【952】 告死天使のるか反るか  (joker 2005-12-09 12:58:29)


「というわけで、いきなり妹にしてください、と言うのも難しいと思うので、命題を変える。」
「前回同様(【No:951】)、どういうわけだか分かりませんわ。」

 放課後、天宮に呼び出された瞳子は、現在屋上にいた。
「それで、どのような命題に変わるんですの?」
「うむ、これなんだが……」
 そう言って、制服の胸元を探る。
「……どこに入れてるんですの?大して無いのに(ボソッ)」

ゴン

「……グーで殴りましたわね…」
「お、あったあった。これだこれ。」
 瞳子の苦情を無視しつつ、ようやく胸元から一枚の便箋を取り出し、広げる。
「命題。12月9日、金曜日の夜九時までに、福沢祐巳と手を繋がなければ、お前は…死ぬ。」
「……それだけでいいんですの?」
 あまりに簡単な内容に、瞳子は拍子抜けする。なぜなら、瞳子は大抵毎日、祐巳に無理矢理(本人は喜んでいるが)手を握られてしまうからである。
「……まあ、それぐらいでいいのでしたら、かまいませんが…。」
 瞳子の言葉に、天宮は顔をしかめる。
「松平瞳子。貴様は勘違いをしているな?手を繋ぐのは、福沢祐巳からでは無く……お前からだ。」

 ………………

「………な、なんですって〜〜!?そ、そんなこと無理ですわ!」

 命題の内容に驚愕する瞳子。
 このなんでもないような命題だが、瞳子にとっては、未だに自分から手を繋ぐ事すら、不可能に近い。
「おいおい、そんなに驚くようなことなのかい?ただ福沢祐巳と手を繋ぐだけなんだぜ?今から福沢祐巳のところに行って、一緒に帰りましょう、と言って手を繋げば、それで済むじゃないか。」
 天宮は心底呆れた様な顔をし、肩をすくめる。
「……あなた、段々と口調が某泡になってきてますわね…。じゃなくて!そんな簡単に言わないでください!それに、祐巳さまと一緒に帰る理由がありませんわ!」
「理由ならあるだろう。『私は祐巳さまを心からお慕い申しあげています。一時も離れたく――』」
「おだまりなさい!この疫病天使ぃーー!」
「ぐふぉー」
 顔を赤らめながら語る天使に、さらに顔を赤らめた瞳子の拳が天使の(体は乃梨子の)リバーに深々と突き刺さり、そのまま吹っ飛ばされた。

なにはともあれ、瞳子の命が尽きるまで後、一週間。(リアルでは後、8時間と2分。)


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