【946】 肋骨に食い込む拳栞に阿修羅バスター  (六月 2005-12-08 00:26:37)


大学二年の春。
私は身をえぐるような辛い出会いを経験した。

私が栞に再会したのは、春のある日、いつもより早めに講義に出席しようとした、そんな日だった。
目が覚めるといつもよりも早い時間だったが、二度寝する気にもなれず、陽気に誘われるようにリリアンの庭へと向かった。
ふと、あの桜に会いたくなって高等部の公孫樹並木を歩いていると、一人のシスターが同じように前を歩いているのが見えた。
どうやら彼女も同じ公孫樹の中に一本だけ咲き誇る桜を目指しているようだ。
邪魔をしては悪いと思いつつも、その彼女の後ろ姿に惹かれるものがあり、後ろについて行くことにした。
桜を愛でる彼女をそっと見守るように、離れたところからみていると彼女がこちらを振り向いた。
その瞬間、私は全身に電撃が走ったかのような衝撃を受けた。
「・・・・・・栞」
「聖」
ふらふらと引き寄せられるように栞に歩み寄り、抱き締めようとした。
「栞、わたしはあなたを・・・」
どぐぉぉぉっ!!
栞の拳が私の鳩尾に深々と突き刺さる。
「久しぶりね、聖。あれから随分と楽しい学園生活を送っていたそうね。
 とても可愛らしい妹ができたとか」
ぎしぃ!
栞の細い腕が私の首に食い込みネックブリーカーが決まる。
「私が一人、悩み苦しんでいる間に、妹以外にも可愛がっている後輩もできたそうね。
 一緒にお泊まりするくらいに」
ずだーーーん!
片腕は私の首に巻き付けたまま、空いた片手でジーンズを掴むと空中高く持ち上げられ、ブレーンバスターで地面に叩きつけられた。
「最近は大学の近くに入り浸っている素敵な彼女もできたそうだし」
ぎぎぎぎぃ!
栞の両足で首四の字固めを極められる。すべすべの太股で締め付けられるのは嬉しいが、このままでは殺られる!
「栞!聞いて!すべて誤解よ!」
「問答無用!待っててね聖、すぐに主の下へと送ってあげるわ」
いや、まだ死にたくはないわ、栞。話しても解らないなら、拳には拳を!
ゴロゴロとローリングで無理やり栞を引きはがすと、彼女の後ろから両腕を掴み抱え上げ、ダダッと桜の木を駆け登る。
そのまま空中高くジャンプすると、栞の両足にも足を絡めさせ、私の肘と膝で身動き取れないように押さえ込む、変形阿修羅バスターに持ち込み、全体重をかけて地面へと叩きつけた。
ずずずずぅぅん!!
地面にめり込んだ栞を抱き起こすと、
「わかった?私は今でもあなたを愛しているわ」
「えぇ、あなたの想い受け取ったわ、聖」
桜の花が舞い散る中で二人抱き合うのだった。

てか、栞。随分とワイルドになったわね。




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