花寺の学園祭が終わった翌週の金曜日、剣道部での稽古が終わって薔薇の館に顔を出すと、サロンが妙な雰囲気に包まれていた。
「えーっと・・・」
祥子は口を押さえて笑ってるし、志摩子と乃梨子ちゃんは目を遇わせようとしない、由乃は怒ってる・・・ね、祐巳ちゃんはあたふたと顔色が変わっててよく分からなくなってる。
ふーむ、私絡みで何かあったのかな?
とはいえ、由乃に聞くとまずそうな話みたいだから、
「祥子、なにかあったの?」
と、当たり障りの無い相手に尋ねてみる。
「これよ」
祥子はテーブルの上の紙を指さした。
かわら版かな?えーっと『・・・クィーン特別賞:支倉令』??
はて?私いつの間にコンテストに出たっけ?
でも、私がクィーン?うふふ、そう呼ばれるのは悪い気はしないわね。
私だって女の子だもの。ついつい顔が緩んでしまうわ。
と、それが気に入らないのか由乃が、バン!とテーブルを叩くと紙を指さしてこう言った。
「令ちゃん!にやけてないでよく読んでよ!こんな酷い記事許せないわ!」
「よ、由乃さん、向こうには祐麒から言ってもらうから、ちゃんと謝罪してくれるように、ね」
祐巳ちゃんが由乃を宥めてるけど、私がクィーンと呼ばれるのが気に入らないのかなぁ?
とにかく、もう一度紙面に視線を落とすと・・・。
『花寺新聞学園祭特別号
花寺女装クィーンコンテスト第1位有栖川金太郎、第2位・・・、第3位・・・、・・・、女装クィーン特別賞支倉令』
女装コンテストって・・・・・・。涙が滝のように溢れて止まらないわ〜〜。