【955】 桜色の夏空狂い咲き  (アヤ 2005-12-10 17:12:04)


「わ、瞳子ちゃん!久しぶり〜!」
「・・・なんでこの時間にこの場所にいるんですか」
「あははっ!山百合会のお仕事で――――っていうには遅いよね。この時間」
「何時だと思ってるんですか、もう」

太陽が沈みかけて、まばらに星も見えかける、この時間。
さすがに薔薇さま達も、夏休み中までこんな時間まで残らないだろう。

「演劇部さ、今日の延長練習の許可書、提出してたでしょ?
 一緒に帰りたいなーなんて」
「・・・今までどこにいたんですか」

図書館もこの時間は開いていない。
薔薇の館だって入れないだろう。

「ん?あそこ」




指差すそこだけ、桃色

   ―――否、桜色だった。




「・・・桜?」

「うん、綺麗でしょ?志摩子さん、ここで乃梨子ちゃんと出遭ったんだってね」



みーんみーん・・・
カナカナカナカナカナカナ・・・

何故、こんな季節に、という疑問を、瞳子はあえて口にしなかった。
その何故があってこそ、不思議なのだ。



「瞳子ちゃんだけにね、見せたかったの」







          舞い上がった桜の花びらが、紺色の夏空を一気に桜色に変えた。


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