、いじわる(ポカポカ)」
「ははは。じゃあ俺帰るから」
「あん、待って」
「ん?」
「今日うち、誰もいないの。だから・・・」
「いいかげんにしろ!」