【959】 爆笑リコちゃんがリコント  (砂森 月 2005-12-11 20:54:54)


(なんで私が)
 乃梨子は頭が痛くなりそうだった。
 目の前には大爆笑をしている現山百合会の面々と報道コンビに蓉子さまと聖さま。そして隣には……
(絶対この人のせいだ)
 嬉々とした表情でボケを放ち続ける江利子さまがいた。



「乃梨子ちゃん?」
「なんでしょう?」
「私とコントしない?」
「……は?」
 帰宅途中、ひょんなことから佐藤聖さまに声をかけられ大学敷地内へと招かれた乃梨子は、そこにいた大学生らしき人から突然そんなことを言われていた。
「ちょっと江利子、いきなりそんなこと言われたら誰だって戸惑うって」
 そうか、この人が鳥居江利子さまなのかと思いつつ(でもこの前の剣道大会で遠くから挨拶したことも思い出しながら)、しかし何でいきなりコントなのだろう、しかも私なのだろうと悩んでいると、もう一人の大学生−水野蓉子さまが4人分の紅茶を持って来ながら説明をしてくれた。
「この前ね、江利子が落ち込んでいたから気晴らしにと思って3人でお笑いのライブを見に行ったのよ。そしたら江利子ってば予想外にはまっちゃって自分もやるなんて言い出して」
「それは分かりましたけどどうして私なんですか」
「それは君が突っ込み体質だから」
 さらりと言ってくれますね聖さま。否定できないところが悲しいですけど。
「で、でも突っ込み体質なら失礼ですが蓉子さまもそうなのでは……」
「蓉子じゃ新鮮みがないもの、長い付き合いだし」
「それに君たち2人の方が面白そうだからね、江利子と乃梨子ちゃんだし」
 ん? 何か今聞き捨てならない発言があったような……
「今なんて仰いました?」
「だから江利子と乃梨子ちゃんだから。リコ同士のコントなんて面白いじゃない」
「そ……」
「そ? じゃあ掃除機」
「機関銃……じゃなくてそんな理由ですかぁっ」
「そうだよ、江利子と乃梨子ちゃんでリコント。今度薔薇の館でお披露目だからね」
「なんでそこまで決まっているんですかっ」
「今決めたから」
「私に決定権はないんですかっ」
「ないよ」
 乃梨子の意志とは無関係に話を進める聖さまと江利子さま。他にどうしようもないので蓉子さまに助けを求めたが、
「ごめんね乃梨子ちゃん、こうなった江利子は誰にも止められないの」
そんなことを言われては、もう腹をくくるしかなかった。
「じゃあさっそくネタ合わせよー」
 ……やっぱり抵抗したいかも。



「乃梨子ちゃん、遠慮せずにどんどん突っ込んでね」
「はぁ……」
 そうは言われてもやはり先代薔薇さまに突っ込みを入れるとなるとどうも気が引ける。それにこれまではクールな優等生として通してきていたのに。
(さようなら、昨日までの私)
 心の中で涙を流しながら乃梨子は薔薇の館へと足を踏み入れるのだった。



(うぅっ、なんで私が)
 わかっていても乃梨子は頭が痛くなりそうだった。
 目の前には大爆笑をしている現山百合会の面々と報道コンビに蓉子さまと聖さま。そして隣には……
(絶対この人のせいだ)
 嬉々とした表情で予想の斜め上をゆくボケを放ち続ける江利子さまがいた。
「それにしてもホントうちの馬鹿兄貴達は揃いも揃ってシスコンなんだから」
「へぇ、そうなんですか」
「そ、シースルーコンセントなのよ」
「なるほど……って何ですかそれはっ」
「これよ」
「って何でそんなもの作ってきてるんですかっ」
「ぶぁっはっはっはっはっ」
 マリア様、私のこれからの学園生活はどうなってしまうのでしょうか?


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