【2851】 ゴンドラ通りまーす何か今通りましたねああ、青春のゴンドラ  (bqex 2009-02-25 17:14:17)


ARIAご存知ですか?

 火星に集うゴンドラ漕ぎたちが今日も天使のような無垢な笑顔でため息橋をくぐりぬけていく。
 汚れを知らない心身を包むのはウンディーネの制服。
 スカートの裾は乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと漕ぐのがここでのたしなみ。
 ネオヴェネツィア、ここは乙女たちの水路。

志摩子「偶然って恐ろしいわね」
乃梨子「選んだんじゃないんですか?」
志摩子「あらあら、本当に偶然なのよ。このキーワード」
乃梨子「で、今はどのような状況なのでしょう?」
志摩子「乃梨子はMARIAカンパニーのつぼみ(見習い)で、私は三大妖精の一人でロサ・ギガンティア。あなたは姫屋の瞳子ちゃんとフェティダプラネットの菜々ちゃんと一緒に薔薇さま(一人前)になるために毎日練習してるのよ」
乃梨子「姫屋だけはそのまんまなんですね」
瞳子「乃梨子ー」
志摩子「ほら、瞳子ちゃんが迎えにきたわよ」
 乃梨子がいくと瞳子、菜々、そして祥子がいた。
乃梨子「あれ、なぜロサ・キネンシス?祐巳さまじゃないんですか?」
瞳子「祐巳さまならちゃんとこちらに」
瞳子はタヌキにしか見えない猫を指して言った。
乃梨子(私、人間役でよかった……)
祥子「ちなみに私は姫屋所属の三大妖精で薔薇さまって設定だから、よろしくね」
乃梨子「はあ」
祥子「では、今日は3人に私が指導してあげるわ」
志摩子「いってらっしゃーい」

 祥子の指導でゴンドラを漕ぐ3人。そして夕方近くになった。
祥子「この季節、私たちウンディーネにとって最も難しい時間帯がやってくるわ。潮が満ちてきて水位が上がり、橋の下が通れなくなる場所がいつもの倍増えるのよ。薔薇さまでも完全に把握するのは難しいわ」
祥子「そこで、今日一日の締めくくりとして私を無事目的地まで届けてみせるように」
乃梨子・瞳子・菜々「はい!」
 潮が満ち、4人を乗せたゴンドラはあっというまに立ち往生してしまった。
瞳子「乃梨子、こっちも通れない!」
乃梨子「そっちは?」
菜々「こっちはでっかい行き止まりです!」
瞳子・乃梨子・菜々「どうしよう……」
祥子「いいこと?薔薇さまになったら誰もフォローしてはくれないのよ?自分たちのミスは自分たちでなんとかなさい!」
 動ける範囲で移動する3人、ふと菜々が気付いた。
菜々「乃梨子さま、瞳子さま、わずかですがこっちから水の流れが……この扉の向こうです!」
扉を開けると真っ暗な建物に続く水路。
乃梨子「今はお客様のためにできるベストを尽くそう。瞳子は私の指示通り漕いで」
瞳子「わかったわ」
進んでいくとさらに扉が……
菜々「失礼します」
 菜々が扉を開けると大きな水路に出た。
乃梨子「やったあ!」
瞳子「出られましたわ!」
菜々「でっかい脱出成功です!」
 夕日が沈み、夜になった。
 祥子が3人にピザを勧める。真っ先に飛びつく祐巳。
祥子「どうしたの?祐巳にみんな食べられてしまうわよ」
瞳子「あの……」
祥子「あなたたちはもう反省しているじゃない。本気で頑張って本気で反省している人を叱っても無意味だわ。さあ、召し上がれ」
乃梨子「いえ、そうではなくて……これ、Lサイズですよね?ピザハットとのキャンペーンのピザはMサイズですよ」
すわっ!
菜々「そんなオチですか……」

 続きません。


【2852】 切磋琢磨  (アイドリームドアドリーム 2009-02-26 08:45:38)


 【No:2843】の続き、です。




 人ってつくづく現金なものだ。

 祐巳は、少しだけ自分に呆れた。

 あれだけ辛く、苦しかった訓練のことだ。たった一つ、祐巳が自分が人並みに、いや、それ以上にこなせる訓練を見つけたのである。

 『この世界』にやってきてからというもの、常に圧倒されっぱなしだった祐巳にとって、戦術機の操縦は、初めてすんなりと受け入れることのできることだった。今までの訓練に比べれば格段に楽で、こう言ってはなんだが、訓練するのが楽しくすらある。相性がよかったのだろうか。コックピットで感じる振動に慣れて嘔吐しなくなってからは、祐巳は戦術機が見せてくれる光景に夢中になった。何冊もある分厚い教本も隅々まで読み込んだ。戦術機は、これから祐巳が軍人になるにあたり、戦場で命を預けることになる兵器だ。

 今までと違って、その訓練がゲームみたいで楽しいから、ここまでのめり込むのだろうか。

 そんなの、どうだっていい。動機なんて、他人から見ればどうでもいいことだ。大事なのは、結果を出すこと。自分も楽しいし、それで操縦技術が向上するのなら、いいことだらけだ。

 今、祐巳は調子がいい。操縦訓練や、戦術機に関する座学の割合が増えたせいで、祐巳の苦手だった訓練が減っているということもある。それにしたって、ついこの前まで世界が終わったみたいな――ある意味間違いではないのだけれど――悲壮感を背負っていたのに。



 この日の訓練は、実機による模擬戦闘訓練だった。仮想敵は2機の教官機。こちらは、1個小隊の4機で相対する。

「03と04は先行して。01と02で支援するわ」

「了解」

 この模擬戦で、小隊を率いる克美が採った戦術は、オーソドックスなものだった。祐巳と景さんの2機で教官機を足止めし、克美さんと静さんが仕留めるのだ。数的有利を生かした確固撃破を目論む。

 BETAとの戦闘を想定しての訓練というよりは、操縦訓練の一環としての性格の方が強い。現状では、対戦術機戦が起きる――つまり人間同士で戦争をする――余裕なんて人類にはない。

 今訓練をしている演習場は、BETAの本州侵攻の際に放棄された旧川崎市にある。廃墟となった建造物が遮蔽物になっており、敵の位置を常にレーダーが追っていてくれるとは限らない。だが、その条件は向こうも同じ。移動の際に生じる音や、砂塵を捉えてだいたいの目星をつける。

 04の機体を操縦する祐巳は、突撃前衛の役割を担っている。敵と一番近い距離で交戦することになるので、隊の中でも一番の腕利きが突撃前衛となる。たった4機からなる小さな所帯だけれど、これが今の祐巳の居場所だ。

「行きます」

 2機の教官機の動きを察知した祐巳が距離を詰めべく、突撃した。それに、景さんの03が追随する。

「援護射撃」

 そのままだと単なる標的に過ぎない03と04だが、相手に撃たせないために克美さんの01と静さんの02が弾をばら撒いて祐巳たちの前進を支援する。対戦術機戦闘においては、ここで敵の砲撃を受けて撃墜するリスクを減らす、という程度の気休めに過ぎない。いくら万全を期しても、敵も牽制のつもりで撃った弾に被弾してしまうことだってあるのだ。けれど、同時に祐巳の動きに釣られて敵が応射してくると、そこから正確な位置を割り出すことも可能だ。

 この廃墟と化した町並みは、祐巳たちや他の衛士の訓練にも使用されているので、訓練用のペイント弾であちこちカラフルに彩られている。そんな中を風を切り、砂塵を巻き上げながら進撃する。網膜に直接投影される各種情報が目まぐるしく変化する。

 援護射撃開始直後は、相手も隠れている。だが、数秒経過して射線がずれているのを確認すると、撃ち返して来る。それに被弾しなければ、今度はこちらが遮蔽に隠れる番になる。そして、相手の射撃をやり過ごし、その攻撃位置を割り出してまたこちらが前進する、ということを繰り返して距離を詰める。教官機の方としては、祐巳と景さんとの距離を逆に詰めて接近戦に持ち込み、味方を誤射するというリスクを発生させて克美さんと静さんの援護射撃を封じるという戦術を選択することもできる。事実、過去に何度もそれをやられているけれど、今は一定の距離を保ちながら戦うことを選択しているようだ。

 2機とはいえ、技術に勝る教官機はそう簡単には足を止めてくれない。

「後方に敵機!」

 その時、02の静さんが悲鳴を上げるように叫んだ。

「回り込まれた!?」

 克美さんの声も緊迫している。

 戦術機部隊は、2機連携(エレメント)を最小の単位として運用されるのだけれど、もちろん実際の戦場で杓子定規にその通りになるわけがない。教官たちは祐巳と景さんと、克美さんと静さんの距離が離れたと見るや、分断して2対1の形に持ち込んだのだ。気付かなかった。完全な不意打ちである。

「01、02、撃墜判定」

 戦術機管制官がいるCP(コマンドポスト)からの通信で、克美さんと静さんが撃破されたのを知る。それとほぼ同時に、01、02との機体の情報リンクが解除された。

 残る祐巳たちもペイント弾の一斉射に曝される。それを何とかビルの陰に隠れてやり過ごした。

「03、撃墜判定」

 今の攻撃で、景さんもやられてしまった。教官に翻弄されるのは、仕方がないとはいえ、何もできないままに、3機が撃破された。

 だが、今の攻撃で、距離が近い方の教官機の正確な位置が判明した。01と02を撃破した方の教官機とは若干距離がある。祐巳は、遠い方の教官機に牽制射撃を行い、それに応じて遮蔽物に隠れたと見るや、近い方の教官機に一斉射撃を行いながら突っ込んだ。隠れているために命中することはないけれど、位置が分かっているため集弾が正確なので、向こうは動けない。

 祐巳はペイント弾を撃っていた突撃砲を機体の腰の部分に固定すると、近接戦用の模擬刀を装備した。一気に距離を詰めて、攻撃する。教官機は回避したが、祐巳も簡単には逃がさない。再度模擬刀で斬りかかる。今度は逃がさず、教官機1撃破。その直後に、位置を割り出されたがために遠くにいた方の教官機の狙撃を受けて祐巳の機体にも撃破判定が下された。



「本当にすごいわね。教官を撃墜するだなんて」

 夜。寝る前に今日の模擬戦の反省会を行う。もちろん、訓練の直後に教官を交えてブリーフィングを行っているのだけれど、自分たちにどんな戦い方ができるか、するべきなのかということを話し合うには時間が足りないのだ。

「いいえ。皆さんが粘ってくれたおかげで相手の正確な位置が分かりました。それでたまたま残った私がやっただけですよ」

 克美さんに褒められた祐巳は謙遜ではなく、事実として言った。

「けれど教官と格闘戦をして勝つとはね」

「そんなあなたと組む私は、追随するのが精一杯で戦闘どころではないわ」

 静さんと景さんも苦笑する。まだひよっこの訓練兵が、元は歴戦の衛士である教官を有利な状況設定だったとはいえ、撃破したということが皆のテンションを上げていた。この成果は訓練分隊全体で共有すべきものだ。戦術機に乗る前。落ちこぼれ状態だった祐巳を、三人は引っ張り上げてくれたのだ。やっと祐巳もその長所を分隊のために反映することができるようになったのだ。元より出し惜しみするつもりはない。

「やっぱり問題は、祐巳と私たちの操縦技術がかけ離れていることね。そして、指揮官である私が祐巳のことを上手く使えていない」

 克美さんの、こうして自分の指揮官としての落ち度を問題意識として分隊に共有させるところに、祐巳としては感服せざるを得ない。つまらない見栄なんて張らず、また皆に表明することで自分を追い込む。他人にも厳しい克美さんだけれど、自分にも誰よりも厳しい。そして克美さんならば、そう遠くないうちに、あっさりとこの問題を解決してみせるのだろう。きっちりと指揮を採って、なのにそれが当然みたいな顔をして。

「景だけではなく、静と私も祐巳とエレメントを組んで、祐巳の機動に追随できるようにならないと。明日から、早朝と夕食後にシミュレーターを使用できるように申請してみるわ」

「祐巳、いい? 私たちに遠慮せずに好きに動いてね。あなたの技術と機動は教官相手にも通用している。あなたは私たちのことなんて考えずにどんどん強くなってちょうだい」

「あら? シミュレーターならいいけれど、実機で祐巳の機動を追ったら、今の静ならもたないわよ」

 静さんの言葉に、克美さんが唇の端を少しだけ吊り上げて指摘した。

「ほんと……一番体力がないと思っていたのに、あれだけ戦術機を振り回しても平然としているんだから……」

 いつも祐巳の背中を追いかけている景さんは呆れるばかりだ。

 この夜は、訓練のこと以外にも会話が弾んだ。


【2853】 祐巳をベースに黒シアさんの陰謀いつもの可愛い声で  (bqex 2009-02-26 16:37:02)


またARIAネタです。
何故にまたこんなキーワードと出会ってしまったのか……

 火星に集うゴンドラ漕ぎたちが今日も天使のような無垢な笑顔でため息橋をくぐりぬけていく。
 汚れを知らない心身を包むのはウンディーネの制服。
 スカートの裾は乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと漕ぐのがここでのたしなみ。
 ネオヴェネツィア、ここは乙女たちの水路。

 水先案内店の社長は青い目の猫である。
 乃梨子の勤めるMARIAカンパニーの祐巳社長もタヌキのようなお姿だが、立派な猫である。
 今、その祐巳社長は絶賛ピンチ中である。
 乃梨子が目を離した隙に水路から海の方に向って流されてしまったのである。
乃梨子「祐巳社長ー!!」
祐巳「ぷいにゅー!」
 乃梨子は祐巳を助けるべく必死にゴンドラを漕いでいるが、流れが速くて追いつけない。このまま海に出てしまってはもう助けようがなくなる。
 乃梨子は焦っていた。
祐巳「ぷいにゅー!」
乃梨子「追いつけない!……こうなったら!!」
 乃梨子は後ろ向きに、だが、今までよりはずっと速くゴンドラを漕ぎ始めた。
乃梨子「祐巳社長!今助けますからねーっ!」
祐巳「ぷいにゅー!」
 誤って身につけた逆漕ぎだったが、スピードには自信があった。だから必ず祐巳に追いつけるハズ……だが、世の中そんなに甘くはなかった。
 祐巳はどんどん離れていく。
乃梨子「ああっ!海に出ちゃう!」
 その時乃梨子の前にゴンドラに乗った一人の女性が現れた。
 三大妖精の一人、ロサ・ギガンティアこと志摩子である。
乃梨子「志摩子さーん!」
祐巳「ぷいにゅー!」
志摩子の位置なら祐巳を助けられる。乃梨子がそう思った瞬間、志摩子は聞いてきた。
志摩子「……猫、好き?」
乃梨子「は?あ、はい!」
志摩子「でも、営業していないアクア・アルタの間はどうするの?あなたのいなくなったあとは?一時の同情で助けるなんて却って残酷だと思うわ」
乃梨子「は、はあ?何を言ってるんですか?今はとにかく祐巳社長を助けてくださいよ〜」
祐巳「ぷいにゅー!」
 祐巳は志摩子の横を流されていった。
乃梨子「わーっ!華麗にスルーしないでくださいよ!助けられなくなるじゃないですかっ!!」
志摩子「でも、この子は覚えている……ロサ・ギガンティアの手の温もりを……」
 志摩子は明後日の方向を向いてとてもいい表情をしている。
乃梨子「女優モードはいいから助けてください!志摩子さん!」
祐巳「ぷいにゅー!」
乃梨子「し〜ま〜こ〜さ〜ん!!」
 その時、赤い何かが3倍の速さで乃梨子の脇を通っていった。
 姫屋の赤い彗星、三大妖精ロサ・キネンシスこと祥子である。
祥子「祐巳!」
祐巳「ぷいにゅー!」
 祥子は巧みなオールさばきで祐巳を救出した。
乃梨子「良かった!!さすが祥子さま」
 祥子はキッと志摩子の方を向いた。
祥子「……志摩子」
志摩子「なんでしょう?」
祥子「今、私を試したでしょう?本当は出番のない私がここまで祐巳を助けに来られるか、あなた私を試したでしょう!」
乃梨子(ええっ!確かにここ、祥子さまの出番なかったけど、まさか……)
 志摩子はにっこりと祥子に微笑みいつもの可愛い声でこう言った。
志摩子「あらあら、もうこんな時間。私、仕事に戻らなくては……ごきげんよう」
 志摩子は悠然と去って行った。
乃梨子「志摩子さんって、すごい……」
祥子「志摩子っ!!棒読みなセリフ、禁止!!」
祐巳「ぷいにゅー!」


【2854】 暴走!暴走!大暴走!  (パレスチナ自治区 2009-02-27 00:02:17)


ごきげんよう。
今回は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とのクロスオーバーです。

某県の片田舎にある小笠原グループの科学研究所。
この場所で今正に科学の歴史に革命の1ページが刻まれていた。
「ふふ、ついに…ついに完成したわ…」
「はい、祥子お嬢様。長かったですね」
「ええ…長かった…とっても長かった」
祥子の目にはうっすらとした涙と充ち溢れんばかりの歓喜が宿っていた。
「これさえあれば私の野望が達成されるわ…ふふふふ……」
邪悪な笑みを浮かべる祥子…その美しい顔は機械油によって汚れていて、怪しさが増長されていた。
そんな祥子に研究員たちは怯えていた。
「祥子様、実験はどうしますか?」
「もちろん私が行うわ」
「ですが失敗したときどうなさるおつもりで?」
「実験には失敗が付き物よ。それにね世界で一番最初にタイムトラベルするのはこの私よ!」
「そうですか、わかりました」
そう!小笠原科学研究所で開発されていたものは「タイムマシン」である。
その名も「ユミリアン」。
「ほんとーにネーミングセンスが無いですよ、祥子様は…」(小声で…)
「なにかおっしゃいまして?」
「いいえ!なにも!」
「まあいいです。ふふふ…これさえあれば…これさえあれば!」
「それで祥子様、祥子様の野望ってどんな事なのでしょうか?」
「よくぞ聞いてくれましたね!それは…」

「いろんな時代の祐巳に会うことよ!!」

「「「……」」」
研究員たちは呆然としている。無理もないだろう、なぜなら彼らは「ユミリアン」を開発するためにここ数か月、いやそれ以上も外に出させてもらえてないのだから。
中には他の一流企業から引き抜かれてここに来た人もいる。
それなのにただの私利私欲のために働かされていたなんて、涙も出てくるだろう。
「それで……祐巳様にお会いしてどうなさるおつもりで?」
「そうね…いくつか考えてあるのだけれど……」

祥子が「ユミリアン」を使ってしたいことは……
1、幼稚園児のちょっと舌足らずの祐巳(もちろん幼稚舎の制服を装備)に「お姉さま」と呼んでもらう
2、小学生の真っ赤なランドセルを背負った祐巳に「お姉さま」と呼んでもらう
3、ちょっと大人になってスーツを着たちょっとカッコイイ祐巳のネクタイをなおしてあげる
以上の三つである。

「3は少し待てば出来るけど1と2は「ユミリアン」を使わないと出来ないわ。何としても達成しなくては!」
「祥子様?」
「いいえなんでもないわ。とりあえず秘密にしておくわ」
「そうですか。どうせロクでもないことなんだろうな……」(後半小声)
「なにかおっしゃいまして?」
「いいえ!なにも!」
「まあいいわ。では早速実験してくるわw」
「はい祥子様。その前に注意事項があるのですが」
「なにかしら?」
「まずはじめに自分の都合のいいように歴史を変えないでください。次に過去に行くにしても未来に行くとしてもなるべく人との接触は避けてください。特にご自分との接触は絶対に避けてください。最悪の場合、タイムパラドックスを引き起こし銀河系の破滅の引き金になりかねませんから」
「わかったわ、そんなこと百も承知よ。それにこの小笠原祥子がそんなへまをすると思って?」
「……いいえ」
「ふふ、では行ってくるわ!」
「はい、いってらっしゃいませ」


実験は公道ではなく高速を使うことにした。
公道では人が飛び出してくる可能性が高いからだ。
そして時間帯は深夜だ。車が比較的少ないから。
料金所のゲートを通過しいざキックダウン!スピードを上げて本線へ!
しかし一つ誤算があった。それはこの日は連休の初日であること。
遠出をする家族連れの車が思いのほか多く、速度を140キロまで上げることが出来ない。
「お父様にお願いして高速を小笠原のものにしておくのを忘れたわ」などと激しく我儘なことを考えながら糸を縫うようにして周りの車を抜いていく。
時々他の車に接触しそうになったりもした。
その度にクラクションを鳴らされるが、「小さな頃の祐巳を攫ってきて自分で育てるのもいいわね」なんて完全に犯罪なことを考えていたため全く気にしていなかった。

しばらくするとようやく周りが開けてきた。
「やっと道が空いたわ。祐巳!今行くわ!」
スピードを上げようとしたその時……

「前の車!路側帯に車を止めなさい!!」

速度違反で捕まりました……

しかし!私は小笠原祥子!!
小笠原グループのプリンセス!!!
こんなことでは挫けない!!!!


あとがきという名の言い訳
毎回一部の人にしかわからなそうなネタばかりでごめんなさい。
自治区としては大好きな小説と大好きな映画をコラボできたので満足しています。
完全に自己満足です、ごめんなさい。
祥子だったらやりそうかな…と思って書いてみました。
作中で祥子は速度違反で捕まっていますが、いくら高速道路でも140キロも出したら捕まります。せいぜい100キロぐらいが限度です。
これから免許を取る人も、もう持っている人も絶対にまねをしないでください。
よい子のみんなもまねしちゃいけません。


【2855】 リリアンの常識では  (沙耶 2009-02-28 00:15:23)


〜リリアン女学園中等部
今日も中庭では穢れの知らない乙女達が楽しそうに会話を弾ませていた。
部活の先輩の話、或いは高等部の素敵なお姉様方の話。或いは……



『あなたが代表とはね』
『こちらでもあなたは優秀なのね』
『ふふふ。あなた達もやっぱり覚えているのね?』
『あら、当然よ。私達はあの方に再び出逢うために生まれ変わったのだから』
『まあ、完全に思い出したのは最近だけどね。それまでは漠然とした想いがあるだけだった。』
『そう。私は私なのに違う誰かであるような…』
『私もよ。そして思い出したら何故かここに来なくてはいけない気がしたのよ。』
『あの子達もここにいる。まだ、目覚めてはいないようだけど。時間の問題でしょう』
『あの方は?』
『……いないのよ。私達も昔を取り戻してすぐに捜したのだけれど。』
『そう……ここに来れば何かわかると思ったのだけれど』
『そうね。ここにはあの時のメンバーが揃いすぎているわ。』
『きっと何かがある。あの方に…私達の姫君に関するなにかが』
『それにしても、また逢えて嬉しいわ。セイ…それにエリコも』


リリアン女学園
ここは様々な乙女達が集うお嬢様学校なのである。
多分


【2856】 光と闇の飽くなき戦い勝った気がしない  (篠原 2009-02-28 23:47:50)


 それは光の柱だった。


 『真・マリア転生 リリアン黙示録』【No:2807】から続きます。


 天より降臨した白い光が、魔と混沌の闇を焼き尽くしていく。
 その光景は、見る者によってはある種の神々しさを感じさせるものだった。
 メギド(万能属性)系アレンジ呪文メギド・アーク。志摩子が発動させたその術式による神の炎が、魔王と呼ばれる者を、その仮初の体を、存在そのものを滅していく。
 本来は集団に特大ダメージを与える呪文を単体に集中させたのだ。いかな魔王とて無事に済む道理は無い。ましてや召喚に失敗した不完全で不安定な状態であればなおさらだ。祐巳の魔力砲によって体の一部が消滅していたマーラに、それに耐え切る力は残っていなかった。
 但し、その威力にはそれなりの代償をともなった。
 指先から血をダラダラと流していた志摩子は、脳を直接殴られるような痛みを堪えながら術を制御していた。
 視界を覆う白い光が収束していくのにあわせるように、頭の中が真っ白になっていく。
 目前の全てが消滅したのと同時に、志摩子の体がふらりと揺れた。
「「志摩子さん!」」
 乃梨子と祐巳の声が重なる。
 そばにいた乃梨子がとっさに倒れかかる志摩子の体を受け止めた。
 おろおろする乃梨子(しかも泣きそう)というのは珍しかったが、祐巳も劣らずおろおろしていたし、志摩子のことが心配だった。
「乃梨子ちゃん?」
「大丈夫です!」
 反射的に乃梨子は叫んでいた。大丈夫に決まっている。
 瞳子との一戦以来、乃梨子とてそれなりの修行、というか訓練はしていた。剣技だけではない。魔法の重要性も嫌というほど思い知らされた。治癒、回復系の魔法のそれなりに。
 指先の血はすぐに止まった。だがそれが倒れた原因でないことも明らかだ。ガス欠もあるだろうが、おそらくは無茶な呪文行使による反動が来たのだ。
 ふと、乃梨子は思い出す。
 全ての始まりとなった、大天使『ガブリエル』の降臨。満ちる光と圧倒的な威光。あの時の、ガブリエルの言葉。
 かの大天使は志摩子に対して言った。
 『この世に光を導くもの』であり、『世界に救いをもたらすもの』であると。
 それゆえに、志摩子はメシア教内ではメシアなどとも呼ばれることになったのだ。
 光に包まれ、魔王を滅ぼした今の志摩子の姿はまさしくメシアだと、乃梨子は思った。メシアでなくてなんだと言うのだ。
「乃梨子?」
「志摩子さん!」
 志摩子の声にハッとして、乃梨子は閉じていた目を開く。
 いつの間にか目を開けていた志摩子は、乃梨子と視線を合わせると安心させるように微笑んだ。
「大丈夫よ」
 大丈夫というにはいささかの無理があったかもしれないが、とりあえずはそう言って志摩子は立ち上がった。
 さすがに少し無茶をしたという自覚はある。人の身には余る呪文なのかもしれない。
「志摩子さん?」
 乃梨子の声に、支えてくれる腕に、志摩子は意識を引き戻される。制御に失敗すれば乃梨子を巻き込んだかもしれないという可能性に志摩子はようやく思い至る。
 大きく呼吸すると、自戒と反省を込めてひとつ頷く。血の止まった手を軽く握っては開いてみる。頭の痛みもだいぶ落ち着いたようだ。
「もう、大丈夫」
 あらためてそう言った。
 乃梨子と祐巳が、わかりやすくホッとした表情を浮かべるのを見て、志摩子の顔にも笑みがもれた。
「さてと」
 天を仰いでふう、とひとつ息をつくと、志摩子は祐巳に向き直った。
「祐巳さん」
 そして、天使もかくやという笑顔で言った。
「共闘はここまでね」
「え?」





「がーん」
「菜々、口でがーんって言うのはどうかと思うわよ」
「だって!」
 菜々は悲痛な表情で言った。
「まだ召喚まで余裕があると思ってたのにもう終わっているなんて! しかも、魔王の召喚に失敗した上に倒されているなんて! ああ、見たかった! 失敗したらしたでどんな様子か見てみたかった! せっかくのお膳立てが全てパアですよ」
「お膳立て?」
「………」
 最後の言葉を聞きとがめた由乃に、悲劇のヒロインを装っていた菜々がついと視線を逸らした。
「あんたか! あんたの仕込みか!」
「仕込みだなんて、人聞きが悪いですよ。私はガイア教の為、ひいてはカオス全体の為に良かれと思って地道に裏方をですね」
「嘘言いなさい! 自分が見たかっただけでしょう」
「それも勿論ありますけど」
「開き直った! 下っ端アクマばっかりで魔王召喚なんておかしいと思ってたのよ」
「でも嘘は言ってませんよ。私は彼らが望んでいたものを実現させられるかもしれないと、その方法を教えただけで」
 まるで悪魔の囁きである。しかも相手がアクマだ。
 ちなみに2人は今、まさに魔王召喚の現場に向かっている途中だった。
「にしても、おかしいよね」
 ブンッと無造作に右腕を振り抜いて、由乃がポツリと呟いた。
「私達、なんでこんなに天使に囲まれてるわけ」
 襲い掛かってきた1体の天使がその一撃で粉砕される。
「それは由乃さまがトラップにひっかかったからでは?」
「そういうことを言ってるんじゃないのよ!」
 由乃は断固として力説する。
「しかも続けざまに」
 ボソリと呟く菜々をきっぱりと無視して由乃は言った。
「問題はなんでこんな罠があるかってことよ!」
「魔王召喚の邪魔をされたくなかったからじゃないですか?」
「魔王を召喚しようとしてるヤツがよ? どうして天使が湧いてくる罠なんかしかけるのよ」
 魔王といえばカオスの象徴といえる種族だ。それを呼び出そうとするものがロウであるはずもない。かなりの確率でカオス、でなければ力を欲するニュートラルだろう。そんなヤツがロウの代名詞とも言える天使ばかりが現れる罠を仕掛ける、というの妙な話だった。
「由乃さまでも気付きましたか」
 さも感心したように菜々は言った。
「でも?」
「私もそう思ってたところですよ!」
「でも? 今でもって言った?」
「気のせいです。そんなことより、そこ危ないですよ」
「え?」
 カチリ、と嫌な音がした。
 由乃は恐る恐る足元を見る。明らかに罠っぽいボタンを踏んでいた。
 離れた位置に光が浮かび、魔方陣が起動する。
「先に言えー!」
「ちょっと反応が遅れました。詰めが甘いんですよね、私」
「わざとでしょ。わざとだよね」
「まさか、そんな」
「ワタシは天使『プリンシパリティ』」
「やかましい!」
 トラップにより新たに召喚され、2人の会話に割って入った天使が一蹴される。ついでに、由乃は腹立ちまぎれに罠と召喚陣を破壊する。
 同時に後方に新たな陣が起動。1つの罠を破壊すると別の罠が起動する仕掛けだったらしい。
「うわー、嫌らしい罠ですね。連動してるんだ」
 棒読みの菜々である。
「この罠も菜々が仕掛けたんじゃないでしょうね?」
「とんでもない」
 さも心外そうに菜々は答えた。
「私は生粋のカオスっこですよ」
「カオスっこって、どんなジャンルよ」
「由乃さまが言った通りですよ。いくらなんでも、天使が沸いてくるようなトラップは仕掛けません」
 それはその通りだろう。ある意味で、むしろ由乃よりもカオスサイドな菜々である。
 そしてそんな菜々をして、ある意味で計り知れないのが由乃でもある。

  −神だろうが魔王だろうが−

 その言葉に、ゾクリとした。あるいはゾクゾクだったかもしれない。
 カオスとしては大問題な発言だ。だが言われてみればいかにも由乃らしい気もする。
 もともとカオスは一枚岩の組織ではない。混沌を旨とするという方向性が同じなだけで、細かい主義主張の異なるもの達の集合体。組織ですらない。ロウとは相反するものという以外、共通項を持たぬ者同士の争いはむしろ当然のことだった。
 一つの組織であるはずのガイア教の中でさえ、諍い争いは珍しいことではなかった。
 厳密に言えば、ロウも秩序を重んじるという方向性が同じなだけで、主義主張の異なるものがいないわけではない。重んじる法と秩序の内容そのものが同じとは限らないからだ。
 唯一絶対なる存在を崇めるメシア教は、さすがに組織としての強固なまとまりがあったが、メシア教=ロウというわけではなく、あくまでロウの中の1勢力に過ぎない。
 そのあたりは面白いところだと菜々は思う。同時に、ロウの中で実際にどう捉えられているのか理解しきれていないところでもある。
 その点、欲望に忠実なカオスはわかり易くはある。欲望に忠実故に、それに反するロウは敵だし、魔王同士の勢力争いなんてものがあったところで別に不思議というわけではない。
 その上で『神だろうが魔王だろうが』と一緒に切って捨てる由乃は、面白かった。

「お、今度のはちょっと偉そう」
 新たに現れた天使を見て、由乃が楽しそうに呟いた。
 由乃さまが言いますかー、と呟く菜々はスルーだ。
「私は天使『ドミニオン』。
 相容れぬ者よ。飢(かつ)える魂よ。今こそ断罪の刻。汝の魂を捧げ、来るべき千年王国の礎となるがよい」
 絵に描いたような問答無用っぷりだった。
「何様だ」
 だから由乃さまが言いますかー、と呟く菜々をやはりスルーして天使に向き直る、心に棚を持つ少女。由乃。

 中級一位第四階層の天使『ドミニオン』。
 地上における天使達の務めを統御する、神の意思の代行者ともいえる存在だ。
 一般的に、上級天使の務めは地上におけるものではない。特別な任務で(あるいは単に趣味で?)降りてくるものは別とすれば、その役割上、上級天使は地上には降りてこない。
 それゆえに、中級一位のドミニオンが地上における最上位の天使となる。大天使がほいほいと人前に現れるというのは、あくまで特殊な事例だ。

 ドミニオンの登場がキーになっていたのかこれまで以上に大量の天使が湧いて出る。同時にドミニオンの指示か、バラバラだったまわりの天使が呼応するように襲ってくる。
「菜々、少しの間まわりの雑魚の相手をお願いね」
「はい」
 多くは言わない。菜々も心得たように一言で返す。
 しかしどうしてこう、天使というやつは偉そうに語りたがるのだろう。
 かなりどうでもいいこと思いつつ、両側から襲いくる天使を薙ぎ払い、降り注ぐ魔法の中を由乃はドミニオンに突進する。
 背後から追う天使の前に菜々が割り込み、横殴りの一撃で1体を叩き落す。ついで、軸足を中心にそのまま回転、遠心力をのせてもう1体に叩きつける。
 だがその一撃は、天使の盾に受け止められた。はじかれそうになるのを強引に、回転の勢いを殺さず力任せに振り抜く菜々。逆に盾をはじかれ、体勢を崩した天使に、さらに振り抜いた勢いのまま一回転して追撃の一撃を叩き込む。
 手応えと同時にサイドステップ。魔法による攻撃が、菜々のいた場所に着弾し、味方のはずの天使を巻き込んで爆発する。
 いいのかそれ。冷や汗と共に次の目標に移りつつ、意識の片隅で由乃の様子を捉える。
 一息でドミニオンとの距離を詰めた由乃は、突き出された腕を掻い潜るように左下から右上に斬り上げていた。
 後ろにさがりつつ魔法を展開しかけていたのだろう。何も無いはずの空間に抵抗を生む魔力を切り裂きながら、その一撃はドミニオンの肩を薙いだ。
 浅いか。
 直後に魔力の波動が爆発(より正確には暴発だろう)、由乃に正面から叩き付けられた。
 反射的に片手をかざして多少なりとも直撃の威力を減衰させたが効果は微々たるものだった。由乃は凄残な笑みを浮かべる。
 周りでは菜々が得意の高速機動戦に持ち込んで雑魚を叩いているのがわかる。無様な戦いなどしていられない。肩をおさえてよろめくドミニオンに目をやりつつ得物を左手に持ち変える。
 腰を落としながら、右手を突き出すと同時に左手を引く。限界まで溜め込まれた力を直後に開放。間に割って入ろうとする天使もまとめて全てを蹴散らし、渾身の刺突をドミニオンに叩き込んだ。
 うっわー。あいかわらずだ由乃さま。本当に少しの間で倒しちゃったよ。
 菜々はもうすっかりおなじみになってしまった感慨、呆れと感嘆を同時に感じながら苦笑した。

「あらあら」

 突如割って入った緊張感のない声に、2人が振り向く。
「騒がしいと思ったら」
 蠢く天使達の輪の外側。
「ごきげんよう、ロサ・フェティダ」
「ロサ・ギガンティア」
 由乃は苦々しげに呟いた。
「やっぱり、志摩子さんか」


【2857】 交わす視線  (沙耶 2009-03-02 00:40:01)


続いてるかも?【No:2850】【No:2855】


〜リリアン女学園高等部

桜の花びらが舞い散る爽やかな朝。
真新しい制服に身を包み、1人の少女が入学式に臨んでいた。
顔は強張り、歯を食いしばりながら立ってはいるが、今にも倒れそうなほど顔色は悪かった。
少女の名前は福沢祐巳。
そんな状態だからだろうか、祐巳をみて、驚きや安堵、そして嬉しさの籠もる複数の視線に全く気がついて居なかった。



【人】が怖かった。何故だかは自分でも解らない。ただ、物心がついた頃には家族以外〜時には家族でさえ〜目を合わせる事すら困難になっていた。両親は心配しカウンセリングにも通ったりはしたのだが、自分でも原因が解らないうえ、ほんの幼少期からもうこの状態なのでトラウマなどあるはずもなく、医者もお手上げ状態だった。
両親は心配し、悩み、幼い祐巳を山梨の実家に預ける事にした。あちらの方が人口は少ないし、無闇に【人】と出会う事も少ない。
それに、祐巳の事を考えるとあちらの環境の方が体にいいと思ったのだ。
最終的には病院が決めてになった。その道の権威とも呼ばれる医者が近くの病院にいたのだ。


そんな環境で育った祐巳にも1つ、楽しみにしている事があった。
それは空を見上げること。
太陽は祐巳を包み込んでくれる。
そっと見守るような、時には背中を押してくれるような。
だから祐巳は昼の間は夜ほど【人】に会うことを恐がらずにすんだ。………それでも恐い事にかわりはなかったけれど………


家族に支えられ成長した祐巳に一つの問題が浮かび上がった。
【高校】だ。小学校や中学校と違い、いくら田舎だとはいえ高校ともなると生徒数は大幅に増える。
両親や祖父母は体の事を考え、無理はしないでいいと言ってくれた。
だが、このままで良いのだろうか?
このまま家族に守られながら生きていく事が?
心の奥で自分ではない誰かが言う。
そんな事【私】は許せない。祐巳はみんなに守られているけれど、【本当は私がみんなを護りたい】

…そんな時、あの少女が現れた。
薄く涙を浮かべながらそれでもなお、燃えるような瞳で睨みつけてくる少女に…………



腹が立った。
目の前の、自分と目を合わせようともせず、ただただ震えているだけの彼女に。
【彼女達】が集めてきた情報に、いてもたっても居られず山梨まで来てみた。
彼女が自分を覚えているとは微塵も思っていなかったけれど。 ……けれど。
『これが貴方の望んだことですの?』
自分で望んでいた筈なのに、彼女の怯えた目からは恐怖しか感じる事が出来なくて。思わず涙が滲みそうになる。
それでも。私が望んだことは感傷に浸る事ではないから。瞳に力をいれてこらえる。
『福沢祐巳さん。あなたはずっとここで逃げて暮らして行くの?』
【貴方】は逃げるのが大嫌いだったでしょう?
彼女が震える声で言葉を紡ぐのを聞いて居られず、遮るように言葉をつなげる。
『リリアン女学園にいらっしゃいな。そこにはあなたを待っている人たちがいる』
【貴方】を守ろうとし、そして【貴方】が護ろうとした人たちが。
それだけを言うと足早に立ち去った。

………これ以上一緒にいると気持ちが溢れ出してしまいそうだったから。


【2858】 この胸が苦しい  (パレスチナ自治区 2009-03-02 04:08:21)


ごきげんよう。【No:2846】の続きです。
オリキャラメインですのでご注意ください。
【No:2831】、【No:2836】を先に読んでいただけると2割増くらい楽しんでいただけると思います。
今回はクラスメイトの黒条キセルさんの視点です。


今日は家庭科の授業の一環で、某県にあるキャンプ場に来ています。
飯ごうでご飯を炊いてみよう、とのことです。
美しい緑に囲まれていて、それだけでも価値があると思います。今日はそれだけでなく、クラスの友人たちと一緒にご飯を作って食べるのですからウキウキ気分も最高潮です。

先生からの注意事項も終わり、みんなそれぞれの班に分かれて調理開始です。
私の班は、隣の席の出雲さん、陸上部所属の新藤綾菜さん、私の後ろの席の鳳凰院直美さんです。本当はもうお一人いらっしゃったのですが、残念ながらお風邪を召してしまい欠席なさってしまいました。

「ねえ出雲さん、これだけ空気がいいと走りたくなるわよね」
「……そうですか?」
「そうなのよってなんかノリが悪いわね」
「あはは…それで走るんですか?」
「そうよ。後で一緒にどう?てゆうか一緒に走るわよ!」
「どうしてですか?!私は別に走りたくないですし…陸上部に入っているわけでもないですし…そもそも走るの苦手ですから」
「あんたは私のライバルだからよ!走るの苦手って言ってるけどこの間の走りはそんな走りじゃなかったわよ!!そういやあんた、いつになったら入部する気になるのよ」
「ええっとまだわからないです…」
「そうやっていつまでもはぐらかすつもりね?」
「いいえ……そんなつもりじゃ……」
「じゃあどういうつもり?!!」
「うう……」
出雲さんと話し始めるといつも部活の勧誘になってしまう綾菜さん。しかも結構強引です。出雲さんのお顔が本格的に困り始めました。
そろそろ助け船を出さないと……
「ほらほら、出雲さんが困ってらっしゃいますわよ?貴女はいつもいつも強引なのですから」
「直美さん、出雲さんは私と話をしているんですけど……」
「そうですか…わたくしには強引な部活の勧誘にしか見えませんけど?」
「なんですって?!」
「まあ、怖いお顔。まるで山姥ですわ、食べられてしまいます!」
「あんたなんか食べるか!!出雲さんならまだしも…」
「あら、本音はそこですか。出雲さんお気お付けになって」
「……そうですね」
「あんた何頷いてるのよ!ジョークでしょ!」
「そうは聞こえませんでしたわ」
「このっ……」
「あのう、そろそろ調理を開始しましょうよ。直美さんも綾菜さんもせっかく同じ班なのですから仲良くしてください」
「そうですわね、他の班はもう始めていますし」
「わかったわよ」
「はあ…」(溜息)
私の役どころを直美さんに取られてしまいました…

「それで、まずはどうするのよ。私料理はからっきしだからわかんないわ」
「わたくしもです」
「出雲さんどうなさいます?私は家柄のおかげで料理はできますが、飯ごう炊飯は初めてで…」
「そうですね…まずはお米をとぎましょう」
「わかったわ。それは私がやるわ」
「ではお願いします」

「私たちは材料の仕込みをしましょう」
「「はい」」
「わたくしはどうすればよいのですか?」
「ええと…料理は苦手なんですよね?」
「はい。まったくできませんわ」
「それではお肉を切ってください。指を切らないように気を付けてくださいね」
「はい」
直美さんがおぼつかない手つきで豚肉を切り始めます。
確かにジャガイモやニンジンの皮むきと比べると豚肉を切る方が安全です。料理をしたことが無い直美さんにも簡単にできる作業です。
出雲さんは安全面も考慮して指示を出したのでしょう。さすがです。

「キセルさんは料理はできるんですよね?じゃあ手分けして野菜の皮むきをしましょう」
「はい」
出雲さんは慣れた手つきでジャガイモの皮をむいていきます。
「出雲さんはお料理されるのですね」
「はい、よくお母さんと夕飯の支度をするので」
出雲さんは「お母さんが…」と文句を言っていることがあります。よく悪戯をされているそうなのですが……今の話を聞く限り出雲さんはお母様を愛してらっしゃるのでしょう。
お顔がほころんでらっしゃるから。
「ふふ…うらやましいですね」
「そうですか?」
「はい」
本当にうらやましいです…

「出雲さん、米とぎ終わったわ。もう炊くの?」
「いいえ、40分くらい水に浸けときましょう」
「わかった」
「そういえば、出雲さんはやけに詳しいですね」
「少し予習してきましたから」
「ふ〜ん」「「頼りになりますね」」
「ありがとうございます」

「じゃあカレーを作っていきましょう」
「は〜い」「はい」
「あのう…」
「直美さんどうしました?」
「カレーは何処にあるのです?」
「はい?」
「カレーは液体なんですよね?だってカレーは飲み物だっていう方もおりますし」
「あはははは!!!」
「綾菜さん、なぜ笑うのです?!」
「だってチョーうける……うぷぷぷ…」
「仕方が無いでしょう!カレーなんて食べて事がありませんし…」
「直美さん、知らないのは仕方ないですよ」
「出雲さん…」
なんだか直美さんのお顔が少し赤いです。実を言うと私も出雲さんとお話しているとお顔が熱くなる時があります。
出雲さんは普段、黄薔薇の蕾のように押しに弱いといいますか、相手に強く出ることが出来ない方で、仕種などもとても可愛らしいです。
ですがお勉強を教えていただいている時や、雑用を手伝ってくださる時には凄く真剣なお顔になります。同性なのに胸が高鳴ってしまいます。
普通の女の子には無い何かを持っているような気がします。

「まずはお肉とお野菜をサラダ油で炒めていきます」
「それで?」
「それと沸騰したお湯に固形スープをいれます」

「お肉とお野菜に先ほどのスープを入れていきます。20分くらい煮ます」
「ルウはどうするのよ」
「これから作るんですよ」
「これから…ですか?」
「はい、まずは小麦粉に少し焼き色が付くまで炒めます」
「それで?」
「焼き色が付いたらカレー粉を加えて…」

出雲さんのおかげでスムーズに調理が進んでいきます。脱帽です。

「そういえばさ、カレーってインド料理でしょ?なんで洋食って言ったりするのかな?」
「そういえばそうですね」
私も以前から疑問に思っていました。
「それはですね……」
「出雲さん、知っていらっしゃるの?」
「はい。カレーはですね、最初はイギリスの料理として日本に伝わったからですよ」
「なんでイギリスなのよ」
「カレーが日本に伝わったのは明治時代なんです。その当時、インドはイギリスの植民地でした」
「それで洋食扱いになったのですね?」
「ええ、それでですね日本人がよく食べているカレーはその流れの欧風カレーなんです」
「欧風ってなによ?」
「欧風カレーはシチューにカレールウを溶かして煮込んだものです。インドカレーは様々なスパイスを調合して作りますから少し違いますね」
「薬膳料理みたいですね」
「そうですね、それにカレーのルーツのインドやパキスタンなんかでは豆などの野菜と食べますから、宗教の関係なんですけど」
「「「……」」」
「どうしました?」
「なんでそんなに詳しいのよ?」
「調べたんですよ、カレー好きなんです」
そういえば出雲さんは学食で食事をする時いつもカレーライスを頼んでいました。
「学食でもカレーばっかよね、あんたの脳みそ黄色いんじゃない?」
「そんなこと言わないでくださいよ…」
「ですが出雲さん、それは貴女が朗らかということなのですわ」
「そうですね、出雲さんはいつも明るいですし」
「そうですか、褒め言葉なんですね?」
「「ええ」」
出雲さんはいつも笑顔で接してくれます。春の日差しを浴びて可愛らしく咲くタンポポのように…

「お米を炊きましょう」
「カレーの方は?」
「ルウとスープを合わせたので後は焦げないように煮込んでいくだけです」
「直美さん、カレー鍋の方はお願いしますね」
「わかりましたわ」
「ではまず……」

「最初は中火でだんだん強火にしていきます」
「強火にするにはどうなさるの?」
「木の枝なんかをくべて…こうして……」
出雲さんは竹筒を口にあてがいかまどに向かって息を吹きかけます。
「ふーふー、ふーふー、うっ!けほけほ!」
煙にむせてしまったみたいです。
「大丈夫ですか?」
カシャ!カシャ!
「大丈夫ですけど……写真撮ってる暇があったら手伝ってくださいよ」
「ごめんなさい。でも私写真なんて……」
シャッター音のする方に顔を向けると……
「あ!蔦子様に笙子様!」
「あ、ばれた?ごきげんようキセルちゃん」
「ごきげんようキセルちゃん」
「ごきげんようお姉さま方」
「キセルさんこの方たちは?」
「写真部の先輩方ですよ、出雲さん」
「ああ、あなたが出雲ちゃんね、ごきげんよう」
「は、はい。ごきげんよう……あのぅ」
「なんで知ってるのかって?」
「はい…」
「貴女って彗星のごとく現れていきなり蕾たちの妹候補でしょ?大学でも結構有名よ貴女」
「そういえば真美様が記事にしたいって嘆いてましたね」
「ふふ、そうね。それでさ、出雲ちゃん。誰の妹になるの?」
「それは……」
出雲さんがこの質問を受ける時、決まって私の胸には嫌な痛みが走ります。
初めは何かわかりませんでしたが最近は理解しています。
出雲さんが転入してきてからずっと私が彼女の一番近くにいました。クラスでの席もそうですけど友人としても一番近くにいました。
山百合会幹部たちに目をつけられ学園中に名前が知れ渡ってからも……
行動を共にし、支えあい励ましあいながら過ごしてきました。
私のお姉さまの事を話しても笑って許してくださいましたし、どんな時でも真剣に私に向き合ってくださいます。
私はそんな出雲さんがいつも間にか好きになっていました。
いつでも優しく温かく包みこんでくださる出雲さんが……
今の出雲さんの視線は明らかに私に一番向けられています。
その出雲さんが姉を持ったらきっとその人が出雲さんの視線を一番浴びることになるでしょう。私はそれが嫌なのです。

「そういう蔦子様は妹はいらっしゃたのですか?」
私がネガティブに陥っていると出雲さんが質問を無視して反撃に出ました。
「出雲ちゃん質問してるのはこっちでしょう?」
「ですけど私はリリアンに入って間もないですし、先輩方の話を参考にしようと思って……」
「私は参考にはならないわよ」
「どうしてですか?」
「妹居なかったもの」
「笙子様は蔦子様の妹ではないのですか?」
「そうですよね、いつも一緒にいらっしゃいますよね」
「それは……」
蔦子様の顔色が変わりました。笙子様はなんだか嬉しそうです。
「それは、なんですか?」
「笙子?!」
「うふふww」
出雲さんは訝しげに蔦子様たちを見ています。もちろん私も。
「それは……」
「「「それは?」」」
私たちの視線に耐えかね蔦子様は俯いてしまいました。
「笙子にはロザリオを渡す必要が無かったのよ……」
「なぜですか?」
「な〜ぜで〜すか?ww」
笙子様はわかっているのに蔦子様に追い打ちをかけます。嬉しそうです。
「……ょ」
「聞こえませんよつ〜た〜こ〜さ〜ま〜ww」
笙子様、鬼畜です…
「笙子と私はそれ以上の関係だから渡す必要なんてなかったの!!妹と恋なんてできないでしょ!!!」
蔦子様が凄い勢いでまくしたてます。
「蔦子様ww」
「わかった?だから私は参考にならないの」
「わ、わかりました」
「今度こそこっちの番よ。出雲ちゃんは誰の妹に?」
また胸に痛みが走りました……
「……まだわかりません。誰かの妹になるつもりなのかさえもわからないですし」
「そうなの」
出雲さんのこの答えに安心してしまいました。
少し雰囲気が重くなったので話題を変えます。
「あの蔦子様たちはどうしてここに?」
「そういえばそうですよね」
「私たちはね〜、先生に頼まれてみんなの写真を撮ってるの。だから学校公認でここにいるの」
「それは……ご苦労様です」
「ありがとう。まあ私も生き生きとした女子高生を撮れるから利害一致してるの」
「……そうですか」
「なんか気になる言い方ね。まあそういうことだからそろそろ他の所に行くわね」
「お邪魔しました」
「いいえ、また部室に遊びに来てください」
「「わかったわ。ありがとう」」
「それではごきげんよう」
「「ごきげんよう」」
蔦子様たちは嵐のように去っていきました。

「そろそろ炊きあがりますね」
「はい、いい匂いです」
「カレーの方もいい感じよ」
「楽しみですわ」

「出雲さ〜ん、ちょっと助けてください」
「はい、どうしました?」
他の班に助けを求められて出雲さんはそちらに向かいます。
みなさんに頼られる出雲さん。
普段の学園生活でも困っている方を見かけると進んでその手を差し伸べています。
転校してきた時の印象からは考えられないほど頼り甲斐があります。
あの頃は小動物のようで助けてあげたいと思わせるような人だったのに……
学園中に注目されて悩んでいる内に鍛えられたのかもしれません。

「やっと食べられるわね」
「ほとんど出雲さんに作っていただいてしまいましたが…」
「……」
「いいんですよ、お料理は好きですから」
「ねえ、出雲さん。私の嫁にならない?」
「ええ?!」
「…?!」
「それならわたくしだって出雲さんをお嫁にほしいです!」
「直美さんまで?!」
「……!!」
なんだか凄く気分が悪いです……
「だってさ〜、出雲さんって結構可愛いし」
「頼りがいがあって優しくてお料理もできて」
「恥ずかしいですよ〜」
「全然恥ずかしくないわよ、ねえキセルさん?」
「……」
「キセルさん?」
「キセルさんどうしました?」
「……」
私の中で何か黒い物が渦巻いていきます…
「キセルさん!!」
「はい?!」
出雲さんに肩を揺さぶられています。
「どうなさいました?」
「それはこちらの台詞ですよ、気分がすぐれないのですか?」
出雲さんが心配そうに私のお顔を覗き込んできます。
出雲さん……そんなお顔で見つめないでください……
「だ、大丈夫ですよ。考え事をしていただけですから」
「ほんとなの?」
「はい」
「なんともないのですね?それなら良いのですけど」
「本当に何ともありませんから……ほらみなさん食べましょう」
みなさんに心配をかけてしまいました…
情けないです……

片付けの最中に出雲さんに声をかけられました。
「キセルさん、今日はどうなさったんですか?」
「え?」
「ずっと様子が変でした」
「そんなこと…」
「そんなことありません、というつもりですか?」
「……」
何も言い返せません…
「私でよければ話を聞かせていただけませんか?無理しなくても結構ですけど」
「大丈夫ですよ……必要になったら……」
「わかりました。キセルさんが元気ないのは私も嫌ですから、ね?」
「……はい……」
やっぱり私は出雲さんが好きです。
蕾たちに目をつけられている時点でいつまでも私が一番でいられるわけないのは分かっていますが……


みなさんから愛される出雲さん
そんな彼女を独占したいという欲望を抱えている私
こんなにも罪深い私をマリア様は許してくださるでしょうか……


言い逃れ
出雲に竹筒で「ふーふー」させたくて勝手に行事をでっち上げました。
なんだか料理のシーンが曖昧になりすぎてしまいました。
鳳凰院さんは凄いお金持ちのお嬢様と思ってください。
蔦子様と笙子様に関しては、自治区の願望です。ごめんなさい。
原作のカップリングとしては蔦笙が一番好きなのです。
此処まで読んでくださった方々、ありがとうございました。





【2859】 頭が混乱してます  (クロス 2009-03-02 23:54:44)


処女作です。拙いですが、広い心で読んでください。

『マリア様がみてる×ローゼンメイデン』
 巻きますか 巻きませんか

 雀がさえずる清々しい朝にそれを見つけた。
「ん〜今日もいい朝。まるでマリア様の心のよう。あれっ、枕元に黒い鞄?なんだろう?」
ガチャ パカン
「わー可愛い人形。こんなフリフリな服を着て、瞳子の私服みたいだなあ。」
ふにふに なでなで
「しかも、人間みたいな感触だあ。」
すりすり ちょんちょん
「……きたねえ手を離せです」
「へ!?」
「だから、さっさとそのきたねえ手を離せです!」
「な、ななななな」
「ふんっ、てめえみてえなたぬき人間に触られてたら翠星石が穢れるです」
「なんで人形がしゃっべてるの??」
「当たりめえです。翠星石はローゼンメイデン第3ドールだからですよ。」
「ロ、ローゼンメイデン?第3ドール?」
「そうです。翠星石たちはアリスを目指してるです。」
(アリス?花寺のアリス君のことかな?どうしてアリス君を目指してるんだろう?どこからどうみても女の子の人形にしか見えないけど、まさか男の子なの!)
「そ、そうなんだ変わった目標だね。」
「? まあいいです。それよりたぬき人間の名前を教えるですよ。」
「たぬき人間?わ、わたしは福沢祐巳。リリアン女学院に通ってるわ。ええと、翠星石ちゃんでいいのかな?」
「いいですよ、たぬき人間。これからこの家にお世話になってやるから、感謝するです。」
「そ、そうなんだ。じゃあよろしくね、翠星石ちゃん。」
にこっ
ドキッ
(よくよくみると可愛いです……)
「こ、こちらこそよろしくです。そうそうたぬき人間にはこの翠星石のマスターにならせてやるためにこのゆびw」
ピンポーン
「あれっ?誰だろう?こんな時間に……ってもうこんな時間!!今日は瞳子が遊びに来るんだった!どどどどしよう。とりあえず、出なくちゃ。」
バタン どたどたどた…
「瞳子?」

がちゃ
「ハアハア、ごきげんよう。瞳子。」
「……ごきげんよう、お姉様。相変わらずおちつきがないですね。今年から紅薔薇様になるのですからきちんとなさいまし。だいだいいつもお姉様は……(クドクド)」
(うう、瞳子に怒られちゃったよ。わたしって成長してないのかな。この前もお姉様に怒られたし……それにしても、怒った瞳子も可愛いなあ。)
「ホントに瞳子を妹にして良かった。」
かあ// 「 お、お姉様、聞いてなさるのですか!ちゃんといm」
「たぬき人間」
「んっ、たぬき人間?お姉様、何をおっしゃてるのですか?」
「えっ、私何も言ってないよ。」
「たぬき人間!呼んだら返事しろです。だいだい翠星石の話はまだ終わってねえです。」
「おおおお、お姉様、人形がしゃっべてますのよ!」
「ええと、翠星石ちゃんはローゼンなんとかの第3ドールだから、しゃっべたり、動いたりするの。」
「ローゼンメイデンですよ、たぬき人間。そんなことよりこの指輪にキスして契りを結ぶです。」
「キス… 契り… お姉様、もしかして瞳子というものがありながら、浮気をなさるのですね!」
「えええ、浮気?そんなことしないよ。」
「じゃあ、なんだというのですか!」
「わ、私にもよくわからないよ。」
「きー大きい声で喚くなです。ドリル人間!」
「どど、ドリル人間!?瞳子は瞳子です。ドリル人間だなんて、なんて失礼なことを言うのかしらこの礼儀のかけらもない人形は!」
「翠星石をばかにしやがったですね!このドリル人間、ドリル頭、ドリル・ドリル・ドリル!」
「むきー、お姉様、これはいったいなんなのですの!説明なさいまし!」
「こ、これh」
「たぬき人間!そんなドリルなんか無視して早くキスするです!」
「キスっt」
「お姉様、やっぱり浮気をなさってるのですね!」
「浮気j」
「だ・か・ら、ドリルの起動音なんか無視しろです!それより早くキスを!」
「えe」
「お姉様!浮気は許しませんことよ!せっかくあのお婆さまからお姉様を奪取したというのに!」
「だk」
「早くキスを!!」
「浮気を極刑ですのよ!!」
「たぬき人間!!!」
「お姉様!!!」
「も、もおいいかげんにしてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

なんも変哲も無い朝から始まった物語。この出会いがどんな結末へと導くのか。
まだまだ続く。


【2860】 舵取りのいないユーラシア大陸  (bqex 2009-03-03 01:55:11)


 ある日の放課後、乃梨子はいつものように薔薇の館にやってきた。

「ごきげんよう」

「ごきげんよう、乃梨子」

 乃梨子の姉、志摩子さんがいた。他のメンバーはまだ来ていないようである。
 乃梨子が荷物を置くか置かないかという時に志摩子さんが切り出した。

「乃梨子、いい話があるのだけれど」

「いい話?」

「ねえ、タダで仏像見放題の旅に行きたいとは思わない?」

「えっ!?」

 乃梨子の趣味、仏像鑑賞は実はお金のかかる趣味であった。交通費、宿泊費の他に拝観料なども合わせると結構な金額になる。また、実際に拝観する事が出来ない仏像を収めた写真集やDVDなどは意外と高価だ。
 そのための費用を捻出するために普段からセコく節約に励み、友人との付き合いを断りひんしゅくを買った事もある。
 それがタダとは……ついでに志摩子さんと一緒なら……と妄想しながら冷静を装って答える。

「そんなうまい話があるの?」

「あら、乃梨子は何を心配しているの?」

「う〜ん、うまい話には裏があるっていうか、何かあったりとか……」

 うまい話には必ず裏があるか、思わぬ落とし穴がある。乃梨子はその落とし穴にズッポリはまってリリアンに入学した経歴の持ち主であった。

「ふふ、裏という事の程ではないの。ただ、ちょっとお使いに行くついでに仏像を見られるという話よ」

「お使い?」

 お使いとは何だろう?
 乃梨子は考える。花寺に書類でも届けに行く? 志摩子さんの実家の関係者とタクヤくんの伝書鳩? そんなところだろうか。

「ええ。ちょっと西の方に行って取ってきて欲しい物があるのよ」

「西の方?」

「大丈夫、私がサポートするわ」

「志摩子さんと一緒に仏像見放題の旅行? それならいいよ」

 志摩子さんは黙って風呂敷包みを取り出した。中には着物が入っている。
 不思議そうな乃梨子に志摩子が静かに言った。

「これに着替えて」

 突然着換えろと言われてちょっと困惑気味の乃梨子の顔を見て志摩子さんは言った。

「着方がわからないのなら手伝ってあげるわ」

「だ、だ、大丈夫! ひとりで出来るから!!」

 乃梨子は真っ赤になってそう言ってしまった。
 本当は何故着替えなくちゃいけないのか、どこで何をするのかもっとこの時点で聞いておくべきだったのに、『志摩子さんと仏像見放題の旅』の魅力にすっかりのぼせていた。

「……これは」

「まあ、素敵。乃梨子、似合ってるわ」

 志摩子さんは嬉しそうに笑うが、乃梨子は眉間に皺をよせる。
 これは志摩子さんのお父さんが着ているような僧侶の服装だ。

「あの、コスプレして行くんですか?」

「コスプレとはちょっと違うかしら? まあ、いいわ」

 志摩子さんは扉を開いて乃梨子の背中を「よいしょ」と押すと乃梨子を部屋の外に出してしまう。

「え?」

 そこは岩山だった。
 乃梨子は薔薇の館の2階にいたハズだった。そして、ビスケット扉をくぐって外に出されただけのハズなのに。
 岩山って?

「志摩子さん!?」

 辺りを見回すと志摩子さんは消えてしまったようだ。
 どういう事なんだろう? おそるおそる岩を叩く。作り物ではないようだ。
 人の気配がない。
 急にさみしくなってきたが、大がかりなドッキリって事もある。
 とりあえず辺りを調べてみる事にした。

「の〜り〜こ〜ちゃ〜ん」

「うわあっ!!」

 不意に人の声がして悲鳴をあげた。
 そこには岩にうずもれるように聖さまがいた。

「なんでそんな恰好で――あっ! やっぱりドッキリ!?」

 このイタズラ好きの先輩が一枚噛んでる大がかりなドッキリならば納得できる。志摩子さんはおそらくお姉さまに逆らえず自分をハメたのだろう。乃梨子はそう思った。

「聖さま、悪ふざけがすぎますね」

 冷やかに乃梨子は言う。

「乃梨子ちゃん、残念だけど私も被害者なのよ」

「被害者って……じゃあ、誰かにハメられて岩にうずもれてるわけですか?」

「そうそう。そして私を助けられるのは乃梨子ちゃんしかいない」

 乃梨子は無言で歩き出そうとした。

「乃梨子ちゃん一人ではこの世界から出る事は出来ないんだよ」

「それはそれは」

 乃梨子は無視して歩き始める。

「乃梨子ちゃん、自分の格好を見て何か気付かない?」

「何かって……」

 このお坊さんのコスプレがどうしたというのか、乃梨子にはさっぱりわからない。

「ヒントをあげよう。私は今、猿なんだ」

 乃梨子の足が止まる。
 ゆっくりと振り返った乃梨子は梅雨時のようなじっとりとした表情で振り返る。

「まさか……」

「その、まさかなんだよね」

 聖さまはため息をついた。

「ここは『西遊記』の世界で、あなたは三蔵法師、私は孫悟空。そして、あと2人の仲間、おそらくは豚とカッパを集めて天竺にゴールしないと元の世界に戻れないのよ」

「ちょ、ちょっと! それって『西遊記』じゃないですか」

「そう言ってるじゃない」

 聖さまは言った。

「で、乃梨子ちゃんはどうする?」

「……」

 西遊記の世界で孫悟空のいない三蔵法師がどうなるかは容易に想像がつく。
 乃梨子は葛藤の後、しぶしぶ聖さまのうずもれている岩に貼ってあったお札を剥がした。

「それじゃあ、豚とカッパを探して天竺に行きましょう!」

「ドサクサに紛れて胸を揉むのはやめてください!」

 乃梨子は初めて志摩子さんを恨んだ。
 タダで仏像見放題の旅には違いないがヒドすぎる。



 聖さまのセクハラに耐えながら進むと一つの村があった。
 豚とカッパの情報を得るために村人に話を聞いた。

「ごきげんよう。あなた方は一体?」

「こちらにおられるのは偉い法師さまで、天竺に向かって旅をしているのです。ところで、こちらに豚かカッパはいないでしょうか?」

 村人は答える。

「それは豚さまの事でしょうか? この村にふらりと現れた世話好きの豚さまがおられまして、毎日真面目に村人の世話をやいているのですが、お節介がすぎて我々少々うんざりしてきたところでございます。ですが、立派な豚さまには間違いないので法師さまの旅のお供には丁度いいでしょう。あちらの豚の館に豚さまはおられます」

 2人は村人に教えられた豚の館に向かった。

「ああ、あなた。余計な事かもしれないけれど、髪の毛をコロネに巻くならばもう少し髪を伸ばした方が綺麗になると思うわ」

「は、はい」

「でも、私はあなたのような短い髪も好きよ。桂さん」

「ありがとうございます」

「……やっぱり蓉子か」

 聖さまは豚さまと呼ばれていた人と村人とのやり取りを聞いてつぶやいた。

「ごきげんよう。あなたも来てたのね」

 蓉子さまは驚きもせずにそう言った。

「あの、『あなたも』って事は、何か心当たりがあるんですか?」

 乃梨子は尋ねた。

「あるような、ないような」

 蓉子さまはクスリと笑った。

「で、三蔵法師さまが来たという事は私たちは天竺に向かうのね?」

「居座るつもり?」

「まさか」

 蓉子さまは笑って答える。
 良かった、この人はまともな人だ、と乃梨子は思った。

「でも、ここから反乱軍を組織してユーラシアの王になるって選択肢も面白いかもね」

 前言撤回。
 なんだ、この、突拍子もない人は。
 乃梨子はそう思いながらため息をついた。

「多大な期待、しないでね。私だって何でも出来るってわけじゃないんだから」

 そう前置きして蓉子さまはユーラシアの王を諦めてくれた。

 乃梨子は再び志摩子さんを恨んだ。
 タダで仏像見放題の旅には違いないがヒドすぎる。



 聖さまのセクハラに耐え、蓉子さまのお茶目な言動に耐えながら進むと一つの村があった。
 カッパの情報を得るために村人に話を聞いた。

「ごきげんよう。あなた方は一体?」

「こちらにおられるのは偉い法師さまで、天竺に向かって旅をしているのです。ところで、こちらにカッパはいないでしょうか?」

 村人は答える。

「それはカッパさまの事でしょうか? この村にふらりと現れたもの好きのカッパさまがおられまして、毎日面白い事や珍しい事をさがすのですが、そうそう面白い事や珍しい事が起こるはずもなく、我々少々困っていたところでございます。ですが、立派なカッパさまには間違いないので法師さまの旅のお供には丁度いいでしょう。あちらのカッパの館にカッパさまはおられます」

 3人は村人に教えられたカッパの館に向かった。

「ああ、あなた。そうねえ、出番を増やしたいなら苗字も『桂』名前も『桂』と名乗ってみてはいかがかしら」

「は、はい」

「そして、ニックネームは『ロサ・カブル』」

「ひどすぎます! 私は真剣なのに!!」

「そう? 面白いのに残念ね」

「……やっぱり江利子か」

 聖さまと蓉子さまはカッパさまと呼ばれていた人と村人とのやり取りを聞いてつぶやいた。

「ごきげんよう。あら、あなた達も来てたのね」

 江利子さまは嬉しそうにそう言った。

「あの、『あなた達も』って事は、何か心当たりがあるんですか?」

 乃梨子は尋ねた。

「何となくよ」

 江利子さまは呟いた。

「で、三蔵法師さまが来たという事は私たちは天竺に向かうのかしら?」

「あら、居座るの?」

「まさか」

 江利子さまはつまらなさそう答える。
 良かった、この人はまじめな人だ、と乃梨子は思った。

「あなた達のトリオ漫才に勝る娯楽はここにはないもの。この村の人が毎日JOJOのモノマネをし続けてもあなた達の方が面白いと思うわ」

 前言撤回。
 なんて、滅茶苦茶な人だ。
 乃梨子はそう思いながらため息をついた。

 江利子さまは面白そうだからとホイホイついてきてくれた。

 かくして、乃梨子は聖さまのセクハラに耐え、蓉子さまのお茶目な言動に耐え、江利子さまの気まぐれに耐えながら天竺に向かうのであった。

 乃梨子はまた志摩子さんを恨んだ。
 タダで仏像見放題の旅には違いないがヒドすぎる。

 ……って、いうか本当は全て知ってて妹を売ったんじゃないでしょうね?

続く【No:2864】



パラレル西遊記シリーズです

【これ】
 ↓
【No:2864】三蔵パシリ編
 ↓
【No:2878】金角銀角編
 ↓
【No:2894】聖の嫁変化編
 ↓
【No:2910】志摩子と父編
 ↓
【No:2915】火焔山編
 ↓
【No:2926】大掃除編
 ↓
【No:2931】ウサギガンティア編
 ↓
【No:2940】カメラ編
 ↓
【No:2945】二条一族編
 ↓
【No:2949】黄色編
 ↓
【No:2952】最終回


【2861】 紅薔薇革命  (パレスチナ自治区 2009-03-03 04:00:41)


ごきげんよう。【No:2858】の続きです。
オリキャラメインです。先に【No:2831】、【No:2832】、【No:2833】をお読みいただけると2割増くらいお楽しみいただけると思います。
最近脱線気味でしたので軌道修正です。
今回は小夜子視点です。

最近また山百合会の仕事が忙しくなってきたので日曜日にもかかわらず登校している。
「ごきげんよう」
ビスケットのような扉を開けて挨拶をしながら会議室に入る。
メンツを見てみると、いつもは部活でいない美華柚さんもいる。
そしてなぜか由乃様までいた。
「小夜子遅いじゃない」
「申し訳ありません、電車が遅延していたので」
「それは災難だったわね。徒歩通学だった私には無縁だったけど」
「それで今日はどうなさいました?」
「なによ、遊びに来ちゃいけない?」
「いいえ、そういうわけでは…」
「それより咲、あんたさあ……」
どうやら由乃様は咲さんに用があったみたい。
咲さんが困った顔で私を見つめている。由乃様と菜々様に挟まれているのは気の毒だが、巻き込まれたくないので無視をする。
「あんた剣道部に入りなさいよ」
「なぜですか〜」
「私も菜々も令ちゃんも剣道部だったでしょ、いわば黄薔薇の伝統なのよ!ねえ、菜々?」
「そうですね、咲、がんばろうよ」
「お姉さま〜勘弁してください……」
咲さん、可哀そうだな。

「小夜子も来たので、今日の会議を始めるよ」
ベイユ様がみなに声をかけると、咲さんが安堵の表情を漏らした。苦労してる人だな…
「今日は学園祭の事なんだけど…」
「ベイユ、チョイ待ち」
由乃様が割り込む。
「はい?」
「学園祭の事よりも重要なことがあるわ」
「なんですかお姉さま?」
「そうですよ由乃様」
「あんたたち鈍いわね、美華柚はわかる?」
「え〜と……」
「なによ情けないわね、人数が足りないでしょ?!今五人しかいないじゃない!」
「ああ、なるほど…」
「ったく、小夜子もわかってなかったなんて…」
今までこの人数で足りていたから誰も気付いてなかった。
「手伝い呼ぶとかしないと大変よ」
「そうですね」
「失念してました」
「あんたたちは3年でしょ?しっかりしなさい!!」
「「はい…」」
ああ、二人とも小さくなってる…
「ですが由乃様、私も小夜子さんも部活に入っていないですから親しい1年生とかいませんよ。それに美華柚さんも部活の1年生を連れてきても意味ないですし」
「そうですね、演劇部は学園祭で劇をやりますしこれからもっと忙しくなりますよ」
「もう!知恵を絞りなさいよ!ベイユと咲は親しみやすいでしょ?仮にも薔薇様なんだからあんたたちを撒き餌にしたら薔薇様ファンの子がいっぱい釣れるわよ!」
「私と咲は餌ですか?」
「咲を餌にするのは反対です!!」
「なによ!人がせっかく意見出してあげてるってのに!」
「だって咲は私のですし……ねえ、咲?」
「はい、お姉さま……」
なんかあの二人変な空気作りだしたわ…
「咲!あんた何私の前で菜々とイチャついてんのよ!」
「そ、そんなつもりは……!」
「え〜私はそのつもりだったけど…残念…」
「お、お姉さま!」
「咲……こんの〜!」

「お姉さま、黄薔薇一家が脱線してますね」
「…そうね」
「じゃあ私たちもイチャイチャしましょうよww」
「そうしたいけどだめよ美華柚……」
「え〜咲さんばっかりずるいですわ〜」
「ちょっと美華柚、抱きついちゃだめよ」
「んふふ〜お姉さま〜ww」

黄薔薇のおかげで紅薔薇まで脱線した。
美華柚さんにだめだと言いつつも嬉しそうに顔をほころばせているベイユ様。
無理もないと思う。美華柚さんは普段部活で忙しく、なかなか姉妹の時間を作れないらしいから。
でも今は会議中、さっさとこちらの世界に帰ってきてもらわなければ…
「みなさん、会議を続けましょう!!」
久しぶりに大声を出した。
みんなが申し訳なさそうにこちらを向いた。
みんながじゃれあっている間一人ぼっちでさみしかったのは内緒だ。

「それでさ、人手不足の解消には妹を作るしかないわよ」
「そうですね、今の蕾たちには妹がいないですしね」
「白薔薇なんて独り身じゃない!小夜子!」
「……すみません」
「あの出雲ちゃんはどうしたわけ?」
「出雲ちゃんはいつも誰かに追いかけられていてそれどころじゃないみたいです」
「は〜あ、前途多難ね」

「ねえ!茶話会を開いたらどう?」
菜々様がこれだっという感じで提案する。
「茶話会?」
「そう!茶話会!」
「茶話会なんて懐かしいわね〜」
「それで学園祭までのお手伝いさんを探すの」
「あのお姉さま、学園祭までということは学園祭が終わったらポイ捨てですか?なんだか嫌ですね……」
珍しく咲さんが人に意見している。他人に人一倍気を遣う咲さんなら当然だが…
「なによ、その子たちの中から妹選べばいいじゃない」
「そうですけど…」
「そうよ!そうしなさい咲。菜々の言う通りよ!」
「そうですね……」
早くも咲さんは陥落した。
「美華柚はどう思う?」
「私ですか?私はそれに反対はしませんが部活で忙しいので参加はたぶん無理ですね」
「なによ!休めばいいじゃない!」
「部長なのでそういう訳にはいかないです」
「少しくらいならいいじゃない」
「そうかもしれませんけど…」
美華柚さんも負けそうだ。
「菜々さん、いい考えですけど時間が無いので無理よ」
「そうか、失念してたわ」
ベイユ様のもっともな意見に茶話会の話は白紙になった。
「そういうわけだから、張り紙とかして協力者を募ることにしましょう、菜々さんも小夜子もそれでいい?」
「うん」「わかりました」
私もそれしかないと思う。しかし…
「そんなんじゃだめよ!!」
「由乃様?」
「それじゃあいつまで経ってもこの子たちに妹はできないわ!一週間!一週間後にまた来るわ。その時に咲と美華柚と小夜子のうち一人でもいいから自分から声をかけて手伝いを探すこと!」
「「「ええ?!」」」
「問答無用!だめだったらなんか罰ゲームね。わかった?」
「「「……」」」
「わかった?!!!」
「「「はい!」」」

こうしてなぜか由乃様が仕切った会議は私たち2年生三人にとって戸惑いを残しつつ終わった。
「どうしましょうか」
咲さんが情けない声で話しかけてきた。
「そうよね。かなり難しいわね…美華柚さんあてはあります?」
「私ですか?無いことはないですよ」
「そうなんですか?!」
咲さんが嬉しそうに喰いつく。
「咲さん…」
「ごめんなさい…私初対面の人と話すの苦手で…あてもないですし…」
「それは私もですよ。期限が一週間でしかも罰ゲーム付きなんて…由乃様って暴君よね」
「そうですよね、そうですよね!」
「そういう訳で美華柚さん、頼りにしています」
「わかったわ。いつもみんなには迷惑かけてるしがんばるわね」
「「ありがとう」」
「でもお二人だって最善を尽くしてくださいね?私もうまくいくとは限らないですから」
「ええ、もちろんよ」
「私もなるべくがんばります」

久しぶりに2年生三人で帰宅した。気の置ける二人と会話しながら帰宅するのは気分がよかった。

「ただいま〜」
鍵を開けドアを開ける。いつもならお姉ちゃんが迎えてくれるはずなのに今日はそれが無い。
靴はある。でももう一足見慣れぬ靴があった。お姉ちゃんが出迎えてくれないわけがわかった。
音を立てずにリビングに向かう。
リビングからは異様な雰囲気が漂っている。
中を覗くとお姉ちゃんとお姉ちゃんの「お姉さま」が嬉しそうに抱き合っている。
顔はキスできそうなくらい近い。
「自分ばかり幸せな思いして……」
今日みんながじゃれている時さみしい思いをしたのはお姉ちゃんのせいだ…
いいところで邪魔してやる……!

しばらくするとお姉ちゃんと「お姉さま」は熱い視線を交わして一つになろうと…今だ!
思いっきり冷たい視線と声を送る。
「ただいま!!お姉ちゃん!!!」
「え?!さっ小夜子?!」「小夜子ちゃん?!」
「ただいま!なにしてるの?今日はお姉ちゃんが夕飯用意する番だけどもう出来てるの?」
「こっこれからだよ!今から作るよ!」
凄いうろたえっぷりだ。ちょっとすっきりした。
「そう……今日は会議で大変だったからおなか空いてるの。だから早くして」
「わかった!」
「のっ乃梨子!私も手伝うわ!」
「志摩子さんはお客さんなんだから座ってて!」
「でも…小夜子ちゃんが怖いわ…」(乃梨子だけに聞こえるように)
「大丈夫だよ……小夜子、夕飯作ってる間志摩子さんの相手してあげて」(前半小声)
「は〜い」

「それで小夜子ちゃん、今日はどうだったの?」
「……由乃様が来て無理難題を吹っ掛けられたんです」
「由乃か…懐かしいわね」
「志摩子さん卒業してから由乃様に会ってないの?」
「ええ…あまり会う機会が無いわね。祐巳とはしょっちゅう会ってるけど」
「祐巳様はリリアンだもの、会わない日の方が珍しいよ」
「由乃様ってリリアン出てからどうしたんですか?」
「それがね…最近まで連絡が付かなかったの」
「…へえ」
「なぜです?」
「ごめんね、わからないわ。たぶん菜々ちゃんの方が詳しいと思うわ」
「そうですね……」
「小夜子、吹っ掛けられた難題って?」
「一週間のうちに学園祭までのお手伝い兼妹候補を見つけろですって。自分なんて3年になるまで妹を持たなかったくせに……」
「そうだったわね」
志摩子さまは懐かしそうに目を細める。
「見つからないとどうなるの?」
「罰ゲームがあるらしいの」
「由乃様って手加減を知らないから気をつけた方がいいよ」
「そんな!なんとかしてよ!」
「無理だね、それに怖いからあまり関わりたくない……」
「私も……」
「お姉ちゃんたちも苦労したんだね…」
「うん…」「ええ…」
「でも何でそんなことに?」
「慢性的な人手不足よ。お姉ちゃんにも責任の一端があるけどね…」
「ごめん…」
「それにみんながじゃれ始めた時私一人さみしかったし…」
「ほんとにごめん……」

それから夕食やその後の団欒はお姉ちゃんたちのリリアン時代の話や由乃様の話で盛り上がった。
ちょっとだけ今日感じたさみしさが紛れた気がした。


今日から勝負の一週間が始まる。どんな罰が待っているかわからないからがんばらねば。
私にも興味のある1年生がいないわけではない。
それは勿論「出雲ちゃん」だ。
しかし風邪をひいて休んでいるとかで会うことができず、三日過ぎてしまった。
木曜日に見かけたもののまだ万全ではないらしく声をかけられる雰囲気ではない。
次の日はぶり返したとかでまた休んでしまい、勝負の一週間は完敗だった。
咲さんの方も成果を得られず散々だった。
あとはここ一週間薔薇の館に姿を見せなかった美華柚さんだけが頼りだ。

「あ〜あ、何よあんたたち情けないわね〜」
「「……」」
私たち二人は何も言い返せない…
「美華柚の方は逃げたみたいだし?どんな罰を与えてあげよっかな〜」
嬉しそうな由乃様が憎い!そして姿を現さない美華柚さんはもっと憎い!!
「美華柚……どうしたのかしら……」
「逃げたんじゃないの?罰ゲームが怖くて。あはは!」
美華柚さんのバカ!!!
「美華柚さんあてがあるって言ってたのに…(グスン…)」
「ほんとに…美華柚さんひどい裏切りだわ……」
「さああんたたち腹をくくりなさい!」
もう嫌!

その時ビスケット扉が激しく開いた。
「遅れてごめんなさい!!」
「美華柚…!」「「美華柚さん!!」」
由乃様は苦虫を潰したような顔をしている。本当にこの人は何がしたいんだろう…
「美華柚、罰が怖くて逃げたのかと思ったわ」
「すみません、電車の遅延です…それでこの子との待ち合わせに遅れてしまいまして」
「この子?」
確かに美華柚さんの後ろにはもう一人女の子がいる。もしかして……
「美華柚さんその子はお手伝いの……!!」
「ええ……さあみなさんに自己紹介をして」
「はい、ごきげんようお姉さま方。私は白壇檸奈です。この度宮本美華柚様の妹になりました。至らないところだらけですのでご指導ご鞭撻お願いします」
「「「「「……」」」」」
「檸奈、よく言えたわね、えらいわww」
「はい、美華柚お姉さまww」
「妹ですって?」
「はい、お姉さま。檸奈は私の妹ですよ。可愛いでしょうw」
「ええ…そうだけど……」
「よかったわね檸奈。可愛いですって」
「えへへ〜」
絶句だ。まさか妹を連れてくるなんて……
ふわふわの髪をツインテールにして眼鏡をかけている実年齢より若く見える檸奈ちゃんを抱きしめて嬉しそうにしてる美華柚さんを見て、この場にいる全員が絶句していた。
「美華柚、いつ檸奈ちゃんを妹にしたの?」
「水曜日くらいです」
「私に相談もしないで?」
「お互いの同意さえあれば別に相談なんかしなくてもいいじゃないですか」
「そうだけど…ねえ檸奈ちゃん。一回断ったりした?」
「いいえ!美華柚お姉さまのお申し出を断るなんて!」
顔をブンブン横に振って必死に否定している。
そんな彼女を見ているうちにようやくフリーズが解けた。
「でも美華柚さん、貴女は出雲ちゃんを妹にしようとしたじゃない」
「う〜ん、そうだったんだけどね…出会っちゃったものはしょうがないよ、ね〜w」
「はい、美華柚お姉さま!」
幸せそうに微笑みあう二人を見てベイユ様が悔しそうに震えている。
無理もないだろう。もう少し二人きりがよかったんだから…

「ある意味革命よね、これって……」
「そうですね…」
「はああ〜これで罰ゲームなしか〜」
「「よかった」」

一度振られて別の女に手を出してその女を手に入れた美華柚さん。
今までの紅薔薇の人たちがしなかったことをやってのけた。
もしかしたらこれで「紅薔薇のジンクス」は破られたのかもしれない。
そういう意味では「紅薔薇革命」といってもいいだろう。

これから賑やかになりそうだ



苦しい言い訳
これから本格的に出雲が山百合会に関わっていきます。
そのために出雲とは別の1年生を山百合会に入れました。
紅薔薇姉妹の名前はベイユ以外は「ストロべ○ー・パ○ック」の登場人物のパロディです。
美華柚は「源千華○」を少しいじりました。檸奈は「白壇籠○」「夏目檸○」「日向○奈」三人の名前を合わせたものです。
性格は「日向絆○」っぽくしています。
小夜子の自宅のシーンで菫子さんがいないのは小夜子が上京してきて三人暮らしになったからです。
出かけても乃梨子が一人で留守番することが無くなったため、菫子さんはお出かけ三昧お泊り三昧なのです。
もう少し短くしたかったのですが長くなりすぎました。ごめんなさい。
此処まで読んでくださってありがとうございました。


【2862】 気にせず進めて  (クロス 2009-03-03 09:10:12)


「【No:2859】のつづきです。しっかり見やがれです。」(by翠星石)
「この無礼人形!読者に向かってなんて口をきくのかしら!」(by瞳子)
「うるせーです。ドリルは黙ってろです。」(by無礼人形)
「むきー」(byドリル)
「瞳子も翠星石もけんかはだめだよ。それにもうはじまるよ。」(by祐巳)

 『マリア様がみてる×ローゼンメイデン』

 祐巳たちがあれやこれやと騒いでいる一方で、二条乃梨子の部屋では
「いやなのー!うにゅーがたべたいのー!」
「だから、そのうにゅーという食べ物がどんな食べ物か教えてもらわないと出しようがないんだって。」
「うにゅーはうにゅーなの!白くてふわーとして甘いの!うにゅー!うにゅー!うにゅー!」
「白くてふわーとして甘いものか……ごめん、さっぱりわからない。」
「うにゅ〜(ぐ〜)…おなか減ったの。もうだめなの〜。」
ばたんっ!
「ひ、雛苺|」
(困ったなあ。今菫子さんは出掛けているし。うにゅーという食べ物が何なのかさっぱりだし。そして、挙げ句の果てには雛苺は空腹で倒れちゃうし。ていうか、そもそもなんで人形が食べるんだ?)
くるくる〜
「と、とにかく、他の人に聞いてみますか。」
どんどんどん…

 がちゃん
「はあ、案の定誰もうにゅーのこと知らないし、瞳子と祐巳さま、由乃さま、黄薔薇さまに関しては電話にすら出てくれなかったよ。はあ」
「うーん、こうなれば思い当たるものをいくつか買ってくるしかないかあ。今月は仏像鑑賞のためにお金がほとんどないんだけどなあ。」
「うにゅ〜うにゅ〜うにゅ〜」
「仕方ない。雛苺のためだ。行ってこよう。」
たったったっ き〜ばたんっ がちゃ 
「JUM〜のり〜助けてなの〜」

 ぴかー
「よっと、あらここは…乃梨子の部屋だわ。ホントに鏡で移動できたわね。」
「さっきから、何度も言ってるじゃなぁい。本当に人間って愚かだわぁ。」
「ふふふ、そうね。あらっ乃梨子にも人形がいたのね。」
「雛苺じゃなぁい。目を回して倒れてるなんて、相変わらずこどもねぇ。」
「うにゅ〜、うにゅ〜、うにゅ〜が食べたいの〜」
「うにゅー?」
「確か、苺大福のことよ。うにゅーなんて言って通じる分けないのに、困った妹ねぇ。」
注:アリスゲームは前世界で中止になっていて、今は違った方法でアリスを目指しています。
「妹思いなのね、水銀燈は。」
「ななな、何言ってるのかしらぁ。私がそんなわけないでしょう。私はローゼンメイデン第1ドール、アリスに最も近い人形なのよぉ。」
(最もアリスさんに近いだなんて、どういう意味かしら。より女の子に見えるということなのかしら。私からみれば、どうみても女の子なのに… 人形の世界ってよくわからないわ。)
「苺大福と言ったかしら。確か、この前壇家からもらった苺大福が残ってるかもしれないわ。取りに戻りましょう。」
「そうねぇ。このままじゃ、雛苺が惨めでみてられないわぁ。」
「それにしても乃梨子はどこにいったのかしら。一応置き手紙でもおいときましょう。」
ぴかー

 がちゃっ きー たったったっ 
「雛苺、ただいま。うにゅー買ってきたよ。」
くるくる〜 んっ! くんくん がばっ
「う、うにゅーなのー!!!ありがとなのー!!!わーい!」
「ふふ、どういたしまして。さっき黄薔薇さまに出会って、うにゅーのこと知っていたから良かったよ。まさか苺大福のことだなんて露にも考えなかったよ。」
ぱくり もぐもぐ ごっくん
「うゆーー!おいしなのー!」
「元気になって良かった。 んっ?こんなところに手紙が…しかも見覚えのある字…って志摩子さんの字じゃない。雛苺、志摩子さんが来てたの?」
「志摩子さん?」
「えーと、髪がほわほわしていてまるで西洋人形みたいなお方よ。」
「うゆ。ヒナ、目まわしてたから知らないの。」
「すぐに戻りますって、どうやって入ってきたのだろう?散らかってはいないけど、まだ掃除していない部屋に志摩子さんが入るだなんて…この二条乃梨子、一生の恥だ。あー。」
がくっ
ごっくん
「ごちそーさまなのー!ノリ、ホントにおいしかったなのー!ありがとーなの!」
だきっ
「ノリ、大好きなの!」
てれ// 「まあいいか、雛苺が元気になったし。」
「ノリ、これからよろしくなの!」
「こちらこそよろしくね。」
ふふふふ

様々な場所で色々な出会い。そして、紡ぎ合う物語。まだまだ続きます。チャンネルはそのまま。


【2863】 (記事削除)  (削除済 2009-03-03 18:10:00)


※この記事は削除されました。


【2864】 ちゃんと供養してる山百合会で一番怖いお姉様  (bqex 2009-03-03 23:15:59)


パラレル西遊記

【No:2860】発端編
 ↓
【これ】 三蔵パシリ編
 ↓
【No:2878】金角銀角編
 ↓
【No:2894】聖の嫁変化編
 ↓
【No:2910】志摩子と父編
 ↓
【No:2915】火焔山編
 ↓
【No:2926】大掃除編
 ↓
【No:2931】ウサギガンティア編
 ↓
【No:2940】カメラ編
 ↓
【No:2945】二条一族編
 ↓
【No:2949】黄色編
 ↓
【No:2952】最終回



 私、二条乃梨子は三蔵法師として、孫悟空の聖さま、猪八戒の蓉子さま、沙悟浄の江利子さまと天竺を目指して旅をしてるんだけど……この組み合わせはとてもつらい。


「あ、そろそろご飯の時間ね」

「まあ、もうそんな時間」

「この近くに食べるところなんかあったかな?」

「私、探してきますね」

 リリアンに入った当初は「年功序列反対!」なんて叫んでいた私もすっかり馴染んで率先してお姉さま方のためにお茶をいれる生活が当たり前となり、今ではすっかりパシリ。
 そう、私は本当はふんぞり返って食べ物を持ってきてもらってもいい三蔵法師なのに、危険だから3人についてきてもらっているのに、パシリ。
 1人でトコトコと食べ物を探す三蔵法師。ああ、魑魅魍魎がいる世界なのに。

「ごきげんよう」

 少し歩いたところにあった一軒家の前に綺麗な黒い髪の女性と会った。

「ごきげんよう。こんなところに1人でお住まいですか」

「ええ。そういうあなたは見たところ旅の法師さまといった感じですね」

「はい。私は三蔵法師と申します」

「まあ、あなたが有名な三蔵法師さまですか。私は静と申します。ところで、何故あなたのような有名な法師さまがこんなところに? 見たところお1人のようですが」

「いえ、お腹が減ったので、食べ物を売っている店か、食堂のようなところを探してまして──」

「なら、私が家で御馳走しますわ」

「あの、連れがあと3人いるんですが」

「まあ、いいから、いいから」

「いえ、そんなわけには──」

 私はあっという間に静さんに捕まってしまった。
 しまった、と思ったものの、相手は意外と力強く、家の中に連れ込まれ、柱に縛り付けられて絶体絶命。

(ああ、何が始まるんだ……)

 静さんは大きな鍋を用意して歌を歌いながら料理を始めた。

 ♪マリア様のお〜ダシ それ〜は昆布
  煮立つ前にあーげる それ〜が昆布

 オペラのような素敵な歌声でなんという歌を……
 静さんは昆布で出汁をとった。

 ♪マリア様のや〜さい それ〜は白菜
  芯はしゃきしゃ〜き しろ〜い白菜

 歌に合わせて小気味よく白菜を切ると静さんは鍋に白菜を入れる。

 ♪マリア様の味ーつけ それ〜は味噌味
  コクと香りがいい 自慢の味噌味

 更に味噌が入って……ああ、空腹なのもあるがいい香りだ。

 ♪マリア様のぐーざい 三蔵法師
  食べると不老不死の 三蔵法師

 ……

 静さんは包丁を持って私の前に立った。

「まさか」

 静さんはにっこりと笑っている。

「私を食べるんですか!?」

「キムチ味の方がお好みかしら?」

「嫌です!」

「じゃあ、味噌味でいいのね?」

「食べられるのが嫌なんです!!」

「あら、鍋は嫌い? じゃあ、活造りにする?」

「食材として食べられるのは嫌だって言ってるじゃないですかっ!」

「あら、別の方の意味ならいいの?」

「いいわけないでしょっ!!」

 いくら嫌だと言っても今の私は柱にくくりつけられた状態、向こうは包丁を持っているし、体力があるのも証明済み。味噌味で美味しくいただかれるのも時間の問題である。

「でも、ダメ。今日は三蔵法師鍋よ」

 悪戯っぽく静さんは私に包丁をむけた。
 今までの人生が走馬灯のようによみがえる。ああ、志摩子さんにもう一度会いたかった……

 ドン!!

 後ろで扉が開いたような音がした。

「あなた達は?」

 静さんは包丁を突きつけたまま私の後ろを見ている。

「いいニオイがしたのでお邪魔しちゃいました」

 この声は聖さま。ああ、やっぱり孫悟空なんだ。助けてくれるんだ。

「じゃあ、一緒に食べる? これ?」

 静さんは私を指して尋ねる。

「いいねえ」

 ……はい?

「味噌味か。そこでキノコ採ってきたんだけど入れていい?」

「食べる気満々じゃないですかあっ!!」

 ツッコミながら今までの人生が走馬灯のようによみがえる。ああ、志摩子さんにもう一度会いたかった……

「ちょっと、聖」

 この声は江利子さま。やる時はやる沙悟浄だ。江利子さまなら救ってくれるはず。

「ネギ忘れてるわよ」

「ノリノリでネギを入れないでくださいっ!!」

「豆腐は後でいいわよね?」

「豆腐の事より三蔵法師の心配はっ!!」

 ツッコミながら今までの人生が走馬灯のようによみがえる。ああ、志摩子さんにもう一度会いたかった……

 その時、私の横を通って蓉子さまがキッチンに入った。
 食欲の塊、猪八戒となった蓉子さまはその欲望のままに行動されているのだろう。
 ああ、味噌味な最期だなんて……

 私の所からは見えないが蓉子さまは何か作っているようだ。
 鍋はキノコとネギが入ってますますいい香りだ。
 後は私を入れれば完成だ。たぶんそうだ。今までの人生をよみがえらせる走馬灯がみたびめぐる。

「これ、よかったらどうぞ」

 蓉子さまは静さんに何かを勧めた。ストローがささっているのが見える。

「ありがとうございます」

 静さんはストローに口をつけるとそれを飲み始めた、と、思ったら勢いよく噴き出して転げ回った。

「ぐふぁ!!」

 静さんは正体を現した。
 それは静さんの姿を借りた蟹の妖怪だった。

「ふっ、自分の作った味噌汁で倒されるとは思わなかったでしょう」

「ストローで味噌汁を飲ませるなあっ!!」

 蟹の妖怪は火傷をして思わず正体を現してしまったらしい。

「口のききかたには気をつけなさい。今のあなたは食材。そしてここにはメインの具材を待つ鍋が──」

 ♪マリア様のぐーざい それは毛蟹
  カニみそがイケる それは毛蟹

 蓉子さまは歌いながら蟹妖怪を鍋にぶち込んだ。

 江利子さまが縄を解いてくれた。

「助かった……」

 私は座り込んだ。


 鍋はちょうどよく煮あがった。
 お腹がすいていたのでみんなで食べた。

「美味しい!」

「妖怪なんか食べて平気なんでしょうか?」

「あら、ちゃんと火を通したから大丈夫よ。ふふ」

「うーん、こんなところで蟹鍋にありつけるとは。ははは」

「乃梨子ちゃん、早く食べないとなくなっちゃうわよ。ふふふ」

「い、いただきます……あ! 美味しい」

「これでビールがあれば最高なんだけどなー。はっはっは」

「未成年がアルコールはダメでしょう、ふっふっふ」

「なんか、楽しくなってきましたね。あはは」

「ふふふ」

「ははは」

 そう、我々は蟹の妖怪との戦いで別に注意すべきところを忘れてしまったのだ。
 言うまでもない、聖さまが採ってきた、あのキノコが原因であった。
 数時間後、笑いながら私は人生の走馬灯のアンコール上映を行った。

 こんなんで天竺にいけるのかなあ?

続く【No:2878】


【2865】 丸いちっこい白黒な志摩子怪電波発信中耳がとがっている  (sirokuma 2009-03-04 02:27:11)


その日、二条乃梨子は紅茶を吹いた。

なぜなら登校してすぐに薔薇の館に入り、3年生を送る会やら何やらで溜まっていた書類を片付けようと意気込んで、意気込みすぎてはあ疲れたと一服している最中に、藤堂志摩子がビスケット扉を開けて、開口一番にごきげんようと挨拶をしたからだ。
いや、挨拶をしたからではない。
それだけならば、ああ、今日も志摩子さんは綺麗だなあとか、なんて綺麗なんだ、綺麗すぎて天使が舞い降りてきたようだ、とか、色々眩しすぎて後光が見えませんとか、そんな風にしか思わない。
だが今二条乃梨子は紅茶を吹いた。吹いたといってもちょっと咳き込む程度ではあるが。漫画のようにぶっはーと吹いて、洋服を汚すような真似はしない。そんなことをするのはこの館で一人ぐらいなものである。その人は一つ上の先輩に当たる人なので、そんな想像を膨らませるのは非常に失礼極まりないことなのであるが。
とにかく乃梨子は紅茶を吹いた。普段冷静沈着で通っている乃梨子がだ。
冷静沈着とはいっても、彼女の姉にあたる人物、藤堂志摩子が関わると途端に彼女は冷静でいられなくなる。
ちょっとうなじが髪の間から見えるだけで、冷静でいられなくなる。
耳元で声をかけられただけで、冷静でいられなくなる。
本人は冷静を保っているつもりだというが、親友の松平瞳子は彼女の証言を完全に否定。曰く、顔が赤くなり声が裏返るらしい。
だが今は、顔が赤くなったり声が裏返るような現象は彼女の身に起こっていない。
ただ紅茶を吹いただけである。
目の前の光景を目にして、思わず紅茶を吹いただけである。
紅茶を吹く、という行動も、日常的にはあまり起き得ない現象ではあるが、とりあえずいつものように、顔が赤くなったり慌てて変な声で喋ったりすることはない。
することはないのだが。

「ごきげんよう」

鈴のような声が、耳元に届く。
ゲホゲホ、ゲホゲホと器官が痛い。
自分もごきげんようと返すべきなのだろう。だが声が上手く出そうにない。肺の方に紅茶が入ったようだ。苦しいすごく苦しい。
こういう時はどうすればいいのだろうか。深呼吸をして息を整えることが一番なのだろうけれど、上手い具合に整えることができない。

「大丈夫? 乃梨子」

たったったと、駆け寄る音がする。自分を心配してくれているようだ。
それもそうかもしれない。ドアを開けてごきげんようと挨拶をした途端妹が紅茶を吹いた。普通ありえない光景だ。
コレが由乃様だったら、ど、どうしたの乃梨子ちゃん、などと言って、奇異な目で見られることだろう。
だが自分のお姉さまは違う。どんなに自分が奇異なことをしていても―――例えば館の屋根にいきなり上り出すとか、校舎内の池にいきなり飛び込むとか、そういうことをしたとしても、大丈夫? 大丈夫? と心配してくれる。そんな優しいお姉さまである。
だけども今、その姉が至近距離で自分を心配してくれることは、乃梨子にとって耐え難い試練であった。
すぐ側に志摩子がいて、ずっとこのまま俯いているわけにはいかない。そんなことをしていたら、絶対この人はひどく心配する。場合によっては傷つく。
そんなことがあってはならない。自分のせいで、これ以上心配かけたり、やきもきさせたりするわけにはいかない。
乃梨子は顔を上げた。




「ぶっ」




吹いた。
吹いてしまった。
だめだどうしても耐えられない。この光景に、耐えられるわけが無い。
ふるふると体を震わせながら、必死で笑うのをこらえる乃梨子。
端から見れば、お腹が痛くてうずくまっているようにも見える。
当然のことながら、志摩子は不安の色を隠せない。どうしたの乃梨子、ねえどうしたの、とさっきから声をかけてばかりいる。
だがここで顔を上げたら終わりである。色々と終わりである。
わかっているが、心配そうな相手の顔を想像すると、罪悪感のようなものが駆け巡ってしまう。
このまま俯いたままでいるのと、本当のことをさらけ出すのとどちらが良いのだろう。

「何があったの。どこか痛いの。乃梨子」

必死で声をかけているのがわかる。これは本気で心配している。
私のことはいいからほっといて下さい色々耐えられませんから、というのが今の乃梨子の心境であったが、咳き込んでいるこの身では何も言えず、咳き込んでいなくとも、そんなことを面と向かっていえる筈が無い。
この人は優しい人だ。
そんなことで傷付けたくない。

「ねえ乃梨子何か言って」

声が段々大きくなっている気がする。ゆさゆさと肩を揺らされているのがわかる。
わかっている、わかっているのだ。
ここで自分が顔を上げなくては、この人はとても傷つく。
端から見れば、自分が無視しているようなものだ。この人はひどく繊細な人なのだ。人が傷つかないところで傷つく。そんな繊細な人なのだ。
せめて、せめて何かを言わなければ。
そうだ。自分はまだ一言もしゃべっていない。一言も自分の気持ちを相手に伝えていない。
これでは相手は混乱するだけだ。
必死で息を整える。すうはあ、すうはあ。
喉になにかが絡まっている気がするが、話せるだけの余裕はあるだろう。
俯いた姿勢のまま、乃梨子は言葉を紡いだ。

「志摩子さん」
「なあに? 大丈夫? 乃梨子」
「ええ、大丈夫です。それより志摩子さん」
「何かしら」

声を出してみると、すこししゃがれているのがわかる。
だけどちゃんと相手の耳に届くようだ。
乃梨子は思い切って、ずっと気になっていたことを聞いた。






「そのウサ耳、一体どうしたんですか」



乃梨子の一言に、志摩子ははっとした顔をする。
自分の頭に手を当ててみる。
耳だった。
まごうことなき、ウサギの形をした耳だった。

「あら、ずっと付けっぱなしだったみたい。自転車降りたら外そうと思っていたのに」

志摩子は平然とそう言ってのけた。
乃梨子は驚いた。
なんで自転車乗るときにウサ耳をつける必要があるのだ。
たしかにふわふわの髪をなびかせ、さっそうと自転車に乗る姿にウサ耳を付けてみれば、びっくりするほどユートピア。なんて可憐なお姫様なのだろう。おとぎの国、いやうさぎの国へ行ってらっしゃい。
じゃなくって。
おかしい。明らかにおかしな光景だろう。
田んぼの真ん中をウサ耳少女が笑いながら自転車を走らせていく。ふんふんと鼻歌歌いながら。
絶対現代日本ではありえない。近代でもありえない。そんな歴史あってたまるか。
震えながら声を必死に搾り出し、新たなる疑問を本人にぶつけてみる。
すなわちこんな馬鹿なことを吹き込んだ奴は誰だ、ということを。

「誰に貰ったんですか、そのウサ耳」
「お姉さまがくれたの。冬は耳が寒いでしょって。コレをつけていれば寒くないからって」

なるほど。奴か。全ては奴の仕業というわけか。
ならば全てに合点が行く。
こんな物を贈り物に送る人物といえば、一人しかいないではないか。
からかうにも程がある。

「志摩子さん」
「なにかしら」
「それ、外したほうがいいと思う」

ていうか、外してください。顔が上げられません。

「そうね。乃梨子もつけてみたいものね」

言っていない。
そんなことは言っていない。

「とっても暖かいのよ」

待って下さい。落ち着いてくださいお姉さま。
私は一言もそんなこと言っていないです。
暖かいのはわかりますが、別に今自転車に乗ったりなんかしないですし、寒くてもお姉さまが側にいればとっても暖かいですから。

「顔を上げて、乃梨子」

そんな乃梨子の心の中の葛藤も、鈴のような声を前には全て無効であった。
そんな風に言われたら、嫌でも顔を上げてしまう。
言われるがままに、志摩子さんの方を向く。
ウサ耳が目の前に迫っていた。
いや、正確には、ウサ耳ではなかった。
イヤマフラーに白いウサ耳がつけてあった。おそらくは聖さまの手作りなのだろう。
それもただ接着剤でつけたようなやわな作りではない。見た目、雑貨屋で偶に見かけるパーティー用品ぐらい、いやそれ以上に精巧な作りである。
一見ものぐさなあの人がよく作ったものだ。おそらくすごく時間がかかっている筈だ。
こんなものに本気出して、どうするというのだあの人は。
そんなことを思う間もなく、耳に暖かいものが、頭にはヘアバンドのようなものが、付けられた感触がした。
乃梨子は震えた。

「とっても似合うわ」

志摩子さんが笑いかける。
ぜってえ似合わねえ、と自分では思っていたが、そんな風に笑顔で言われると、何もかもどうでもよくなってしまう。
私もウサギの国への仲間入りです。ハイ。

「ねえ、乃梨子。散歩に行きましょう」

ニコニコと上機嫌そうに、志摩子さんが言う。
思わずええはい、とうなずきそうになってしまった。
まずいまずい。こんなのをつけて校内をうろついたら、新聞部のターゲットにされるだけだ。
白薔薇のつぼみ、ついにウサギの仲間入り!
白薔薇のつぼみに一体何があった!?
ウサ・ギガンティア・アン・ブゥトンの登場か!?
想像するだけで、頭を抱えたくなる。
なんとかして言い訳をしなくては。

「えっと、まだ書類が」

そうだ。自分はまだ作業の途中だったのだ。書類の整理の途中に休憩していただけなのだ。
これでいい。仕事を理由にするならなんとか志摩子さんもわかってくれるだろう。

「そうね、残念ね」

残念そうに、志摩子さんは呟く。
本当に残念そうだ。
なんとなく罪悪感が残ってしまうが、さすがにあんな恥ずかしいことはできない。
ごめんなさい、お姉さま。
というか、これをつけたまま電車に乗ってバスに乗ってここまで歩いてきたということなのだろうか。
どう考えても、そうとしか考えられない。
一体聖さまはこの人に何を吹き込んだのだろう。「これをつけるととっても暖かいよ」、それだけじゃないはずだ。
いや、それだけでこの人はつけそうな気がする。耳が寒いときにはウサ耳をつけるものだと思っている気がする。
ああそんなことよりも、早くこれを取らなくては。薔薇の館の住人に見られるだけでも結構厄介だ。
祐巳様ならまだいい。だけど由乃様は絶対ネタにする。新聞部を呼ぼうなどと言い出すに決まっている。そしたらこの学園生活は終わりな気がする。
そうは言っても、先ほど残念そうな顔をした志摩子を目の前に、乃梨子の手は動かない。
これ以上傷つけたくない。
ああ本当に、どうすればいいのだろう。ニコニコと残念ですね、と笑いながら、必死で乃梨子は考える。

その時だった。

ビスケット扉がバタンとなった。
ずいぶん乱暴な開け方である。
嫌な予感がした。まさか、あの人物ではあるまいか。

「ごきげんよー! 」

ビスケット扉から勢いよく出てきた人物。
細身で三つ編みの、ちょっと気が強いというか、わがままというか、そんな人物。
黄色薔薇のつぼみ。
島津由乃その人だった。
由乃はつかつかと中に入っていく。そして二人に気が付く。

「なんか珍しいわねえ、こんな時間から開いているなんて。あ、志摩子さんと乃」

由乃は言葉を失った。
乃梨子も言葉を失った。
志摩子だけが、ニコニコしている。

「えっと」

なんとか言葉を発する乃梨子。

「これは」

顔が赤くなっていく。
変な汗が、手からにじみ出る。

「私のじゃな」
「ぷっ」

笑いやがった。
もとい、噴出しやがった。

「ぶははははは!!」
「ど、どうしたの由乃さん!」

薔薇の館にこれ以上ないぐらい大きな声が響く。

「どうしたのってそ、それ!その耳!」
「違います!これ私のじゃなくって」
「この耳がどうしたの?可愛いでしょう」
「ちょっと真美さんのところに行ってくる。こんなニュース、滅多にないわ」

由乃はビスケット扉から駆け出す。
乃梨子は慌てた。
こんなことを他の人にばらされたら、たまったものじゃない。

「待って下さい!由乃さま!」

乃梨子は、駆け出した。
チョコレートドアを開け、冬のリリアン女子学園の庭へ、由乃を追いかけ駆け出した。
志摩子は唖然としている。
それよりも、今あの子がやっていた作業を手伝わなくては。
そうすれば、あんな可愛い格好をした乃梨子と、一緒に散歩ができるかもしれない。
志摩子は鼻歌を歌いながら、作業に取り掛かった。

「おーい、真美さーん!」
「待って下さい!待って下さいってば!」
「おもしろいニュースが見られるわよー!蔦子さんでもいいや!」
「駄目です!駄目ですってば!」

そんな志摩子とはうって変わって。
白い息を吐きながら、二人は校舎内を駆ける。
白いスカーフはひるがえさないように、なんて注意事項はもってのほかである。
道行く生徒たちは二人に釘付けである。
もちろん生徒会の二人が校内を駆け回っていたせいでもある。
二人が大声を出しているせいでもある。
だが、人々が最も注目したものは、二条乃梨子の頭に付けられたウサギの耳だということに、当の本人は気付きもせずにひたすら由乃を追いかけた。

「真美さーん!」
「やめてください由乃さま!! これ私のじゃないですからー!!」

パシャリとカメラの音がする。
メモを持った新聞部が、二人の後を追いかける。
注意をしようとしたシスターが、ぶっと噴出す。
そんなことはつゆ知らず、二条乃梨子は、島津由乃を追いかけた。

「ニュース、大ニュースよ! 乃梨子ちゃんがウサ耳つけて」
「ああああもうやめてください! やめてください! 私じゃないです!」




―――次の週の新聞にウサ耳つけたギガンティア・アン・ブゥトンが掲載されることを、この時の彼女は知る由もなかった。


おわり

 


【2866】 ぱっと見たら  (クロス 2009-03-05 11:54:37)


「ノリー、【No:2862】のつづきなの!」
「わかってるよ。雛苺」
「だっこしてなの!いっしょにみるの!」
「はいはい」

「相変わらず、甘えん坊な子ねぇ」
「ふふふ、水銀燈、うらやましいの?」
「そ、そんなわけあるわけないじゃぁない」
「ふふふ、ほんと素直じゃないわね」
「///」

『マリア様が見てる×ローゼンメイデン』(注:クロスオーバーです)

 島津家では

「ローゼンメイデン1の策士、金糸雀とはカナのことかしら」
「へー、変わった名前ね。わたしは島津由乃よ」
「由乃・・・よっちゃんかしら!よろしくかしら、よっちゃん」
「わたしはスルメじゃなくよ、すずけイカか!」
「?何をいってるのかしら?」
「ネタが古すぎたわね。ところで、金糸雀は何しにきたの?」
「いい忘れたかしら。カナはアリスになるために来たかしら」
「アリス・・・ アリス君のこと?」
「アリス‘君’?アリスは究極の少女のことだから、どちらかといえばアリスちゃんかしら」
「ああ、そういう意味ね。アリス君になりたいのかななんて何考えていたのかしら」
「よっちゃん、先走りすぎかしら」
「そうね。それで、そのアリスなるために私は何をすればいいの?」
「よっちゃんはカナのマスターになってほしいかしら」
「マスターね・・・いいわね。おもしろそう」
「じゃあ、カナの指輪にキスするかしら」
「派手な指輪ね」
ちゅ
「これでいいの」
「OKかしら」
「あまり実感が感じられないけど、これでマスターになれたのね」
「手を見るかしら」
「えっ・・・うわっ、私の手にも派手な指輪が」
「これでカナのマスターかしら。改めてよろしくかしら」
「え、ええ。よろしくね」
「(ぐ〜)よっちゃん、お腹すいたかしら」
「人形もお腹がへるのね」
「カナはただの人形じゃなくてローゼンメイデンだからかしら」
「ふーん。世の中まだまだ不思議なことが多いのね」
「そうなのかしら」
「わかったわ。私がとっびきりの料理をごちそうしてあげる」
「ありがとうかしら、よっちゃん」
「ふふふ、任せなさい。金糸雀は何が食べたいの?」
「カナは玉子焼きが食べたいかしら。砂糖が入っていて甘いのがいいかしら」
「玉子焼き〜?作りがいがないわね。まあいいわ。待ってなさい」
ばたんっ
「・・・よっちゃんは見た目が当てにならないの典型例かしら」


 台所

「とびっきりおいしい玉子焼きを作るわよ」
「甘さ際立たせるために最初は辛く、だんだんと甘くなる玉子焼き」
「題して玉子焼きの‘味覚革命’よ」
「まずは卵を2つ割って」
こんこん
「あれっ?なかなか割れないわね」
ごすごす
「あーもう」
がんがん ばかん
「・・・殻が大量に入ちゃったわ」
「まあ、大きな殻は取って」
「あとは目立たないから大丈夫よね・・・」
「はっ!!」
「‘触感革命’!?」
「かの天才、アイザック・ニュートンはりんごが落ちるという偶然によって」
「物理界の大発見をした」
「わたしに起きた偶然・・・」
「これも料理界の大発見に値するんじゃないかしら」
「ただ柔らかいんじゃない」
「噛んでる途中で意外な食感」
「アイスクリームの中のチョコチップね」
「あ〜わたしが恐ろしい」
「金糸雀に恐がられたらどうしよう」


「よっちゃん、この玉子焼き、何故か恐いかしら」
「そうなの?普通に作ったのだけれど」
「カナは色々な玉子焼きを見てきたかしら。このカナがいうのだから間違いないかしら」
「ふーん、そうなの。まあいいから食べなさい。冷めたらまずいわよ」
「そ、そうね。いただきますかしら」
きりっ ひょい ぱく
「!!!!」
「どうかしら?」
「う、うまいかしらーーーーーーーーーーーー」
「そんな大袈裟な」
「これは革命!!玉子焼きの革命かしら!!」
「ふふふ」
「こんな玉子焼きを作るなんてカナ、マスターが恐いかしら」
「こんな玉子焼きならいつでも作ってあげるわよ」
「よ、よっちゃーーーーーーーーーーーん(泣き)」


「なんてね。あっもうこんな時間じゃない。早く作らなきゃ」
「辛さはタバスコでいいわよね。でもこれじゃ辛すぎるか・・・」
「じゃあ、甘さは練乳でっと」
「はい完成」


 由乃の部屋

「(ぐ〜ぐ〜ぐ〜)よっちゃんまだかしら〜」
ばたん
「金糸雀ーおまたせー」
「よっちゃん、遅いかしら!」
「ごめんごめん。はいっ、由乃特製玉子焼き‘玉子焼き革命’よ」
「・・・・」
(た、確かに革命かしら。赤、白、黒。玉子焼きなのに黄色じゃないかしら。それに匂いもなんて表現したらいいのかしら)

「よ、よっちゃん、この玉子焼き、何故か恐いかしら」
(っていうか玉子焼き?)

「そうなの?普通に作ったのだけれど」
(やっぱり、なかなか鋭い子ね)

「カ、カナは色々な玉子焼きを見てきたかしら。このカナがいうのだから間違いないかしら」
(冗談かしら?つっこんでいいのかしら?)

「ふーん、そうなの。まあいいから食べなさい。冷めたらまずいわよ」
(早く感想が聞きたいわ)

「そ、そうね。いただきますかしら」
(やっぱり、冗談ではないのかしらorz)

きりっ ひょい ぱく かりっ にゅる ぬちゃ

「!!!!」
(えっ!!!?!)

「どうかしら?」
(金糸雀・・・あなたは大発見の第1証人になるのよ)

「さhfghふぇぎあbjdfーーーーーーーーーーーー」
(甘い?辛い?‘かりっ’?なんなのかしら!なんなのかしら!?)

「そんな大袈裟な」
(金糸雀ったら、声にならないくらいおいしいのね)

「これは革命!!玉子焼きの革命かしら!!」
(死ぬーーーーーーー)

「ふふふ」
(今度、令ちゃんにも作ってあげようっと)

「こんな玉子焼きを作るなんてカナ、マスターが恐いかしら」
(もちろん、色々な意味で)

「こんな玉子焼きならいつでも作ってあげるわよ」
(予想どうり!ニヤッ)

「よ、よっちゃーーーーーーーーーーーん(泣き)」
(先が思いやられるかしら・・・)


 ま、まあこんな出会いもありますよ。物語はまだまだ続く。
(ちょっと長すぎたかな・・・)


【2867】 お早めに心待ちにかく語りき  (笑いの神に 2009-03-06 06:27:01)


【本作】⇒【No:2871】⇒【No:2872】⇒【No:2877】⇒【No:2879】



『乃梨子ちゃんをころがせ』



祥子さまの卒業まであと少し。
薔薇の館では、志摩子さんと乃梨子ちゃんと私が雑務に追われていた。
「祐巳さん、こっちは終わったけど後は何が残っていたかしら?」
「えっと次は、クラブの予算報告書・・・」
と言いかけたとき、乃梨子ちゃんが話に入ってきた
「それは、さっき私がやっておきました。」
「あっ、そうだったの?本当に乃梨子ちゃんは働き者だね。」
志摩子さんが嬉しそうな顔をする。
(志摩子さんは褒めてないよ。)
心の中でツッコミを入れつつも、なんだか幸せな気持ちになった。


すると、急に志摩子さんが私に耳打ちをしてきた。
「祐巳さん、乃梨子のことなんだけど・・・」
急にどうしたんだろうと思い、乃梨子ちゃんから離れるように窓際へ。
「あのね、乃梨子は可愛らしさが足りないと思うのだけれど。」
「えっ。どうしたの急に?」
「さっきのこともそうだけど、乃梨子はしっかりしすぎていると思うの。もっと年相応に子供っぽさが必要だと思うわ」
ん〜確かにそれはその通り。乃梨子ちゃんが私の一年の時みたいに、あたふたするところなんてほとんど見たことない。見たい。乃梨子ちゃんが困ってるところを見たい。
「乗った。」
私は志摩子さんにニッコリと笑いかけた。


「それにしても、乃梨子ちゃんは真面目で良い子ね。志摩子さんにそっくり。」
乃梨子ちゃんは、そんなことないですよと言いつつも嬉しそう。
「ほんと聖さまとは大違い。ふふっ。」
「確かにお姉さまは不真面目だったわ。ふふっ。」
乃梨子ちゃんは表情を一転させる。わかりやすい。
「前から言ってますけど、やっぱりあの方が志摩子さんのお姉さまだったなんて信じられないです。」
プンプンしてる乃梨子ちゃんは可愛い。
もうちょっとね。あとひと押し。
「そんなこと言わないの。本当に素晴らしいお姉さまだったのだから。祥子さまの申し込みを後悔したことは一度もないわ。」
「それですよ。」
乃梨子ちゃんが大声を出した。
かかった。志摩子さんと顔を見あわす。ここからが勝負だ。


「志摩子さんは絶対祥子さまの方がお似合いだと思います。」
乃梨子ちゃんがいきり立つ。
「乃梨子ちゃん、ひどいよ。私じゃあお姉さまに似合わないってこと?」
泣きそうな顔をしてみせる。私もこんな小芝居をするようになって・・・
伝説の前三薔薇さまに少し近づいた気がした。
「いえっ。そのようなつもりで言ったのではなくて。祐巳さま申し訳ありません。」
乃梨子ちゃんが急に慌てだす。困ってる顔がテラかわいす。
そこで私はたたみかける。
「いいのよ。私は志摩子さんみたいに美しくないし、良いところもないもん。」
「そんなことないわよ、祐巳さん。乃梨子、私の一番の親友になんてひどいこと言うの?」
志摩子さんも女優だ。なかなか迫力がある。
乃梨子ちゃんは、志摩子さんにまで責められて、ほとんど泣きそう。
「ごめん、志摩子さん。本当にそういうつもりじゃなかったの。」
「私に謝ってどうするの。傷ついたのは祐巳さんよ。」
「祐巳さまほんとうにすみませんでした。私祐巳さまのこと大好きだし、祥子さまとも本当にお似合いの姉妹だと思っています。」
おっと、大好きなんて思いがけないプレゼント。
顔を真っ赤にして本当に可愛い。もうそろそろ許してあげよう。
冗談よ冗談、そう言いかけた時、扉が開いた。


「ごきげんようお姉さま。」
私の愛しの妹の登場だ。
「どうかなされたのですか?」
乃梨子ちゃんの泣きそうな顔を見て瞳子が聞いてきた。
すると意外なことに志摩子さんが事情を説明しだした。
(いやいや、瞳子を巻き込むの?志摩子さん。)
「乃梨子が祐巳さんに祥子さまはもったいないって・・・」
(えー志摩子さん乃梨子ちゃんそんなこと言ってないよ。噂が大きくなるパターン?)
「なんですって!乃梨子ふざけたこと言わないで。私のお姉さまはどこに出しても恥ずかしくない方ですわ。私の愛しのお姉さまを侮辱されたら、いくら親友でも許さないわよ。」
・・・瞳子私も愛してるわ。いやいや違う違う。
乃梨子ちゃんがもう限界だわ。本当に困ってる。
お姉さまだけでなく親友にまでこんな仕打ちを・・・
もうこのままにはしておけない。
ちょっともう止めてあげて、と言いかけた瞬間、再び扉が開いた。


「誰?私の祐巳を侮辱したのは?」
(来ちゃったよー、1番来ちゃダメな人が来ちゃったよー)
瞳子ちゃん余計なこと言わないでいいよ。
いや、最低言ったとしても正確に伝えなさい。尾ひれを付けるようなことしちゃダメよ。
「聞いてくださいよ、祥子さま。乃梨子さんが祐巳さまは祥子さまにはふさわしくない。もう姉妹解消すべきですなんて言うんですよ。」
(付いたー!!!!噂に尾ひれ付いたー、かなりおっきいの付いたー)
大丈夫、お姉さまはこんな話信じるわけないわよ。
お姉さまは冷静だし、なんてったって紅薔薇さまなんだから。
「なんですって。ふざけないで乃梨子ちゃん。本当に許さないわよ。」
(信じたー!!!!めちゃくちゃ信じてるよ。冷静さ失ってるよ・・・)
乃梨子ちゃんがとうとう泣いてしまった。
もう耐えられない。


「乃梨子ちゃんも志摩子にはふさわしくないわ。仏像好きで日本人形みたいな顔して、クリスチャンの志摩子には絶対合わないじゃない。プリンの上にマーボー豆腐乗せるようなものじゃない。」
(えー意味わからないのですがお姉さま・・・)
「そもそもあなたは、志摩子の妹になる時も、上級生の私に刃向かってきたわよね。何あなた?私は外部から来たから仕方ないとでも思ってるの。普通のsixteenぶってるの。読者目線のつもり!?ふざけないで!」
(お姉さま、あの時のこと根にもってたのですか・・・)
しかしこの一言がこの状況を一転させた。
「ちょっと祥子さま、それは言いすぎです。」
珍しく志摩子さんが怒った顔をしている。
まさか・・・
「私の乃梨子を侮辱なさらないでください。」
うわぁーやっぱり・・・
もうどうなっちゃうの



次回へ続く→『紅薔薇VS白薔薇』


【2868】 元気出していこうね  (沙耶 2009-03-06 10:04:05)


お先にどうぞ【No:2850】【No:2855】【No:2857】


何故あの少女の言葉に従ったのだろうか。

「祐巳さん」
考え込んでいると不意に言葉をかけられた。
一瞬思考が停止する。手が震えそうになり、ギュッと歯を食いしばった。
恐怖に押しつぶされそうになる心を必死でなだめ、平静を装って聞き返す。
「なに?」
周りにはいつの間にか数人のクラスメイト達が祐巳を囲むように立っていた。
「祐巳さんってどちらからいらしたの?」
「やっぱり外の学校って…」
お嬢様達といえど、編入生に対する関心は余所の学校と変わりはないようだった。
ただ、祐巳の方はそれ所ではない。
自分を囲む【人】【人】【人】。今すぐにここから逃げ出したかった。
助けを求めるようにせわしなく動かした視線の先、1人の少女と目が合った。
……そう、【目が合った】のだ。
幼い頃から、意図的に視線が合うのを逸らしてきた祐巳にとって、〜たとえ偶然にしろ〜とても珍しい事だった。
それに自分でも驚いた事に、その目を逸らせなかった。
安堵したのだ。心配そうにこちらを見つめている瞳に。
引き込まれていた。
少女がこちらに近づいてくる。
「皆さん祐巳さ…んが困っていらっしゃるわ」
「志摩子さん」
「それに、なんだか顔色が悪いみたい。私保健室に案内してくるわ」
「あら…本当だわ。」
「ごめんなさい、祐巳さん」
また震えそうになる手を握り、顔に笑顔を張り付け〜うまく笑えているかは別として〜応える
「少し気分が悪いだけだから大丈夫。こちらこそ、ごめんなさい」
「さあ、行きましょう祐巳さん」
「志摩子さんよろしくお願いしますね」
「ええ」


保健室に行く間、目の前の少女〜志摩子と呼ばれていた〜は口を開かなかった。
ただ、そっと肩に触れる手が微かに震えていた。

「失礼します」
「あら、藤堂さん。聞いたわよ高等部に上がって早々白薔薇の蕾の妹になったって?」
「先生、それより…」
「あら…そっちの子は福沢さんね。顔色が悪いわ」
「保科先生、祐巳さんをご存知なんですか?」
「ええ、ちょっとね。」
保科先生が祐巳の方に手を伸ばしてくる。
その手が怖くて思わず志摩子の背に隠れてしまった。
幼い頃、弟の背にそうしたように。
「………いいわ。そこのベットに横になっていて。藤堂さん悪いんだけれど少し席を外すから、福沢さんに着いていてあげてくれる?」
「解りました。」
「直ぐに戻るけれど何かあったら…そうね、学園長室に居るから、そこの内線で呼んでもらえる?」
「はい」

保科先生が出て行き、ベットに横になると少し気分が楽になった。
志摩子にお礼を言おうと顔を向けた祐巳は驚いた。
志摩子が泣いている。
「あ…え…藤堂さん?」
「志摩子です。私は…」
そう言うといきなり祐巳に抱きついてきた。
体がビクリとしたが、恐れからではなかった。驚いただけだ。
「…お会いしたかった。姫様、私を覚えていらっしゃいませんか?」
「姫…?なにを言って……。あなたに会った事は無いと思うんだけど…」
確かに祐巳にも不思議だった。
志摩子に触れられても少しも恐怖感は感じない。
だが、記憶を探ってもやっぱり目の前の少女に覚えがなかった。
「記憶がお戻りでは無いのですね?」
「何の事?」
「…これに見覚えはありませんか?」
志摩子がポケットから出した小さなポーチに入っていたのは不思議な紋様が刻まれたピアスだった。
「こ…れは……」
知っている。そう思った。
そう思った瞬間祐巳の体は震えだしていた。頭が痛い。(あぁ、また始まった…)
その思考を最後に祐巳の意識は落ちていった。



いきなり震えだした祐巳に驚き、志摩子は声をかけようとした。
その直後祐巳が頭を抱え暴れ出す。
「あ……ああ…」
苦しそうな祐巳に近づく事も出来ず、保科先生を呼ぼうと内線に駆け寄ろうとした瞬間、腕を掴まれた。
驚いて振り向くと、先程とは全く違った様子の祐巳がいた。
『シマ』
祐巳の口から【祐巳ではない誰か】が喋り出す。
だが、この呼び方は。私を【シマ】と呼ぶのはただ1人だけ。
「姫様…」
『思い出させてはだめ』
「どうしてです?やっと…やっとお会い出来たのに!」
『跳ね返ってしまう…』
「なにがです?」
祐巳は志摩子の問いには応えず、ただ微笑むだけだった。
『とにかく駄目よ。これは私が望んだ事だから…』
「ユミ様っ」
いきなり祐巳の体から力が抜けた。
気を失ったようだ。


しばらく呆然としていた志摩子だったが、内線で保科を呼び戻し、祐巳の側で祈るように目を閉じた。


【2869】 祐巳と  (クロス 2009-03-06 13:10:29)


由乃「【No:2866】の続きよ!ちゃんと見なさい!」

金糸雀(口の中が畜生道かしら)

由乃「んっ、金糸雀、どうしたの?そんな泣きそうな顔して」

金糸雀「な、なんでもないかしら」

由乃「・・・まあいいわ。玉子焼きまだまだあるから残さず食べるのよ」

金糸雀「よちゃっーーーーーーーーーーーーーーーーーん(泣き)」

『マリア様が見てる×ローゼンメイデン』(注:クロスオーバーです)

 小笠原家にて

祥子「ごめんなさいね。うにゅーという食べ物に心当たりはないわ」

乃利子「そうですか・・・変なことを聞いてすいません」

祥子「いいわ。後輩を導くのは先輩の役目だからもの、次も遠慮なく聞いて頂戴」

乃利子「は、はい。ありごとうございます、紅薔薇様。それでは失礼します」

がちゃ

祥子「うにゅー?・・・やっぱり聞いたこともないわね。乃利子ちゃんもたまに変な事言うのね」


 祥子の部屋

祥子「遅くなってごめんなさいね、真紅」

真紅「構わないのだわ。それより、ローゼンメイデンの事、わかってもらえたかしら?」

祥子「ええ、わかったわ。あなたはローゼンメイデン第5ドールで、究極の少女であるアリスになってお父様に会うのが目的、それで、この世界に来たのはアリスゲームに変わるアリスになる方法を探すためなのね」

真紅「その通りよ。さすがね」

祥子「アリスゲームなんて野蛮な事で究極の少女決めるなんて、なんかおかしいわね」

真紅「そこは突っ込まないのがお約束よ。それより祥子、紅茶のおかわりがほしいのだわ」

祥子「今すぐ使用人に持ってこさせるわね」

真紅「そう」


真紅「ところで、1つ聞きたい事があるのだわ」

祥子「何かしら」

真紅「紅茶は今まで飲んだものよりも最高級なものだし、座っているいすも実に良い座り心地なのだわ」

祥子「そうね」

真紅「でも・・・この壁や天井に隙間なく埋められた写真は何なのかしら」

祥子「まあ、決まってるじゃない。かわいい祐巳よ」

真紅「いやいや、そんなあなたがおかしいみたいな感じで言われても」
真紅「はっきり言って、これは新手の宗教?って感じなのだわ」

祥子「何言ってるのかしら。かわいい祐巳にかこまれるということは癒しの極みよ」

真紅「どう考えても異常なのだわ!」

祥子「ふんっ、人形ごときに祐巳の良さがわかってもらわなくても構わないわ!」
祥子「そうよ!祐巳の良さに気づくのは私だけで構わないのだわ!あのドリルが気づかれたばかりに私の祐巳が・・・うう」

真紅(・・・怒ったと思ったら、今度は泣き出したのだわ。なんかめんどくさい娘に当たったのだわ・・・)

真紅「よ、よくよく見るとこの祐巳という子、なかなかかわいいわね」

祥子「でしょう。私の自慢の子よ。祐巳ったらこの前なんか・・・」

真紅(あれっ地雷踏んだかしら・・・)


 30分後

祥子「その時、祐巳が私の事大好きって・・・」

真紅(まだ続くのかしら・・・)

 さらに30分後

祥子「でね、あのドリルが・・・」

真紅(使用人が入りづらそうなのだわ。・・・あっ帰ってしまったのだわ)

 そして1時間後

祥子「西園寺のおばあさまの誕生日会のときね・・・」

真紅(もう限界なのだわ・・・何か手を・・・ !っ)
真紅「そうだわ!」

祥子「(びくっ)何かしら、人の話はおとなしく聞きなさい!」

真紅「祥子!私も祐巳に会いたくなったのだわ」
真紅「今から会いに行かないかしら?」

祥子「百聞は一見にしかずね。いいわ、いきましょう」
祥子「それじゃあ、すぐに車を」

真紅「それには及ばないのだわ。この鏡から行くのだわ」

祥子「?」

真紅「まあ見てなさい」

祥子「! 真紅が鏡の中に!」

真紅「祥子、手を」

祥子「え、ええ」

ピカー


 祐巳の部屋

翠星石「・・・これでわかったですか」

祐巳「う、うん。(よくわからないや)とりあえず、翠星石ちゃんの指輪にキスをして、翠星石ちゃんのマスターとなればいいのね」

翠星石「そうです!わかったら早くキスするです」

祐巳「うん」


ん〜 がしっ

祐巳「と、瞳子!?」

翠星石「まあたドリルが邪魔するですか!!」

瞳子「・・・翠星石さんがキスを欲しがる理由はわかりました」
瞳子「お姉さまがキスするとお決めになったのだったら、瞳子には止める権利はありませんわ」

翠星石「だったら、何で止めるのですか!!」

瞳子「それは!!!お姉さまのファーストキスは瞳子のものだからですわ!!!」

祐巳「と、瞳子・・・キスっていっても指輪になんだし・・・」

瞳子「いいえ、許しませんわ!瞳子よりも先にキスをもらうことは万死に値しますわ!」
瞳子「まあセカンドキスでしたら、翠星石さんに譲ってもかまわなくてよ」

翠星石「何寝ぼけたこといってるのですか!」

瞳子「さあ、お姉さま、瞳子のく、唇にキスを!」

翠星石「聞けです!!」

祐巳「えっ!えっ!!」


ん〜 がしっ

瞳子「誰ですの!!!」

祥子「瞳子ちゃ〜ん、そうは問屋が卸さないわよ」

祐巳 瞳子 「「(祥子)お姉さま!!!」」

真紅「いきなり、飛び出さないで欲しいのだわ」

翠星石「真紅!」


祥子「私の見間違いならいいのだけれど、今私の祐巳にキスをしようとしなかったかしら」

瞳子「祥子お姉さま、それは見間違いですわ。瞳子はお姉さまの目にごみが入ったので、取ろうとしただけですわ」


翠星石「真紅、おめえも来てたですか」

真紅「ええ、久しぶりね。翠星石」

翠星石「そうですね」


祥子「そうよね。私の祐巳のキスは誰にもわたさないわ。たとえ妹でもね」

瞳子(ムカッ)

祥子「だから、もう紛らわしいことをしないで頂戴」

祥子「というか、必要以上に祐巳に近づいたらダメよ!」

瞳子(ぶちっ)
瞳子「なんで・・・何で瞳子が祥子お姉さまの言う事を聞かないといけないんですか!!!」

瞳子「それにお姉さまのファーストキスは瞳子のものですわ!!」

祥子「な、なんですって!!!」


翠星石「真紅・・・おめえのマスターの怖いですね」

真紅「・・・そうね・・・」


瞳子「お姉さまもなんとか言ってくださいまし!!お姉さまのキスは瞳子のものだと!!」

祥子「何を言ってるの!祐巳!!あなたのキスはわたしのものですわよね」

祐巳「やっぱり私に振られるんですか・・・」

祥子 瞳子「「当然!!!(あなたの)(お姉さまの)口から、この分からず屋に(いいなさい)(言ってくださいまし)!!!(祐巳の)(お姉さまの)キスはこの(小笠原祥子の)(松平瞳子の)ものだと!!!」」

祐巳「う〜」
祐巳(てか、わたしのファーストキスはもうすんだのに・・・)

祥子 瞳子「さあ!!!」

祐巳「そうだ!わたし、瞳子たちが来たのにお茶を出さないなんてすいません」

祥子「祐巳!そんなことはどうでもいいわ」

瞳子「そうですわ、お姉さま」

祐巳「そ、そんなわけにはいけません!今すぐに行ってきます!!」

祥子 瞳子「ちょっt」


がちゃっ だだだだだ・・・

祥子 瞳子「・・・・・」


翠星石「やっと静かになったです」

真紅「そうね」

翠星石「まったくたぬき人間と契りを結ぶのにこんなにたいへんなんですか!」

真紅「たぬき人間?ああ、祐巳のことね。確かにどことなくたぬきに似てるわね」

翠星石「真紅、たぬき人間の事知ってるですか」

真紅「ええ、祥子に家でもnのフィールド中でも嫌というほど聞かされたのだわ」
真紅「確かにどことなくかわいいわね」

翠星石「真紅、言っておきますが、たぬき人間は翠星石のマスターですよ」
翠星石「だから、取っちゃダメですよ」

真紅「あらっ、あなたまだ祐巳のマスターではないのだわ」

翠星石「真紅っ!!!」

真紅「冗談よ。あの娘のマスターになったら色々大変だろうから」

翠星石「なら、いいですよ」


 台所

祐巳「うう、なんか大変な事になちゃったよ〜」
祐巳「何で瞳子とお姉さまはあんなに仲が悪くなちゃったんだろう」
祐巳「どっちも大好きなのに・・・」


祐巳「えっと、紅茶は4つでいいかな」
祐巳「ちょっと怖いけど、やっぱり行かないとダメだよね」

だだだだだ・・・


後半に続く


【2870】 (記事削除)  (削除済 2009-03-08 05:08:53)


※この記事は削除されました。


【2871】 一人じゃない  (笑いの神に 2009-03-08 17:12:42)


【No:2867】⇒【本作】⇒【No:2872】⇒【No:2877】⇒【No:2879】



『紅薔薇VS白薔薇』



予想もしない展開になってしまった。乃梨子ちゃんを転がすつもりが、お姉さまと志摩子さんのバトルに発展。ありえないよ。

「志摩子、そもそも祐巳を侮辱したのは乃梨子ちゃんでしょ。乃梨子ちゃんは何を言われても仕方ないわ。」
「フッ・・・祥子さま、お言葉ですが、乃梨子は言葉を滑らせはしましたが、そこまで言われるようなことはしていませんわ。」
「志摩子、フッって何?鼻で笑ったわよね。今鼻で笑ったわよね。あなた、わたくしを馬鹿にするの?」
「いえ、そんなつもりは・・・」
「前々から思っていたのだけれど、あなたわたくしの事を振ったって言ってるらしいわね。えっ何?男子中学生が『いや、俺が振ったから!振られたわけじゃないから』的な、『いや、告ったんじゃなくて、告られたから』的なあれ?」
「いえ、そんなつもり全くないです。」
「あれは容子さまに言われただけで、わたくしが妹にしたいと思ったのは、後にも先にも祐巳ただ一人よ。勘違いしないで。イライラするわ。」
止めなきゃって思うのだけど、なぜか嬉しくて動けない。
志摩子さんの冷静さにかけるしかない。
あの伝家の宝刀、“○○さんのそういうところ好き”を出して。お願い志摩子さん。
でも、志摩子さんの次の言葉は、耳を疑うような・・・
「ああ、怖い怖い祥子のヒステリー」
しーーーーーーまーーーーーーーーーこーーーーーーさーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
何を言ってるの?それは、『いとしき歳月』で容子さまの“遺言”を聞いて、遅れてきた私をお姉さまがお咎めなさったときに、令さまがおっしゃった伝説のセリフじゃない。


空気が凍った。確かに、乃梨子ちゃんが部屋の換気のためと言って、窓を開けているから寒いのは当然なんだけど、これは全く桁違い。
その時、聞いたこともないような音がした・・・
「ビリビリビリ!」
音のするほうを見ると、祥子さまがハンカチを破っていた。
鬼のような眼をするお姉さま。これはダメ!!
「お姉さま、落ち着いてください。今のは絶対何かの間違いです。」
「何ですって!?間違い?祐巳、あなた姉のわたしではなく、志摩子の味方をするの?」
お姉さまは激昂する。
「いえ、そんなつもりでは・・・ごめんなさい。」
火に油を注ぐ形になってしまった。
「志摩子さんも志摩子さんよ。なぜ急に令さまの真似なんてしたの?今日の志摩子さん何かおかしいよ。」
「あら、祐巳さん、今度は私を責めるの?祥子さまの方が私よりも大切なの?」
志摩子さんまで・・・もうわからないよ。。。
私はパニックに陥って・・・


「お姉さまも、志摩子さんも誤解しないで。私にとっては二人とも同じくらい大切よ。私のお姉さまは祥子さま以外考えられないし、もうお姉さまなしでは生きていけない。それくらい大切なんです。言葉では言い表せないくらいに。
それに志摩子さん、私は志摩子さんが1番の親友だと思っている。志摩子さんと由乃さんがいるから、薔薇の館にでの時間も、修学旅行もただの休み時間さえ至福の時のように思えるの。大好きだよ、志摩子さん。」
私はマシンガンのように、自分の気持ちをさらけだした。顔が真っ赤になっているのが自分でわかる。
「そ、それで祐巳は結局どちらが好きな・・・」
祥子さんの言葉が終わる前に、志摩子さんが少し興奮しているような様子で、
「信じられないわ。祐巳さんったら由乃さんとばかり仲良くしてるじゃない?確かにクラスが違うこともあるし、私には乃梨子がいるわ。でも、祐巳さんと由乃さんは、修学旅行の時、空港まで一緒に来て、部屋も一緒だった。その他にもいろいろ・・・私だって、私だってもっと祐巳さんと。。。あっ!」
志摩子さんは急にしまったという顔をして、頬を赤く染めている。
なぜか、お姉さま、瞳子、乃梨子ちゃんもハッとした顔。
「そ、それで、結局、祐巳さんはどちらを選ぶの?」
志摩子さんが、気を取り直した様子で、問い詰めてくる。今のはなんだったのだろう?
そんなことより、どうして、こんなことになってしまったの?最初は乃梨子ちゃんを困らせちゃおうぐらいのことだったのに・・・もうダメ。私はお姉さまも志摩子さんも好き。形は違うかもしれないけど、同じくらい大好きなのに。もう泣いちゃいそう・・・
その時、ビスケット扉が開いた。




「はい!カットー!!」
令さまがプラカードのようなものを持って、部屋に入ってきた。
その後ろには、由乃さんと、由乃さんの妹候補No.1の菜々ちゃんがニヤニヤした顔をして立っている。
えっ!?どういうこと?頭の中が真っ白になる。
「祐巳ちゃんごめんね。私は反対したんだけど・・・」
令さまが申し訳なさそうにウインクをしながら、プラカードを引っくり返す。そこには・・・

“菜々プレゼンツ ドッキリシリーズ第一弾 紅薔薇のつぼみを困らせて可愛い顔をみせてもらおう 大成功”

最後の方は文字が小さくなっていって、少し読みにくいが、なんとか読めた。
ドッキリ??それってテレビとかでやっている、あれ?
どういうこと?これは芝居だったってこと?
「何がなんだかわからないって顔をしてるわね?祐巳さんってば。」
由乃さんが楽しそうに聞いてくる。私ったらまた百面相を・・・
「これは正真正銘のドッキリ。全部ウソよ。」
周りを見ると、祥子さまはお腹を押さえて必死に笑いをこらえている。
志摩子さんも申し訳なさそうではあるが、目が笑っている。
瞳子は心配そうな顔をしながらも、少し怒っているように見える。私が二人を好きって言ったからかな。
乃梨子ちゃんは声を出して笑っている。
「えええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!?????」
私はようやく事態が飲み込めて、少しムカっとしたが、それ以上にホッとしたような、なにか奇妙な気持ちになった。
そこで令さまが事情を説明してくれた。


令さまの話によれば、
由乃さんは、菜々ちゃんの姉になるためにポイントを稼ごうと、菜々ちゃんを家に呼び出して何がしたいか、聞いていた。そこでいろいろ話し合った結果、菜々ちゃんがテレビで見たドッキリをしたいという話になり、由乃さんが私なら絶対に引っかかると薦めたということらしい。
そして、菜々ちゃんが企画立案、脚本は菜々ちゃんが基本的に練りつつ、薔薇の館のメンバーの性格を知っている由乃さんがセリフに修正を入れる。令さまは監督に落ち着いた。
「そうそう、演技指導はもちろん瞳子ちゃんにしてもらったんだよ。」
令さまが最後にそう付け加えた。
すると菜々ちゃんが、楽しそうな、申し訳なさそうな、複雑な表情をして、
「紅薔薇のつぼみ、本当にすみませんでした。年下で、数回しかお会いしたこともないし、しかもまだ高等部に入学してもいない私が、こんなことをするなんて失礼すぎるとは思ったんですけど。」
すると由乃さんが、いきり立って話に入ってきた。
「いいえ、菜々は悪くないわ。菜々は絶対にそれはダメだって言ったの。でも私もおもしろいと思って強引にやろうって言ったの。だから祐巳さん、菜々のこと嫌いにならないで!!私ただ・・・菜々と何かを一緒にしたくて・・・怒っている?祐巳さん。」
菜々ちゃんは隣で少し照れたような顔をしてうつむいている。この子すごくしっかりしているように見えたけど、こういうかわいい部分もあるんだ。由乃さんはそんな菜々ちゃんの顔を見て、声がだんだん小さくなっていく。菜々ちゃんのこと好きなんだね。由乃さん。
私も瞳子がいるから。私には瞳子がいるから。よくわかるよ、その気持ち。
「怒ってないよ。始め聞かされた時は、少しムカっとしたけど、なんかそういう気持ちもなくなっちゃった。それに、今考えると、お姉さまと志摩子さんに取り合いされてるみたいで幸せだったかも。エヘッ!」
最後は、自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
「祐巳さんならそう言ってくれると思ったわ!」
(立ち直り早っ!?)
由乃さんは安心して、いつもの由乃さんに戻っている。


よく考えたら、今日はおかしかった。
志摩子さんが乃梨子ちゃんを困らせようと誘ってきたり、令さまの真似をしたり、
祥子さまが、妙に過去の話とかを持ち出したり、
瞳子の尾ひれ、
乃梨子ちゃんは、いつも強気に発言するのに、今回は何を言われても、全然言い返さなかった。


「でも本当にうまくいったね。瞳子ちゃんはさすがだし、乃梨子ちゃんは迫真の演技だった。祥子は祐巳ちゃんに、大切って言われたところで、ちょっと噛んじゃったけど、十分合格点。だけど・・・一人だけセリフを間違えたっていうか、付け足した人がいたんだよね。」
令さまが笑いながら、おっしゃった。
私以外のみんなはニヤニヤしながら、一斉に志摩子さんを見る。すると由乃さんが台本を取り出して、私に見せてくれた。
「最後のこの部分、そうそうここよ、祥子さまが、結局どちらが好きかって聞いて、次の志摩子さんのセリフ。」
そこには、
“結局、祐巳さんはどちらを選ぶの?”と書いてある。というかそれしか書いてない。
「じゃあ志摩子さんの、私と由乃さんがどうこうっていうのは?」
「さぁ?それは本人に聞いてみないとわからないわ。私は嫉妬してる女の子のように見えたけど。」
由乃さんはニヤニヤしながらそう言った。
「私にもわからないなー。あれはとっさに本音が出ちゃったって感じだったような気がするけど。」
令さまも笑っている。
「わたくしにも・・・わからないわ。志摩子どうなの?あれは何?」
最後に、祥子さまが楽しそうにダメ押し!!


志摩子さんは頬をピンクに染めて、顔をうつむかせる。
しばらくの沈黙の後、聞き取れないほどの小さな声で志摩子さんが、
「・・・・・・・・・だって、祐巳さんがあんなこと言うから・・・」
鈍い鈍い私にも、みんなのヒントと今のセリフでわかった。
私は、目の前にいる子ウサギのような志摩子さんが、すごくすごく愛おしく感じて、
「志摩子さん、私たちはずっと親友だよ。大好き!!」
そう言いながら志摩子さんを抱きしめた。


すると、少しの沈黙の後、志摩子さんはうつむいたまま、ギュッと私を抱きしめ返してくれた。




次回→『舞台裏』

目の肥えている皆様からしたら、とんだ駄文だと思いますが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。脈絡がない、こうした方がいいというところは多々あると思いますが、適当に書いてるSSなので、そこらへんは目をつぶって下さい。
初めてのSSってことで、好きな主要キャラは全部出したいと思っています。
次は、ドッキリの稽古のシーンです。


【2872】 かわいいっ  (笑いの神に 2009-03-08 23:04:35)


【No:2867】⇒【No:2871】⇒【本作】⇒【No:2877】⇒【No:2879】


『舞台裏』



「やっぱり祐巳ちゃんがかわいそうだよ。」
令ちゃんは、今さらなんてことを言うんだろう。
「私もそう思います。私はやってみたいとは言いましたけど、それは空を飛びたいなーぐらいのテンションで言っただけで、現実にやろうなんて・・・しかも紅薔薇のつぼみに。」
菜々までこんなことを。
土曜の午後、昼までの授業を終え、三人で薔薇の館に集まっていた。祥子さまと令さまは、卒業や大学への入学準備で忙しいから、今日は、最初で最後の稽古の日。私たち三人は今回のドッキリの主催だから、みんなより早めに来て最後の詰めをしていた。


「菜々、らしくないわね。えらく消極的じゃない?」
「何言ってるのよ、由乃。菜々ちゃんは、礼儀とか常識とかを知っているしっかりしてる子だから、遠慮してるんだよ。」
「何よ、令ちゃん!私は常識知らずってこと!?」
よくわからないけど、イラッとした。令ちゃんと菜々は、年明けの剣道の互角稽古以来、特に言葉を交わしてもいないのに、どこかでわかりあっているような空気がある。
「そ、そんなことないよ。ゴメン、誤解を与える言い方だったかも。」
もう令ちゃんったら、また落ち込む。
「令さま、なんで謝るんですか?今のは、明らかに由乃さまの言いがかりに聞こえましたけど。」
「菜々、何?その口のきき方は?」
「私は、おかしいことをおかしいと言ったまでです。」
何?この言い合い・・・なぜか懐かしい気持ちが・・・
「これからは、そんな態度許さないわ!!」
私は机をたたきながら立ち上がる。


「由乃、許さないって、由乃に何の権利があるの?菜々ちゃんは妹でもないのに・・・」
令ちゃんったらKYなんだから、なんて爆弾発言するのよ!?
「そ、それは、まだ違うけど!・・・・・あっ!」
やってしまった。“まだ”なんて言ったら、将来は妹にするつもりって言ってるようなものじゃないか。
正面の菜々はというと、さっきの勢いはどこへやら、
ほんのりと顔を赤くして斜め下を見ている。なんて可愛いんだろう。普段は無表情で、あまり抑揚のない話し方をするから、感情を読み取るのが難しいから、こういうのは嬉しいな。
やっぱり、私はこの子じゃないと嫌!


「まぁ、それはともかく、稽古は今日なのよ。二人が消極的だったら、みんなはついてこないよ。」
そもそもこのドッキリには、来年私の妹になる(予定の)菜々が1年にして黄薔薇のつぼみになることを考えて、なるべく早く薔薇の館に慣れてもらおうという裏の目的がある。
「それもそうだね。もうみんなにもセリフを覚えてもらっているし、わたしたちがこれじゃあ駄目だよね。」
YESマン令が言った。(いやいや、なんでそこでナレーション口調なの私!!)
そもそもマンはMAN=男じゃない。いくら“ミスター”リリアンでもかわいそう。
「確かに、今さらやめるって言う方が迷惑かもしれませんね。それに・・・」
菜々は何か急に思い出したような顔をする。
「それに・・・何?」
私はすぐさま聞き返す。
「紅薔薇のつぼみって“アドベンチャー”なんですよね?由乃さま。」
そうか。菜々はアドベンチャーが好きだった。菜々はこういうときはワクワクしたような表情になる。
「そうよ、菜々!日本語的にはおかしいかもしれないけど、祐巳さんは存在自体がアドベンチャーよ!!」
「はいっ!由乃さま!」
菜々のテンションが上がっていくのがわかる。“はいっ!由乃さま!”って今の返しとしてはおかしくないか?!“そうなのですか?”とか“本当ですか?”とかあっただろうに・・・まぁ、そんなことはどうでもいいわ。これでモチベーションもバッチリ!さぁ、稽古の時間よ。





薔薇の館には、祥子さまをはじめ、瞳子ちゃん、志摩子さん、乃梨子ちゃん、私たち黄薔薇3人(菜々はまだ黄薔薇じゃないけど)の祐巳さん以外の薔薇の館のメンバー(菜々はまだ薔薇の館のメンバーじゃないけど)がいる。っていうか、菜々はまだ妹じゃないけど、みたいなのがめんどうだわ。もう以後は省略することにしよ。みんなはわかってると思うし、各々が補完してくれると思うから。あれっ!?私何言ってるんだろ?


それに、どこから聞きつけたのか、新聞部の真美さんと、その妹の日出実ちゃん、写真部の蔦子さんとその妹の・・・いやいや妹じゃない笙子ちゃんが来ている。(早く妹にしてやれよ!)
「ちょっと真美さん、蔦子さんなんで今日の集まりのこと知ってるのよ?」
「何を言ってるのよ、由乃さん。由乃さんが先日私たちに言いに来たんじゃない?!」
蔦子さんが苦笑いをしながら、そう言った。
確かに言ったかも・・・
すると、真美さんが、私のモノマネをするように、
「“聞いてよ!!聞いて!!真美さん、蔦子さん。あのね、あのね、今度菜々とドッキリをすることになったの!ターゲットは祐巳さんよ。祐巳さん以外の薔薇の館のメンバー全員が仕掛け人なのよ。わ、私は、別にそういうことしたいとかはなかったんけど、菜々がどうしてもっていうから、仕方なくね。へへっ!」
ヤバい、思い出した。菜々と最初の計画を練った次の日、嬉しくて話してしまったのだ。突発的な行動だったから、完全に忘れていたわ。
顔を上げられない。薔薇の館のメンバーは全員、私が押し切ったことを知っている。
それに真美さんと蔦子さんは、1年からの友達だ。学校の中でも祐巳さんと志摩子さんの次に仲の良い友達、どう考えても私が嘘をついていることをわかっている。


「真美さま、蔦子さま、本当に申し訳ありません。由乃さまに私が無理を言ってしまって、こんなわがまま普通は許されないと思います。本当にわざわざご足労いただいてありがとうございます。」
菜々・・・
菜々は、真美さんと蔦子さんが本当に事情を知らないと思っている。それで、必死に私を立ててくれようしている。
「そうだったの?私たちはてっきり・・・」
真美さんが私をニヤニヤ見ながら話してる。
「まぁ、でも菜々ちゃんが、そう言うんなら、そうなんだろうね。」
蔦子さんも、ニヤニヤしながら私を見て、そう言った。


「とりあえず台本は読んだわ。記事を書く上で、現場にいたいとは思っていたんだけど、ここは隠れるようなところがないし、段ボールに入って見るっていう手もあるけど、リスクが大きいでしょ。だから、仕掛け人とターゲットのドッキリ後の感想を書くことにしたの。一応、趣旨とか概要とか書くけどね。ドッキリシリーズって言ってたから、毎月スペースを空けておくから、連載っていう形でどう?新聞のコラムみたいに。もちろん、チェックはいれてもらってけっこうよ。」
真美さんは、さっきのニヤニヤ顔から、急に新聞部部長の顔になって、一気に考えをまくしたてた。リリアンかわら版には載せる前提で話が進んでる。真美さんは、あの三奈子さまの妹、止められないわ。


「私たちも段ボールに穴を開けて、そこから写真を撮ろうと思ったのだけど、真美さんと同じ理由であきらめたわ。いろいろ考えた結果、乃梨子ちゃんに空気の入れ替えっていう名目で、窓を開けてもらって、校舎の二階ぐらいから撮ろうと思うの。」
次は蔦子さんか。でも祐巳さんがドッキリってわかった時の顔は、撮る価値ありね。
「でも、そんな遠くから撮れるの?」
私は単純な質問をぶつけた。
「あら、由乃さんったら。私を誰だと思って?」
あ〜そうだった、写真部のエース武嶋蔦子さんね。
私がそう言おうとした、次の瞬間、

「写真部のエース武嶋蔦子さまです!!」

「笙子ちゃん、あなたに聞いたのではないのよ。」
蔦子さんが苦笑しながら言った。
「すみません、つい・・・」
笙子ちゃんは顔を真っ赤にして、一歩二歩と下がる。
可愛いなぁー笙子ちゃんは。フランス人形のようないでたちは、志摩子さんに似ている。その彼女がメガネっ子蔦子に夢中だなんて、ちょっと信じられない。まぁ、蔦子さんは素敵だからね。惚れてしまうのも無理はないか。
でも外見だけでいえば、志摩子さんと笙子ちゃん、蔦子さんと乃梨子ちゃんの方がお似合いだと思うなぁ。


あれ?何だろう?誰かに見られてる気がする・・・
サッと振り返ると、乃梨子ちゃんが私を睨んでる。えっ!?私声出してないよね。うん!絶対出してない。言葉に出したらヤバいと思って、注意してたし。
まさか・・・乃梨子ちゃん、志摩子さんのことになったら人の心も読めるようになったの?いや、でも乃梨子ちゃんならありえる。どうしよう。呪われちゃうよ。五寸釘と藁人形だよ。どうしよう。謝った方がいいかな。怖い・・・怖いよ・・・


「乃梨子、どうしたの?目を細めて。」
「いや、ゴミが目に入って・・・ちょっと痛くて」
(取り越し苦労かい!!)
“ペチン!”
「由乃さま、なぜ私の肩をお叩きなったのですか?」
嘘?!私、無意識に菜々にツッコミ入れていたんだ。
「いや、ごめん叩いたっていうか、当たっちゃたの。ごめんね。」
「フフッ。変な由乃さま。」





新聞部と写真部が帰って、お稽古が始まった。
菜々は、やると決めたら、徹底してやる子だ。
形式的には令ちゃんが監督だけど、実質的には菜々が監督のようなものだ。
いくらなんでも、菜々が指示を出すのはやりすぎだと思って、一応監督は令ちゃんにした。
しばらくは、菜々が令ちゃんに伝えて、令さまが全員にという形だったのだけれど・・・
「由乃ちゃん、この方法はイライラするのだけれど。煩わしいわ。」
KING OF 薔薇の館 紅薔薇さまの祥子さまが鋭く言い放った。
「菜々ちゃん、私たちに遠慮は要らないわ。やるのなら徹底的にやりなさい。」
「はい!紅薔薇さま。」


「白薔薇さま、少しわざとらしいですわ。もっと自然に演技してください。いつもお姉さまや由乃さまと話している時のように。」
瞳子ちゃんは厳しい。
「自然ね。自然。やっぱり学園祭の時ぐらいしか、芝居なんてしないからすごく難しいわ。」
志摩子さんは真面目にやっている。
「ダメです。白薔薇さま。そこは紅薔薇さまを鼻で笑うところなんです。」
菜々ちゃんは瞳子ちゃん並に厳しい。
「でも菜々ちゃん、私は人を鼻で笑うなんてできないわ・・・しかも祥子さま相手に・・・」
「えっ!?でも、由乃さまが白薔薇さまには、絶対そういう黒い部分があるから、大丈夫って。不自然じゃないって・・・・あっ!まさか私言っちゃいけないことを・・・」
菜々のバカ!なんて馬鹿正直なのよ!
菜々の方をギラッと睨むと、なんと菜々は笑っている。
声は出してないが笑っている。まさかわざと・・・
「一回休憩にしましょ。由乃さん、ちょっといらして。」
志摩子さんが満面の笑みで、ビスケット扉を出ていく。
私は、それについていくことしかできなかった。


白薔薇さまと帰ってきた由乃さまは、まだ冬なのにもかかわらず、なぜか汗だくになっている。顔色も少し悪くなったようだ。白薔薇さまの方はというと、出て行った時と同じ天使のような笑顔だ。触れぬが神か。

やっと白薔薇さまの演技指導が一通り終わり、現在、白薔薇様さまは、黄薔薇さまと「おお、怖い怖い祥子のヒステリー」のマンツーマンレッスン中。


次は、白薔薇のつぼみ。
「白薔薇のつぼみは、泣くっていうのが一番大変だと思います。瞳子さまはどうしたらいいと思いますか?」
瞳子さまの方を見ると、窓の外を見ている。
私の話を聞いていなかった。白薔薇さまのつぼみもよくわからないという顔をしている。
瞳子さまが黙り始めて、7秒も経っていないその時、瞳子さまの綺麗な肌の上を一滴の滴が流れ落ちた。
「ウソっ!?」
白薔薇のつぼみが思わず声を上げた。瞳子さますごい。
なぜか今日は機嫌が悪いようだけど、さすがです。
それを見て白薔薇のつぼみは、壁際で必死に涙を出そうとしている。


「菜々ちゃん、乃梨子を泣かせるのは簡単ですわ。」
そういうと瞳子さまは、白薔薇さまを呼びに行った。
何か話しているようだけど、白薔薇さまが頑なに拒否しているようだ。
おっと、瞳子さまが紅薔薇さまを連れてきた。
白薔薇さまはしぶしぶうけいれてくれたようだ。先輩の命令は絶対、か・・・
「の、乃梨子、わ、私、か、下級生にあなたよりも妹になってほしい人ができたの。だ、だ、だからもうあなたとは・・・・」
白薔薇さまはかみまくりながらも、頑張って言っていたが、急に止まった。
なぜかって?
白薔薇のつぼみの瞳に涙が溢れて、決壊寸前だったから。
「もう無理だわ!!」
白薔薇さまは自分の妹の肩を抱いて、床に座り込んだ。


これで白はOKと。白薔薇のつぼみは、今のを思い出したら必ず泣ける。
次は、紅薔薇さまね。威圧感がありすぎるわ。意見しにくい。
「祥子さまのセリフは、いつもの祥子さまとは少しかけ離れている印象なので、相当の演技力、勢いが必要だと思います。」
瞳子さまの一通りの演技指導が終わり、
「じゃあ、最後のハンカチを破るっていうのが、最難関ですね。これはどうしましょう?切り目をいれておきましょうか。」
菜々は何げなく言ったつもりだったのだが・・・
薔薇の館のメンバーは全員こっちを向いて笑っている。
そして、一斉に声を合わせていった。


「「「「「「それは、デフォルトで良くってよ!!!!!!」」」」」」
“ビリビリビリ”


最後は、瞳子さま。正直何も言うところはない。
セリフさえ教えておけば完ぺきにやってくれる。
でも、どことなく不機嫌な様子に、少し疑問を感じていた。
これはやっぱり、瞳子さまの親友に聞くべきかな。


「白薔薇のつぼみ、瞳子さまのことなんですけど・・・」
私は、率直に質問をぶつけてみた。
「あぁ、今回のターゲットは瞳子のお姉さまでしょ?心配なのよ。瞳子は祐巳さまにゾッコンだからぁ。」
白薔薇のつぼみは、最後の1フレーズを瞳子さまに聞こえるように、わざと大きい声で仰った。
そのせいで、みんながこの二人に注目する。
「乃梨子、何か言ったかしら?お姉さまがどうとか。」
「別に!祐巳さまがドッキリのターゲットになっていて、瞳子が心配して機嫌が悪いって話をしていただけよ。」
「な、何をおっしゃっているのか意味がわからないんですけど。私はむしろ、お姉さまは子供っぽいところがおありになるので、もっと成長していただきたいから、こういう経験も、た、大切だと思っていますわ。べ、べ、べ、別に心配なんてしていません。」


わかりやすい・・・
それを聞いて、由乃さまが話に入ってきた。
「菜々、私思ったんだけど、やっぱりこの脚本甘すぎない?もっと厳しく、辛辣に祐巳さんにあたるべきじゃない?」
そう言って由乃さまは、私にウインクする。
ドキッ!(>_<)なんで私ドキドキしてるの?
それより、これは由乃さまからのサインに違いない!!
「私もそう思っていたところです。これでは困った顔が見れませんよね。私からは言い出しにくくて・・・」
「確かに、そうかもしれませんね。祐巳さまにはかわいそうですけど、中途半端はダメですよね!」
白薔薇のつぼみも、流れを汲んでくれた。


来る!
「ちょっと待ってください!!これはたかがゲームなんですよね。なぜそこまで厳しくする必要があるんですか!?」
キター!!!


瞳子さまが興奮して、まくし立てた。
「逆だよ、瞳子ちゃん。ゲームだからこそ厳しく、辛辣にいくのよ。現実では絶対できないわ!」
「由乃さま、お言葉ですがお姉さまは、あの通り、超がつくほど素直で繊細な方なんですよ。それは由乃さまも十分ご存知のはずですわ。ゲームなんてわからずに本当に傷つくことになります。」
瞳子さまの目は真剣だ。素直で繊細は瞳子さまのような気がするけど。
「瞳子は祐巳さまが傷つくのが心配なんだ?なんで?」
「な、なぜって、そ、そ、それはお姉さまだからです。」
「ふーん、心配なのは認めるんだ。さっき心配してないって言ってたのに。」
「そ、そ、それは・・・・・」
ダメだ。年下の私が言うのもおかしいけど、瞳子さまは可愛すぎる。
頬が真っ赤に染まっている。
私たち3人はお稽古そっちのけで、全力で楽しんでいる。
3人ともニヤニヤがとまらない。
薔薇さま方は、マリア様のような温かいまなざしで私たちを見ている。


「じゃあ瞳子、教えてよ。なぜお姉さまだから、心配なの?もっと具体的に教えてくれない?」
「私も将来のために聞かせていただきたいです。」
私は白薔薇のつぼみの追い込みに、乗っかった。
「だから、それわぁぁ・・・・・」
瞳子さんはグズグズして、なかなか言わない。
その時、ずっと黙っていた紅薔薇さまが立ちあがった。
「私は祐巳を信頼しているから、大丈夫だと信じているわ。でもね、実は私も少しは心配もしているの。なぜ心配するのか?それは祐巳が私の妹だから。それをもっと、具体的に言えばいいのね?瞳子ちゃんが言わないなら私が言うわ。私は恥ずかしがらずに、堂々と言えるわ!どこでも、誰にでも、いつでもね!!」
由乃さまに聞いたことがある。縦に姉妹が3人揃うと、スールによっては、真ん中(2年)の取り合いになることがあるって。取り合いとまでいかなくても、ライバルだって。
だから今の状況は、紅薔薇さまがけしかけてる形。
これで瞳子さまが先に言っても、紅薔薇さまが負けってことにはならないんだろうけど、後から会話に入ってきた祥子さまが先に言うことになったら、瞳子さまの負けってことになるんだろう。
瞳子さんの表情が何か焦っているように見えるもの。


しばらく沈黙が続いて、紅薔薇さまがくちを開いた。
「瞳子ちゃんが言わないなら、私が言うわ。なぜ心配か、具体的に言うわ。それは、私が祐巳のことを・・・」





「わっ、私がお姉さまのことが大好きだからです!!!!!!!!!!」
瞳子さまは、紅薔薇さまの声をかき消すくらいの大きな声で、顔を真っ赤にして、叫んでいた。


乃梨子さまは、すごく楽しそうに、嬉しそうに声をあげて笑っている。
由乃さまは、ニヤニヤしっぱなし。
令さまは、笑いを必死にこらえている。
祥子さまは、世話がやけるというふうに、呆れて笑っている。
志摩子さまは、天使のような優しい微笑みを浮かべている。

こうして、最初で最後の稽古は、全員が全員幸せな気持ちで終わっていった。


菜々が帰ったあと、私たちは戸締りをして帰る準備をしていた。
そのとき、志摩子さんが急に大きい声を出した。
「菜々ちゃんって中等部だったわ。」
「志摩子さん、何を今さら言っているの?」
「でも、今日ね、私まったくそんなこと気にならなかったの。本当に自然にご一緒できたわ。」
さすが親友!嬉しいことを言ってくれるぜ。
「私も思いました。菜々ちゃんが由乃さまの妹になってくれたら、一緒につぼみとして仲良くできそうです。瞳子をからかう会、な〜んてね。」
「乃梨子、なんてこと言うの?私は反対です。私からかわれたくありません。」
「あらっ?!菜々は瞳子ちゃんのこと好きだって言ってたわよ。可愛くて、素直で、繊細で、それでいてしっかりしているって、尊敬しているらしいわ。」
「べ、別に、絶対に反対というわけではありませんけど・・・」
よし!これでOK!現役世代は皆認めてくれたね。菜々はこれでいつでも来れる。
「でもね、由乃ちゃん、あの稽古の時の菜々ちゃんの目、見た?」
祥子さまがそういうと、志摩子さんと令ちゃんもうなづいた。

祥子さま:「あれは隔世遺伝だわ」
令ちゃん:「隔世遺伝だね」
志摩子さん:「隔世遺伝ですね」

志摩子さんが続ける。
「二代飛ばしての隔世遺伝ですね。あの目はおもしろいものを見つけた、おもしろいことをやっている時の江利子さまそっくりだったわ。容姿だけでなく、性格も似ているなんて。由乃さん、江利子さまと何かあったら衝突していたのに、やっぱり江利子さまのこと好きだったのね。ふふっ。」


私は菜々が好きだ。菜々は江利子さまに似ている。私は江利子さまが好きだ。
私は菜々が好きだ。今日で、それが確固たるものになった。卒業式、私は愛を伝える。





次回→『外の世界』(最終回)

今回はあたしが暴走しすぎちゃって、長くなりすぎました。多分、誤字脱字の嵐です。あまり神経質な方は読まないほうがいいかも知れないです。イライラするかも・・・ってあとがきに書いても意味ないやぁ〜ん!?先頭に書いてよー

次回は、先代三薔薇さま、蔦・笙、真・日の当日の様子。


【2873】 貴女は私のものよ  (沙耶 2009-03-09 02:44:04)


続いてま…す?【No:2850】【No:2855】【No:2857】【No:2868】
時間軸バラバラです(汗)


〜光に愛されし娘産まれし時、闇は成長を留める。娘長じて力満ち時、世界は光に包まれる。



『ねえ、あなたおなまえは?』
『……***』
『そっか!**ちゃんはどこからきたの?』
『わかんない……**じゃなく***』
『う〜ん…じゃあおとうさまかおかあさまは?』
『無視かよ!』
『落ち着いてヨシノ。相手は姫様よ』
『くっ…そうだったわ…』
『ぐすっ……わかんないよぅ』
『あ、姫様泣かした!』
『えっごめんね**ちゃん。なかないで?シマ、どうしよう?』
『姫様が悪い訳じゃありませんわ。ヨシノったら姫様が落ち込んじゃったじゃない。』
『はぁい。ごめんね?姫様』
『ぐすっ…』
『そうだ!じゃあ、わたしのいもうとになればいいんだよ!』
『『えっ!?』』
『ちょっ…ちょっと姫様』
『姫様、いくら何でもそれは…』
『どうして?かぞくがいないのはさみしいじゃない』
『いや、だからって』
『きめたもん。**ちゃんはわたしのいもうとになるの。いや?』
『ぐすっ…いもうと?』
『そう。わたしのことをおねえさまってよぶのいや?』
『…いやじゃない』
『よかった!じゃあおねえさまってよんでみて?』
『…おねえ…さま?』
『うん!そうだ。**ちゃんにもこれあげるね。』
『うわぁきれい!』
『わたしとおそろいなのよ。シマとシノも。だいじなひとにあげなさいっておとうさまがくれたの』
『だいじなひと?』
『そうだよ。**ちゃんはわたしのいもうとになったんだから。あ!おとうさまにほうこくしてこなくちゃ!』

『ふつう報告より先に相談よね?ってゆーか姫様自分の立場わかってんのかしら』
『ああいった所はヨシノの影響よね…』
『なんでよっ』
『ふぅ…ヨウコさまに怒られそうね…どうして止めなかったのかって』
『ひぇ〜』



太陽守りし九つの盾を太陽自ら選び出し、十の力合わさりし時、奇跡の力生み出すであろう〜 クラムの予言書より抜粋


【2874】 次逝ってみよう♪  (クロス 2009-03-09 03:20:44)


令「【No:2869】の続きだね、蒼星石」

蒼星石「そうだね、マスター」

令「でも、今回も私たちの出番は無いのね……」

蒼星石「そうだね、マスター……」

『マリア様がみてる×ローゼンメイデン』(注:クロスオーバーです+壊れてます)

  「只今よりユミゲーム開催を宣言します」

翠星石(やべえですよ! やべえですよ! この状況は非常にやべえですよ!!)

翠星石(なんなのですか、やつの戦闘力は!! スイドリームが役に立たないです!!)

翠星石(翠星石はどうしたらいいのですか……)

瞳子「あら? もう終わりですの。瞳子、全然本気出してませんわ」

翠星石「くっ!! ド、ドリルが襲ってくるなんて反則です! ズルいです!」

瞳子「翠星石さんには言われたくありませんわ」

瞳子「それに、このドリル『ドリルサーガ』はお姉さまをお守りするためにあみ出したのですからずるいことなんか1つもありませんわ」

ーーーーーーー
『ドリルサーガ』
 瞳子の頭の左右についたドリルであり、高速回転をさせたまま自由自在に伸縮できる。
さらに回転をさせなければ、バネとしての役割を果たし、それによって壁から壁へと思いっきり投げたスパーボールがごとく移動できる。
 威力 A 速さ A 持久力 C 範囲 髪の長さ
ーーーーーーー  

瞳子「さて、お姉さまの目が覚める前に決着をつけますわ」

ぎゅいん ぎゅいいいいいい……

翠星石(翠星石ピーンチ!!)

翠星石(だいだいこんな狭い部屋じゃ、『スイドリーム』の力が十二分に発揮できないです!)

ーーーーーーー
 『スイドリーム』
 翠星石の持つ如雨露から出た液体が地面に注がれたとき発動する。
注がれた地面からは植物が生まれ、相手を攻撃したり、縛り付けたりできる。
その植物の大きさは契約しているマスターから力をもらった分だけ大きくなる。ただし、今翠星石は未契約なのでメタセコイアぐらいの大きさの植物しか出せない。
 威力 D 速さ C 持久力 B 範囲 もらった力による(今は2〜3メートルぐらい)
ーーーーーーー

翠星石「ス、スイドリーム! 翠星石の周りを囲むです!」

にょろにょろにょろ……

瞳子「そんな弱そうなバリケード、ドリルサーガの前では何の意味もありませんわ」

ぎゅいいいん ズバンッ

翠星石「ひぃ! こんなにあっさりと破られるなんて……」

瞳子「ジ・エンドですわ」

ぎゅいいいいん

翠星石 にやっ

瞳子 !!

翠星石「ドリル人間。誰がバリケードと言ったのですか? これはドリル人間から翠星石を視界に外させるただのかべですよ」

翠星石「そう、翠星石に近づいたとき発動するトラップを作るために……」

にょろにょろにょろ……

瞳子「あ、足が、完全に絡めとられましたわ」

翠星石「ちょっとした工夫をしたです。そのドリルで破壊するのはやめたほうがいいですよ。足を傷つけたくなければ」

瞳子「…………」

翠星石「ふふふ、おめえの攻撃範囲は逃げ回ったときに把握したです」

たったったっ とん

翠星石「ここからなら翠星石が反撃されずにおめえに拷問できるですよ」

翠星石「参ったというのなら今のうちですう。取り返しがつかなくなっても翠星石は責任とらんですよ。」

瞳子「……ふふふ」

翠星石「な、何がおかしいですか」

瞳子「瞳子はもっとすごいトラップを想像してましたわ」

瞳子「それがこんな子供でも考えそうなトラップ…… 所詮、翠星石さんは瞳子の敵ではなかったのですわね」

翠星石「負け惜しみですか! ドリル人間はもう翠星石にこうげきできないんですよ」

瞳子「……翠星石さん。瞳子がいつ攻撃できないと言ったのですか? 勝手に決めなさらないでくださいまし」

翠星石 ごくり

瞳子「ドリルサーガにはこのような使い方もありますわ」

ぎゅいいん ばりっ

翠星石「そこらへんの木を破片にしたです」

くるくるくる

翠星石「今度は自分の腕にドリルを巻き付けたです」

ひょいっ ぐいーん

翠星石「木の破片を持って、自分のドリルを引いたで……まさか!!」

瞳子「あらっ、もうお気づきになられたのですわね」

瞳子「そうですわ。ただのスプリングの原理を使った……」

瞳子「ドリルサーガ・キャノンですわ!」

ズバンッ

翠星石「……か、壁に穴が開いたです……」

瞳子「ご覧になられましたか、瞳子のドリルサーガ・キャノンの威力を」

瞳子「今度は外しませんよ。ちょうど周りには壁となった木の破片がたくさんありますしね」

ひょいっ ぐいーん

翠星石(あんなのに当たったら、翠星石は描写するのがためらわれる状態になってしまうですよ)

翠星石(そもそも、なんで翠星石がこんなことに……)



 2時間前

 祐巳の部屋

祐巳「真紅ちゃんにはわたしのをあげるよ」

祥子「ゆ……」 瞳子「おね……」

祥子 瞳子 じろっ

祥子 瞳子 「「かぶらないでくださらない」」

祥子 瞳子 ムカッ

祥子「ドリル」

瞳子「癇癪」

ギャースカ ギャースカ

真紅「ありがとう。でもいいの?」

祐巳「いいのいいの。私が真紅ちゃんのことを気づかなかったせいなんだから、気にしないで」

翠星石「まったくたぬき人間はぬけてるです! しかっりしろです! 全く、翠星石のマスターにならせてやるって言うのに……ぶつぶつ」

祐巳「は、ははは……」

真紅「じゃあ、いただくわ」

こくこく こくり

祐巳「どう? この紅茶、いつもより念入りにつくってみたんだけれど、お口に合うかな?」

真紅「…おいしいけれど、まだまだ改善の余地があるわ」

祐巳「そ、そうですか」 がくっ

真紅「でも、優しい味がするのだわ」

祐巳 てれっ///

祐巳「ありがとね」

祐巳「あっ!」

真紅「どうしたのかしら?」

祐巳「私のコップだから真紅ちゃんと間接キスしたことになるね」

祐巳 にこっ

真紅 どきっ

翠星石 !!

真紅(だわ……だわだわ……なんなのこの愛おしい気持ちは……)

真紅(祐巳の笑顔が可愛い? 祐巳が可愛い? 祐巳が好き? 祐巳が好き……)

真紅(祐巳が好き!!?!)

真紅(まさか、私が祐巳のことを好きになってしまったのだわ!!!)

真紅「…………」

翠星石「おいっ真紅。たぬき人間なんかと間接キスだなんてさいなんですね」

翠星石「仕方がねえから、翠星石のと交換してやるです」

翠星石「ほらっ、さっさとそれを渡すです」

すー すかっ

翠星石「……真紅?」

真紅「祐巳!!!」

祐巳「は、はいっ!」

真紅「私の下僕になりなさい」

祐巳「へ!?」

翠星石「なっ!?」

祥子 瞳子「なんですってー!!!」

真紅「私はあなたのことが気に入ったのだわ。下僕として私に仕えなさい」

翠星石「ちょ、ちょっと待つです!! 真紅、さっきいったこともう忘れたのですか!!」

真紅「何か言ってたかしら?」

翠星石「祐巳には手を出さないって話ですよ!!」

瞳子「そうですわ! お姉さまを下僕にしていいのは瞳子だけですわ! わけのわからない人形がお姉さまに手を出さないでくださいまし!!」

祥子「そうよ! 真紅。あなた、わたしと祐巳の絆が深いってことをまだ理解できないのかしら。人形の分際でわたしの祐巳に手を出すなんてスクラップしてほしいのかしら」

祐巳「真紅ちゃん……」

真紅「ならこうしましょ」

真紅「祐巳は誰のものかを決める……」

真紅「ユミゲームで決めるのはどう?」

祐巳 翠星石 「ユミゲーム??」

祥子「……で、具体的な内容はなんなのかしら?」

真紅「祥子、あなたに教えたアリスゲームと同じよ」

祐巳 瞳子「アリスゲーム??」

祥子「そんな野蛮なことできるわけないでしょう」

真紅「確かにそのまんまアリスゲームのルールにのとったら危険極まりないわ」

真紅「だから相手に一つでも傷をつけたほうが勝ちということにするわ」

瞳子「傷が残ったらどうするんですか!」

真紅「そこは大丈夫だわ。私の能力である空間の時を戻すことができるから、それで傷つけられる前に戻せるわ」

祐巳「そんな、傷つけ合うなんて……そんなのだめだよ!」

がすっ

祐巳「うっ」

ぽんっ

真紅「祐巳。ちょっと眠ってもらうわ」

翠星石「真紅、何もそんなことしなくても」

真紅「祐巳は優しい子。ユミゲームなんて絶対認めないわ」

瞳子「瞳子も認めたわけでは……」

真紅「無様ね」

瞳子「なっ!」

真紅「生きることは戦うことなのよ。ましてや祐巳のために傷つくのを恐れるなんて……祐巳の妹失格ね」

瞳子「わ、わかりましたわ!そこまでおっしゃるのでしたら、瞳子はやりますわ」

真紅「そう。あなたたちは?」

祥子 翠星石「…………」

真紅「やるってことね」

真紅「それじゃあ」

真紅「只今よりユミゲーム開催を宣言します!」

後半その2に続く


【2875】 料理にも使う超能力カウンセラー祐降り積もる君への想い  (沙耶 2009-03-09 03:47:43)


再録です。間違えて消去しちゃった。続きは【No:2855】【No:2857】【No:2868】【No:2873】


『守護士達よ。そなた達の願いは何だ?』
『『姫様と共に。』』
『ふむ。その願い聞き届けた。ではその門を潜るがよい。』
『姫様先に行ってます。』
『ええ、またね。』
『では光に愛されし姫君よ。そなたの願いは何だ?』
『私の願いは..................』

『......そなたの願いは歪みが生じてしまう。』
『ではその歪みは全て私にぶつけて下さい。』
『それでよいのか?一つの歪みなら大したことはないが二つ三つ重なるとどんな事になるかは私にもわからぬぞ』
『いいんです。私は今まで皆に護られてばかりでしたから。こんどは私がみんなを護りたいんです。』
『わかった。そこまで言うのならば...聞き届けよう。』
『ありがとうございます。』
『ではその門を潜るがよい。光に愛されし太陽の姫君......ユミ姫よ』
『はい。ではごきげんよう』


『さて、出てきてはどうだね?』
『............』
『思い出したんだろう?クロノスの娘にして太陽に守護されし者・・・』
『あの方は......どうして.........』
『君はどうするんだい?クロノスの元へ帰るのかい?』
『いいえ。私もあの方の......お姉様の元へ......』
『ふふっ。わかったクロノスには私から伝えておこう。』
『一度も会った事の無い父親ですけれど......ねえ、私の願いも聞いて頂けるのかしら?』
『ふむ。そうだな、君にも願いを受ける資格がある。言ってみるがよい』
『では......私は今から自分の時を戻します。そのあと.........』
『承った。だが、後悔しないかい?』
『もちろんですわ。お姉様がみんなを護るのならば、お姉様を護るのは私です。』
『そうか。では行くがよい。』


『クロノスの娘よ......どうかあの娘を救っておくれ......彼の方の大切な太陽の姫君を.........』


【2876】 即断即決直感勝負  (名無しのゴンゾウ 2009-03-09 15:05:06)


「あなた姉はいて?」

「……いいえ」

「なら、わたしの妹になりなさい」

「お断りします」

「冷たいのね……」

「ごきげんよう」



突然の質問に思わず「はい」と答えそうになる。

ここは私立リリアン女学園、姉といえば契りを交わしたグラン・スールを指すのだ、新入生の私にいるはずがない。

そもそも挨拶も無しにこんな質問をする生徒など居ようはずもない。教室についたら目を醒まそう。



   ※※一部を除きすべてオリキャラです、ご注意ください※※




美和子さん、彩乃さん、亜由美さん、夕子さん

うん、何とか覚えられそう。

でも、残念だけれど、みんな同じに見える。お姉ちゃんの言うとおり。

一人くらい特徴的な髪型の子がいれば助かるのに。



殆どが中学からの生徒ということもあって、わたしは転校生扱い。

いろいろ教えてくれるのは嬉しいけれど、情報の洪水になりかけてることには誰も気づいてないらしい。

おまけに朝の先輩に関して一切有力な情報がない、あのひとは誰?

  ダダダダダ……

「たまきさん、スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、でしょ?」

『黄薔薇の蕾、振られる』

質問に学園新聞で答えないでください。

ていうか何で今朝の出来事が記事になってるんですか。

 「リリアンかわら版の号外の迅速さは有名よ」

その前に個人のことを記事にするんですか。

 「薔薇ファミリーのことがメインよ」

黄薔薇の蕾って誰ですか。

 「剣道部のエース候補、成松聡子さまよ」

何で皆さんそんな好奇心丸出しの瞳で見つめてくるんですか。

 「だって入学早々黄薔薇の蕾を振ったのでしょう?」

十重二十重に取り囲まないでくださいっ!

 「逃がさないわよ」

ここはお嬢様学校じゃなかったんですか!

 「世間ではそう云われてるみたいね」

だまされた!お姉ちゃんのばか!!

 「そんなはしたない言葉遣いをしてはいけません」


ぴんぽんぱんぽーん

「三年松組江里口陽菜さん、至急職員室まで来てください」


……誰?

 「……聡子さまのお姉さま」

……わたし、悪いこと、した?

 「……同情はするわ……」

……何でわたしを妹にしようとしたのかな。

 「こっちが知りたいくらいよ」

……冷たい

 「だってみんなの憧れの黄薔薇の蕾を振ったんだもの」

……解放してくれない?

 「駄目、ここにいる全員が納得するまでは」

いぢわるぅ



……夕日がきれー……



……まだぁ?……



……帰してぇ……



……シスターに怒られた



良い子はもう寝「明日朝七時に剣道場に集合!」る時間です……

え?



しつこいなぁ


【2877】 足りないもの  (笑いの神に 2009-03-10 01:17:16)


【No:2867】⇒【No:2871】⇒【No:2872】⇒【本作】⇒【No:2879】


『外の世界』



マリア像の前

「もう、聖ったらいつも遅刻してくるんだから。」
「ごめん、ごめん。大学の講義が長引いちゃって・・・江利子は今日学校なかったの?」
「私と容子は、今日は午前中の講義で終わり。」
「それより、誰かに見られなかったでしょうね?」
「注意してたつもりだけど!何なの?おもしろいことって。」
「この前令から電話があったの。令は相談のつもりで、かけてきたみたいだったのだけれど、話を聞いたら私も参加したくなって・・・」
「それで、なんなの?それは。」
江利子が暴走するのを止めるために、私は端的に聞いた。
「私のひ孫のドッキリシリーズよ!」
「「はぁ?!」」
私と聖は声をそろえた。そもそも由乃ちゃんに妹はいないはずだ。
「江利子、一から順を追って説明してちょうだい。」


江利子の説明を一通り聞いて、正直ビックリした。
江利子よりもすごいかもしれない。さすがの江利子も中等部の時に、生徒会幹部にドッキリを仕掛けることはないだろう。でも一番ビックリしたのは、江利子の予知能力。
由乃ちゃんと祐巳ちゃんが、“妹オーディション”を開いた後の大会会場で、江利子は何百人といる観客の中から、一人の少女を選んだ。あの子にするわって。
その子が今、由乃ちゃんの妹候補No.1・・・信じられない・・・


「それで、聖どこに仕掛けてあるの?」
「わからない。彼女にはとにかく薔薇の館の裏に行ってくださいって」
江利子と聖の意味不明な会話。
「彼女って誰よ?」
私も会話に入る。
「夕子ちゃんの娘さんの可南子ちゃんだよ。」
「可南子ちゃんって誰かしら?」
次は、江利子の質問タイム。
「もうどうでもいいよ。早く行こ!」


薔薇の館の裏手、そこにはヘッドフォンのようなものが3セット置いてあった。
それをつけると、二階の音が聞こえてくる。まだスタートまで数分あった。
「それにしてもこれはどういう仕組みで音が拾えているの?」
私は変に気になった。法学部生が盗聴?
「もうそんな細かいことは気にしないってことで。」
聖が慌てる。
「可南子ちゃんって元ストーカーだったりして?」
江利子がとんでもないことをいう。
「まさかぁ?!」
「そうね。ありえないわ!」
「そうだよ!」
聖が意味のわからないことを言い出した。
「だから可南子ちゃんは元ストーカーだよ。」
「ふざけないで、聖。名誉棄損で訴えられるわよ!」
「ほんとだって。『涼風さつさつ』読んだらわかるって。」
「わかったわ。読んでおきましょう。」
「さぁ、お祭りの始まりよ。」
江利子がニヤッと笑って、そう言った。
私たちは、ひとときの間、リリアンの生徒に戻って行った。





「もう始まりましたかね?」
私は、記事の構成を考えるお姉さまに聞いた。
「うん?あぁ、もうちょっとじゃないかしら?ドッキリが終わり次第、打ち合わせ通り、日出実は、瞳子ちゃん・乃梨子ちゃん・菜々ちゃんに質問してちょうだい。残りは私がやるからね。」
お姉さまは、最後の段取りを確認している。
それにしても、お姉さまは大丈夫だろうか?
お姉さまは、卒業式の記事も書かなければならないし、年度末は本当に忙しい。
多分、ここ一週間のお姉さまの平均睡眠時間は2,3時間程度。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
私は遠慮がちに、今日5回目になるセリフを言った。
「しつこいわね、日出実。私は大丈夫、今日で仕事は一区切りよ。」
お姉さまは、そう言って立ち上がったかと思ったら、

“バタンッ!!!”

「お姉さまっ!?!?」
私は倒れたお姉さまの頭を起こし、自分の膝の上に乗せた。
顔がとても熱い。言わんこっちゃないってやつね。
「ハァ・・ハァ・・日出実、大丈夫よ。寝不足で、ちょっと目眩がしただけだから。それにしても冷たい顔ね」
お姉さまは、私の頬に手を当てて、こんなことをおっしゃった。
お姉さまの手は温かいというよりは、熱かった。
「もう今日は帰ってください。インタビューは私がやりますから。」
「ダメよ、日出実。やると言ったらやるわ。あなたがいちばんわかっているはずよ。」
そうだった。お姉さまがやると言ったら、誰も止められない。
じゃあ・・・
「お姉さま、20分でもいいから寝てください。絶対ちょっとは楽になるから。」
「何言ってるのよ、日出実。時間がないのよ。」
お姉さまが起き上がろうとしたので、私は思わず、お姉さまの頬を両手で挟んで押さえつけてしまった。突然顔に触れたから、お姉さまは、頬を軽く染めた。
「ダメです!!これは妹命令です。お願いだから、少し寝てください。私もお姉さまの妹、絶対に寝てもらいますよ」
「・・・もう、わかったわ。じゃあ、ちょっとだけだから・・ね・・・」
そういうと、お姉さまはすぐに眠りこんだ。


なんて幸せな時間なんだろう。
私の膝の上で、お姉さまが可愛い寝顔を見せてくれている。
いつもは新聞部部長として、活発に校内を走り回っている。
他の生徒はそんな姿しか知らないだろう。
でも、こんな可愛い顔をするのだから。私の前でだけは・・・ね。
「・・・日出実・・・・・・・行くわょ・・・・・」
どんな夢を見ているのだろう?
起きたら聞いてみよう。
私の大好きな真美さまに。





「ここにしましょう。薔薇の館の二階がバッチリ見えるわ。」
蔦子さまはカメラを取り出しながら、そう言った。
「そうですね。乃梨子さんがまだ窓を開けてくれてないみたいだから、まだ始まらないですね。」
「台本は持っているわよね、笙子ちゃん。声は拾えないから、祐巳さんの表情で台本を追うしかないわ。彼女の顔が、すべてを表してくれるはずだから。」
蔦子さまは、紅薔薇のつぼみ、祐巳さまの話をするときは、いつも楽しそう。
わかってはいるのだけど、毎回胸が痛くなる。
蔦子さまが、私以外の誰かのことを想ってほほ笑むところなんて見たくない。
わがままだって、子供だって、わかってる。
でもそんな気持ちになっちゃうんだもの。
「ふーん。そうですか。祐巳さまのことはよくわかるんですね。」
私は皮肉のつもりでそう言ったのだが・・・
「もちろんよ、祐巳さんのことは、入学以来ずっと追っているからね。」


裏目に出た。そんな言葉聞きたくないよ。
・・・・・・・・・・・
姉妹は作らないと言っているのは知ってるけど・・・
蔦子さまは、私を妹にはしてくださらないのかな。
妹オーディション以来、私は蔦子さまの影のように、蔦子さまと一緒にいることが多い。
クラスメイトからは、定期的に妹になったのかと聞かれる。
周りにどう思われようが、そんなに気にはしないが、
毎回・・毎回、
「いいえ、私たちはそういう関係ではありませんから」
そう言うときの気持ちは、言葉では言い表すことができないくらい切ない。
そんなことを考えている時、蔦子さまから意外な言葉が出た・・・


「笙子ちゃんはさ・・・・私の妹になりたい?」
「えっ!?」
蔦子さま、私の心を読んだの?
どうしよう、なんて答えよう・・・
「あのね、この前、稽古があったでしょ。あの次の日、由乃さんに薔薇の館に呼び出されたの。祐巳さんと志摩子さんもいたわ。そこで2年生トリオに尋問されるの。」



蔦子さまの話によれば・・・
「蔦子さん、昨日の笙子ちゃん見たでしょ。あれは完ぺきにあなたに惚れてるわ。」
由乃さんは興奮している。
「昨日って、何のこと?」
祐巳さんは、昨日は稽古があったので、昨日のことは知らない。
祐巳さんを薔薇の館に来させないために、桂さんに頼んで、遠ざけておいてもらったのだ。
「いや、たまたま会う機会があったのよ。」
由乃さんは、とっさにごまかす。
 

「それで、蔦子さん、笙子ちゃんを妹にしてあげないの?」
由乃さんは、直球投手。
「いやぁ、笙子ちゃんが私の妹になりたいとは限らないしね。」
「それはないと思うよ!!私、笙子ちゃんが蔦子さんといるときの顔を何回も見てるけど、いつも楽しそうだし、幸せそうだもん。」
祐巳さんが話に入ってくる。
逃げ道がないなー。チラッと志摩子さんをみる。
志摩子さんは、助けてくれるだろう。そう思って・・・
「でも、蔦子さんには蔦子さんの考えがあるから。」
ナイス、志摩子さん。あなたは天使だ。
「だから、その考えとやらを聞かせてもらいましょう。」
えぇー!?志摩子さんはニッコリと私に笑いかける。
怖すぎる。志摩子さんまで、ダークサイドに堕ちてしまったのか。
地獄だ・・・



「それで、大変だったんだから。何とかごまかして逃げ出したわ。」
蔦子さんはそう言いながらも、なぜか嬉しそうだった。
三人が自分のことをそんなに心配していることが嬉しいのかなぁ。
蔦子さまは、次期三薔薇さまが大好きだから。
「でもね、笙子ちゃん・・・私はね、あなたを妹にする気はないわ。」
「えっ!?」
蔦子さまの言葉に、わかってはいたのにやっぱりショックを受けてしまう。


「私は思うの。姉妹制度は、フィルムのラベリングに似ているって。例えば、祐巳さんと瞳子ちゃんを撮ったフィルムに、祐×瞳っていうラベルを貼るとするでしょう?でもそのラベルを貼らなくても、フィルムの中身の祐巳さんと瞳子ちゃんの写真には変わりはないよね。姉妹も同じ。上級生が包み込んで、下級生が支えて、二人がお互いを必要としていたら、それで十分だと思わない?それに姉妹っていう肩書きっていうか、飾りがつくだけよ。そんな飾り、私には必要ないの。これが私の気持ちよ。」
蔦子さまの言葉は、すごく説得力があるように思えた。
私は、蔦子さまを支えることができているとは思わないが、包み込まれていると感じているし、蔦子さまがいない生活なんて考えられない。
「でも蔦子さまは・・・」
わたしが口を開いたそのとき、
「私は、あなたを包みこめているとは思えないけど、あなたに支えられているし、笙子ちゃんが必要だと思っているわ!」
蔦子さまは、毅然と、はっきりとおっしゃった。
「ぃぇ・・・」
「笙子ちゃん、まさか泣いているの?」
泣いてる。嬉しくて・・・
私は蔦子さまの妹になりたいって、ずっと思っていた。
でも違っていた。蔦子さまに、こんな言葉をかけてほしかった。
私たちが一緒に過ごした数ヶ月間が幻じゃないって・・・確信がほしかった。
「私も同じです。姉妹なんていう飾りなんていりません。」


「良かった。姉妹にならないと困ることなんて何もないでしょ?」
・・・・・いや、そんなことはない。
私にはあるのだ。
「困りはしないけど・・・」
「何?何かあるっけ?」
「・・方・・」
「えっ!?聞こえないんだけど。」
「だから呼び方です!!」
私はつい、大きい声を出してしまった。
「あぁ、呼び方は変わるわね。祐巳さんも祥子さまのことお姉さまって呼べなくて、困っていたわ。」
「こんな時に祐巳さまの話しないでください!!」
「ごめん。ごめん。それで、笙子ちゃんは私のことお姉さまって呼びたいの?」
鈍い。私は別にお姉さまと呼びたいわけではない。
いや、呼びたくなくはないが、そんなことより・・・
「・・・って呼んでほしいだけで・・・」
「えっ?何て呼べばいいの?聞こえなかった。」
もう、大事な時に声が出ない。
なんでなの?
「だ、だだから、笙子って呼び捨てにしてください!!」
蔦子さまは、私の他に親しい後輩はいない。
同級生にしても、一番親しい、真美さま、祐巳さまたちでさえ“さん”付けである。
つまり、誰も呼び捨てにはしていないのだ。
私は蔦子さまの、Only One になりたい。


少しの沈黙があった。
蔦子さまは何かを決意したような顔をしている。
でも顔が真っ赤だ。こんな顔みたことがない。
まさか、怒ってる?
どうしよう・・・調子に乗りすぎちゃった?
すると、蔦子さの口が開いた、

「し、し、笙子」
ズキュン!!胸が痛い。キューピットが私の胸を射抜いて行った。
ダメ、ニヤニヤしてしまう。頬が熱い。幸せだ。
「えっ?蔦子さま、今何か仰いましたか?風で聞こえなくて・・・」
マリア様もこれくらいの嘘は許してくれるはず・・・
どうしても、今もう一度聞きたい。
「だから・・・笙子、も、もうドッキリが始まるわよ。準備なさい。」
「はいっ!!」
私の人生最良の日は、たぶん今日だと、そう思った。





次回→『インタビュー』


【2878】 ツンデレ節が炸裂お腹が空いちゃったサバイバル乃梨子  (bqex 2009-03-10 01:36:05)


パラレル西遊記シリーズ

【No:2860】発端編
 ↓
【No:2864】三蔵パシリ編
 ↓
【これ】
 ↓
【No:2894】聖の嫁変化編
 ↓
【No:2910】志摩子と父編
 ↓
【No:2915】火焔山編
 ↓
【No:2926】大掃除編
 ↓
【No:2931】ウサギガンティア編
 ↓
【No:2940】カメラ編
 ↓
【No:2945】二条一族編
 ↓
【No:2949】黄色編
 ↓
【No:2952】最終回



 私、二条乃梨子は三蔵法師として、佐藤聖さまの孫悟空、水野蓉子さまの猪八戒、鳥居江利子さまの沙悟浄と共に天竺に向かっている。

「はあ〜」

「どうしたの?」

 蓉子さまが私のため息を聞いていたらしく話しかけてきた。

「この前遭遇した魔物が『三蔵法師を食べたら不老不死になる』って言ってたんですよね。もし、そんな与太話が広く流れてるなら、これからの旅は危険だな〜って……」

「あら、西遊記の世界なんだからそれでいいんじゃない? 三蔵法師は何もしなくていい、そこにいるだけでいいのよ。だから、難しく考える事はないわ」

「そうなんですか?」

「……万が一の時はごめんなさいだけど」

「万が一は嫌です! 断じて!」

 冗談なのか本気なのか。

「あら、『三蔵法師が』って噂が流れてるなら、これから三蔵法師って名乗らなければいいのよ」

 江利子さまが会話に加わった。

「次の村では玄奘とでも名乗ってみたら?」

「確かにそうですね。わかりやすいから『三蔵法師』って名乗ってましたが、よくよく考えると、リリアンで『薔薇さま』って名乗るみたいなものですよね。じゃあ、次からは玄奘と名乗る事にします」

 と、いう事で私、二条乃梨子は玄奘として旅を続ける事にした。

 次の村に着いた。

「すみません、旅の僧侶の玄奘と申します。この村に泊まるところはあるでしょうか?」

「おお、我が家に立ち寄ったのも何かの縁。ぜひ、もてなしをさせてください」

 たまたま話しかけた親切な村人の提案で私達は1泊出来る事になった。
 家の主人は御馳走で私たちをもてなしてくれた。

 夜。

 寝ていると家の主人が入ってきた。

「グフフ……玄奘を食べると願いが叶うらしいなあ」

「え!?」

 家の主人は魔物だった。みるみるうちにナメクジに姿を変えていく。
 逃げようとするが、一服盛られていたのか体が動かない。

「いただきます!」

「おっと、そうはいかないわ!」

 蓉子さまがナメクジに塩をかけた。ナメクジはあっという間に縮こまって動かなくなった。

「さあ、とりあえず逃げましょう」

 聖さま、蓉子さま、江利子さまは異変に気づいて御馳走を食べるふりをしていたらしい。
 私達はナメクジの家から脱出した。



「はあ〜」

「まあ、無事だったからいいじゃないの」

 蓉子さまが慰めの言葉をかけてくれた。

「でも、さっきの魔物『玄奘を食べたら願いが叶う』って言ってたんですよね。玄奘って名乗ってもあんまり変わらないんじゃ……」

「じゃあ、坊主にする?」

 聖さまが会話に加わる。

「それは嫌です」

「じゃあ、志摩子の父」

「それは違います」

「ハゲ」

「名前じゃありません」

「玄奘でいいじゃない」

「いえ、よく考えたら『玄奘』はリリアンで『白薔薇のつぼみ』って名乗るようなものですよね。こうなったら本名の陳江流って名乗ってみる事にします」

「……詳しいのね」

「西遊記は仏教関係の話が多いのでチェック済みです」

 と、いう事で私、二条乃梨子は陳江流として旅を続ける事にした。

 次の村に着いた。

「すみません、旅の者で陳江流と申します。この村に泊まるところはあるでしょうか?」

「おお、我が家に立ち寄ったのも何かの縁。ぜひ、もてなしをさせてください」

 たまたま話しかけた親切な村人の提案で私達は1泊出来る事になった。
 家の主人は御馳走で私たちをもてなしてくれた。

 夜。

 寝ていると家の主人が入ってきた。

「グファグファ……陳江流を食べると恋が叶うらしいなあ」

「え!?」

 家の主人は魔物だった。みるみるうちにカタツムリに姿を変えていく。

「おっと、そうはいかないわよ」

 駆け付けた江利子さまがカタツムリの天敵マイマイカブリを投げつけた。

「ぐぎゃ〜!!」

「さあ、逃げましょう」

 私たちはカタツムリの家から脱出した。



「はあ〜」

「だから、坊主にしちゃいなよ。坊主でいいじゃん」

 聖さまがからかってくる。

「名前じゃありませんし」

「じゃあ、仏像オタク」

「その言い方はやめてください!」

 その言い方だけは絶対に許せない。仏像マニアと言ってほしい。

「で、その馴染みのない名前で通すの?」

 蓉子さまが聞く。

「いいえ、私は基本を忘れていました。これからはロサ・ギガンティア・アン・ブゥトンの二条乃梨子でいきます」

「そのまんまじゃない」

 3人はひどくつまらなさそうな顔をした。

「お待ちください」

 何者かが私達を呼び止めた。
 振り返るとそこには特徴的なドリルのような髪形の少女と、ツインテールの少女が立っていた。

「なんだ、瞳子と祐巳さまか」

「失礼な! 私は銀角。こちらはお姉さまの金角です」

「おお〜」

 我々は思わず声をあげた。
 あの有名な金角、銀角がいきなり登場である。

「で、その金角、銀角が何のご用?」

 江利子さまが食いつき気味に聞いた。

「ふふ。こちらにあるヒョウタンをご存知ですか?」

 金角がヒョウタンをとりだした。

「あ〜、それは返事をしたら吸い込まれるから、黙ってれば全然平気なやつだっけ?」

「ふん、そんな役に立たないヒョウタンをお姉さまが持っているわけないじゃないですか。役立たずは持主だけで充分です」

「しくしく。ひどいよ、銀角」

 金角涙目。

「このヒョウタンは、お返事がちゃんとできない悪い子ちゃんを閉じ込めるお仕置きヒョウタンなのです。つまり、私達が名前を呼んでうまく返事が出来なければ……皆様はヒョウタンに閉じ込められて、半永久的に出られない仕組みなのです」

「え?」

「更に、お姉さまは死神と取引をなさって、なんという名前で呼べばいいかを判断できる能力の持ち主なのです」

「いや、それさ、ヒョウタンじゃなくって、ノートを貰えばよかったんじゃない?」

「……」

 一同を沈黙が支配した。

「わ、悪い子ちゃんはお仕置きですわ! お姉さま、いつものようにちゃっちゃとお願いします!!」

「うう、姉なのにこき使われている気がする……」

 金角はヒョウタンの蓋を外した。

「沙悟浄!」

「はい!」

「孫悟空!」

「はい!」

「猪八戒!」

「はい!」

 お三方の名前を一通り呼び、ニヤリと金角は笑うと銀角に何やら合図した。
 銀角はうなずくとテープレコーダーのスイッチを入れた。

♪あらえっさっさ〜

 どこかで聞いたようなメロディ、それはドジョウすくいでお馴染みの安来節だった。

「!?」

 金角は手拭いをかぶり、5円玉を鼻にセットしてざるを持つとドジョウすくいを踊り始めた。

♪安来千軒 名の出たところ

 しかも、メロディに乗せて歌い始めた。
 なんてカオスな金角。

♪社日桜に 猪八戒

「……え?」

 あまりの事に油断していた蓉子さまは反応できなかった。
 金角は歌詞に名前を乗せて歌ってきたのだ。
 蓉子さまがヒョウタンに吸い込まれる。

「蓉子!」

「気をつけて!」

♪松江名所は 数々あれど 孫悟空に 沙悟浄

「はい!」

「はい!」

 なんて厄介な……だが、ヒョウタンを奪い返して、二人の名前を呼べば形勢逆転になる。
 私はタタタッとヒョウタンに向かってダッシュした。

「甘いですわ! 私が控えているのをお忘れですの!?」

 瞳子が髪の毛のドリルで私に攻撃を仕掛ける。

「危ない!」

♪出雲名物 荷物にならぬ 沙悟浄

 江利子さまは私を助けようとして名前に反応できなかった。
 江利子さまもヒョウタンに吸い込まれてしまう。

♪安来節

「あのドリルは私が相手をするから、あなたはヒョウタンを奪うのよ」

「でも、聖さま……」

「グッドラック」

♪上げた白帆が 染まりはせぬか 孫悟空は 花吹雪

「はい!」

 ドリルと戦いながら返事をする聖さま。早くヒョウタンを奪わなくてはならない。
 ヒョウタンに手を伸ばした時に金角と目があった。

 祐巳さまはざるを投げつけてきた。

♪三蔵法師と 駅呼ぶ声に

 不意を食らった。ざるに気を取られて反応できなかった。
 ああ、ヒョウタンの中へ……

「……まさか、名前を変えていたなんて」

 悔しそうに金角はつぶやいた。
 そう、私の名前は現在三蔵法師ではなかった。

「本気でいくよ! ロサ・ギガンティア・アン・ブトンの二条乃梨子」

「違います」

「へっ!?」

 本物の祐巳さまはちゃきちゃきのリリアン娘だから大丈夫だが、初めて会った金角なんかが簡単にロサ・ギガンティア・アン・ブゥトンの二条乃梨子だなんて呼べないのだ。

「ど、ど、ど、ど……」

「お姉さま! どこが間違ってるかなんて反省はいいから早く名前を──」

「ロサ・ギガンティア・アン・ブートンの二条乃梨子」

「ブブー!! 外れです」

「しまったあああ!!」

 金角は蒼白になって絶叫した。
 そして、金角はヒョウタンの中に引きずり込まれていく。

「名前を呼び間違えると呼んだ人が吸い込まれるのね」

 私はヒョウタンを拾うと銀角に呼びかけた。

「銀角大王」

「はい!」

「ドリル大王」

「誰がドリルですって?」

 銀角は反論したが、あっという間にヒョウタンに吸い込まれてしまった。

「よしよし。では、蓉子と江利子を助けましょう」

 聖さまがヒョウタンを逆さにして振ると、中から蓉子さま、江利子さま、金角、銀角が出てきた。

「なんだ、簡単に出られるんだ」

「じょ、冗談じゃありませんわ! 簡単に出られるからと言って何度も入りたくはありません!」

「うう、折角私達の野望が叶うと思ったのに……」

 がっくりと金角は肩を落とした。

「野望? 願いが叶うってやつ? そんなのは噂にすぎないわ」

「そんな! 『ロサ・ギガなんとかの二条乃梨子を食べると百合カップルになれる』って聞いたのに!!」

「待て! なんだその噂は!! 取り消せーっ!」



 絶対にこの世界から脱出してやる!!

続く【No:2894】


【2879】 ご報告  (笑いの神に 2009-03-10 01:39:25)


【No:2867】⇒【No:2871】⇒【No:2872】⇒【No:2877】⇒【本作(最終回)】


『インタビュー』



「はぁ〜い。お疲れさまでした。じゃあ、みなさんから今回のドッキリの感想を一言ずつ頂くので、お座りください。」
真美さんが、元気ハツラツ、そう言った。

「祐巳さん、さっきはほんとうにごめんなさいね。」
隣に座った志摩子さんが、申し訳なさそうに言う。
「いいえ。全然気にしていないよ。むしろ嬉しかったわ。志摩子さんの気持ちがわかって。」
「祐巳さんったら・・・いじわる・・・」
志摩子さんをからかえる日が来るなんて、泣きそうなほど嬉しい。
志摩子さんはまた、頬をピンクに染めて、下を向いてしまった。
「フフッ・・・冗談よ。」
私はそう言って、テーブルの下で志摩子さんの手を握る。


「さぁ、始めましょうか。」

         真
       祥   令
       由   志
       乃   祐
        菜  瞳
         日

私は瞳子の隣をゲットした。瞳子は少し不機嫌そう。
志摩子さんたちとのラブラブっぷりが原因だね。

「じゃあ、祥子さまからお願いします。」
「そうね。私と令はもう卒業だから、最後にこういう形でみんなと楽しめて良かったわ。それに、祐巳は私がいないと生きていけないということがわかったし。これは必ず記事に載せなさい。この事実は全校生徒に、しっかりと把握しておいてもらいたいから。わかったわね、真美さん。」
言葉は真美さんに、でも視線は瞳子に向いていた。
お姉さまは、本当に楽しそう。
瞳子は、ガルゥーと聞こえてきそうな表情で、祥子さまを睨んでいる。



「は、はい!必ず書きます。・・・では次に令さま、お願いします。」
「私も祥子と同じ意見。すごく楽しかった。それと、やっぱり、由乃のことは心配だったけど、今回菜々ちゃんと一緒にいて、安心したわ。菜々ちゃんがいれば、由乃は大丈夫。」
「令ちゃん!!」
由乃さんが、思わず立ち上がる。それはそうだ、まだ姉妹でもないのに、今のセリフはおかしい。令さまはクスクス笑っている。からかわれたのだろう。
「由乃ちゃん。何回言えばわかるの?あなたは、もう黄薔薇さまなのよ。しっかりケジメをつけなさい。」
菜々ちゃんの前で、お姉さまに怒られて、由乃さんは恥ずかしそうにして座った。
「すみません。祥子さま。学校では令ちゃんじゃなくて、お姉さまです。」



「令さま、ありがとうございました。由乃さんと菜々ちゃんのことは、4月に必ず書くので、またお送りします。」
「真美さん!!」
「では、そのまま由乃さんお願いします。」
「あっ、あぁ、感想ね。まぁ、主催者ということで、今回はご協力本当にありがとうございました。特に、お姉さまと祥子さまは忙しい時期なのに、こんなお遊びにお付き合い頂いて・・・」
さすが、由乃さん。ちゃんとした挨拶もできるんだぞ。
「お稽古も本番の今日も本当に楽しめました。親友の意外な一面も知ることができたし。」
由乃さんは、志摩子さんの方を見て笑う。
志摩子さんは、教科書通りのリアクション。
「そ、それと・・・」
由乃さんは、言葉に詰まっている。
菜々ちゃんのことだろう。
「そもそも、なぜ由乃ちゃんはこんなことをしようと思ったの?」
祥子さまが助け舟を出す。
なぜしようと思ったのか、それは菜々ちゃんのポイントを稼ぐため、そして将来の妹と薔薇の館のメンバーが仲良くなるため。
「そ、それはぁー、久しぶりに薔薇の館のメンバーと楽しみたいなぁーと思って。」
・・・ほんと素直じゃないなぁ。笑
「まぁ、菜々とも楽しめて良かったわ。」
最後に乱暴にそう言って、由乃さんの感想は終わり。



「次、志摩子さん。」
「私も新鮮な経験ができて、とても楽しかったです。でも、少しお恥ずかしいところをお見せしてしまって・・・真美さん、このことは記事に・・・」
「もちろん、するわ!次期薔薇さま方の美しすぎる友情、なんてどう?」
「そうよね。もういいです・・・」
そう言って、座った志摩子さんの顔は、またもや赤く染まっていた。



「次は、乃梨子さんお願いします。」
質問者が、日出実ちゃんに変わった。日出実ちゃんにも仕事を与えてあげてるんだ。
真美さまもお姉さましてるのね。
「お言葉ですが、真美さま!志摩子さんの件は書く必要はないと思います!」
乃梨子ちゃんが時間差で怒っている。
「乃梨子ちゃん。」
「すみません。祥子さま。学校では志摩子さんではなく、お姉さまでした。」
「いや、こういうハプニングが一番おもしろいのよ。だから却下!乃梨子ちゃん、感想をどうぞ。」
真美さんが先を続ける。
乃梨子ちゃんはあきらめたようだ。
「わかりました。ドッキリ自体は本当に楽しかったです。今回は涙を流す役で、最初は心配だったんですが、なんとかそれもできましたし。・・・それに、瞳子の稽古の時のあれは最高だったしね。」
最後は、瞳子の方を見ながらそう言った。
私と、新聞部は訳がわからなかったが、みんなはニヤニヤ笑っている。
「わっ、私がお姉さまのこと・・・・」
乃梨子ちゃんが瞳子の声を真似して何か言おうとしたが、
「ワーーーーーー!!乃梨子やめて!!」
瞳子が、急に大声を出した。
顔は真っ赤になっている。
「何があったの?」
私は、みんなを見まわしながら聞く。
「何でもありませんわ!お姉さまには関係ないことです。」
「でも、乃梨子ちゃんは“お姉さま”って言ってたよ。」
「乃梨子は何か勘違いしてるんじゃないかしら。真美さま、次へどうぞ。」



「うーん。お稽古の話は、また後で教えてもらうわ。じゃあそのまま、祐巳さん。」
「はい。今回はターゲットってことで、怒ったりした方がいいのかもしれないけど、何か嬉しいことがいっぱいあったから、けっこう楽しめました。ばらされた時は本当にびっくりしたけど。今回は第一弾っていうことみたいだし、次は仕掛け人として楽しみたいと思います。」
「祐巳さん、教科書通りの感想よ。ありがとう。」
真美さんにほめられた。



「次は、菜々ちゃん、お願いします。」
日出実ちゃんが、話を続ける。
「今回は、中等部の私が、このような機会を与えてもらって、本当に感謝しています。皆様とても私に親切にしてくれて・・・正直こんなに楽しかったのは、久しぶりです。4月からは、高等部なので、もしお会いした時はお声をかけていただきたいです。」
「お声をかけるなんて、他人行儀ではありませんか?菜々ちゃんは由乃さまの妹になる気はないんですか?」
日出実ちゃん・・・さすが真美さんの妹というべきか、三奈子さまの孫というべきか、
「私からはなんとも言えません。由乃さまのお考えがありますから。」
菜々ちゃんは冷静すぎるなー。由乃さんなんて、
「ひ、ひ、日出実ちゃん、そ、それはすごく繊細な問題だから、今はそっとしておいてくれにゃいかしら?」
猫になっているよ。
「日出実、今回は勘弁してあげなさい。どうせ4月になればわかることだわ。」
日出実ちゃんは、真美さんにそう言われて、引き下がった。
最後に、菜々ちゃんが、とんでもないことを、
「今回は本当に上手くいってよかったです。今回でわかった通り、ドッキリは不意ですから、みなさん気をつけてくださいね。それとこれはフリとかじゃなくて、本当に祐巳さまは、もうありませんから安心してください。志摩子さま、由乃さま、瞳子さま、乃梨子さま、覚悟はよろしいですか。ふふっ・・・」
可愛い・・・・けど・・・怖い・・・
名指しされた4人は、疑心暗鬼に陥るだろう。
でもこの顔・・・・
「それにしても、菜々ちゃんは、本当に江利子さまにそっくりね。令も思わない?」
「ええ。お姉さまを見ているみたい。」



「最後に、瞳子さん、よろしくお願いします。」
日出実ちゃんが言った。
「はい、演技指導をした立場からすれば、みなさん本番はよくできていたと思います。細かいところをいえば、問題がなかったわけではありませんが、まぁ許容範囲内ですわ。私個人としては、お姉さまがターゲットということだったので、素直に楽しむことができませんでしたが、ある程度、有意義な時間ではあったと言っておきましょう。」
「瞳子さん、それではあまりにも感情がこもっていないわ。仮面を脱ぎなさい。」
日出実ちゃんは、なぜか芝居口調・・・笑
「そうよ、瞳子、もっと率直な感想をいってあげなさい」
「お姉さま・・・率直にいうと・・・お姉さまが、あまりにも頼りなくて少しがっかりしましたわ。紅薔薇さまと白薔薇さまに詰め寄られて、泣きそうになって・・・今後は、このようなみっともないところは見せないでくださいまし。」
「瞳子・・・」
妹に怒られ、私はしょんぼりする。
「よく言うわよ、瞳子。祐巳さまのこと、ずっと心配そうに見つめていたくせに。」
「の、の、乃梨子、いい加減なこと言わないで!そんなことありませんわ。」
「瞳子、またお稽古の日のあれを繰り返したいの?」
乃梨子ちゃんをはじめ、みんながニヤニヤ笑っている。
「いいわよ。私は、もういっかいやってあげても。」
由乃さんがいう。
「私ももう一回見てみたいわ。瞳子ちゃん可愛かったもの。」
志摩子さん。
「確かに、あれは良かったね。」
令さま。
「瞳子さまの、あのセリフ最高でした。」
菜々ちゃん。
「まぁ、またやるの?瞳子ちゃん、いいかしら?」
ダメ押しの祥子さま。みんなすごく楽しそう。
「正直に言いなさい。率直な感想を!!」
瞳子が、横目で私を見ている。
頬をピンクに染めながら・・・
「わ、わ、わ、私は、」



「お、お、お姉さまが大好きだから、し、心配で仕方ありませんでした・・・」
最後の方は聞こえなかったけど、一番大切なところはバッチリ聞こえた。
あぁ、なんて幸せなんだろう。
お姉さまと令さまは卒業してしまう。
でも、これはただの卒業で永遠のお別れっていうわけではない。
確かにさみしくはなるが、私には志摩子さんと由乃さんがいる。
それに乃梨子ちゃんと、たぶん菜々ちゃんも・・・


それにこんなに愛おしい、妹がいる。
「私も大好きだよ。瞳子。」
私は、立ち上がって瞳子を抱きしめる。
「おねぇさまぁぁ」
瞳子もそれに応えてくれた。

                                

                                  終 




たぶん最初で最後のSSです。正直、こんなにもSSを書くことが難しいとは思いませんでした。時間も労力もかかりすぎる。。。この掲示板方々のすごさがよくわかりました。たった5つでしたが、本当にありがとうございました。


【2880】 お察し下さい自分でニヤニヤした蓉子ちゃんのえっち  (柊雅史 2009-03-10 02:57:22)


「……つまんないから、私帰るわ」

 三人の薔薇さまと、その妹である三人のつぼみ。更にはその妹である二人のつぼみの妹。総勢八人の山百合会のメンバーが、てんてこ舞いで仕事に没頭している最中、唐突にそんなことを言い出した人物がいた。
 否、少々訂正しなくてはならない。
 確かに薔薇の館には、現在の構成員である八名が揃ってはいたけれど、仕事をしているのは三人の薔薇さま、紅薔薇のつぼみである蓉子と妹の祥子、黄薔薇のつぼみである江利子と妹の令だけで、白薔薇のつぼみであるはずの聖は、一人机にも向かわずに窓の外をぼんやりと眺めていただけだった。
 付け加えるならば、七人の内の一人である江利子も、仕事に没頭していたとは言い難い姿勢ではあったけれど、一応机に向かっていたことだけは間違いない。

「……あんたねぇ、何を言い出すのよ?」

 聖の呟きを宣言を聞いても、三人の薔薇さまが何の反応も示さないのはいつものこと。つぼみの妹では上級生である聖に何か言えるようなはずもなく、江利子は江利子で極力聖とは関わらないスタンスを貫いているので、結局いつものように蓉子が聖の相手をすることになった。

「何って、言葉通りだけど? お姉さまも忙しいみたいだし、ぼんやりしてても仕方ないでしょ。家に帰って寝てた方がマシ」
「この状況で、よくそんなことが言えるわね……」

 宣言通り鞄を手に立ち上がる聖を、蓉子は睨みつける。山百合会は来る学園祭を前に、文字通り猫の手も借りたいくらいの忙しさだ。一年生である祥子や令にも、容赦なく仕事が回されているし、あの江利子でさえ渋々書類仕事に向き合っている。
 この状況で、つぼみの妹どころか白薔薇のつぼみである聖が帰ると言うのは、蓉子としては信じられない暴挙である。聖が山百合会の仕事に興味のないことも承知しているけれど、いくらなんでも状況と言う物を考えて欲しい。

「別に、つぼみには生徒会としての仕事をする義務はないと思うけど?」
「それは……そうかもしれないけれど」
「そうかもしれないなら、良いじゃない。私の勝手でしょ? 蓉子に指図される謂れはないと思うけど?」

 実情はどうであれ、理屈は聖の言うとおり、山百合会の中でいわゆる『生徒会』の役員に当たるのは三人の薔薇さまだけである。薔薇のつぼみは、その妹に過ぎないから、仕事をしなくてはいけない義務はない。
 けれど、伝統的に薔薇さまのお手伝いをするのがつぼみの役目だった。あの江利子でさえ、渋々とそれに従っているくらいである。
 それなのに、聖はあっさりとつぼみの役目を放棄して、「それでは、ごきげんよう」という挨拶を残し、素早く扉を出て行ってしまった。

「ちょっと……聖!」

 慌てて立ち上がり、呼び止めた蓉子のことも完全無視。バタン、と閉められた扉をしばし睨みつけてから、蓉子は歯噛みしつつ、再び椅子に腰を下ろした。

「全く、もう……! 明日、絶対にお仕置きしてやるんだから……!」

 リリアンでは浮いた存在の聖ではあるけれど、蓉子は中等部からの付き合いだ。他の子に比べれば、まだ聖に強く意見できる立場にある。放任主義の白薔薇さまには期待できない以上、聖を叱り付けるのは、大抵蓉子の役目になる。

「明日もここに来るかどうか、微妙な気もするけど?」

 蓉子の呟きに呆れたような口調で反応したのは江利子だ。未だに顔も上げずに書類に取り掛かっている薔薇さまと違い、江利子もかなり集中力が切れている様子だった。もっとも江利子が集中力を発揮することなど、めったにないことなのだけど。

「蓉子はその剣幕だし、白薔薇さまも忙しくて聖のことは構っていられないだろうし。明日は来ない可能性の方が高いんじゃないの?」
「首輪をつけて、引きずってでも連れて来るわよ! 大体、聖にはつぼみとしての自覚が足りないのよ!」

 憤然と言い返した蓉子に、江利子が「ふーん」と口元に笑みを浮かべた。

「首輪つけて引きずって来て……お仕置きするんだ? どんなお仕置きするつもりなのよ、蓉子ってば」
「どんなって……」
「首輪をつけた、聖に? どんなお仕置きを?」

 にやにやと笑って、首輪を強調する江利子に――何を言わんとしているかを察して想像し、蓉子の頬が思わず緩む。

「そ、それは……普通に! お説教して溜まりに溜まったこの仕事を! 時間一杯までやらせるに決まってるじゃないの!!」
「……なるほど」

 ドン、と机を叩いて主張した蓉子に頷いた江利子の脇から。

「「「蓉子ちゃんのえっち」」」

 書類に視線を向けたまま、三薔薇さまが見事なユニゾンで呟いてくれた。




 なんでこんな時だけ反応するんですか、お姉さま方は――


【2881】 秘密!譲れない事食べ物が傷みやすくて  (クロス 2009-03-10 22:37:41)


【マリア様がみてる×ドラえもん】(注:クロスオーバー?です)

祐巳「うわーん! 聖えも〜ん、またお姉さまとけんかしちゃったよ〜」

聖えもん「またかい、祐巳ちゃん。仕様がないな〜。私が祥子のこと忘れさせてあげるよ〜」

祐巳「え、遠慮します! 私はお姉さまloveですから……」

聖えもん「ちえっ。じゃあ仲直りする道具でも出そう」

祐巳「本当? ありがとー、聖えもん」

聖えもん「あれでもないこれでもない」

聖えもん「あっ、これだ」

聖えもん「パカラパッカラ〜 桃太郎印のきびだんご〜」

祐巳「うわー、これでお姉さまはわたしの僕ね……ってバカー!」

祐巳「これじゃあ仲直りになってないし、それ以前にお姉さまは人間ですよ! 人間には桃太郎印のきびだんご
は効かないじゃないですか! たぶん……」

聖えもん「も〜祐巳ちゃんはわがままだな〜」



聖えもん「じゃあ、これは」

聖えもん「パカラパッカラ〜 スモールライト〜」

祐巳「やったー、これでお姉さまを小さくして私の部屋に監禁……って犯罪ですよー!」

聖えもん「まさか祐巳ちゃんがそんなことを考えるなんて……そんな願望があるってこと?」

祐巳「まあ少しは…………じゃなくて! お姉さまと仲直りする道具を出してくださいよー」



聖えもん「う〜ん、これならどうかなー」

聖えもん「パカラパッカラ〜 ビッグライト〜」

祐巳「うわーい、これでお姉さまと私がガリバーのように大きくなれば、私たちは巨人族として世界から手厚い保護を受け、お姉さまと幸せな生活がおくれるのね〜……ってなんですか巨人族ってー!」

聖えもん「ゆ、祐巳ちゃん、大丈夫? お医者さん鞄出してあげようか?」

祐巳「そんな存在が痛い子を見るような目をしないでください! それよりお姉さまと仲直りする道具をさっさとださんかい! こらっ!」



聖えもん「わ、わかってるさ〜(祐巳ちゃん怖い)」

聖えもん「んーはいっ」

聖えもん「パカラパッカラ〜 タイムふろしき〜」

祐巳「……で」

聖えもん「でって?」

祐巳「んなもんで何するんだこのおんどれりゃー! 説明次第ではリリアン七不思議『桜の木の死体』をおんまえで実現させてやろーかっ! えーこらっ! えーこらっ!」

聖えもん「ひい」

聖えもん「や、やだなー、祐巳ちゃん。冗談だよー」



聖えもん「本当はこっち」

聖えもん「パカラパッカラ〜 わすれろ草〜」

祐巳「遺書の準備ができました。両親だけでなく志摩子さんにもちゃんと遺言書いてくださいね」

聖えもん「ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい…………」

聖えもん「次こそは! 次こそは必ずや祥子と仲直りする道具を出してみせます、部長!!」

祐巳「誰が部長かっ!!」



聖えもん「これでもないあれでもない」

聖えもん「は、早く出さないと、私リリアン7不思議の1つになっちゃうよ〜」

聖えもん「そうだ! これなら」

聖えもん「パカラパッカラ〜 地球破壊爆弾〜」

祐巳 シャー シャー ←包丁を研ぐ音

聖えもん「ほ、ほらっ、これを持って『仲直りしなければ、地球とともに爆発します』って言えば、祥子も快く仲直りしてくれるよ!」

祐巳「快くじゃねえし、そんなの根本的に仲直りになってねんだよーーーーーーーーー!!!」

聖えもん「うわーーーー!! 祐巳ちゃん、そんなに包丁振り回したら当たっちゃうよ!!」

祐巳「いいんです。当てるんですから」

聖えもん「ひ〜〜〜〜」



バタンッ

祥子「ちょっと!! 騒がしいわよ!!」

祐巳「お、お姉さま!!」

聖えもん(た、助かった〜〜)

祥子「祐巳! 包丁なんか振り回したら危ないじゃない!」

祐巳「す、すいません」

聖えもん(いやいや、確かに危ないけど、そんなレベルじゃないよ。てかなんで普通に注意してるの!?)

祥子「まったく……祐巳が怪我でもしたらたいへんじゃない」

聖えもん(私だよね!? どうみても怪我負わされそうになったの私だよね!?)

祐巳「うう、ごめんなさい」

祥子「わかってくれたならいいわ」

祥子「それに……私の方こそごめんなさい。知らなかったとはいえ、あなたのものを勝手に食べちゃうなんて…」

祐巳「え!? お、お姉さま!? 頭を上げてください! あんなのまたつくればいいだけですから」

聖えもん(へー、祥子、祐巳ちゃんの手作り食べたのか〜。うらやましい)

祥子「じゃあ、許してくれるのね」

祐巳「もちろんです、お姉さま」

祥子「ありがとう、祐巳」

聖えもん(これにて一件落着だね〜)



祥子「それにしても、あのどら焼き、本当においしかったわ。また食べたいわ」

祐巳「あんなのでしたら、いくらでも作って差し上げますよ」

聖えもん(祐巳ちゃんの手作りどら焼きか…………って、えっ!?)

聖えもん「ちょ、ちょっと待ったーーーーー!!」

祐巳「うわっ!!」

祥子「いったいなんだというの!?」

聖えもん「どら焼きって設定上から言うと、わたしのために作ったんだよね。私、どら焼き好きだし」

祐巳「そ、そうですけど、でも聖えもんは実際どら焼きみたいな甘いものって嫌いじゃないですか」

聖えもん「祐巳ちゃんの手作りなら別問題だよ!」

聖えもん「うわーん、わたしのどら焼きが〜」

祐巳 「また作ってあげますから、機嫌を直してください」

祥子「それより、聖えもん、蓉みちゃんが探してましたよ」

聖えもん「話をすり替えてんじゃないわよ!祥子、わたしのどら焼きを…」

蓉みちゃん「聖」

聖えもん ぞくっ 

聖えもん「よ、蓉みか。わたしのことはおねえちゃんって呼ばなきゃだめだぞ」

蓉みちゃん「聖、わたしのメロンパンを食べたわね」

聖えもん「へ?」

蓉みちゃん「わたしのメロンパン食べたわねって言ってるのよおーーーーーーーーー!!」

聖えもん「た、食べるわけないじゃない!」

蓉みちゃん「じゃあ、口のまわりについてるメロンパンのかすはなんなの!!」

聖えもん「う、うそ、そんなはずは…………し、しまった!!」

蓉みちゃん「やっぱりあなただったのね」

聖えもん「いや〜ついおいしそうだったから。ははは」

蓉みちゃん「わたしの大好物だということを知っているかしら。これはお仕置きが必要ね」

聖えもん「で、でも設定上の話だし、蓉子もそんなに好きってわけでは…」

蓉みちゃん「問答無用!!」

聖えもん「ぎゃーーーーーーーーーーーー」







祐巳「お姉さま、大好き」

祥子「私も祐巳のこと大好きよ」

「「ふふふふ……」」

聖えもん「たすけてください……」

蓉みちゃん「だーめ」

「ぎゃーーーーーーーーーーー」

ちゃんちゃん


【2882】 もはやマリみてでない  (bqex 2009-03-10 23:50:47)


 マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような笑顔で、背の高い門をくぐり抜けて行く。
 汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らさないようにゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
 私立リリアン女学園。ここは乙女の園。
     ──マリア様がみてる



 世田谷のお庭に集う家族たちが、今日も同じような笑顔で、普通の家の門をくぐり抜けて行く。
 加齢を知らない心身を包むのは、昭和の衣服。どら猫は裸足で追いかけるように、買い物では財布を忘れるようにおっちょこちょいに暮らすのが長女のたしなみ。
 磯野一家。ここマンネリの園。
     ──サザエさん



 世紀末の世界に集う男たちが、今日もニヒルな笑顔で、地獄の門をくぐり抜けて行く。
 超人的な心身に刻むのは、七つの傷。一子相伝の秘孔は外さないように、引かぬ、媚びぬ、顧みぬようにひたすら戦うのがここでのたしなみ。
 世紀末救世主伝説。それは男たちの園。
     ──北斗の拳



 マリア様の知らない世界に集う乙女たちが、今日も悪魔のような笑顔で、スラム街を闊歩して行く。
 汚れしか知らない心身を包むのは、血生臭い服。予期せぬメイドの襲撃は受けないように、いらない復讐はされないように確実に殺るのがここでのたしなみ。
 某国ロアナプア。ここは地上のはき溜め。
     ──BLACK LAGOON


 120ヤードのフィールドに集う選手たちが、今日もヘルメットをかぶり、ディフェンスラインをくぐり抜けて行く。
 鍛え上げた心身を包むのは、母校のユニフォーム。考え抜かれたフォーメーションは乱さないように、殺人的なタックルは喰らわないように全力で走るのがここでのたしなみ。
 私立泥門高校。目指すはクリスマスボウル。
     ──アイシールド21



 人間の社会に集う魔物たちが、今日も魔物の本に導かれて、王を決める戦いをくぐり抜けて行く。
 非常に丈夫な心身を包むのは、伸び縮みするマント。関係ない人間は傷つけないように、本の持ち主と魔物は殺さないようにちょっとだけ加減するのがここでのたしなみ。
 モチノキ町清麿邸。そこは魔物ホイホイ。
     ──金色のガッシュ



 一度入ったら出られない学園に集う子供たちが、今日も天使のような笑顔で、背の高い門をくぐり抜けない。
 世間と常識を知らない心身を包むのは、無茶な能力に耐える制服。力は暴走させないように、学園側に目をつけられないように適度にハメをはずすのがここでのたしなみ。
 アリス学園。ここは異能力者の園。
     ──学園アリス



 紙と仕事道具に囲まれた一室に集う大人たちが、今日も地獄絵図のよう顔で、締切という修羅場をくぐり抜けて行く。
 とにかく熱い心身を包むのは、ありきたりな服。集中線は乱さないように、ベタははみ出さないようにきっちりと仕上げるのがここでのたしなみ。
 炎プロ。ここは漫画家の園。
     ──燃えよペン


【2883】 何の疑問も持たなく何ですか意味がわからん  (クロス 2009-03-11 00:48:37)


【No:2881】と同じ世界

『マリア様が見てる×ドラえもん』(注:クロスオーバー?です+横暴表現あり)

 小ネタ集

 〈祐巳の仲のいい仲間達〉

令あん「お、由お、いいもん持ってんじゃない。ちょっと貸しなさい」

由お「貸さないわよ。お父さんから買ったもらった新しいラジコンなのよ」

令あん「いいから、貸しなさい! あなたのものはわたしのもの、わたしのものもわたしのものなのよ」

由お「な、何でっすてーーー!! 令あんのくせにわたしに命令するき!!」

令あん「よ、由お、それじゃあ立場が逆だy」

由お「うるさーーい!! 覚悟しなさい、令あん!!」

令あん「覚悟ってなんn」

がしぼか がしぼか…… 



 ブイーン ブイーン

由お「なかなかの操作性ね、このラジコン」

令あん「そ、そうだね……」

祐巳「あっ」

祐巳「令あーん、由おー」

由お「あ、祐巳、ごきげんよう」

令あん「ごきげんよう、祐巳……由お(じろっ)……ちゃん」

祐巳「ごきげんよう。何してんの?」

由お「見ての通り、新しいラジコンを動かしてるのよ」

祐巳「うわーかっこいいねー。わたしにもやらせてよー」

由お(可愛い笑顔……)「ざ、残念だけど、このラジコン2人用なのよね。つまり私と令あんで満員なのよ。どうしてもやりたければ、今晩私の家に泊まりに……」

令あん「由お〜」

祐巳(泊まり?)「そ、そっか、じゃあしょうがないよね」

祐巳「あ〜あ、私も動かしたかったな〜」

由お(拗ねた顔もなかなか……)「そ、そうだわ! 令あんの代わりに操縦すればいいじゃない」

祐巳「えっ!! それじゃあ話が違くなっちゃうよ!」

令あん「そうよ! はn」

由お「わたしが良いって言ったら良いの! 祐巳はやりたいのでしょ?」

祐巳「そ、そうだけど……令あんに悪いよ」

令あん「y」

由お「令あんも喜んで譲るわよね」

令あん「

由お「ほらっ、譲ってくれるって。はい、祐巳、お礼なら後で私の家にでも来てして」

祐巳「あ、ありがとう。でも、思ったら私機械とか苦手だし、壊したりしたらたいへんだからやっぱ遠慮しとくよ」

由お(まったく謙虚なんだから〜でもそういうところも可愛い〜(ラブ))「私が手取り足とり教えてあ・げ・る!」

令a

志摩か「なにしてるのかしら」

由お「あ〜ら、志摩かちゃん、ごきげんよう。そして、さようなら。今から、私と祐巳は甘い時間を過ごすのよ。邪魔しないでもらえるかしら」

志摩か「可愛そうな祐巳さん。また由おさんたちにいじめられてるのね」

祐巳「いや、いじめられてるのは令あんの方かと…」

志摩か「やっぱり……いじめられてるのね。由おさん、私と祐巳さんは結婚することになってるのよ。自重なさってくださらない」

由お「相変わらず、人の話を聞かないわね。そんなくだらない未来なんか変えてみせるわ。祐巳と結婚するのはわたしよ」

r

志摩か「設定上、あなたと祐巳さんは同性同士なのよ。結婚できるわけないじゃない。それにストーリーを無視なさらないでくださる」

由お「うっ、う、うるさいうるさいうるさーい! そんな決まったストーリーを辿るなんて現代じゃうけないわよ」

志摩か「何をいってるのかさっぱりだわ。さあ祐巳さん、由おさんなんかほっておいてわたしとお風呂入りましょう」

祐巳「お、お風呂!?」

由お「そ、そんな設定ないわよ! なに勝手に作ってるかしら!」

令あん(由おが言うn)

志摩か「私はお風呂好き。そして、祐巳さんとは結婚することになってる。遅かれ早かれですわ」

令あん(思うことも満足にできないn)

由お「だったら、私も入っても構わないのよね。同性同士なら学校行事かなんかで一緒にお風呂に入ることだってあるだろうし」

志摩か「……そうね。口惜しいけど、反論はできないわ」

由お「そうよ、私から逃れるなんて100年早いわよ! ふふふ、正義は勝つ!!」

志摩か「ふう……じゃあみんなで祐巳さんの体を堪能しましょうか」

祐巳「か、体!? 何言ってるの志摩かちゃん!」

由お「さんせーーい」

志摩か「それじゃあ祐巳さん、由おさん行きましょう」

由お「は〜い」(祐巳さんの体〜)

祐巳「えっ、えっ、ええーーーーーーーー!!」

がしっ ずりずり〜


・・・・・・・・・

ひゅう〜〜〜

令あん「……ドラえもん……」

ひゅう〜〜〜




 <栞のしーちゃん>

聖えもん「しーちゃん、今日もかわいいね〜」

しーちゃん「にゃ〜」

聖えもん「うふふ、まったく食べちゃいたいぐらいだよ〜」

しーちゃん「にゃ〜お」

すりすり

聖えもん「えっ、いいの! それじゃいただきまーす!」

「聖」

聖えもん 再びぞくっ

聖えもん「ソロ〜リ な、なんだ蓉みか、私のことはお姉ちゃんって呼ばなきゃだめだぞ」

蓉み「聖、私というものがありながら別の女に走るのね。これはお仕置きをしなくては」

聖えもん「で、でも、設定上はわたしはしーちゃんと恋人同士だし」

蓉み「問答無用!!」

聖えもん「ぎゃーーーーーーーーーーーーーー」




 <学校の先生 祥子>

生徒1(桂)「せんせーい、チャイム鳴りましたよ。はやくホームルームを始めてください」

先生(祥子)「まあ、そんなに祐巳を遅刻にさせたいの! 同じクラスメートなら祐巳のためにいつまでも待つぐらいしなさい」

生徒1「えっ……でも、そういう設定じゃあ……」

だんだんだん がらっ

祐巳「お、遅れてすみません! 寝坊してしまいました!」

先生「祐巳、運がいいわね。ギリギリセーフよ」

祐巳「えっ!? でも、もう30分も遅刻してますよ」

先生「あら、知らなかったかしら? 今日は30分遅れての授業なのよ」

祐巳「そ、そうなんですか? それはラッキーです。うわーい」

由お「よかったわね、祐巳」

志摩か「きっとマリア様の思し召しよ」

祥子「でも、明日は遅刻しちゃだめよ」

祐巳「はい!」



ある日

先生「今日は祐巳がお休みだから休校します」

生徒たち(由おと志摩かを除く)(まじかよ…………)

生徒1「先生ー、いくらなんでもそれはちょっと無理だと・・・」

先生「大丈夫よ。校長があれこれ言ってたけど、説得したわ。それと、わたし、今日から理事長も兼任することになったしわ」

生徒たち(由おと志摩かを除く)(この先生……学校を買い占めやがった……)

由お「先生、すばらしいです。なんて生徒思いなんでしょうか」

志摩か「そうですわ。本当に尊敬できます」

先生「おほほほ、先生として当たり前よ。それじゃあ、わたしは祐巳のお見舞いに行かないとだから、みんな、ごきげんよう」

由お 志摩か「ごきげんよう」

生徒たち(由おと志摩かを除く)(この1年どうなるんだろう…………はあ)

ちゃんちゃん


【2884】 縦ロールの魔力  (パレスチナ自治区 2009-03-11 02:06:08)


ごきげんよう。【No:2861】の続きです。
オリキャラメインです。【No:2831】【No:2833】を先にお読みいただけると2割増ほどお楽しみいただけるかもしれません。
今回は紅薔薇様ジュディフュイオベイユの視点です。

<紅薔薇の蕾、妹を決定す!!>
これはリリアン瓦版最新号の一面を飾った記事だ。
この瓦版が学園中に出回ったのは、紅薔薇の蕾に妹が出来た2日後だ。真理子さんは本当に仕事が早い。
最近の目立った話題としては、もっぱら白薔薇様である小夜子に鼻血を吹きかけた四季潟出雲という転入生だった。
今回のこの話題というのは出雲ちゃんの事件よりずっと話題性がある。なぜなら山百合会の幹部に『妹』が出来たというのはリリアンに通う乙女たちにとっては大事件なのだから。
もちろん『紅薔薇の蕾』を妹に持つ私にとっても大事件である。

「ふー…」
瓦版を読み返して溜息が出る。
瓦版をこんなに読み返したのは美華柚が出雲ちゃんを妹にしようとして振られた時に発行されたもの以来だ。
いや、あの時よりも読み返している。
前回は失敗に終わった『妹』の『姉妹の契り』。
だが今回は成功して契りが交わされてしまった。
いつかは来るとわかっていた。
だけどこんなにすぐだとは思っていなかった。
ものすごい空虚感というかさみしい感じが私の心に渦巻いている。
『妹』を持つものならほぼ必ず訪れる『妹』が『妹』を持つ時。
今までリリアンの庭に通う乙女たちがみな経験してきたことだ。一般生徒であれ山百合会幹部であれ。
山百合会幹部の方が圧倒的にこれを経験してきているはずだ。
私もそのひとり。
本来ならば喜ぶべきはずなのに…
お姉さまもこうだったのだろうか…

数日後…
「ごきげんよ〜、遅れて申し訳ありません」
美華柚の妹になった白壇檸奈ちゃんがビスケット扉を開けて入って来た。
「ごきげんよう、檸奈ちゃん。まだみんな来ていないから大丈夫よ」
「そうですかよかった〜。ここに来る間、瓦版を持った人に何度か捕まってしまって、その度に質問攻めにあっていたんです」
「ふふ、そうなの。みんな噂とか好きだからしばらくの間は我慢だね。私が当時の紅薔薇の蕾の妹になったときもそうだったから」
「へえ〜」
「檸奈ちゃん、言葉遣いに気を付けてね」
「はっはい!申し訳ありません!!」

横で仕事をする檸奈ちゃんをちらっと見てみる。
はっきりいって可愛い娘だ。
ふわふわで柔らかそうな髪を両サイドで留めていて、幼い顔だちを余計に幼くしている。目は大きめでぱっちりしている。はきはきとした声を出す唇は桃色で正に『キスをしたくなる唇』である。
書類を一所懸命に見ている顔もなかなか…
かけている眼鏡は縁無しでちょっとインテリな感じを受ける。実際彼女はテストでトップクラスの点数を取るほど頭がいいそうだ。
その証拠に仕事を覚えるのも速い。今だってほとんど私に質問してこない。
美華柚の好きなタイプ『いろんな服が似合う可愛い娘』にも見事に該当している。
この子は美華柚の妹になるために生まれてきたのではないだろうか…

「どうしましたか?ベイユ様」
「え?」
「さっきから私の事、じっと見てましたよ?」
ちらっとのつもりが見入っていたようだ。
「ごめんね、なんでもないの」
「そうですか」
「………」
「………」
お互い見つめあったまま沈黙してしまう。少し気まずい。
私の方が先輩なのにこんな空気を作ってしまうなんて情けない…
「ねっねえ、檸奈ちゃんはいつ美華柚と知り合ったの?」
あわてて質問をして空気を変える。
「美華柚お姉さまとですか?そうですね…美華柚お姉さまが出雲ちゃんに姉妹を申し込んだ後ですね」
「美華柚が振られた後?」
「はい。私ずっと前から美華柚お姉さまにファンでよく演劇部の見学に行っていたんです。その日も美華柚お姉さまを観に演劇部に行ったんです。それで…」
「出雲ちゃんに振られた美華柚を見かけたと」
「はい、凄く落ち込んでいました」
「あの子が?」
「はい。それでお話したんです」
「どんな?」
「それはお話しできません」
「なぜ?」
「私と美華柚お姉さまのなれ初めが含まれていますから、いくらベイユ様でもお話しできません」
「………そうなの」
「はい。申し訳ありません」
なんだか面白くない…凄く面白くない……
この子は私の知らない美華柚を知っている。この子が悪いわけではないのに、なんてつまらないんだろう……
「ベイユ様?」
「……」
「ベイユ様?!」
「えっ?ああ、ごめんねちょっと嫌なことを思い出してしまったの。気にしないで」
「……わかりました」
彼女は勘が鋭いのか微妙に納得していないようだ。
また空気が悪くなってしまった。

しばらくして遅れてきた咲と小夜子が入って来た。
「二人とも遅かったじゃない」
「すみません。檸奈ちゃんに関して質問を受けてしまって……」
「私のですか?」
「ええ、どんな子なのかとか。大丈夫よ変なことは言ってないから」
「そうですか、よかった〜」
「「ふふっ」」
「えへへ〜」
咲と小夜子の言うことに一喜一憂する檸奈ちゃん。今は屈託のない笑顔を見せている。
そんな彼女を見て咲も小夜子も楽しそうだ。
「美華柚さん、こんなに可愛い妹ができてうらやましいですね。ねえ小夜子さん?」
「ふふ、そうね私も檸奈ちゃんみたいな子なら妹に欲しいと思うわ」
「お姉さま方、恥ずかしいですよ〜」
「いいじゃないですか、本当の事を言っただけですよ?」
「そうそう」
「う〜」
楽しそうな3人を見ていて、少しつらかった。だから…
「ねえ、檸奈ちゃん。そろそろ美華柚に会いたくない?」
「そうですね」
「じゃあ今日はもういいわよ。頑張ってくれたから、美華柚に会いに行ってあげて」
「はい!」
檸奈ちゃんを帰らせることにした。
檸奈ちゃんは嬉しそうに顔をほころばせている。
実際、彼女は与えた仕事を終わらせていたからもう帰ってもらってもよかった。
だから私はそれを利用した。
今日はもう檸奈ちゃんの笑顔を見るのがつらかったから。
最低だ…
私はこんなにも嫉妬深く、こんなにも醜いのかと思い知らされたような気がした。

「ねえ、二人とも。貴女たちはもうお手伝い探してないの?」
「ええっと、はい……美華柚さんが檸奈ちゃんを連れて来たのでいいかなって」
「小夜子は?」
「私も咲さんと同じで…」
「…まったくいいわけないでしょ。美華柚は部活の方にかかりきりで4人しかいないのよ、そこに檸奈ちゃんが入っても人手不足は解消しないわ」
「そうですよね」
「だから貴女たちも探してくるの。なるべく早い方がいいけど時間がかかってもいいから…檸奈ちゃんにも探してくるよう頼んだけどね」
「そ、それなら…」
「咲?貴女いい加減人見知り少しでも直すよう努力しなさい」
「…はい」

本当は道連れが欲しかった。
咲が妹を作ることによって菜々さんにも同じ気持ちを味わってほしかったのだ。
そして傷の舐め合いをしたかったのだ。

今日の私はなんだか最悪だ……
久しぶりにお姉さまに会いたくてしょうがなかった…

私は今、松平邸つまりお姉さまの家の前にいる。
緊張してインターホンを押す指が震えている。
お姉さまは御在宅だろうか…

ピンポーン

「はい、どちら様でしょうか?」
お姉さまではない別の誰かが出た。少し聞き覚えがある気がするが…
「あの私、ジュディフュイオベイユ・カーティスというものなんですけど、お姉…いや瞳子様は御在宅でしょうか?」
「ベイユちゃん?わかった開けるよ〜」
今のは…?

ゴゴゴゴゴ…

立派な門が厳かな感じで開いていく。
いつ来ても立派な家だ。空気がピリピリしている気がする。
門から玄関が遠い…

やっと着いた…

「ごきげんよう」
「ごきげんよ〜、なんだか懐かしいな〜」
「祐巳様ご無沙汰しておりました」
「そうだね、久しぶりベイユちゃん」
出迎えてくれたのはお姉さまではなく『おばあ様』の祐巳様だった。
大学生なのに相変わらずツインテールをしている。
何度会っても子供っぽい人だと思う。
「祐巳様、お姉さまは…」
「いるよ、どうしてって聞くまでもないか」
「はい…」
「この部屋だよ」
ドアを開けて中に入る。
「ごきげんよう、お姉さま!…と祥子様」
「こらベイユ、ついでみたいに言ってはいけませんわ」
「申し訳ございません!」
「ふふ、いいのよ」
何度か会ったがやっぱり美しく笑う人だ、祥子様は。
お姉さまも相変わらず縦ロールだ。
「ごめんなさいベイユ。祐巳様がどうしてもというから…びっくりしたでしょう?」
「はい。ですがどうして私だとわかったのですか?連絡はいれていませんし」
「えっとねえ、勘って言いたいんだけど、携帯電話」
「携帯ですか?」
「ベイユは私と一緒に買いに行ったでしょう。その時にお揃いのGPS付のにしたじゃない」
「そうでしたね、失念していました」
私の携帯電話はお姉さまに半径100メートルほど近付くとお姉さまの携帯電話に空メールが送られるようになっている。
そのことをすっかり忘れていた。
「ひどいですわね…まったく」
「ごめんなさい…」
「ふふっ冗談ですわ。それで今日はどうしたの?」
「急にお姉さまに会いたくなりまして…その…」
「誰でもそういう時あるよね」
「そうね、だから私たちもこうして瞳子ちゃんに会いに来たのよ」
「そうだったんですか」
モテモテなお姉さま。ちょっと面白くない…
「ベイユ、そんな顔してはいけませんわ。瞳子もちょうど貴女に会いたかったので来てくださって嬉しいですわ」
「…お姉さま」
抱きしめてもらって嬉しかった。

「ねえねえ、ベイユちゃん。最近の高等部はどうなの?」
「そうね気になるわね」
「最近ですか…」
「あの出雲ちゃんって子どうなりましたの?」
「誰かの妹になった?咲ちゃんとか小夜子ちゃんとか美華柚ちゃんとか…」
「出雲ちゃんは誰の妹にもなっていませんよ」
「そうなんだ、じゃあさ、誰か妹持った?」
嫌な質問が来た…正直答えたくない…
妹を持ったのが咲か小夜子だったら気が楽なのに…
「…ベイユ?」
「…あの、美華柚に妹が…」
「美華柚ちゃんに?!」
「はい…この間の日曜日です」
「姉妹になりたてほやほやだね」
新婚ほやほやみたいな言い方が嫌だ。
「由乃様が変な条件を付けたりしたので、美華柚、頑張っちゃったみたいです」
「由乃さん?!生きてたの?!」
「祐巳?何その生きてたのって?」
「そうですわ」
由乃様はリリアンを出てから何をしていたんだろう…
祐巳様はどう答えたらいいのか考えあぐねて百面相をしている。
「うーん…ええと…えっとねリリアン出てから由乃さんとは連絡してないというか、連絡しようとしてもつながらなくて…」
「だからといって死んだことにすること無いでしょう?」
「そうですね…」
浮き沈みが激しい人だ。
「ですが、由乃様はよく薔薇の館に遊びにいらっしゃいますよ?」
「そうなの?!!」
「はい」
「それなら私も今度遊びに行くね。由乃さんに会いたいし」
「はい是非いらしてください」
「じゃあ志摩子たちも誘ってみましょう」
「そうですね」
話が大幅に脱線した。
脱線しても走り続ける暴走機関車と言われた由乃様。そうとう破天荒な人だ。

「それで、美華柚ちゃんに妹が出来てさみしくなって瞳子に会いに来たのですね?」
「はい…美華柚は部活であまり薔薇の館に来ないんです。菜々さんや咲みたいにスキンシップと言いますか…あまりしないままあの子に妹が出来てしまって…」
「それは…」
「だから急にさみしくなってしまって…」
ぽろぽろと涙が出てくる。凄く情けない…
「ベイユ、今までのリリアン生がみんな味わってきた思いですのよ。貴女だけではありませんわ」
「わかっていますけど…」
お姉さまがいつの間にか私を抱きしめてくれている。
顔に当たるお姉さまの縦ロールのくすぐったい感じが私を安心させてくれる。
お姉さまの柔らかい感触や鼻をくすぐるいい匂いが私のすべてを包んでくれる。
幸せだ…
これならまだ立っていられる…まだ頑張れる…
「でもいいんですよ、これで」
「え?」
「こんな風に支えあったりできるのが『姉妹制度』のいいところですし、何より私が過去に決めた事が間違いではなかったと再確認できますから」
「お姉さま…」
「今日こうしてあげれば貴女はまた頑張れるでしょう?」
「はい…」
「なら今日は思いっきり甘えていきなさい」
「はい…お姉さま…」
いつの間にか祐巳様と祥子様は帰っていた。気を利かせてくれたのだろう。
先輩に気を遣わせるなんて申し訳ないが、今回は甘えさせてもらおう。

「今日は泊っていきなさい」
とお姉さまに言われたので甘えさせてもらう。
「私も今日は貴女と一緒にいたいのです」
「お姉さま…」

夕飯の後少し話をしてからお風呂に入った。
そして今は学校の宿題をやっている。
「いいお湯でしたわ」
お姉さまが部屋の戻ってきた。
いつもの縦ロールは今は解かれている。
ストレートのお姉さまも素敵だ。どっかの国のお姫様みたいに綺麗だ。
普段は縦ロールのせいなのか少し幼い感じだが、今のお姉さまはなんというか…とてもいい…
『一粒で二度おいしい』ってこの事なんじゃないだろうか…
「そんなに見つめないでくださいまし…恥ずかしいですわ」
「ご、ごめんなさい」
「ふふ」
お姉さまにわからないところを教えてもらったりしていい気分だ。

就寝時間になった。
今日はお姉さまと同衾することになった。
綺麗なお姉さまの顔がすぐそこにある。女の子同士なのにドキドキしてしまう。
「ベイユと同衾なんてドキドキしますわ」
「私もです」
「うふふ」
お姉さまと同じ気持ちなのが今日感じた幸せの中でも一番だった。
「さみしくなったらいつでも会いに来てくださいね…」
「はい…」
お姉さまは私の頭を撫でながらおでこにキスしてくれた。
今日感じたさみしさが一掃されていく。
私にとってお姉さまは『幸せの魔法使い』でもあるのだ。

「おやすみなさい」

お姉さまに元気をもらった次の日はすべてが綺麗に見えた。


さらに次の日、檸奈ちゃんが出雲ちゃんをお手伝いとして連れて来た。
出雲ちゃんは緊張した面持ちで部屋の中を見回している。
早くこの子の不安を取り除いてあげなければ…

「ごきげんよう、出雲ちゃん。来てくれてありがとう。歓迎するわ」

私は紅薔薇様。まだまだ頑張らなくては!


泣き言
今回は前半ベイユ、後半出雲の視点で書こうと思ったんですが、紅薔薇ファミリーを出そうと思いたってベイユ視点のみにしました。
ただ………祥子も祐巳も瞳子も誰かわからないような気がします……
原作のキャラクターを動かすのは難しいです。
さらに主人公であるはずの出雲が2作連続で出てきませんでした。由々しき問題です。
たぶん…
次には出てくると思います。
最後にここまで読んでくださった方々ありがとうございます。
またよろしくお願いします。




【2885】 そんなこともあるそれが愛でも信じない普及への課題  (クロス 2009-03-11 11:07:00)


【No:2881】【No:2883】と同じ世界

 『マリア様が見てる×ドラえもん』(注:クロスオーバーです+自己中表現あり)

 小ネタ集 その2

 <どこでもドア>

祐巳「……ねえ」

聖えもん「どうしたんだい、祐巳ちゃん。早く志摩かちゃんの家へ行こうよ」

祐巳「そ、そのことなんだけど……どうも落ちが見えてるっていうか……とてつもなく嫌な予感がビンビンするの」

聖えもん「ふーん、じゃあやめとく?」

祐巳「そうしようk」

がちゃっ

志摩か「きゃー祐巳さんのえっちー」

祐巳「えっ!? なんでそっちからドアが開けられるの!! そして志摩かちゃん、自分で開けといて白々しいし、なんて棒読みセリフなの!!」

志摩か「祐巳さんなんか……大好き(ラブ)」

祐巳「セリフ違うよ!! ってなんで私の袖を掴んでるの!?」

志摩か「ふふふ、恥ずかしがらないで、祐巳さん。婚約した仲でしょ」

祐巳「……前々から言おうと思ってたんだけど、設定上、志摩かちゃんと私が結婚することは志摩かちゃんは知らn」

志摩か「お風呂を一緒に入りましょうね、祐巳さん」

祐巳 ヌギハギ ヌギハギ 「ちょ、私の話をきいt」

志摩か「可愛いわ、祐巳さん。体をしっかり洗いましょうね。今夜いただくのだから」

祐巳「何いってるの!? 志摩かちゃん、さすがにそれはやばいよー!!」

志摩か「結婚初夜が始めてじゃないなんて別に珍しいことじゃないわ」

祐巳「そうじゃなくてー!! 本当にやばいんだってばー!! 志摩かちゃん、目を覚まして!!」

志摩か「ふふふ、今夜は眠らせないわよ(ラブ)」

祐巳「し、志摩かちゃん……(泣き)」

聖えもん うずうず 「志摩かちゃん、わたしも混ざっていい?」

祐巳「聖えもん!?」

志摩か「構いませんよ。隅っこで座ってるなら」

聖えもん「えー、せっかくこの立場にいるんだし、私だって祐巳ちゃんにあれこれしたいよ〜」

祐巳「聖えもんは私をダメ人間から救うために来たんですよね!!」

志摩か「……しかたありませんわね。今日だけですからね」

聖えもん「いーやっほー! さあ祐巳ちゃん、おとなしく私に食べられなさい!」

志摩か「ふふふ」

祐巳「想像した通りだよ……誰か助けてー!!」

聖えもん「まったく、往生際が悪いw」

「「聖」」

聖えもん またまたぞくっ

聖えもん「ソローリ なんだ蓉みとしーちゃんか。蓉みはわたしのことをお姉ちゃんと言わないと、しーちゃんは人の言葉をしゃべっちゃダメだぞ」

しーちゃん「あなた私や蓉子さまというものがありながら、また他の女に手を出すの?」

蓉み「そうよ、与えられた設定をちゃんと守りなさい」

聖えもん「蓉みがそれを言いますか!! それに蓉みと私の関係は姉妹だからね!! 恋人じゃないよ!!」

蓉み「そんなことは今はどうでもいいのよ!!」

聖えもん「とても重要なことだけど……」

蓉み「これはお仕置きが必要ね」

しーちゃん「そうですね、蓉子さま」

聖えもん「ちょ、ちょっとまっt」

蓉み しーちゃん「問答無用!!」

聖えもん「ぎゃーーーーーーーーーーーー」

志摩か「さあ祐巳さん、いきましょう。悦楽の世界へ(ラブ)」

祐巳「きゃーーーーーーーーーーーーー」


 その後、祐巳は何故か現れた先生(祥子)と由おが志摩かと争ってるうちになんとか抜け出すことに成功した。
しかし、どこでもドアは志摩かの手に。祐巳の貞操の安全はほぼ皆無になったとか……
ちなみに聖えもんはどうなったかは誰も知らない……



 <学校の先生兼理事長 祥子>

先生(祥子)「今日はテスト返すわ。名前が呼ばれたら、前に来てテストをもらいなさい」


生徒?(桂)「ふふーん、今回のテストは調子が良かったのよね〜これはもしや100点かも」

ちらっ

生徒1「・・・うそ・・・」

テスト 0点

生徒1「なんでー! いくら何でもこれは……」

先生「祐巳、今回はがんばったわね。100点よ」

祐巳「えー本当ですかー! やったー」

生徒1「ちょっと、祐巳さん見せて!」

ちらっ


第1問 次の問題を計算せよ
(1)2/5+5/7=7/12 ○
(2)8/9×7/4=49/36 ○
(3)11/12÷1/2=割れない ○
(4)3/2+5/4×9/5=うーんよくわからない ○
(5)2+1/2=2と1/2 ○

第2問 次の文章を読み、以下の問いに答えよ
 祐巳は祥子のためにケーキを1ホール買ってきました。祥子はケーキを1/5、祐巳は1/4食べました。
その後、清子お母様がケーキを1ホールの半分を持って祥子たちに混ざったり、祥子、祐巳はさらにそれぞれ1/5ずつ、清子お母様は1/6食べました。

(1)祥子と祐巳が最初にケーキを食べたとき、残りはどれくらいだったでしょう?
A 私はケーキが好きなので残しません ○

(2)清子お母様がケーキを持ってきたとき、ケーキは全部でどれくらいだったでしょう?
A 清子おばさまは限度を知らないのでたくさんケーキを持ってきた ○

(3)最後にケーキはどれくらい残ったでしょう
A お姉さま、大好き(ハート) ◎

100点 祐巳、今度私のうちへ来なさい


生徒1「な、なんじゃこりゃーーーーーー!!」

生徒1「先生! これ1問も合ってないじゃないですか!」

先生「あら、自分が0点だったから、祐巳を妬んでるのかしら?」

生徒1「違います! それにこんな答えだったら、祐巳さん以外誰も答えられません!」

先生「祐巳の答えに間違えはなくってよ。それに高得点を取った者もちゃんといるわよ」


由お「志摩かちゃん、何点だった?」

志摩か「96点よ。由おさんは?」

由お「9、90点よ。くー負けたわ」

志摩か「ふふふ、やっぱり私のほうが祐巳さんのことわかってるね」

由お「つ、次は必ず勝ってやるわよ! 祐巳さんのことをよく知ってるのはわたしなんだから」

志摩か「ふふふ、負け犬が吠えてますわ」

由お「くやしい!!」


先生「どうわかったかしら?」

生徒1「は、はあ」

先生「そう、わかったんならちゃんと復習しとくのよ。それじゃあ……  ちょっと由おちゃん、誰が祐巳のことを1番知ってるかですって…………」

生徒1「・・・だめじゃこりゃ」


 <雷おばさん>

ヒュ〜〜〜 ガチャンッ

由お「ちょ、ちょっと、令あん! どこ飛ばしてるのよ!」

令あん「ごめんよ、由お! お願いだからバット握らないで!」

志摩か「あらあら、あそこは雷さん家ね。あの方、怒ったら怖いって噂よ」

由お「令あん、さっさと謝りに行きなさい!」

令あん「わたし1人で行くの!? 怖いから一緒に来てよ〜由お〜」

由お「はあああああ!! 何で私がついて行かなきゃいけないのよ!! ?人でいきなさい!!」

令あん「由お〜」

祐巳「まあまあ。令あん、わたしがついて行ってあげるよ」

令あん「祐巳ちゃん……」

志摩か「祐巳さん、かわいい(ハート)」

由お(まったく祐巳は……)「……しょうがないわね……祐巳が危ないから私もついて行ってあげるわよ」

令あん「由お〜」

由お「それじゃあ、さっさと行くわよ!」

令あん「うん」


 雷おばさん家前

祐巳「ね、ねえ……志摩かちゃん。そんなにくっつかれると動きづらいなあ」

志摩か「祐巳さん、ひどいわ。未来の花嫁を守ってくれないの?」

祐巳「いや、そんなことは言ってないよ」

由お「祐巳が困ってるわ!! さっさと離れなさい!!」

志摩か「……由おさん、うらやましんでしょう?」

由お「くっ!!」

祐巳「そ、そんなことより、雷さんに謝らなくちゃ」

令あん「そうよ。こんなところでけんかはダメだよ」

由お「ふんっ」

志摩か「そうね。まずは雷さんに謝ることが先決ね」

令あん「じゃ、じゃあ押すよ」

ピンポ〜ン

祐巳「ねえねえ、雷さんの噂ってそれだけなの?」

志摩か「そうねえ……何でも雷さんの姿を見たとき、思わず目を閉じてしまうらしいわ」

祐巳「うわーなんか怖そう、私たち大丈夫かな?」

由お「大丈夫よ、祐巳。祐巳だけは私が守ってあげるわよ」

祐巳「由お……」

令あん「そろそろ静かに! もう来るわよ」

がらっ

祐巳 由お 志摩か 令あん「ま、まぶしー!」

雷おばさん(凸)「はっ?」


ちゃんちゃん


【2886】 アリマ様がみてる  (名無しのゴンゾウ 2009-03-11 14:59:06)


「ロサ・カニーナの誕生だね」

「ありがとうございます、祐巳さま」

「まさか可南子と一緒に薔薇さまをやるなんて思わなかったな〜」

「力仕事はお任せしますわ」

「こら、瞳子」

「ごめんね可南子ちゃん、迷惑かけちゃって」

「可南子さまおめでとうございます、薔薇さまの重責を押し付けるような形になってしまい申し訳ありません、来年は咲けるように今年一年精進してまいりますのでどうかお付き合いください」



すべては私の我儘から始まった

一年生の冬、私は生徒会役員選挙に立候補しなかった

剣道に集中したかったのもあったが、それ以上に自信がなかった

私は逃げてしまったのだ、ロサ・フェティダの重責を懼れて



お姉さまは何もいわなかったし瞳子さまも乃梨子さまも何もいわなかった

でも、普通の生徒たちはそうではなかった

私に立候補するように説得に来る人、なぜ由乃さまの妹になったと非難する人、代わりに誰に立候補してほしいかを訊きに来る人

あのリリアンかわら版が事態の収拾に乗り出すほどにまで混乱は広がっていた

ロザリオを返そうと思ったことも何度もあった、でも返せなかった、お姉さまのことが好きだから

私は弱かったのだ、黄薔薇革命前の令さまよりも



とりあえず瞳子さまと乃梨子さまの信任投票を行い、黄薔薇さまは欠員として早期に選出するということに決まった

もちろんお二人は信任され、晴れて薔薇さまとなった

私は自責の念に駆られ、薔薇の館には行かなくなっていた

お姉さまも私に付き合って薔薇の館には行かなくなっていた

ちさとさまは私たち姉妹が活動しやすいように計らってくださった



可南子さまが立候補を表明したのは卒業式目前のある日だった

薔薇の館や古い温室、ときにはバスケ部の活動が終わるのを待って、祐巳さまと志摩子さまが説得してくださったそうだ

可南子さまがかつて薔薇の館に出入りしていたこと、薔薇さまは新旧全員賛成だということ、ロサ・カニーナという新しい称号が用意されたこと

これらによって可南子さまの薔薇さま就任は確実となった



瞳子さまにも乃梨子さまにも妹がいなかったため、この年の薔薇の館での三年生を送る会は非常にさびしいものになったという

そして卒業式も



可南子さまへの信任投票は卒業式の翌日に行われ、即日開票の結果、可南子さまが正式にロサ・カニーナに就任した

祐巳さまも志摩子さまも、そしてお姉さまもお祝いに駆けつけてくださった



私は剣道部のエースとなり、リリアンは交流試合で優勝を果たした



冬、私は薔薇の館に戻ってきた、忘れ物を取りに、約束を果たしに

薔薇の館の住人は私を快く迎え入れてくれた

しかしロサ・キネンシス、ロサ・ギガンティア、ロサ・フェティダの三つの薔薇が薔薇の館に咲き揃うことは二度と無かった



可南子さまには本当に感謝している

未熟な私に代わって薔薇さまを務めて下さった

今のリリアン剣道部の強さは可南子さまなくしてはありえなかった

だから私はリリアンで剣道を教え続けているのだ

少しでも恩返しできるように


【2887】 体育会系のノリ駄目人間爆走中  (名無しのゴンゾウ 2009-03-11 15:08:44)


※【No:2876】の続きです、一部を除きすべてオリキャラです。ご注意ください


「よろしい、時間通り」

誰ですか

「先に自己紹介しておくわ、私が去年の黄薔薇の蕾の江里口陽菜よ、よろしくね」

はぁ

「防具を用意しておいたわ、つけてきなさい」

何たくらんでやがる



「うん、ぴったりね」

何故ぴったりに作れたのかは訊かないでおこう、怖すぎる

「はい、竹刀」

はぁ

「長すぎ?」

それは大丈夫なんですが、わたしはいったい何をさせられるんでしょうか

「聡子と勝負」

あっさりとおっしゃってくれます

「負けたら聡子の妹プラス剣道部入部だから」

ぇー



「始めいっ!」



なかなか手強い



簡単には取らせてくれないわよね



来る!

「一本」

ふぅ



「放課後も来なさい、手合わせしてほしい人が三人いるの」

わたしの予定は?

「あるの?」

ありませんけど

「じゃあいいじゃない」

よくありません

 「いいですよー、授業が終わったら連行してきます」

 「逃げちゃだめよー?」

美和子さんにたまきさん!!そんな勝手な

「それじゃお願いね、美和子ちゃん、たまきちゃん」

いいえ

 「「はい」」

やだよう


【2888】 どこへ向かうさりげなくあの人はカワイイ♪  (クロス 2009-03-12 19:31:52)


『マリア様がみてる×ポケットモンスター』(注:クロスオーバー?です)

 テレビを見るときは部屋を明るくして離れてみてね


 ポケモン ゲットだぜ!!

 たったらたったった〜 たったらたったった

 たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中〜

 土の中 雲の中 あの娘のスカートの中

瞳子「キャー」

瞳子「って何するんですか、祐巳様!!」

ユミタン「おー瞳子ちゃん、のりのりだね〜 あと、私は小狸ポケモンのユミタンだよ。祐巳様じゃないよ」

瞳子「そんなことわかっております! まったく……今から四天王に挑戦すると言うのにまるで緊張感のないポケモンですわ」

ユミタン「へへへ」

瞳子「ほめておりませんわ! はあ……ここまで来れたのが奇跡ですわね」

ユミタン「うん、そうかもね。それにしても、ここまで来るのに色々なことがあったね」

瞳子「苦労が耐えない日々でしたわ」

ユミタン「……ねえねえ、私の出会い覚えてる?」

瞳子「もちろんですわよ。まさか、こんなポケモンを選ぶことになるなんて……」




 <瞳子と祐巳の出会い>

ツタコ博士「いらっしゃい、瞳子ちゃん。ついにポケモンマスターになる旅に出るんだって」

瞳子「そうなのですわ。あんな就職に困った人が目指すものでも大女優の肩書きにでもなれば、そこそこ役に立つと思っただけですわ。決して昔から憧れてなんかいませんわよ」

ツタコ博士「そ、そうなんだ」

瞳子「ところでツタコ博士は瞳子に何の用ですの?」

ツタコ博士「そうそう。瞳子ちゃんの手助けしたくてね。ここに3匹のポケモンがいるんだけど、この中から、1匹を瞳子ちゃんに譲るよ」

瞳子「まあ。ほんとうですの? どれにしましょうか」

瞳子 きょろきょろ「あー迷ってしまいますわ」

がさっ がさがさ

瞳子「ん?」 

瞳子「何か物音がしましたが、あちらに何かいましての?」

ツタコ博士「実はモンスターボールに入りたがらないポケモンがいてさ。しかも、なかなかわがままで手がかかってるんだよ」

瞳子「そうなのですか。少し見てもよろしいですか?」

ツタコ博士「いいよいいよ」

瞳子 ちらっ


ユミタン ぺら …… ぺら …… ぺら …… ぺら !

ユミタン「もう! なんで瞳子はここでロザリオを受け取らないの!? 祐巳がお姉さまの前で恥じかいちゃったじゃない! プンスカ プンスカ」

ユミタン「だいたい瞳子は……」


瞳子「……な、なんなのですの、あのポケモンは……」

ユミタン「ん?」

瞳子「あっ」

ユミタン「あー 瞳子ちゃんだー もしかしてわたしに会い来てくれたの? わーい これで瞳子ちゃんと旅ができるー」

瞳子「は?」

ツタコ博士「お、ユミタン、瞳子ちゃんになついたわね。瞳子ちゃん、この子を連れて行けば」

瞳子「なんで瞳子がこんな弱そうなポケモンを……」

ユミタン「やった やった」

ツタコ博士「ユミタンがこんなに喜ぶのってお菓子を食べてるときぐらいだよ。絶対相性いいって」

瞳子「でも……」

ユミタン 瞳子の方を見ながら「わくわく わくわく」

瞳子「///」

瞳子 ぷいっ

ユミタン「ガーン」

瞳子「こんなポケモンより、もっと強そうなポケモンを選びますわ!」

ツタコ博士「そうなの。もったいない気がするけどなあ」

瞳子「なんとでもおっしゃってください」



瞳子「ええと、このゼニガメっていうのは……」

ユミタン「うるうる うるうる」

瞳子「やっぱりヒトカゲの方が……」

ユミタン「うるうる うるうる」

瞳子「総合的に見てフシギダネが一番強い……」

ユミタン「うるうる うるうる」

瞳子「…………」

ユミタン「うるうる うるうる」

瞳子「はあ……ユミタン、あなたにしますわ」

ユミタン「えっ、本当? やったー」

ツタコ博士「結局、選ぶんじゃない」

瞳子「あんな目で見られてたら、選ばざるをえないですわ……」

ユミタン「お菓子は持った ハンカチは持った 木の実は……一応2つ持ってこう」

ツタコ博士「……見た目はこうでも実際は強いかもよ」

瞳子「それならいいですけど……」

ユミタン「準備終わったよ! 瞳子ちゃん、出発しよー」

瞳子「はあ……わかりましわ……」

てくてくてく……

ツタコ博士「いってらっしゃーい」



ツタコ博士「……ふう、これでユミタンの撮影に精が出せるわ。ユミタン、全然外出しないからなあ……瞳子ちゃんには感謝するよ」

ツタコ博士「ふふふ、ユミタンのあれこれをカメラに納めてやるわ。ユミタン、期待してるわよ……」

こそこそ……




瞳子「はあ……」

ユミタン「あと、ライバル可南子ちゃんの対決もすごかったね」

瞳子「そうですわね……あの方がライバルだと考えると気が滅入りますわ」




 <ライバル可南子登場>

 1戦目

瞳子「可南子さん、その目障りな身長どうにかなりませんの?」

可南子「……ドリルポケモンか。ただでもいりませんわね」

瞳子「瞳子の縦ロールはドリルなんかじゃありません! このはりがねポケモン!」

可南子「言ってなさい。私はあなたなんかとお話しするほど暇じゃないのよ」

瞳子「瞳子だって! ポケモンマスターになるために日々鍛錬をしないとだわ」

可南子「ふっ」

瞳子「あっ 今鼻で笑いましたわね!」

可南子「瞳子さんがポケモンマスターになれるのであれば、そこらへんのチンパンジーでもなれますわね」

瞳子「チンパンジーですって!! もう怒りましたわ!」 

瞳子「細川可南子! 瞳子と勝負しなさい!」

可南子「望むところよ。あなたなんか、私の敵ではないことを教えてあげる」


てゅるるるるるるん たんったんったたったん

 細川可南子が現れた!


瞳子「いくのよ、ユミタン!」

ぽんっ

ユミタン「タヌー!」

可南子「モンスターボール!」 ひゅっ

ユミタン「へ!?」

瞳子「危ない!!」

ばしっ  ころころころ……

瞳子「ふう……って瞳子のポケモンに何するんですか!」

可南子「ちっ」

可南子「瞳子さん、そのポケモンをこっちに寄越しなさい」

瞳子「は?」

可南子「ユミタンは私が可愛いがりますわ。瞳子さんじゃ、ドリルが邪魔で抱きかかえることもできないのでは?」

瞳子「だから、瞳子の縦ロールはドリルじゃない……ってそんなことより人のポケモンを盗ることは犯罪ですのよ!」

可南子「ふっ 私とユミタンの間に立ち入る法律なんてないわ」

可南子「さっさと寄越しなさい!!」

瞳子「……このキチガイ女が」

ユミタン「ガクブル ガクブル」

瞳子「……と、とにかく、危険すぎるから逃げましてよ」

ユミタン「ガクブル ガクブル」

だっだっだっだっだっ……

可南子「逃がしませんわよ。必ずや、ユミタンを…ふふふふふ…」

だっだっだっだっだっ……


 2戦目

可南子「スーパーボール!」

瞳子「しつこいですわ!」


 3戦目

可南子「ハイパーボール!!」

瞳子「いい加減してくださいまし!」


 4戦目

可南子「マスターボール!!!」

瞳子「本当にいい加減にしてくさいましーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」




瞳子「はあ……」

瞳子「最終的には瞳子達のストーカーとなって、24時間ユミタンのことを狙い続けましたわね」

ユミタン「ほんとに怖かったよ〜 空を飛ぼうが波に乗ろうが必ず後を追ってくるんだもん」

瞳子「今も初期ポケモンしか持ってないのに……あの方はストーカーの極みですわ」

ユミタン「チャンピオンロードに行く前の検問にしっかりひっかかってたけど、どうなったかな?」

瞳子「知るよしもありませんわね」

壁)がさっ

瞳子 ユミタン !!

続く



 あ〜 憧れの 

 ポケモンマスターに〜

 なりたいさ なーらなくちゃ

 絶対なって やるーーーーーーーーー

 


【2889】 思い出しちゃって祐巳は見た天国・煉獄・地獄  (bqex 2009-03-13 02:00:40)


 お姉さまに立ち会ってもらって瞳子ちゃんと正式に姉妹になった。
 ここに来るまでの事が思い出される。


初回

 私は志摩子さんの事を相談しに大学部の聖さまのところに行って会合に遅刻してしまった。
 慌てて薔薇の館にたどり着くとお姉さまはおかんむり。
 ひたすら謝る私の耳に声が聞こえた。

「だって、この方おっかしいんだもの」

 お姉さまの親戚の松平瞳子ちゃんだと紹介された。

 アタックしますか?

  -> はい
    いいえ

 アタック開始!

 甘えた声で瞳子ちゃんはお姉さまに言った。

「また、遊びにきていいですか?」

 すかさず私は声をかけた。

「あら、瞳子ちゃん薔薇の館が気に入ったのなら、私の妹になって、薔薇の館の住人にならない?」

「はっ?」

 私は席を立ち、瞳子ちゃんの前に来るとロザリオを取り出した。

「初対面の相手に気軽にロザリオを渡すようなお姉さまはいりません」

「あら、それは私の事を暗に非難しているのかしら?」

 お姉さまがこめかみをぴくぴくさせて、でも、笑顔を作り瞳子ちゃんに聞いた。

「と、瞳子は演劇部に専念するので、やっぱり頻繁には遊びに来られないかも〜。ごきげんよう」

 瞳子ちゃんは逃げ出し、二度と薔薇の館には近づかなかった。

 アタック失敗!

 福沢祐巳は妹を作れなかった!
 あおりをくらって藤堂志摩子は二条乃梨子を妹にするまで10か月かかった!

 やり直しますか?

  -> はい
    いいえ


2回目

 お姉さまとの雨の日のすれ違いは蓉子さまの力を借りて解決し、私達は絆を深めた。

 お姉さまが復帰するのと同時に瞳子ちゃんは薔薇の館のお手伝いを辞めた。

 アタックしますか?

  -> はい
    いいえ


 アタック開始!

 瞳子ちゃんに会うためにクラブハウスにやってきた。
 演劇部の部室前で瞳子ちゃんを捕まえた。

「瞳子ちゃん、お手伝い本当にありがとう」

「いえ、大したことではありませんわ。祥子お姉さまも復帰されましたし」

「ううん。瞳子ちゃんはよくやってくれたよ。でも、このまま演劇部に返しちゃうのはさびしいし、もったいないなあって──」

「あら、話が違うわ」

 部室から演劇部部長の高城典さんがあらわれた。

「瞳子ちゃんは親戚の紅薔薇さまの事情で来られない間限定の助っ人でしょう? これ以上、薔薇の館に入り浸られては演劇部の活動にも支障をきたすわ。それは瞳子ちゃんの意思を無視する事よ」

 典さんは瞳子の手を引いて部室に入ってしまった。
 その後、瞳子ちゃんは典さんのロザリオを受け取ったという。

 アタック失敗!

 福沢祐巳は慰めてくれた敦子を妹にした!
 しかし、それは福沢祐巳が卒業する日だった!

 やり直しますか?

  -> はい
    いいえ

6回目

 2学期が始まり、可南子ちゃんが薔薇の館に出入りするようになったが、可南子ちゃんにはいろいろと問題があって、気まずくなってしまった。
 このままではいやなので、体育祭で可南子ちゃんと賭けをする事にした。

 体育祭の朝、瞳子ちゃんに呼び出された。

 アタックしますか?

  -> はい
    いいえ

 アタック開始!

「妹にしてと言われたらどうするおつもりですかっ!」

「瞳子ちゃん、可南子ちゃんを私の妹にしたくないなら、瞳子ちゃんが私の妹になればいいんじゃない?」

「はっ?」

「すでに妹がいるのに『妹にしてください』なんて言わないだろうし、言ってきてもちゃんと断るから」

「断るための口実のために私を妹にしようだなんて! 失礼します!!」

 瞳子ちゃんはダッシュで逃げた。

「ご、誤解だよ! 瞳子ちゃ〜ん!!」

 瞳子ちゃんは2度と口をきいてくれなかった。

 アタック失敗!

 福沢祐巳はその日フォークダンスで踊った1年生を妹にした!
 しかし、桂さんの苗字はわからなかった!
 ちなみに江利子さまの胸は大きかった!

 やり直しますか?

  -> はい
    いいえ


11回目

 学園祭の手伝いに瞳子ちゃんと可南子ちゃんが来る事になった。
 瞳子ちゃんは一時期演劇部と気まずくなったが、説得の結果、演劇部に復帰した。
 学園祭の当日、瞳子ちゃんと束の間の学園祭デートを楽しんだ。

 アタックしますか?

  -> はい
    いいえ

 アタック開始!

 後夜祭となり、瞳子ちゃんをマリア様の前に連れてきた。

「今日は本当に楽しかった。私ね、ずっとこんな日が続いたらいいなあって思ったんだ」

「はあ」

「瞳子ちゃん、私の妹になって。私じゃダメ?」

「え……」

「ちょっと待った!」

 典さんが現れた。

「演劇部に入部した時から、ずっと妹にしたいと思ってました。私の妹になってください」

「はっ?」

「ちょっと待った!」

 立浪繭さん登場。

「私の四葉のクローバーはあなただと思っています。ぜひ、妹になってください」

「はあっ!?」

「ちょ、ちょっと! 私が先に申しこんだのに」

「先に目をつけたのは私よ!」

「ふん、第3者に割り込まれて揺らぐ程度の絆なんてないも同然よ!」

「なんですって!?」

「あなたは引っ込んでて!」

 壮絶な修羅場が展開され、異変を察知した教職員たちにより、私達3人は取り押さえられ、以後、松平瞳子には近づかないという誓約書を書かされた。

 アタック失敗!

 福沢祐巳は何となく美幸を妹にした!
 バグで支倉令は高田鉄と交際する事になった!

 やり直しますか?

  -> はい
    いいえ



15回目

 学園祭が終わり、由乃さんが妹オーディションをやるといいだした。
 お姉さまは由乃さんの提案に乗り気だった。

「オーディションなんか、必要ない。妹にしたい子がいます、というのであればいますぐここに連れてくるのね」

 アタックしますか?

  -> はい
    いいえ

 アタック開始!

「わかりました、今すぐ連れてきます」

 私はクラブハウスに向かって走った!

「あっ!」

 私は派手に転び、流血の惨事となってしまった。
 そこに可南子ちゃんが通りかかる。

「まあ、祐巳さま! 保健室におつれします」

「ありがとう」

 可南子ちゃんは私に付き添い保健室に、そして、手当が終わると薔薇の館に連れて行ってくれた。

「まあ、祐巳ったら、妹にしたい子って可南子ちゃんの事だったのね」

 違うフラグが立った!
 アタック失敗!

 福沢祐巳は細川可南子を妹にした!
 祐巳がお節介を焼かなかったので内藤笙子は島津由乃の妹になった!

 やり直しますか?

  -> はい
    いいえ



19回目

 薔薇の館でクリスマス会が催された。
 ゲストは蔦子さん、瞳子ちゃん、可南子ちゃん、そして菜々ちゃんである。
 ゲーム大会が終わって、由乃さんたちの事が片付いたころ、帰ろうとしていた瞳子ちゃんと目があった。

 アタックしますか?

  -> はい
    いいえ

 アタック開始!

 廊下で瞳子ちゃんに追いついた。

「瞳子ちゃん、帰るの? 一緒にそこまで歩かない?」

「ええ……」

 その時後ろの扉が開いた。 

「あ、私、お手洗いにいきたいので、そこまで一緒に」

 菜々ちゃん、ここは気を使って。

 視線で威圧すると菜々ちゃんは何かに気づいて部屋に戻った。

「瞳子ちゃん、一緒に──」

 その時後ろの扉が開いた。 

「あれ、瞳子……」

 乃梨子ちゃん、さっきモメた原因をもう一度思い出して。

 オーラで威圧すると乃梨子ちゃんは何かに気づいて部屋に戻った。

「あの、瞳子ちゃん──」

 その時後ろの扉が開いた。 

「暗くなってきてるから、送っていこうか……」

 蔦子さん、あなたはカメラマンでしょう? わきまえて。

 ツインテールで威圧すると蔦子さんは何かに気づいて部屋に戻った。

「瞳子ちゃ──」

 その時後ろの扉が開いた。

「祐巳、渡したい物があるの」

 お姉さま、ここは自重してください。

 曲がったタイで威圧するとお姉さまは何かに気づいて部屋に戻った。

「あの──」

 その時後ろの扉が開いた。

「瞳子ちゃん、さっきの話で言い忘れてたけど、私はお寺の住職の娘じゃなくて、住職の息子で無宗教になった男性の娘で……」

「ええっ!」

 し〜ま〜こ〜さ〜ん!!

 フラグ失敗!

 ヤケになった私はどうせやり直すのだからとロザリオを取り出した。

「瞳子ちゃん、動かないで!!」

「ひっ!」

 ロザリオを瞳子ちゃんのドリルにひっかけないようにかけようと瞳子ちゃんにとびかかる。
 瞳子ちゃんは私の異常な気配に怖じ気づき、一歩下がった。

「危ない!!」

 階段の上から落ちそうになった私達をなんとかしようと志摩子さんが手を伸ばす。

「どうしたの、祐巳!?」

「祐巳さん!」

「祐巳ちゃん!」

「志摩子さん!!」

 志摩子さんの叫び声を聞いて全員が部屋から出てきた。

「うわ〜!!」

「きゃ〜!!」

 私は瞳子と共に階段から転げ落ちた。

 転げ落ちていく瞬間がスローモーションのように感じられる。

 転げながら、私はお姉さまが見ていると確信しながら瞳子ちゃんにロザリオをかけた。



 アタック成功!

 福沢祐巳は松平瞳子を妹にした!

 エンディング(E)




 ああ、最近は一応クリアは出来るのに、またバッドエンド。
 どのフラグを立てればエンディング(A)になるんだろう。


  ->もう一度チャレンジする
   おしまい


【2890】 その時歴史が動いたいつか現実になるいい加減ですし  (クロス 2009-03-13 19:09:30)


【No:2888】の続き

『マリア様がみてる×ポケットモンスター』(注:クロスオーバー?です)

 テレビを見るときは部屋を明るくして離れてみてね


 こいつたーちーがーいーる〜 ピカチュウ〜

 (間奏)

 たんったったったん たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中〜

 土の中 雲の中 あの娘のスカートの中 

瞳子「しつこーい!」


瞳子「……………」


瞳子「ゴホンッ…まあ2番の歌詞なのですが、わかりづらいかもしれませんわね……」


瞳子「………………」


瞳子「……なんかすべった感が残りますわ……」


瞳子「…………………」


瞳子「で、でも、これもユミタンが瞳子に変なことを……」

ユミタン「…………」ぺら

瞳子「ってユミタン?」

ユミタン「…………」ぺら

瞳子「??」

ユミタン「…………・・・ !!」

ユミタン「あーもう!! どうして瞳子はこんな変なことするの!! 『選挙で負けることが目的』? 意味がわからない! 祐巳に気を掛けてほしいのであれば、直接言葉で言いなさい!! 瞳子だってレイニーブルーのとき祥子様の近くにいたでしょ? なんでわからないの!?」

瞳子「カチーン」

瞳子「……なんでしょうか、この気持ち……? 決して瞳子のことを言ってるのではないとわかるのですが、なんかもやもやしますわ」


ユミタン「だ・い・た・い! 瞳子は……」

瞳子「祐巳の方がいつまでも瞳子のことをわからないからですわ!」

ユミタン「!! と、瞳子ちゃん……?」

瞳子「そうですわ。祐巳さまがにぶちんなのがすべての要因ですわ」

ユミタン「何故か知らないけどカチーン」

ユミタン「祐巳が悪いって言うの!? 祐巳はいい子じゃない!! 瞳子の方が一方的に悪いよ!!」

瞳子「いいえ!! 瞳子は自分のことを素直に晒せない淑女なんです!! 祐巳がそこんとこ全然わかってないのが悪いですわ!!」

ユミタン「うう、で、でも、瞳子が……」

瞳子「だから、祐巳が……」

・・・・・・・白熱するところ2時間経過・・・・・・・・・

ユミタン「ハア……ハア… 祐巳も瞳子も両方悪いってことでいい?」

瞳子「ハア…ハア…ハア…… いいですわ」

ユミタン「ふう…なんか議論してたらお腹空いちゃった。瞳子ちゃん、お菓子お菓子ー」

瞳子「はいはい、今出しますわ」

リュック)がさがさ 

瞳子 ??

リュック)がさがさがさがさ

瞳子「もうないようですわ」

ユミタン「ガーン」

ユミタン「瞳子ちゃん、お菓子…… うるうる」

瞳子「わ、わかりましたから! すぐにポケモンショップで買いに行きますからその目はやめてくださいまし!」

ユミタン「わーい 瞳子ちゃん、大好きー」 だきっ

 ユミタンは瞳子に甘えた

瞳子「ぐふっ」

 効果は抜群だー

ユミタン「……瞳子ちゃん?」

瞳子「ユ、ユミタン。そいうのはおやめなさいって言ったでしょう?」

ユミタン「えー なんでー?」

瞳子「お菓子が早く欲しいでしょ? もうこれ以上、瞳子のHPを削らないで……」

ユミタン「うーん、わかった。お菓子、早く欲しい」

瞳子「そう。それじゃあ、いい子でお待ちください」

ユミタン「いってらしゃーい」ふりふり

 ユミタンはしっぽを振った

瞳子「ぐはっ」

 やっぱり効果は抜群だー

瞳子(あーこれで32回目ですわ)ばたんっ

 瞳子は倒れた……

ユミタン「と、瞳子ちゃん!?」

瞳子(死んだら恨みますわよ、ユミタン……)




 <ユミタンのはじめての戦闘>

「お待ちなさい」

瞳子 ユミタン !!

 野生のサッチーが現れた 

サッチー「タイが曲がってるわ」

サッチー「直してあげる」

サッチー「この鋭い爪でね!!」

 野生のサッチーははりきっている

瞳子「つ、つつ、ついに始めてのポケモンバトルですわ」

瞳子「い、いくのよ! ユミタン!」

ユミタン「タ、タヌ……いやです」

 ユミタンは瞳子の命令を拒否した

瞳子「何を言ってるのですか! ポケモンが戦わなくてどうするのですか!」

ユミタン「だって、怖いんだもん!」

瞳子「そんなこと言ってる場合ですか! ポケモンマスターになるためにはもっと怖いポケモンと戦うかもしれませんのよ!」

ユミタン「だったらポケモンマスターにならなくていい! 帰ってお菓子でも食べて寝る!」

瞳子「ポケモンマスターになりたくないのですか? ポケモンマスターですのよ!」

ユミタン「別にならなくていいもん! お菓子の方が何倍も魅力的だもん!」

瞳子「ポケモンマスターはみんなの憧れですのよ。それはそれはお菓子なんか霞むぐらい魅力がありますわ! ま、瞳子は別に憧れていませんけど」

ユミタン「お菓子をバカにしたなー」

瞳子「バカになんかしてませんわ。ただ、ポケモンマスターになればお菓子食べ放題ですわ」 

ユミタン「えっ………それって本当?」

瞳子「本当ですわ(うそ800)」

ユミタン「………うん、わかった。わたし戦う!」

瞳子「わかってくれてなによりです」

瞳子「それでは仕切り直して」

瞳子「いくのよ! ユミタン!」

ユミタン「タヌー」

 瞳子はユミタンを繰り出した


サッチー「やっと、終わったかしら」

 サッチーはテンションが下がってる

サッチー「じゃあ、始めていいのね」シャキーン←爪の輝く音

ユミタン「ガクブル ガクブル」

瞳子「と、とにかくユミタン、電気ショック」

 できません

瞳子「じゃあ、体当たり」

 できません

瞳子「はたく!」

 できません

瞳子「もう! 何ができるというの!」

 甘える しっぽを振る キス 眠る

瞳子「攻撃技がないじゃないですか!」

ユミタン「うん。必要ないと思って消しちゃった」

瞳子「がーん」


サッチー「……またなの……ねえ、わたしもう怒っていいわよね……わたしがんばったわよね……」

サッチー「キエーーーー」

 サッチーはヒステリーをおこした

瞳子「あわわわ、怒ってしまいましたわ」

瞳子「と、とりあえず、あまえるですわ!!」

ユミタン「タヌー!」

よちよち だきっ

ユミタン(上目づかいで)「お姉さま、大好き!」

 ユミタンはサッチーにあまえた

サッチー「さjhbhsだぶhfbdすふd!!!!!!!! 祐巳、私の家に来なさい! jsdbfはbdすいふいぎ!!!!!」ばたんっ

 サッチーは奇声をあげて倒れた

 ユミタンは経験値を25もらった


瞳子「・・・・」

瞳子「や、やったですわ。ポケモンを倒しましたわ!!」

ユミタン「ぶい!」

瞳子「お手柄ですわ、ユミタン! これなら、ポケモンマスターも夢じゃないかも……」

ユミタン「タヌー!」

ばさっ

瞳子 ユミタン !!

 サッチーが仲間になりたそうな目で…………というより配役代えろという目で瞳子を睨みつけている

サッチー じ〜〜〜〜〜〜〜〜

瞳子 汗だらだら

瞳子「ひ、ひとまず逃げましてよ!!」

ユミタン「あ〜ん 待ってよ! 瞳子ちゃん!」

だっだっだっだっだっ……

サッチー「ドリルが……」←本気で人を殺しそうな感じで





瞳子「ふう。なんとか生き返りましたわ」

瞳子「まったく……ユミタンには困りましたわね……」

瞳子「故意でないのはわかっておりますけれど……はあ」

瞳子「ところでユミタン。今度は何をやっておりますの?」

ユミタン「んーとね。さっき怪しいおじさんからニンテンドーDS買ったの」

瞳子「怪しいおじさんって……ユミタン、そんな人からものを……」

ユミタン「あれー動かないよー 故障かなー?」

瞳子「聞いてないですわね……」

ユミタン「えいっ えいっ やっぱり動かないやー」

瞳子「怪しいおじさんなんかから買ったからですわ。きっと偽物ですわ」

ユミタン「えー でも、箱ごともらったんだから偽物じゃないよー」

瞳子「変な論理ですわね。ちょっと箱を見せてください」

ユミタン「はい」

『ニンチンドーDS 〜〜〜〜〜〜(中国語)』

瞳子「……………」

瞳子「これは正真正銘の紛い物ですわね」

ユミタン「そんなことないよー 確かに中国語がかいてあるけど、日本語でニンテンドーDSって書かれてるもん」

瞳子「それは中国の商売戦略ですわ。それにこれ、ニン『テ』ンドーDSじゃなくて、ニン『チ』ンドーDSですわ」

ユミタン「あー本当だー うぐぐ、あのおじさん今度あったら覚えてなさい めらめら」

瞳子「そんなことしなくてもニンテンドーDSくらいいくらでも買ってあげますわ。お金は余るほどあるのですから」

ユミタン「本当にー? やったー! 瞳子ちゃん、大大だーい好き」ちゅっ

 ユミタンは瞳子にキスをした

瞳子「がはっ」
 
 効果は言うまでもなく抜群だー

瞳子(…3……33……回…ですわ…)ばたんっ

 瞳子は倒れた……

ユミタン「瞳子ちゃん!! しっかりして!! 瞳子ちゃん!!」

瞳子(あと何回あるのかしら……)

 一方、壁裏では

可南子(ユ、ユミタン……可愛いすぎるわ……)ドクドク←鼻血

可南子(これで……46回…目……)ばたんっ

続く

 
 あー 憧れのー ポケモンマスターに〜

 なりたいなー ならなくちゃー 絶対なってやるー

 あー 憧れのー ポケモンマスターに〜

 なりたいなー ならなくちゃー 絶対なってやるーーーーーーーー!!!


【2891】 止められない癖  (奈々氏 2009-03-13 23:48:36)


「お待ちなさい」

 私立リリアン女学園。
 銀杏並木の先にある分かれ道に凛とした声が響き渡る。
 その声にマリア像に朝のお祈りをしていた少女達が振り返り、辺りは騒然となった。
 それも当然と言えよう。
 なにしろ声を発したのは、この学園内で知らない者は居ないとされている紅薔薇の蕾こと小笠原祥子その人だったのだから。
 そんな中、一人だけ振り返りもせずに黙々とお祈りを続けている少女が居た。癖のある髪の毛を頭の両脇でリボンを使って纏めたその少女はお祈りを終えると立ち上がり、そのまま校舎へと歩き出したのだ。

「お待ちなさいったら」

 周りの喧騒が聞こえていないかの様に立ち去ろうとする彼女に業を煮やしたのか、祥子は少女の肩へと手を掛け――気が付けば空を見上げていた。
 祥子がツインテールの少女に投げられたと気が付いたのは、それから優に十数秒経ってからであった。

-続く-


【2892】 それでいいのかよ!  (クロス 2009-03-14 00:04:49)


【No:2866】の続き

『マリア様がみてる×ローゼンメイデン』(注:クロスオーバーです+由乃がおバカです)

 島津家

由乃「……3よ」

金糸雀「……4かしら」

由乃「……5」

金糸雀「……6かしら」

由乃「……7」

金糸雀「……8かしら」

由乃「………なかなかためるじゃないの、金糸雀。気に入ったわ」

金糸雀「よっちゃんこそ」

由乃「ふふ、9」

金糸雀「10かしら」

由乃「11」

金糸雀「12かしら」

由乃「ダウトッ!!!!!」

金糸雀 !!!!!!!!

由乃「ふふふ、その反応……もしかして当たりかしら」

金糸雀「さ、さあどうかしら」

由乃「開くわよ」

ぺらっ

ダイヤ 3

金糸雀「くっ!!」

由乃 にやり

由乃「これまでの合計28枚……金糸雀、悲惨ね」

金糸雀「…………」

由乃「じゃあ、つぎは私の番ね。13」

金糸雀「1かしら…………ってもうやめないかしら?」

由乃「えー、せっかく面白くなってきたのに」

金糸雀「2人でダウトのどこがおもしろいかしら!! かれこれ1時間は付き合っちゃったけど、これほどまでに時間の無駄を感じたことないかしら!!」

由乃「ババ抜きも7並べも同じようなこと言ってたけど……何が不満なのよ!!」

金糸雀「不満にもほどがあるかしら!! なんであきらかに2人向きのゲームじゃないのを選ぶかしら!!」

由乃「入院中は令ちゃんとよく2人でやってたのよ!! そのときは徹夜までして盛り上がったんだから」

金糸雀「異常の2文字かしら!! もう一回入院することをお勧めするかしら!!」

由乃「じゃあ、何がいいのよ!!!」

金糸雀「ブラックジャックやポーカー、スピードなどたくさんあるかしら!!」

由乃「そうだわ!!」

金糸雀「!! 急になんなのかしら!?」

由乃「漫才をやりましょ」

金糸雀「へ!?」

由乃「漫才よ、漫才」

金糸雀「なんでそんな話になるかしら?」

由乃「さっき2人向きがどうたらこうたら言ってたじゃない。だから、漫才よ! 漫才なら2人でもできるじゃない?」

金糸雀「た、確かにそうかしら。でも、なんで漫才かしら?」

由乃「去年のMー1はなんだか不評だったからよ」

金糸雀「い、意味が分からないかしら」

由乃「つーまーりー、私達がよりおもしろい漫才をすればいいのよ」

金糸雀「よっちゃん、本当に入院した方がいいかしら」

由乃「そうと決まれば、漫才の台本を作るわよ」

金糸雀「……もう諦めたかしら」




ーーーーー30分後ーーーーー




由乃「金糸雀。あなた、ハートの8止めてるでしょ? さっさと出してすっきりしなさい」

金糸雀「ふふふ、甘いかしら。よっちゃんはカナの好きな卵焼きより甘いかしら。まだ置けるところはこんなに残っているかしら」

由乃「くっ! 金糸雀、あんたろくな大人にならないわよ」

金糸雀「なんとでも言うかしら」

由乃「じゃあ、私はこっちを置いてっと」

金糸雀「なかなかの目のつけどころかしら。これは油断できないかしら」

由乃「勝負は最後までわからないってね」

金糸雀「ふふふ、カナのターンかしら。カナはここに置くじゃねええええええええ!!!!!!」

由乃「ど、どうしたのよ、金糸雀?」

金糸雀「何で7並べやってるかしら!!!! さっきまでのやりとりをまた繰り返すつもりかしら!!!!」

金糸雀「漫才はどうしたのかしらああああああああ!!!!?!!!??!」

由乃「だって、なかなかアイディアが浮かばないんですもの」

金糸雀「バカかしら!!! よっちゃんはバカかしら!!! だったら、漫才しようなんてほざくなかしら!!! このバカ馬鹿莫迦ばーーーーーかかしら!!!」

由乃「ひ、人を何度もバカ呼ばわりして、そこまで言うなら金糸雀、あなたが作りなさいよ!!!!!」

金糸雀「えっ!!??」

由乃「わたしはバカですから作れないけれど、賢い金糸雀ならもちろんつくれるわよねえ」

金糸雀「も、もちろんかしら」

由乃「じゃあ、作ってもらうわよ。お題は……そうね……『マリア像』で作りなさい」

金糸雀「なんてシビアかしら……」

由乃「次回のSSを楽しみにしてるわよ。ふふふふ」


→【未定】に続く


【2893】 白熱!!戦う生徒会長  (名無しのゴンゾウ 2009-03-14 15:46:41)


※【No:2876】→【No:2887】の続きです、一部を除きすべてオリキャラです、ご注意ください


「逃げちゃだめですよー」

「これで三回目、そんなにいや?」

嫌です

「そう、私たちは楽しい」

ひどい人たちです

 「遅い!」

来ただけ偉いと思ってください

「申し訳ありません聡子さま、なかなか言うことを聞いてくれなくって」

「五回ほど逃げられそうになりました」

三回です!

 「いいから早く着替えて頂戴、薔薇さま方を待たせるわけにはいかないの」

薔薇さま方、ですか

お姉ちゃんも白薔薇さまだったんだよね



 「きゃー」

 「素敵」

そうですか……



「わたしからねぇ」

よろしくお願いします

 「一年生、負けるなよー」

 「私たちのいちご牛乳がかかってるんだからねー」

親友(たぶん)の勝利よりいちご牛乳ですか



「始めっ」



怖い



でも隙はある



どうだ



「一本」

 「やるぅ〜」

 「いちご牛乳げっとー」

そんなに好きですか、いちご牛乳



次いきましょう

「手加減はしないわよ」

 「美紀ちゃ〜ん、それは手加減できる人が言う台詞ですよ〜」

 「備品が壊れる前に仕留めちゃってねー」

壊れるんですかっ!?



「始め」



うわっ

ちょっと

本当に危ないって

あたったら痛いじゃすみませんよっ

もうっ



「痛いぃ〜」

自業自得です

 「何にも壊れなくてよかったね〜」

 「本当に」

まったくです



「よろしく」

 「ゆーちゃんは聡子ちゃんより強いからねぇ〜」

お二人は聡子さまより弱かったんですね……

 「あたしん時より痛くしなさいっ!」

する理由がありませんって



「始めぇ」



うっ



きゃぁ



そやっ



てぇっ



やっ



 「そこまで」

シャイニングフォアヘッド!!

 「薔薇さま三人揃って新入生いじめちゃいけません」

「いじめてたんじゃありません、いじめられてたんです」 

その発言はどう考えても逆効果でしょう

 「戦ってみないと自分より強いってことがわからないわけだ」

「私は止めたんです!」

「「「うそだっ!!」」」

絶対煽ってますよね

 「ちょっと情けないよねぇ」

ノーコメントで

 「じゃあ正規の活動に戻りなさい、私は職員室にいるから」

「「「「はーい」」」」

やる気のない返事ですね

 「あと、さっきのは氏家さんの判定負けね、そういうことで処理しなさい」

どこまで知ってるんだろう

 ぞろぞろ……



今の三人が生徒会長だったのっ?



「その防具はあげるわ」

はぁ、ありがとうございます

「いつでも剣道部に遊びに来てね、大歓迎だから」

誰が遊ばれに行きますか

 「冷たいお方」

 「折角の陽菜さまのお誘いですのに」

美和子さんとたまきさんは黙っててください

「どうしても人手が足りないときは二人に連行してきてもらおうかしら」

やめてください



「もう帰ってしまうの?」

何で恋人を引き止めるような口調なんですか、聡子さま

「それはあなたに一目惚れしたから」

……逃げていいですか

「あなたは私の愛に応えてくれないのね」

……逃げますね

「お待ちなさい」

はい、って止まるなわたし

「私、あなたを妹にしてみせるから」

……本当にしつこいです


【2894】 確認してからさっぱりリフレッシュ変人と変態って  (bqex 2009-03-15 22:01:22)


パラレル西遊記シリーズ

【No:2860】発端編
 ↓
【No:2864】三蔵パシリ編
 ↓
【No:2878】金角銀角編
 ↓
【これ】
 ↓
【No:2910】志摩子と父編
 ↓
【No:2915】火焔山編
 ↓
【No:2926】大掃除編
 ↓
【No:2931】ウサギガンティア編
 ↓
【No:2940】カメラ編
 ↓
【No:2945】二条一族編
 ↓
【No:2949】黄色編
 ↓
【No:2952】最終回



 私、二条乃梨子は孫悟空の聖さま、猪八戒の蓉子さま、沙悟浄の江利子さまと天竺目指して旅を続けている。
 仏像鑑賞をしつつ、天竺まで一気に行きたいのだが、化け物がトンデモナイ勘違いをしているので無駄にヒドイ目に遭ってばかり……ああ、京都で大雪が降って新幹線が動くのを待っている時よりも最低な気分だ。

「時に、素敵なお嬢さま方」

 歩いていると不意に声をかけられた。
 振り返ると私達の事を呼びとめるパラソルをさした老婦人がいた。

「こんなところでお1人ですか?」

 聖さまが進み出て聞く。

「いいえ。私はこの辺りに入院しているという女性に会いにきたの。ところで、素敵な法師さまね。お近づきのしるしに、本当はお見舞いに持っていくはずだったメープルパーラーのケーキでもいかがかしら?」

「ちょっと待って」

 蓉子さまが割って入った。

「私達が今、そのケーキを貰ってしまったら、お見舞いに行くのに困るんじゃありませんか?」

「あの方はもう、食べる事も出来ないの。だから、食べて」

「気持の問題です……って、そこ、勝手にフォークを突き刺さない!」

 見ると、聖さまは勝手に包みを開けて、ケーキにフォークを突き刺して食べていた。

「いいじゃん。折角なんだし」

 いや、折角じゃなくて、私とお近づきになりたいと言って渡してくるのだから、これは罠だろう。何か入っててもおかしくない。

「賞味期限は5年前の11月……」

 江利子さまがビリビリに破かれた包装紙に貼ってあったシールの日付を読み上げた。

「ほら、罠じゃない」

 老婦人は逃げて行った。
 聖さまは渋い顔になったが、気にしないで旅を続けよう。
 一刻も早く帰りたい。

「あの、そこの御一行さん」

 歩いていると不意に声をかけられた。
 振り返ると私達の事を呼びとめる黒縁眼鏡の素敵な女性がいた。

「こんなところでお1人ですか?」

 聖さまが聞く。

「いいえ。私はルーズな友達と待ち合わせをしていたところです。あら、可愛い法師さま。ひどい雨が降りそうでな天気になりましたね。雨宿りにちょっと私の下宿に寄って行きませんか?」

「ちょっと待って」

 蓉子さまが割って入った。

「私達が今、あなたの下宿に寄ったら、あなたと待ち合わせしているルーズな友達が困るんじゃありませんか?」

「あれは少しヒドイ目に遭わせないとダメよ。ああ、ちらついてきたわ」

「それでも……って、そこ、荷物持って、『ご一緒しましょうか?』って態度にならない!」

 見ると、聖さまは彼女の鞄を持ってあげていた。

「いいじゃん。折角なんだし」

 いや、折角じゃなくて、私とお近づきになりたいと言って誘ってくるんだし、さっきの事もあるんだから……

「……」

 江利子さまが無言で聖さまの持っていた鞄を奪って遠くに投げると大爆発が起こった。

「ほら、罠じゃない」

 女性は逃げて行った。
 聖さまは冷や汗をかいていたが、どんどん旅を続けよう。
 これ危険だ。

 雨が降ってきた。

 不幸な事に私達は雨具を持っていなかった。

「あ、カッパは雨具じゃありません」

「ダジャレはいいから!」

「あ、あそこに祠が!」

「よし、ちょっとの間お世話になりましょう」

 私達は小さな古い祠に入った。

 中には先客がいた。白骨だった。

「あら、化ける前にここに入ってくるとわね」

 白骨が喋った。どうやら化け物らしい。

「化ける? じゃあ、今までのはあなたが化けていたのね」

 蓉子さまが言う。
 聖さまは青い顔をしていた。

「で、一応聞くけど、今度は何をする気?」

 白骨はカチカチと歯を鳴らした。

「孫悟空を落とす」

 聖さまが冷や汗をかいている。

「落ちないわよ」

 冷やかに蓉子さまが答えた。

「これでも?」

 白骨はみるみる美少女に変化した。黒く長い髪でどことなく志摩子さんに雰囲気が似ていた。

「いいところつくわね」

 江利子さまがつぶやいた。
 聖さまは涙目になってうつむいた。

「聖?」

 蓉子さまが聖さまの異変に気づいて顔を覗き込むと、聖さまは口元に手を当ててそのまま祠を飛び出して行った。

「聖!」

 蓉子さまも追って行った。

「孫悟空が落ちた。猪八戒も落ちた。1対1なら負けはしない」

 嬉しそうに白骨は言った。

「なるほど。あなたは人の心や記憶みたいなものを読んだりする事が出来るようね」

 江利子さまがうなずきながら言った。

「ご名答。あなたの愛しい人に化けてあげましょうか?」

「結構よ。どんなに外面を取り繕っても所詮は白骨じゃない」

 そっけなく江利子さまは答えた。

「失礼な。私は中身もそっくりに化ける事が出来る。今からあなたの言う人に化けてそれを証明したって構わない」

 白骨は不敵に笑った。

「無理よ。仮にそっくりになれるとして、あなたは中身まで蓉子に化けられるとでもいうの?」

「この通り」

 白骨は蓉子さまそっくりに化けた。

「ふーん。確かに見た目は似てるわ。でも、中身はどうかしら? あなたが蓉子だというのなら、チョコレートフォンデュに納豆入れて食べてみてくれる?」

「え?」

 え?

「あれは中3のクリスマスよ。聖の誕生日で聖の家に行って、チョコレートフォンデュ食べてたのよ。初めはフルーツとか、マシュマロとかで食べてたんだけど、『他に何が合うんだろう』って話になって、聖が冷蔵庫の物を引っ張り出してきたのよ。面白がって梅干しとか納豆とか。そしたら蓉子ってば真っ先に納豆を取って、『これはどうなるかまったく想像がつかないから試すべきよ』って──」

「食べたのぉ!?」

 白骨もびっくりしてる。

「蓉子なら言うわ『別に命にかかわる問題じゃないんだし』って。さ、あなたが蓉子だと言い張るならやって」

「……西遊記の世界にチョコレートはないので、他のにしてください」

 いや、この「パラレル西遊記」の世界にはチョコレートも納豆もあるんじゃないだろうか? だって、コイツ見事に反応してたし。

「ないの? じゃあ、仕方ないわね」

 江利子さまはつまらなさそうにため息をついた。

「じゃあ、あなたが蓉子だと言うなら、トーストくわえて『遅刻遅刻〜』って言いながら300m全力疾走してみて」

「はあっ?」

 蓉子さまは遅刻しないタイプだと思うが……

「あれは高1の夏休みよ。薔薇の館に行ったら、蓉子ってばパジャマとパンを持ってきててね、漫画なんかで見るトーストくわえて『遅刻遅刻〜』っていうのと、普通に大急ぎで身支度するのとどっちが早いのか気になって仕方がなくなったから、ここから昇降口までの往復で試してみるって言いだして、私にストップウォッチを渡してきて──」

「走ったのぉ!?」

 白骨、声裏返りすぎ。

「蓉子なら言うわ『生きるの死ぬのって事じゃないんだし』って。さ、あなたが蓉子だと言い張るならやって」

 うーむ、化ける相手を間違えたというか、騙そうとしている相手を間違えたというか。

「……いや、ストップウォッチもありませんし、雨も降ってますし」

 いやいや、じゃあ、さっきの反応おかしいだろ? 意味わかってないと出来ない反応だし。

「ないの? じゃあ、仕方ないわね」

 江利子さまはつまらなさそうにため息をついた。

「じゃあ、あなたが蓉子だと言うなら、雨でシャンプーは可能かどうか試してみて」

「いくらなんでも、そんな奴いないでしょう!?」

 白骨、ついに逆ギレしちゃったよ。気持はわかるけど。

「ほら、あなたは外見は蓉子そっくりだけど、中身はしょせん白骨なのよ。全然そっくりじゃないわ」

「私は……私は……」

 白骨は膝をついて崩れ落ちた。

 その時祠の扉が開いた。

「いや〜。まいったまいった。さっきのケーキ、相当ヤバかったらしくて胃に来ちゃって。でも、もう全部出したから大丈夫」

 聖さまが復活した。

「ちゃんと確認してから食べなさいよ」

 蓉子さまも戻ってきた。

「あれ、そこにいるの、誰?」

「ノリリンを狙う白骨」

「サクっとシメとく?」

「そうね」

 聖さま、蓉子さま、江利子さまの活躍で白骨は二度と立ち直れない姿になった。



 雨が上がり、私達は旅を再開させた。
 久しぶりに大きな町にやってきた。寺院もあり、きっと素晴らしい仏像もありそうだ。

「あら、寺院の前に屋台が出てるわね」

「お祭りなのかしら?」

「さあさあ、坦々麺と月餅はいりませんか?」

 パラレル西遊記の世界は適当に中華料理が食べられていいな。なんて思っていたら蓉子さまが言った。

「ねえ、坦々麺に月餅を入れたらどんな感じかしらね?」

「え?」

 江利子さまはぱああっと笑顔とデコを輝かせた。

「ほら、お雑煮に餡餅入れるっていうの、この前テレビでやってたのよ」

「蓉子、またそんな事試すの?」

 聖さまがいかにも気持ち悪いって表情できいた。

「あら、別に命にかかわるような事じゃないわよ」

 蓉子さま!?

続く【No:2910】


【2895】 やっぱりそういう担当  (クロス 2009-03-16 00:34:23)


【No:2892】の続き

『マリア様がみてる×ローゼンメイデン』(注:クロスオーバーです)

「「どーも(かしらー)」」

由乃「暴走列車の由乃でーす」

金糸雀「ローゼンメイデン1の策士、金糸雀かしらー」

由乃「金糸雀さん、わたし最近ダイエットしてるんですよ」

金糸雀「ほうほう。それで。どんなをダイエットしているかしら?」

由乃「聞いて驚かないでくださいね。流行にのって、なんと朝食をジャガイモだけ食してるんですよ」

金糸雀「ほージャガイモですか、ジャガイモダイエットかしら…………ってうん?」

由乃「そうとも言うんですよ。テレビでも何度も紹介されましたね〜」

金糸雀「いやいやいや。由乃さん、それってもっと黄色くて甘い食べ物かしら」

由乃「それじゃあポテトチップスでしょ」

金糸雀「コンソメ味違うかしら。もっとほら簡単に皮がむけるような感じかしら」

由乃「じゃがいも専用皮むき器のこと?」

金糸雀「なんでそんな限定商品かしら! ジュースとかパフェとかにできるものかしら」

由乃「なるほど、わかったわ」

金糸雀「やっと分かってくれたかしら……」

由乃「スウィートポテトのことね。まったくもっと分かりやすく言いなさいよね」

金糸雀「やっぱわかってないかしら! もっとみずみずしいかしら!」

由乃「もーうるさいわねーいったいなんなのよ!」

金糸雀「果物の1つかしら」

由乃「わからないわからない」

由乃「あー口論してたらお腹がすいちゃったわ。フィリピン産のバナナでも食べたいw」

金糸雀「それーーーーーーーーーーー!!!!!」

金糸雀「そのバナナを待ってたかしら」

由乃「えっ、じゃあエクアドル産は?」

金糸雀「それもーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

金糸雀「何で最初から言ってくれなかったんかしら?」

由乃「金糸雀を試したのよ」

金糸雀「いい加減にしろかしら」

「「ありがとうございマリア像したー(かしらー)」」

 題『マリア像』 作 金糸雀



由乃「…………」

金糸雀「どうかしら? カナにしてはなかなかの出来映えかしら」

由乃「う〜ん、かなり微妙よ」

由乃「って、その前に全然題に沿ってないじゃない!!」

由乃「最後の『ありがとうございマリア像したー』なんか苦し紛れすぎるわよ!!」

金糸雀「題が難しすぎるかしら」

由乃「まあいいわ」

由乃「これを見てたら、なんだか私も書けそうになってきた」

由乃「早速書いてみるわ」


ーーーーー30分後ーーーーーー


由乃「できたー」

金糸雀「おめでとかしらー」

由乃「さあ、金糸雀。読みなさい」

金糸雀「どれどれ」



「「どーも(かしらー)」」

由乃「暴走列車の由乃でーす」

金糸雀「ローゼンメイデン1の策士、金糸雀かしらー」

由乃「金糸雀さん、わたし最近剣道してるんですよ」

金糸雀「ほうほうそれで。どんなを剣道しているかしら?」

由乃「聞いて驚かないでくださいね。なんと剣道してるんですよ」

金糸雀「ほー剣道ですか、ケンドー小林かしら…………ってうん?」

由乃「そうとも言うんですよ。テレビでも何度も紹介されましたね〜」

金糸雀「いやいやいや。由乃さん、それってもっと激しいかしら」

由乃「それじゃあ空手でしょ」

金糸雀「そんな徒手空拳かしら。もっとほら投げ技な感じかしら」

由乃「プロレス?」

金糸雀「なんでチぇホンマンかしら! 曙かしら!」

由乃「わかったわ!」

金糸雀「やっと分かってくれたかしら」

由乃「ボブサップのことね。まったくもっと分かりやすく言いなさいよね」

金糸雀「やっぱわかってないかしら! ジュニアかしら!」

由乃「もーうるさいわねーいったいなんなのよ!」

金糸雀「だからミルコかしら」

由乃「わからないわからない」

由乃「あー口論してたらお腹がすいちゃったわ。ケンタッキーでも食べたいw」

金糸雀「それーーーーーーーーーーー!!!!!」

金糸雀「その言葉を待ってたかしら」

由乃「えっ、じゃあレッドチキンは?」

金糸雀「それもーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

金糸雀「何で最初から言ってくれなかったんかしら?」

由乃「金糸雀を試したのよ」

金糸雀「いい加減にしろかしら」

「「ありがとうございアリマ像したー(かしらー)」」

 題『アリマ像』 作 由乃



由乃「これおもしろすぎるわ! これでMー1も優勝できるわね」

金糸雀「よっちゃん! これ構造がカナのパクリかしら!」

金糸雀「しかも意味が分からなすぎるかしら!!」

由乃「細かいことは気にしちゃダメよ、金糸雀」

由乃「さあ、早速これをお披露目するわよ」

金糸雀「お、お披露目!? お披露目って誰にかしら?」

由乃「決まってるじゃない。令ちゃんによ」
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
令 蒼星石「…………」

蒼星石「初登場でなんだけれど、何これ?」

由乃「私が考えた漫才よ!」

金糸雀(カナのパクリのくせに)

蒼星石「ま、漫才?なんだ。ずいぶん斬新な漫才だね」

由乃「そうでしょ!」

金糸雀(絶対ほめられてないかしら)

由乃「今度このネタでMー1にでるわ」

金糸雀(やめてくれかしら。カナはまだ普通人でいたいかしら)

蒼星石「そ、そうなんだ。(多分出ない方がいいと思うけど……)」

蒼星石「マスターはこの漫才をどう思う?」

令「…………」

蒼星石「マスター?」

令「…………」

令「由乃」

由乃「何、令ちゃん」

令「グッジョブ」

令「この漫才おもしろすぎるわ」

令「さすがは私の由乃ね。サイコーすぎる! 由乃サイコー!」

由乃「やだ、令ちゃん。ほめすぎよ」

令「そんなことないよ。褒め足りないぐらいよ」

令「そんな由乃がM−1に出るなんて……」

令「先にサインもらっていいかしら?」

由乃「まったく大げさなんだから。サインならいくらでも書いてあげるわよ」カキカキ

蒼星石「…マ、マスター?」

令「何だい、蒼星石?」

蒼星石「本気で言ってるの?」

令「本気? 本気って何の話?」

蒼星石(ま、まじでですか、マスター……)

金糸雀(……よっちゃんの性格はきっとこの人が原因かしら……)

由乃「ほらっ書けたわよ」

令「ありがとう、由乃。いや、由乃さんかな? 由乃さんはきっと大物になるし」

由乃「もう。考えすぎよ」

令「由乃さ〜ん」

由乃「仕様がないわね」

金糸雀 蒼星石(はあ、これからどうなるんだろ?)

『金糸雀と由乃の漫才』おわり


【2896】 半ば強引にとっておきの甘い物  (柊雅史 2009-03-16 01:37:07)


「紅薔薇のつぼみっ! これ、どうぞ!!」
 マリア様へ朝のお祈りを終えた瞬間に、そんな掛け声と共に目の前に突き出された赤い小箱を、祐巳は反射的に受け取っていた。
「え?」
 驚きに目を丸くして顔を上げると、ぴょこんと頭を下げた相手が「それでは失礼します!」と叫んで、脱兎の如く逃げ出すところだった。
「え……ちょ、ちょっと……!?」
 声を掛けるも相手の背中は、あっという間に人ごみに消えてしまった。赤い小箱を手に、祐巳は呆然と立ち尽くす。
「な、なんだったんだろう……?」
 首を捻りつつ、とりあえず受け取った小箱を確認する。危険物の類ではもちろんない。どこかで見たことのある包装紙だな、と首を傾げ、ほどなく駅前デパートのお菓子屋さんの包みだと気が付いた。
 となれば、中身はお菓子の類だろう。山百合会への差し入れか何かだろうか――そう思いつつ、とりあえず小箱を鞄にしまう。放課後、山百合会のみんなと頂くことにしよう。
 折りしも、ホワイトデーが間近ということで、デパートでもホワイトデーフェアを開催していた。いつにも増して美味しそうなクッキーやキャンディーが並んでいたから、ちょっぴり包みの中身にも期待してしまったりして。
 デパートで見かけたお菓子を思い出して、祐巳の頬が思わず緩む。
 そんな祐巳の背中に、そっと人影が複数近付いていた――


     †   †   †


「ごきげんよう……」
「あー、来た来た。祐巳さん、ごきげんよう!」
 薔薇の館に着くまでの道中で色々とあり、若干疲弊した祐巳が扉を開けると、待ち構えていたように近くにいた由乃さんが、悪戯を思いついた子供のような顔で挨拶をしてきた。
 なんとなくイヤな予感がして尻込みしそうになる祐巳だけれど、由乃さんの向こう側に瞳子の姿を確認して踏みとどまる。同級生で同僚で親友の由乃さんを相手に、へっぴり腰で対応する姿を妹に見せるのは、お姉さまとしては避けたいところだ。
「な、なぁに、由乃さん? 何か良いことでもあった?」
「随分と今日は鞄が膨らんでいるのね、祐巳さん?」
 祐巳の問いには答えず、言いながら祐巳の鞄に手を伸ばす由乃さんに、祐巳は「なぜそれを!?」と思いつつ背中に鞄を隠した。
「おや。何か鞄を見られて困ることでも?」
「そんな、困ることなんて。別にないよ。でもホラ、プライバシーだよ、プライバシー」
 しつこく手を伸ばしてくる由乃さんから、体を使って鞄をガードする。扉の前でぐるぐる回りながら攻防を繰り広げる祐巳と由乃さんを、瞳子がテーブルから冷めたような目で見ているのが、ちょっと胸にグサッと来た。
「……お姉さま」
 しばしぐるぐると戦いを繰り広げていると、瞳子が呆れたような口調で声を掛けて来た。
「瞳子は別に、その鞄から何が出てきてもなんとも思いませんから。そんなところで子犬か何かみたいにじゃれていないで、奥へお入りになってください」
「こ、子犬……」
 言いえて妙な瞳子の台詞に、若干ショックを受けたところで、由乃さんの手が祐巳から鞄を奪い取る。由乃さんとの鞄取り合戦に負けてしまったわけだけど、瞳子の口ぶりからして祐巳が鞄を死守しようとした理由を既に知っているようだったので、それ以上の抵抗はやめておいた。
「最初からおとなしく渡せば良いのに。それと瞳子ちゃん、誰が犬よ、誰が」
 瞳子の子犬発言は、言い返せば祐巳と同じことをしていた由乃さんにも当てはまるわけで。由乃さんは軽く瞳子に文句を言った。
「ま、良いわ。今重要なのは、こっちよこっち」
 言いながら由乃さんがテーブルまで祐巳の鞄を持って行き、えいやっと鞄を広げて逆さにする。いや由乃さん、いくらなんでもそれは酷い扱いじゃないだろうか。
 思わず内心で突っ込んだ祐巳の眼前で、鞄の中身――教科書やノート、ペンケースがテーブルに広げられる。
 そしてそれを埋め尽くすような、カラフルな箱や紙袋、巾着袋がドサドサとテーブルに広げられた。
「さすが祐巳さん」
 唸るように由乃さんが積まれた箱や袋を見て頷く。
「その人気もさることながら、ここまで受け取り続けるそのボケボケっぷりが尋常じゃないわ」
「し、仕方ないじゃない。最初は山百合会への差し入れかと思ったんだもん」
 ちらちらと瞳子の様子を伺いつつ、祐巳は反論する。
「そりゃね、私も最初は同じこと考えたわよ。でも、普通は3回も続けば変だなって思うじゃない? それを、これだけもらい続けるなんて。それともまさか、事情を知りつつ受け取ったとか?」
 由乃さんの問いに、それを聞いた瞳子の眉が一瞬ぴくっと動く。それを確認して、祐巳はぶんぶん、と首を振った。
「違うよ! それは本当に、差し入れだと思って受け取っただけで! ホワイトデーのお返しだと知ってたら、さすがに遠慮したってば!」
 そうなのだ。この大量の箱や袋の山は全て、ホワイトデーのお返しだったのである。


     †   †   †


 とりあえず祐巳が受け取ったお返し30個に、由乃さんが取り出した3個の包みを加え、総勢33個のお返しがテーブルに並べられた。
 ちなみに志摩子さん提供のお返しは0個。志摩子さんは最初の1個目でプレゼントの趣旨に気付き、さすがに受け取れないと断ったそうだ。
 相手の子には申し訳ない気もするけれど。一月前のバレンタイン宝探し企画で運営委員会が準備した小さな参加賞のチョコレートのお返しとして、こんな立派なお返しを受け取るというのは、さすがにマズイ気がする。
「誰が言い出したことかは分からないけど、言いだしっぺは中々どうして、面白い着眼点の持ち主よね」
 包みの一つを手に取りつつ、由乃さんが言った。
「まさか参加賞のチョコレートをもらったのだから、ホワイトデーのお返しを渡す権利と義務がある、だなんて。中々やるじゃない」
 中々接点のない山百合会のメンバーに近付くための、少々強引な大義名分。妹のいない由乃さんは別として、祐巳や志摩子さんに理由もなくプレゼントを渡すのは、妹の存在を考えると中々出来るものではない。
 そうして二の足を踏んでいた生徒にとっては、参加賞のチョコレートとはいえ、チョコレートをもらったと言う事実は、確かにホワイトデーにお返しを渡すと言う理由になりうる。最初にそれを思いついて、お返しを準備した子は中々の発想力の持ち主だ。
 とはいえ、それをもらう方は困ってしまう。繰り返すが、渡したのはあくまで参加賞の一口大のチョコレートなのだ。こんな、デパートで売っているような立派なお返しをもらってしまうのは、さすがに気が引ける。これがお返しではなくただの差し入れだったら、逆に問題はなかったと思うのだけど。
 渡す方には理由になる「お返し」という大義名分が、逆に受け取る方には受け取れない理由になってしまうのだ。
 だから志摩子さんも、お返しを断る時にはちゃんと「差し入れとしてなら受け取るから」と伝えている。多分、ホワイトデーを過ぎた頃には、大量の差し入れが山百合会に届くことだろう。乃梨子ちゃんという妹の存在に遠慮して、若干数は減るとしても。
「とにかく、受け取ってしまったものは仕方ありません。名前のあるものは後でお礼を言いに行けば良いと思います」
「それもそうね。とりあえずメッセージカードとかが入ってないか、手分けして確認しましょ」
 瞳子の提案に由乃さんが応じ、早速包みの一つに手を伸ばす。さすが、令さま宛てのチョコレートをリストアップするのが毎年恒例の作業になっているだけあって、祐巳に渡された包みを開けるのにも躊躇がない。
「まぁ、チョコレートは山百合会と新聞部が用意したものだし、構いませんよね」
 由乃さんに続いて乃梨子ちゃんが言い訳するように呟いてから、開封作業に取り掛かる。それを合図に、5人で手分けしての開封作業が始まった。なんとなく包みをビリビリと破いて開けるのは申し訳ないから、丁寧に包装紙を開けていくので、33個ともなると結構な量になる。
「お姉さまも……どうしてここまで鈍いんですか……」
 ボソッと呟いた瞳子の台詞には、さすがに言い訳も何も思い浮かばなかった。


     †   †   †


 とりあえず包みを全て開けたところで、乃梨子ちゃんと瞳子が準備してくれた紅茶で一息入れることになった。
 お茶請けには早速、33個の中からクッキーのセットを1つ拝借することに。名無しのお返しが半分ほどあった内の1つである。
「それにしても、もらう方の対策を考えなかったのは盲点だったわね。渡す方は色々と考えてたのに」
 由乃さんがクッキーを摘まみながら言う。確かに相手にホワイトデーに何を渡そうか、とは考えたけれど、イベント参加賞のお返しをもらったらどうしようか、とは考えなかった。
「放課後は真美さんたちも呼びましょうか。チョコレートは新聞部の方たちも準備してくれたのだし」
 志摩子さんの提案に祐巳も由乃さんも頷く。恐らく渡す方も「みんなで食べられるように」と考えたのか、33個もあるお返しは、どれもそこそこのボリュームのあるお返しだったのだ。これを山百合会だけで消費するのは、中々しんどいことになりそうだ。
「それに今度は『せっかく準備したのだし、思い切って』という理由で、差し入れを持ち込む人もいると思うし。早く食べないと、ダメになっちゃうのは申し訳ないもんね」
 そんな由乃さんの予想は多分間違いない。由乃さんも志摩子さんも10人前後のお返しを断ったそうだから、それとほぼ同数の差し入れ予定が待っているのである。しかもその数は、昼休みとか放課後には更に増える可能性が高い。
 まぁ、祐巳としては美味しいお菓子が食べられるのはありがたい――のだけど。
 もぐもぐとクッキーを咀嚼しながら、祐巳はそっと隣で黙々とクッキーを口にしている瞳子の様子を盗み見た。
 ごくごく普通の表情で、お茶を楽しんでいるように見える――けれど。女優の瞳子の表情ほどアテにならないものはないわけで。
 祐巳が瞳子の立場であれば、仕方ないとは思いつつも、決して喜ばしいことではない現状なのは間違いない。例えば、祥子さまが誰かに『ホワイトデーのお返し』を、30個ももらっていたら、どんな事情があっても無関心ではいられないだろう。
 増してバレンタインの時にはまだ、瞳子とは姉妹になっていないわけで。瞳子も祐巳もチョコレートを互いに渡していない。だから祐巳も瞳子にはお返しは用意してないし、瞳子も祐巳にお返しは用意していないだろう。
「――なんですか、お姉さま?」
「うん……ごめんね、瞳子」
 祐巳の視線に気付いた瞳子の問いかけに、祐巳は素直に謝っておいた。
 謝るようなことかどうかは分からないけれど――でも、志摩子さんのように最初から気付いて上手く対処していれば、という思いもある。
「別に……謝って頂くことではありません」
 言いながら、つんとそっぽを向く。やっぱり若干、ご機嫌斜めのようだった。
「……そ、それに。お姉さまも忘れているようですけども」
 そっぽを向いたまま、床においていた鞄に手を伸ばしつつ、瞳子が言う。
「この状況ではアレですけども。少々言い出しにくいことですけれど」
 鞄の中から綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出して。
 それをずい、と祐巳の方へ差し出しながら、瞳子が言った。
「瞳子も……参加賞のチョコレートをもらいましたから。お返しする権利と義務があるのですわ!」
 リボンで作った紅薔薇の飾りが付けられた小さな小箱。
 もしかして、こんな大義名分を考え出した最初の生徒は……なんて。そんなことを思いつつ。
「ありがとう、瞳子」
 お返しは受け取りません、と言いつつも。
 このくらいの例外なら、みんなもきっと見ないフリをしてくれるよね……。













「でも、瞳子ちゃん。私の籠からチョコ持ってかなかったっけ?」
 由乃さん……そこも見て見ぬフリをしようよ……。



【2897】 何味ですか?トロトロの三角関係  (柊雅史 2009-03-16 22:51:36)


「へぃらっしゃい!」
「へぃらっしゃい!」
 威勢の良い掛け声が、薔薇の館にこだまする。
 マリア様のお庭の一角に集った職人たちが――以下、省略。
 私立リリアン女学園。
 うんたらかんたらで乙女の園――のハズなんだけど。



 こんなのもう、乙女の園ぢゃねーだろう。



 とりあえず薔薇の館に突如として出現したカウンター席に腰を下ろし、由乃は状況を把握するべく視線を巡らせた。
「何握りやしょうか!?」
「何握りやしょうか!?」
 カウンターに左右に並ぶのは、壮年の男性料理人。頭に鉢巻を結び、白い割烹着を腕まくり。正に職人を絵に描いたような二人である。
「とりあえずエンガワ」
「あいよ! エンガワ一丁!」
「あいよ! エンガワ一丁!」
 揃って復唱し、見惚れるような手付きでエンガワを握る。タン、と威勢良く目の前に置かれたエンガワ2丁。口に入れれば、職人の腕も素材の新鮮さも文句のない素晴らしさだった。
 もぐもぐ、とエンガワを咀嚼して熱いお茶を一口。ふぃ〜と一息ついてから、由乃は初めてそこで、冷ややかな視線を隣の席に投じた。
「で」
 おしぼりで手を拭きながら。
「これはどういうことなの、祐巳さん?」
 由乃の問いに、2貫のお寿司を前に固まっていた祐巳さんが涙目を向けてきたけれど。
 泣きたいのは、愛すべき執務室である薔薇の館がこんな惨状になり、戸口で固まったまま動かない令ちゃんだと思う。


       †   †   †


 発端は祐巳の何気ない一言だった。
「もうすぐ卒業式ですね。やっぱりお姉さまの家では、パーティーとかやるんですか? きっと美味しいご馳走とか、出るんでしょうねぇ……」
 はふぅ、と祐巳がため息を吐いたのは、たまたまその日のお昼休みに、桂さんとK駅グルメマップで盛り上がったためだろう。
 豪華絢爛なフレンチのフルコースだとか、瑞々しいお寿司だとか、イタリアンにロシア料理に中華料理……お昼ゴハンを食べた直後なのに、お腹がぐ〜と鳴りそうになったのは、育ち盛りの高校生としては仕方のないことだろう。
 そんな昼休みを過ごしたからか。放課後にちょっとした雑談の中で、祐巳は先ほどの台詞を口にしていたのだった。
「パーティーをやる予定はないわね」
 くすくすと笑いながら、祥子さまが答えた。
「ご馳走も、どうかしらね。お母様が腕を奮って鍋焼きうどんでも作るかもしれないけれど――あまりご馳走とは言わないでしょうね」
「そうですかぁ……」
 別に祐巳が食べられるわけではないのだけど、なんとなく残念だった。TVのグルメ番組を見る心理に近いのかもしれないけれど、例え自分が食べられなくとも美味しいゴハンの話は、想像しているだけでも楽しい気分になる。それには少々、鍋焼きうどんでは物足りない。
「まったくもう、何を言い出すのかと思えば。お姉さまらしいと言えばらしいですけど、もう少しこう、色気のある話題はないのですか」
「そうは言われても……気になるじゃない、やっぱり。どんなご馳走なのかなぁって」
 苦笑した瞳子に祐巳は口を尖らせる。そんな祐巳にころころと笑いながら、祥子さまが聞いてきた。
「じゃあ、祐巳にとってのご馳走は何かしら? 祐巳なら、何が食べたい?」
「えーと、そうですねぇ……」
 うーん、とグルメマップを思い出しつつ、祐巳は力強く答えた。
「お寿司とか、良いですよね! トロとか! 私まだ、美味しいトロって食べたことないんですよ!」
 えへへ、とまだ食したことのないトロを思い浮かべて、思わず祐巳の頬は緩むのだった。


       †   †   †


「――で。昨日の今日でこんなことになった、と」
 呆れたように聞く由乃に、祐巳さんがこくん、とうなずく。
 その前には美味しそうなトロの握りが2貫。
 由乃の見立てでは、一方は大トロで、もう一方は中トロであろう。まぁ由乃も上等な本マグロの握りはほとんど食べたことがないので、TVや雑誌で見た姿と見比べての判断だけども。
「さぁ祐巳、どうしたの? 遠慮はいらないわ。マグロと言えば大間。中でも大トロは絶品よ。大トロを握らせたらこの梅さんの右に立つものはいないんだから!」
「お姉さま、遠慮なさらずに。トロと言えばなんでも大トロと言う人もいますけど、瞳子は中トロこそ至高の一品だと思いますわ。赤身と脂の絶妙なバランス――その見極めにおいて、この留吉さんの右に出るものはおりません」
 祐巳さんの左に陣取った祥子さまが言えば、右に陣取った瞳子ちゃんが挑戦的に応じる。そしてそれぞれの勧誘に呼応して、カウンターの向こうでも職人さんたちが、力強くうなずいてから、互いに睨み合っていた。
「あらあら、瞳子ちゃん。それは聞き捨てならないわね。真に上等な大トロはくどさや生臭さとは無縁。爽やかな脂の甘みが、蕩けながら口の中に広がるのよ。この大トロを食べずして、何を食べると言うのかしら?」
「お言葉ですが祥子さま。この瞳子が用意した中トロは、そんじょそこらの大トロにも負けない脂の甘みと、それを引き締める赤身が売りですわ。その絶妙なバランスこそ、お姉さまに真っ先に味わって頂かなくては」
「うふふ、言うわね瞳子ちゃん。けれど真の大トロはもはや大トロの域を超えた珠玉の一品なのよ。中トロよりもより深い旨みをこそ、祐巳には味わってもらわなくては嘘じゃなくて?」
 祐巳さんの頭の上でバチバチと火花が散る。このままでは祐巳さんの丸焼きが焼け上がり、大トロも中トロも炙りトロになってしまうだろう。
「さぁ、祐巳! この大トロを!」
「いいえ、お姉さま! この中トロを!」
 迫る祥子さまと瞳子ちゃん。どっちを先に口にするべきか苦悩する祐巳さんを前にして、互いに一歩も譲る気はなさそうだ。
 由乃がコハダや海老やつぶ貝などを味わいながら見守っていると、ついに祐巳さんが意を決したように顔を上げ――
 そしてすっとお寿司に手を伸ばした。
「――!」
「――!」
 息を詰め、見守る祥子さまと瞳子ちゃんの前で。
「い、いただきます!」
 祐巳さんは2つのお寿司をいっぺんに引っ掴むと、「むがぁ!」と大口を開けながら、一気にお寿司を口の中に詰め込んだ!!


「祐巳、なんてはしたない! お寿司は1貫ずつ食べるべきでしょう!」
「お姉さまには、テーブルマナーを一から教え込む必要があるようですわね!」
 もぐもぐと涙目でお寿司を咀嚼する祐巳さんに、左右から特大の雷が落ちている。
 そんな祐巳さんを横目に、晴れて解禁となった中トロと大トロを注文しながら、由乃は後で祐巳さんに聞いてみよう、と思った。


 初めてのトロのお味はどうだったか、と。


【2898】 乃梨子、萌えを力説  (bqex 2009-03-18 23:05:02)


 注意事項:この話には原作のネタバレしかありません。



 ある日の薔薇の館。

 祐巳と由乃が瞳子の入れたお茶で一息ついていると誰かがバタバタバタっと階段を駆け上がってきて、勢いよくビスケット扉を開けた。

「事件です!」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう。乃梨子ちゃんどうしたの?」

 いつもならちゃんと挨拶する乃梨子が挨拶もせずに、刑事ドラマの新人刑事のようなセリフと共に現れたのだ。一体何事かと祐巳と由乃は身構えた。

「事件?」

「これを見てください」

 乃梨子は手にしていたプリントをバンっと机の上に広げた。

「これは某gokigenyouなHPをプリントしたものね」

「このページなら私もお気に入り登録しているよ。でも、何が問題なの?」

 祐巳は首をかしげた。

「ここです」

「あ」

 乃梨子が指さすところを見て一同は青ざめた。

「こ、これは……」

「ごきげんよう……どうしたの? みんな、深刻な顔をして」

 志摩子は部屋に入るなり、一同の異様な表情を見て聞いた。
 しかし、誰もがうつむいて答えようとはしない。

「乃梨子、何かあったの?」

 お姉さまに聞かれて答えないわけにはいかない乃梨子が代表して答えた。

「『お釈迦様もみてる』の2冊目が発売になるんです」

「まあ……」

 志摩子はそう言ったきり言葉が出なくなった。

「無理もありません。企画一発物と侮っていた『お釈迦さまもみてる』の2冊目がまさかこのタイミングで発表されるだなんて……」

 乃梨子は下唇をかみしめた。

 ガタン、と音がすると、瞳子が膝をついて崩れ落ちていた。

「瞳子!!」

 祐巳が駆け寄って瞳子の肩を抱いた。

「瞳子ちゃん、わかるわ。せっかく姉妹になったのに、『薔薇の花かんむり』では3年生を送る会で忙しくてイチャイチャできず、『キラキラまわる』では祐巳さんは祥子さまとイチャイチャ、『マーガレットにリボン』でちょっとだけイチャイチャできたかとおもったら、『卒業前小景』ではやっぱり祐祥、そして『ハローグッバイ』で──」

「もうやめて! 由乃さん!」

 祐巳は声を荒げて由乃の話を遮った。

「ごめん、瞳子。私のせいだ。私が『特別でないただの一日』のラストのお姉さまのセリフを『瞳子を妹にしなさい』の意味だと正しく解釈できていれば、私達はもっと早く姉妹になって、『妹オーディション』でパニックになる由乃さんを尻目にイチャイチャできたんだ。ごめん」

 祐巳は泣きそうな顔で瞳子に頭を下げた。

「お姉さま……」

 瞳子は首を横に振った。

「悪いのは私もです。私も『未来の白地図』から『大きな扉小さな鍵』あたりでは意固地になりすぎました。お姉さまと真正面からぶつかっていれば単行本1冊くらいで済んだ事だったのに……」

「瞳子……」

 ひしっと抱き合う紅薔薇姉妹。

「まあ、2人の世界に入った人達は置いといて、話を戻しましょう。問題はあの話の2冊目発売よ」

 由乃は機嫌悪そうに席に着いた。
 志摩子も席に着く。
 乃梨子がお茶の準備をし、祐巳と瞳子も落ち着いたのか、席に戻った。

「状況を整理しましょう」

 志摩子が一同を見回してから言った。

「『ハローグッバイ』において書かれていた『─了─』そして、あとがきにおいての『今後は形を変えて』という言葉。そして今回の出来事」

「うかつでした。てっきり『祐祥編』が終わって、次からは『志摩乃梨編』に戻ると思っていたのに」

 乃梨子が悔しそうに言った。

「乃梨子! これからは『祐瞳編』よ! それに戻るとは、何よ?」

 乃梨子の言葉に瞳子が反応する。

「『志摩乃梨編』はこの世に『マリア様がみてる』という作品が読み切りで誕生した時のエピソードで、単行本では『チェリーブロッサム』収録の『銀杏の中の桜』として収録されました。この事から考えて元祖は『志摩乃梨編』、連載にあたり登場した『祐祥編』は究極のスピンオフといっても過言ではありません」

 乃梨子の説明に険しい顔をして瞳子がガタンと音をたてて立ち上がる。

「乃梨子、口を慎みなさい」

 志摩子が静かにたしなめる。

「仲間割れしている場合ではないわ。これは『マリア様がみてる』の形が変わった物語が『お釈迦様もみてる』になってしまうという私達の存在理由がかかった問題なのよ」

 乃梨子は止まらなかった。

「私は、その……この際だから言ってしまいますが、もっと姉妹になってからの志摩子さんと私のいろいろなエピソードを描いて欲しかった。でも、私はお姉さまを困らせて大騒ぎした後自己完結したり、問題を起こしてお姉さまの新たな魅力を引き出したりするようなキャラクターじゃないし。志摩子さんだって、妹を振り回して傷つけながら好きだからで済ませたり、立て続けに問題を起こしてリリアンかわら版にネタを提供し続けるようなキャラクターじゃないし……何よりも、私は志摩子さんを困らせたり、悲しませたり……そんな事、私には出来なかった。たとえ空気薔薇と言われても、私は志摩子さんに微笑んでいてほしかった。全ては志摩子さんの微笑みを独占しようとした私が……私が……」

 乃梨子は涙を流し、語った。

「乃梨子……。私も努力はしたのよ。でも、後付けされた家庭事情は学園モノではうまく生かしきれない内容で不発になってしまって……」

 志摩子はハンカチで乃梨子の涙を拭きながらやさしく言った。

「いいじゃないそれでもっ!」

 黙って聞いていた由乃がついに爆発した。

「私は確かに問題も起こした。出番もあった。『令ちゃんのばか』と言い続け、菜々と出会い、振り回されるお姉さんキャラにっていうオイシイところがあったのに、4期アニメでは次回予告の15秒ですべて片づけられたのよ! そして、菜々と妹になった本に『─了─』って……それならばいっそ、イチャイチャし続けた空気薔薇の方が気持ちがいいってもんだわ!」

 祐巳と瞳子はうつむいた。
 ピザ○ットのせいにしてしまう事も出来たが、それを自分たちが言うわけにはいかない事はよく心得ていた。

「……話を戻しましょう」

 志摩子は乃梨子が落ち着いたのを見計らってから言った。

「『マリア様がみてる』は現在単行本未収録の短編がいくつかあるわ。そして、短編集が出る時は必ずそれをつなぐ形で表題作が書き下ろされる。まだ、何もかもが終わったというわけではないはずよ」

 一同の目に希望の光がともった。

「そうだよ!」

「たしかにそうですわ!」

「そういえば、5月号にも短編が載るんだよね。特集も組まれるし」

「甘いわね」

 薔薇の館に聞き覚えのある声が響き渡った。
 一同は辺りを見回す。
 流しの扉ががたがたと音を鳴らす。

「え!?」

 一同が注目して見ると扉が開くとそこからはなんと小笠原祥子さまが現れた。

「お、お姉さま!?」

「何でそんな所から!?」

「ごきげんよう。小笠原の力で、ここは隠し通路にしたのよ。祐巳に何かあったとき駆けつけられるようにね。ちなみに隠しカメラと隠しマイクで薔薇の館の様子は24時間把握できるわ」

「そんな、無茶苦茶な」

 無視して祥子は埃を払って席に着く。
 祐巳は反射的に祥子にお茶を入れていた。
 全員が席に着いた。

「今までの話を聞いていたけれどあなた達、甘すぎるわよ」

「な、何がですか?」

 祐巳は恐る恐る聞いた。

「『お釈迦様もみてる 学院のおもちゃ』の発売日を知っていて?」

「このHPによると4月1日……あっ!」

 祐巳は血の気が引いて行くのがわかった。

「さすがに気づいたようね。これは『釈迦みて』主人公の福沢祐麒の誕生日、4月1日に合わせたものよ」

「えっ!」

 全員が息をのんだ。
 慌てて由乃と瞳子がHPのプリントを確認する。

「私達、『マリみて』の主要キャラクターで誕生日が明らかになっているキャラクター、何人いたか知ってるわよね? 聖さまの12月25日以外は明らかになっていないのよ」

「そ、それは、元々細かい設定は後付けになっている作品で、蓉子さま達のお名前も必要になってから出てきましたし、由乃さんですら、1巻では苗字がなかった……」

 祐巳は力なく反論した。

「いいえ。これは重要な要素なのよ。キャラクターのプロフィールが明らかにされるとファンサイトなどでは誕生日イベントと称してそのキャラクターの特集が組まれることなどは当たり前だし、主人公の細かい設定はファンに感情移入を促すとして歓迎されている傾向にあるわ」

「つまり、それは、これからは『釈迦みて』が主流になるという事なのですか?」

 乃梨子が聞いた。

「雑誌Cの傾向からいって、『釈迦みて』は続いてしまう。そして、いつしか『マリみて』は過去の作品として──」

「お待ちください」

 志摩子が立ち上がった。

「さっきから『釈迦みて』なんて、略称を使っておられますが、それは『お釈迦様もみてる』派をつけあがらせる要素の1つではありませんか? 今、これだけは言っておきます。私は、今後どんなに『お釈迦様もみてる』の人気が出ようとも『釈迦みて』という略称を使って煽り立てるような真似はしません」

「志摩子……」

 祥子は志摩子を見つめて呆然とした。

「あ、私わかった」

 由乃が急に立ち上がる。

「この話、祐巳さんと祥子さま、瞳子ちゃんはちっとも困らないのよ。何故だかわかる?」

「私が困らないですって? 何を言うんですか? 由乃さま」

 瞳子が由乃を冷やかに見た。

「まずは祐巳さん、あなたは祐麒さんの姉として確実に出番がある。いいえ、前回1人だけ抜けがけして出演してもいる」

「えっ!」

 ノーチェックだったのか乃梨子が声を上げた。

「そ、それは、祐麒だけじゃ『マリみて』スピンオフは任せられないっていうか……その……」

「出たんですね」

 乃梨子が低い声で言った。

「出たんですね? あんな、萌えのない作品に、主人公の姉の立場で出たんですね? 『マリみて』では祐麒さんが出ない回の方が多いのに、出たんですね」

「乃梨子」

 志摩子が乃梨子を制した。

「私、出演しました」

 祐巳の告白に全員から驚きとも、残念ともとれるような複雑な声が上がった。

「そう。祐巳さんはあの話が進んでもちっとも困らないのよ。それどころか、エピソードは今5月くらいだから、再び祥子さまと姉妹になって感動する場面すらあるかもしれない」

 祐巳は祥子以外からの殺気を帯びた視線を感じた。

「同じ理由で祥子さまと瞳子ちゃんも困らない。それは身内が主要登場人物だから」

「あら、私は出番はなくてよ。何故なら、この時期優さんを避けてたもの。瞳子ちゃんはわからないけど」

 優雅に祥子は微笑んだ。

「私だって、この時期は優お兄さまには何度かお会いしましたが、祐麒さんにお会いしたのは『真夏の一ページ』の『略してOK大作戦(仮)』が初めてです」

 瞳子は反論した。

「でも、巻数が進んで、今までのエピソードの裏側が描かれるようになったら? たとえば『未来の白地図』とか。『銀杏の中の桜』の裏エピソードが『BGN』として書かれた事を忘れてはいないでしょう?」

 瞳子は反論できなかった。
 祥子も黙った。

「つまり、紅薔薇はあの話が進んでも困らないのよ」

 由乃の意見に紅薔薇は沈黙した。

「あと、先代──先先代になっちゃったか。江利子さまたちなんかむしろ喜んでるんじゃない?」

「え?」

 由乃は続ける。

「これから花寺の学園祭のエピソードが書かれたら、そこにはゲストとしてリリアンの三薔薇さまとして、当時の薔薇さまだった江利子さま達がミス花寺の審査員として登場するのよ。『マリみて』ではとっくに卒業して出番なんか見込めないけど、あの話では将来確実に出番が約束されてるんですもの」

「確かに」

「あと、志摩子さんはその時期まだ聖さまと姉妹になっていないから出番は厳しい」

「……」

「私は病気だったし。祥子さまは逃げてたけど、令ちゃんはちゃんと打ち合わせにも出ていた」

「皮肉なものね。リリアンを去った人ばかりが出番があるなんて」

 志摩子さんはため息をついた。

「あ、あのう」

 乃梨子が切り出した。

「それって、その話、実は『出番のない人の救済企画』って事じゃ──」

「あり得ないわ。さっき、祥子さまも言っていたけど、主人公の誕生日に発売日をぶつけてくるんですから。力の入り方が違うのよ」

 全員が押し黙った。

「私達、どうすればいいんだろう?」

 祐巳のつぶやきに全員が答える事が出来なかった。

「でも、皆さん、これでいいんですか? 私達はそのう……BLと呼ばれる分野の登場人物になってしまうんですよ! これは神の教えに背く大罪です!」

 志摩子はきっぱりと言った。
 志摩子の口からBLなどという単語が出たのには驚いたが、そこにツッコミを入れる余裕のあるものはいなかった。

「私も反対です! 直接的な表現が少ないとはいえBL小説の脇役に志摩子さんだなんて、絶対に許せません!!」

 乃梨子は叫んだ。

「私だって! 私だってBL小説の主人公の姉だなんて、それは嫌」

 祐巳が慌てたように言った。

「BL小説ですって!? そんな男だらけの本に何故私が出演しなくてはいけないんですの!」

 祥子がヒステリーを起こしながら同調した。

「私だって反対です!」

 瞳子も立ち上がる。

「私はずっと反対してたわよ」

 由乃も立ち上がった。

 全員が静かに薔薇の館を出て行った。




──次のニュースです。
 集○社の雑誌Cの編集部に女子高生たちが押し掛け、現在も立てこもっています。
 女子高生たちは「萌えない本を出すな。百合小説は文化だ」と主張しています。

「この人たち、何をやってるんだ?」

 家のテレビで祐麒はそのニュースを見ていた。
 そしてその犯人がよく知る人物とは全く思わず、さらに、原因が自分にあるとは知らずに見ていた。


【2899】 (記事削除)  (削除済 2009-03-19 01:56:32)


※この記事は削除されました。


【2900】 なんだろうこの不安感  (名無しのゴンゾウ 2009-03-19 14:05:04)


「剣道部始まっちゃうよー」

「あれだけ熱心にお誘いになっているのに、聡子さまがかわいそう」

美和子さんもたまきさんもしつこいです

「そう、じゃあ今日はこのくらいにしといてあげましょうか」

「私たちも忙しくなってきそうだからね」

何なんですか

「ひ・み・つ」

「剣道部に来てくれるなら教えてもいいよー」

ならいいです


※【No:2876】→【No:2887】→【No:2893】の続きです
 一部を除きすべてオリキャラです、ご注意ください


今日はお二人が早く諦めてくれたおかげで早く帰れそう

 「昨日は剣道部にいらしたそうね」

 「薔薇様方も一緒だったとか」

 「何があったの」

にありませんね、好奇心旺盛な子羊は2匹だけではないということを忘れていました

「薔薇さま方の立ち会いのもと、手合わせをしてきました」

多少大声で質問に答える、ウソはついてない

 「勝ったの?負けたの?」

「一応勝ちましたけれど」

負けてたらどうするんだろう

 「すごーい」

 「リリアンの剣道部って弱くないのよ?」

 「剣道部に入りなさいよ」

 「一人で行きづらいなら付き添ってあげるから」

 「むしろ私たちが剣道部を見学したいから一緒に来て」

「わたしは剣道部に入るつもりはありません、陽菜さまや聡子さまに会いたいのならどうぞお一人で会いに行ってください」

陽菜さまや聡子さまはそんなに素敵ですか?

 「えーっ、冷たい」

 「勿体無いですわ」

 「たまきさんたちが強制連行したのも頷けるわ」

「用事がありますのでこれで、ごきげんよう」

 「「「ごきげんよう」」」



「お待ちなさい」

紅薔薇の蕾にマリア像の前で呼びとめられる、というのは運命的なことらしいのだが

「はぁ、はぁ、はぁ」

私は生徒会には興味がないし向こうは肩で息をしているのだからちっとも盛り上がらない

「はぁ 明日 放課後 すぐ はぁ 薔薇の はぁ 館に 来なさい」

明日の放課後すぐに薔薇の館に行けばいいんですね?

「そうよ はぁ 私は 紅薔薇の はぁ 蕾 のっ 斎藤 加奈 はぁ よろしくね」

わかりました

「ちょっと 待っててね はぁ 息が整ったら はぁ タイを直してあげる ふぅ」

大丈夫ですか?

「うん だ 大丈夫 ちょっと 薔薇の館から 走ってきた だけだから」

大丈夫じゃなさそうですね

「ふう」

 サラサラ サラ キュッ

「はい」

ありがとうございます

「どういたしまして、タイが乱れてると気になってね」

今後は気をつけます

「うん、じゃあまた明日ね、ごきげんよう」

ごきげんよう



なんか大変なことに巻き込まれそうな予感がする


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